今回は令和7年度下期 電力科目 A問題8、架空送電線路に関連する設備の誤り選択問題です。がいし・アークホーン・架空地線・スペーサ・ダンパ・埋設地線と、架空送電の主要設備が総登場する総合問題です。
決め手は振動の名前の区別。微風振動=一様な微風→カルマン渦→電線が上下に振動(単導体でも起こる・ダンパで吸収)。サブスパン振動=多導体のスペーサ間(サブスパン)で風下側電線が後流(ウェイク)を受けて振動。現象の説明と名前のすり替えが誤りの定番です。
令和7年度下期 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和7年度下期 A問題8
架空送電線路に関連する設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。
(2) 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており、遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
(3) 超高圧の架空送電線では、スペーサを用いた多導体化により、コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。
(4) 電線に一様な微風が吹くと、電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで、この振動による電線の断線防止が図られている。
(5) 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると、鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。
出題のポイント:微風振動とサブスパン振動を区別する

一様な微風で電線背後にカルマン渦が生じ、電線が上下に振動する現象は微風振動です。サブスパン振動は多導体のスペーサ間で、風上側電線の後流により起こります。
誤りは(4):それは微風振動
「一様な微風…背後に空気の渦…サブスパン振動」——説明は正しく、名前が違います。
| ★微風振動 | ★サブスパン振動 | |
| ★風速 | ★★毎秒数 m | ★★数〜20 m/s |
| ★原因 | ★★電線の背後にできる渦 | ★★風上の素線が作る乱れた気流 |
| ★電線 | ★★単導体でも起きる | ★★多導体だけ |
| ★対策 | ★ダンパ | ★スペーサの間隔を不等にする |
「微風」「背後に渦」と書いてあれば微風振動です——名前だけが差し替えられています。
後半の「ダンパで断線防止」は正しい記述——ダンパは微風振動の対策だから。
説明とダンパが噛み合っているのに、名前だけ合わない——そこに気づけるかどうかです。
サブスパン振動は多導体でしか起きません——問題文には多導体という条件がないのです。
解法の原理:風・渦・電線構成から振動名を決める

★毎秒20回
| 風速 | 渦の周波数(d=20 mm) | 1日あたりの回数 |
| ★1 m/s | ★10 Hz | ★約86万回 |
| ★2 m/s | ★20 Hz | ★★約173万回 |
| ★4 m/s | ★40 Hz | ★約346万回 |
1日で百万回を超える曲げが繰り返されます——振幅が数センチでも金属疲労が積もるのです。
だから断線に至ります——いちどに壊れるのではなく、少しずつ。
電線の固有振動数と一致すると、共振して振幅が増えます——特定の風速で激しくなるのはそのため。
強い風では、かえって振動しません——渦が乱れて規則的でなくなるからです。
問題の解説:架空送電設備の5記述を判定して(4)を選ぶ

| 役目 | 内容 |
| ★間隔の保持 | ★電磁吸引力と強風に抗って素線を離しておく |
| ★コロナの抑制 | ★★間隔が保たれてこそ等価半径が大きくなる |
| ★振動の抑制 | ★★取付間隔を不等にして共振を避ける |
| ★制振型 | ★★緩衝材を挟んでエネルギーを吸収する |
間隔が保たれなければ、多導体の意味がありません——くっつけば1本の電線と同じです。
だからスペーサはコロナ対策の一部でもあります——(3)が両方を挙げる理由。
緩衝材を挟んだ制振型なら、揺れのエネルギーも吸えます——ギャロッピングにも多少効くのです。
ただし数メートルの揺れには、相間スペーサが確実。
⚠️ よくある間違い
(4)の後半「ダンパで断線防止」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは振動の名前だけ。
「微風」「背後に渦」なら微風振動——サブスパン振動は多導体で数〜20 m/s。
(1)のアークホーンを疑ってしまう——がいしをアークから守ります。
(2)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きい。
(5)の埋設地線を疑ってしまう——接地抵抗を下げて逆フラッシオーバを抑えます。
説明が正しく名前だけ違う型——名前を隠して読むことです。
⏱️ 本番での進め方
①★「微風」「背後に渦」なら微風振動。
②★サブスパン振動は多導体だけ、数〜20 m/s。
③★渦の周波数は f=Sv/d(S≒0.2)。
④★1日百万回を超える繰り返しが断線を招く。
💡 覚え方
「微風なら微風振動」——名前がそのまま条件です。説明とダンパは噛み合っているのに名前だけ合わない——そこに気づけば解けます。
★この問題は令和2年度 A問題6と完全に同一です(架空送電:関連設備(R02))。選択肢の並びだけが違い、5年を隔てての再出題です。
(1) アークホーンが身代わりになる
がいしを守る、単純だが確実な工夫です。
| アークホーンなし | アークホーンあり | |
| ★放電の場所 | ★★がいしの表面 | ★★ホーンとホーンの間 |
| ★がいしへの熱 | ★★直接受ける | ★★離れているので届きにくい |
| ★損傷 | ★★磁器が割れることがある | ★ホーンが溶けるだけ |
| ★交換 | ★★がいし連ごと | ★★ホーンだけで済む |
アークは数千度に達します——磁器でも急激な加熱には耐えられません。
ホーンを少し離して付ければ、そこで放電します——がいしから距離が取れるのです。
ホーンは安くて交換が簡単——身代わりとして理想的です。
間隔はがいし連の長さより少し短くします——そちらが先に放電するように。
(5) 埋設地線で接地抵抗を下げる
山地の鉄塔では、接地を取るのが難しいのです。
| 地質 | 接地抵抗 | とる方法 |
| ★水分の多い土壌 | ★低い | ★接地棒を打ち込む |
| ★★岩盤・山地 | ★★高い | ★★埋設地線を水平に長く伸ばす |
| ★砂地 | ★高い | ★接地抵抗低減剤を併用する |
岩盤では棒を深く打ち込めません——だから浅く広く埋めるのです。
地表近くに数十メートル伸ばすこともあります——接触面積を稼ぐためです。
ただし雷のような急峻な電流では、長すぎても効きません——先端まで届く前に終わってしまうから。
だから長さには適切な範囲があります——むやみに伸ばせばよいわけではないのです。
(2) 遮へい角を小さくする方法
角度を小さくするには、どうするのでしょうか。
| 方法 | 内容 | 費用 |
| ★架空地線を高くする | ★鉄塔の頂部を伸ばす | ★鉄塔が高くなる |
| ★外側へ張り出す | ★★腕金を長くして電線より外に置く | ★★0°以下にできる |
| ★多条化する | ★★2条にして中央の角度を小さくする | ★結合率も上がる |
遮へい角とは、架空地線から電線を見込む角度——鉛直線からの傾きです。
電線が架空地線の真下に入るほど、雷が届きにくい——だから小さいほうがよいのです。
0°以下にすれば、遮へい失敗はほぼなくなります——その代わり鉄塔が大きくなる。
多条化なら、遮へいと結合の両方が良くなります——一石二鳥の手になります。
(3) 多導体がコロナを抑えるしくみ
細い電線を離すだけで、太い電線と同じ効果が出ます。
| 構成 | 実際の直径 | 等価半径 | 表面の電界 |
| ★単導体 | ★30 mm | ★15 mm | ★★強い |
| ★2導体 | ★30 mm ×2(間隔400 mm) | ★★約77 mm | ★弱まる |
| ★4導体 | ★30 mm ×4 | ★★約130 mm | ★★さらに弱まる |
離して配置すると、全体で1本の太い電線のように振る舞います——電界の分布が広がるのです。
2導体で等価半径が5倍ほどになります——断面積は2倍にしかならないのに。
だから材料を増やさずに電界を弱められます——これが多導体の本質です。
その間隔を保つのがスペーサ——だから(3)が両者を並べているのです。
まとめ
| 誤り | (4) 微風振動の説明をサブスパン振動と呼んでいる |
| 微風振動 | 微風+カルマン渦→上下振動→ダンパで吸収 |
| サブスパン振動 | 多導体のスペーサ間で起こるウェイク振動 |
| 雷対策 | 架空地線(遮へい角小)・アークホーン・埋設地線 |
| 多導体+スペーサ | コロナ抑制・ギャロッピング対策(3) |
| 答え | (4) |
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