今回は令和7年度下期 電力科目 A問題9、架空送電線路の雷害対策の誤り選択問題です。不平衡絶縁方式・架空地線の多条化・塔脚接地抵抗の低減・送電用避雷装置・遮へい角と、雷対策のフルコースが並びます。
鍵は逆フラッシオーバの向き。鉄塔や架空地線に雷撃→塔脚接地抵抗×雷電流で鉄塔の電位が上昇→鉄塔側から電力線へ逆放電、が逆フラッシオーバです。「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」という記述は発生条件が逆——ここを見抜けるかが勝負です。
令和7年度下期 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和7年度下期 A問題9
架空送電線路の雷害対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 二回線送電線路で、両回線の絶縁に格差を設け、二回線にまたがる事故を抑制する方法を不平衡絶縁方式という。
(2) 架空地線を多条化することで、架空地線と電力線間の結合率が増加し、鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので、逆フラッシオーバの発生が抑制できる。
(3) 鉄塔塔脚の接地抵抗を低減させることで、電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバの発生を抑制できる。
(4) 送電用避雷装置は雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できるので、雷による事故を抑制できる。
(5) 直撃雷から架空送電線を遮へいする効果を大きくするためには、架空地線の遮へい角を小さくする。
出題のポイント:逆フラッシオーバの雷撃位置と向き

逆フラッシオーバは、鉄塔または架空地線への雷撃で鉄塔電位が上昇し、鉄塔側から電力線側へ放電する現象です。塔脚接地抵抗の低減はこの鉄塔電位上昇を抑えます。
誤りは(3):雷が落ちる場所が違う
「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」——対策は正しく、条件だけが違います。
| 雷撃の場所 | 電位が上がる側 | 放電の向き | 呼び方 |
| ★鉄塔・架空地線 | ★★鉄塔側 | ★★鉄塔→電力線 | ★★逆フラッシオーバ |
| ★電力線(直撃) | ★★電力線側 | ★★電力線→鉄塔 | ★★通常のフラッシオーバ |
ふだんは電力線のほうが高電位です——だから放電するなら電力線から鉄塔へ。
鉄塔に落雷すると、その関係がひっくり返ります——だから「逆」という字が付くのです。
塔脚接地抵抗を下げれば、鉄塔の電位上昇を抑えられます——だから逆フラッシオーバには効きます。
けれども電力線への直撃には、何の効果もありません——そこが誤りです。
解法の原理:鉄塔電位の上昇から逆放電を追う

| 段階 | 鉄塔に落雷した場合 |
| ① | ★架空地線または鉄塔頂部に雷撃する |
| ★② | ★電流が鉄塔を下り、左右の架空地線にも分かれる |
| ★③ | ★★塔脚接地抵抗を通って大地へ流れる |
| ★④ | ★★V=I×R で鉄塔の電位が跳ね上がる |
| ★⑤ | ★電位差ががいしの耐電圧を超えると逆に放電 |
雷電流の大きさは選べません——だから R を下げるしかないのです。
電流は隣の鉄塔にも分かれて流れます——1基だけで受け持つわけではありません。
だから線路全体の接地状態が効いてきます——1か所だけ良くしても足りないのです。
問題の解説:雷害対策の5記述を判定して(3)を選ぶ

| 段階 | ねらい | 手段 | 本問の選択肢 |
| ★第1 | ★電線に落とさない | ★遮へい角を小さくする | ★(5) |
| ★第2 | ★鉄塔の電位を上げない | ★塔脚接地抵抗の低減 | ★(3) |
| ★第3 | ★電位差を減らす | ★架空地線の多条化 | ★(2) |
| ★第4 | ★放電させない | ★送電用避雷装置 | ★(4) |
| ★第5 | ★両回線を失わない | ★不平衡絶縁方式 | ★(1) |
雷が入ってくる順に、5段階の備えがあります——選択肢がそれぞれ1つずつ対応しています。
前の段階で止められなければ、次の段階が働く——重ねて備える考え方です。
それでも事故になったときの最後の砦が不平衡絶縁——1回線だけは残すのです。
⚠️ よくある間違い
(3)の「塔脚の接地抵抗を低減させる」を見て正しいと判断する——対策としては正しいのです。誤りは「電力線への雷撃に伴う」という条件。
逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きます——電力線への直撃なら通常のフラッシオーバ。
(1)の不平衡絶縁方式を疑ってしまう——実在する方式です。
(2)の「結合率が増加」を疑ってしまう——電位差が減るので有効。
(5)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
対策は正しくても前提が違う型——「〜に伴う」「〜のとき」を読むことです。
⏱️ 本番での進め方
①★逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きる。
②★塔脚接地抵抗の低減は鉄塔の電位を抑えるための対策。
③★V=I×R なので下げられるのは R だけ。
④★雷害対策は5段階で重ねて備える。
💡 覚え方
「鉄塔に落ちるから逆になる」——電力線に落ちれば逆にはなりません。対策の正しさではなく、前提の条件を確かめる——それがこの型への備えです。
★この問題は平成26年度 A問題8と完全に同一です(架空送電:雷害対策(H26))。選択肢の並びが逆順になっただけで、11年を隔てての再出題です。
送電線に落ちる雷の大きさ
そもそも雷とは、どれくらいの電流でしょうか。
| 項目 | 値の目安 | 備考 |
| ★雷電流の波高値 | ★★数十 kA(最大200 kA 級) | ★中央値は30 kA 程度 |
| ★立ち上がり時間 | ★★1〜2 マイクロ秒 | ★きわめて急峻 |
| ★継続時間 | ★数十 マイクロ秒 | ★一瞬で終わる |
電流は大きいのですが、時間はごくわずかです——だからエネルギーとしては限られます。
けれども立ち上がりが急峻なので、電圧は跳ね上がります——V=L di/dt が効くのです。
鉄塔自体にもインダクタンスがあります——接地抵抗だけでなく、これも電位を上げる。
だから背の高い鉄塔ほど逆フラッシオーバしやすい——設計で考慮される点です。
(1) 二回線にまたがる事故を避ける
同じ鉄塔に2回線が架かっているからこその工夫です。
| 両回線とも同じ絶縁 | 片方を弱くする | |
| ★鉄塔に落雷 | ★★両回線とも放電しうる | ★★弱いほうだけが放電する |
| ★結果 | ★★2回線とも停止 | ★★1回線は健全に残る |
| ★供給 | ★★止まる | ★★続けられる |
2回線にしているのは、片方が止まっても送るため——同時に失えば意味がありません。
絶縁を同じにすると、同時に放電する恐れがあります——同じ条件だから当然です。
だからわざと差をつけます——がいしの個数を1〜2個変えるのが実際の方法。
壊れる場所を選んでおくという点で、絶縁協調と同じ発想。
(4) 放電させずに済ませる装置
変電所の避雷器を、送電線に付けたものです。
| アークホーンだけ | 送電用避雷装置あり | |
| ★雷が来たとき | ★★ホーン間で放電する | ★★制限電圧で頭打ちになる |
| ★事故 | ★★地絡として検出される | ★★起きない |
| ★停電 | ★★瞬時停電が生じる | ★★生じない |
アークホーンは「放電させて守る」もの——放電そのものは起きます。
避雷装置は「放電させない」もの——目的が一段進んでいるのです。
酸化亜鉛素子が、一定電圧を超えると導通します——そこで電圧が頭打ちになるから。
瞬時停電も避けたい線路に取り付けます——半導体工場などへの影響を減らすため。
高価なので、雷の多い区間に選んで設置します。
(2) 結合率が高いと守れる理由
架空地線を増やすと、なぜ逆フラッシオーバが減るのでしょうか。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★鉄塔に落雷し、架空地線に電流が流れる |
| ★② | ★★その電流が電力線にも電圧を誘導する |
| ★③ | ★★電力線の電位も一緒に持ち上がる |
| ★④ | ★★鉄塔と電力線の電位差が小さくなる |
放電するかどうかは、電位の差で決まります——鉄塔だけが上がると差が開くのです。
電力線も一緒に持ち上げれば、差は小さくなります——それが結合率が高いことの意味。
架空地線が2条あれば、誘導が強くなります——だから多条化が効くのです。
遮へいとは別の働きで守っています——1本の電線が2つの役目を果たすことになります。
まとめ
| 誤り | (3) 逆FOは電力線への雷撃ではなく鉄塔・架空地線への雷撃で発生 |
| 逆フラッシオーバ | 鉄塔電位上昇→鉄塔から電線へ逆放電 |
| 接地抵抗低減 | 鉄塔雷撃時の電位上昇を抑制→逆FO抑制 |
| 多条化 | 結合率増→アークホーン間電圧抑制(2) |
| 不平衡絶縁 | 二回線に絶縁格差→またがり事故防止(1) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・振動と雷対策の設備(架空送電1):【電力】令和7年度下期 A問題8
・避雷器と絶縁協調(変電29):【電力】平成27年度 A問題7

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