架空送電27【電験3種 電力】逆フラッシオーバの起点は鉄塔側!雷害対策の再出題元 平成26年度 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成26年度 A問題8 逆フラッシオーバは鉄塔から!雷害対策の原点

今回は平成26年度 電力科目 A問題8、架空送電線路の雷害対策の誤り選択問題です。この問題は令和7年度下期A問題9(架空送電2)として選択肢の並びを変えて再出題されました(H26は(5)・R07下は(3)が誤り)。

誤りの作りは毎回同じ:逆フラッシオーバの起点のすり替え。逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で鉄塔電位が上昇し、鉄塔側から電力線へ放電する現象。「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」は起点が逆です。

目次

誤りは(5):逆フラッシオーバは鉄塔への雷撃で起きる

「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」——雷が落ちる場所が違います

雷撃の場所起きる現象電位の高い側
★鉄塔・架空地線★★逆フラッシオーバ★★鉄塔側
★電力線(直撃雷)★★通常のフラッシオーバ★★電力線側

ふつうは電力線のほうが高電位です——そこから鉄塔へ放電するのが通常のフラッシオーバ

鉄塔に落雷すると、鉄塔の電位が跳ね上がります——すると向きが逆になるのです。

だから「逆」フラッシオーバ——鉄塔から電力線へ放電することになります。

電力線に直撃した場合は、電力線が高電位のまま——逆にはなりません

塔脚接地抵抗の低減が効くのは、鉄塔の電位上昇を抑えるから——電力線への直撃には効きません

平成26年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成26年度 A問題8 問題文
平成26年度 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成26年度 A問題8

 架空送電線路の雷害対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 直撃雷から架空送電線を遮へいする効果を大きくするためには、架空地線の遮へい角を小さくする。

(2) 送電用避雷装置は雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できるので、雷による事故を抑制できる。

(3) 架空地線を多条化することで、架空地線と電力線間の結合率が増加し、鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので、逆フラッシオーバの発生が抑制できる。

(4) 二回線送電線路で、両回線の絶縁に格差を設け、二回線にまたがる事故を抑制する方法を不平衡絶縁方式という。

(5) 鉄塔塔脚の接地抵抗を低減させることで、電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバの発生を抑制できる。

答え誤っている記述は (5)です。

(3) 架空地線の多条化と結合率

架空地線を増やすと、電力線との結合が強まります

段階起きること
★鉄塔に落雷し、架空地線に電流が流れる
★②★その電流が電力線に電圧を誘導する
★③★電力線の電位も一緒に上がる
★④★鉄塔と電力線の電位差が小さくなる
★⑤★逆フラッシオーバが起きにくくなる

電力線を一緒に持ち上げれば、電位差が減ります——それが結合率が高いことの意味です。

架空地線が2条あれば、結合率が高くなります——誘導が強くなるからです。

だから多条化は逆フラッシオーバ対策になる——遮へい効果とは別の働きになります。

1本の架空地線が、遮へいと結合の2つの役目を果たしている——それが多条化の価値です。

(4) 不平衡絶縁方式

2回線のうち、片方の絶縁をわざと弱くします

★平衡絶縁(両方同じ)★不平衡絶縁
★逆フラッシオーバ★★両回線で同時に起きうる★★弱いほうだけで起きる
★結果★★2回線とも停止する恐れ★★1回線は健全に残る

両方の絶縁が同じなら、同時にフラッシオーバする恐れがあります——2回線とも失えば供給が止まるのです。

片方を弱くしておけば、そちらが先に放電します——もう片方は健全に残ることになります。

絶縁協調と同じ発想——壊れる場所をこちらで決めておくのです。

2回線が同じ鉄塔に架かっているからこその工夫——両方失うのを避けるためになります。

⚠️ よくある間違い
(5)の「塔脚の接地抵抗を低減させる」を見て正しいと判断する——対策としては正しいのです。
誤りは「電力線への雷撃に伴う」という条件——逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きる
(1)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
(3)の「結合率が増加」を疑ってしまう——電位差が減るので有効です。
(4)の不平衡絶縁方式を疑ってしまう——実在する方式になります。
対策は正しくても、前提の条件が違う——そこを見抜くのが本問です。

⏱️ 本番での進め方
①★逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きる。
②★電力線への直撃なら通常のフラッシオーバ。
③★架空地線の多条化は結合率を高めて電位差を減らす。
④★不平衡絶縁は2回線同時事故を避ける工夫。

💡 覚え方
「鉄塔に落ちるから逆になる」——電力線に落ちれば逆にはなりません塔脚接地抵抗が効くのは鉄塔の電位を抑えるから——直撃には効かないのです。

架空地線と遮へい角は令和5年度下期 A問題9架空送電:架空地線)にあります。

(1) 遮へい角と遮へい失敗

架空地線が守れる範囲には角度があります

遮へい角遮へい失敗率採用
★45°★大きい★低い電圧階級
★30°★中程度★一般的
★0°以下★★ほぼゼロ★★超高圧・重要線路

遮へい角とは、架空地線から電力線を見込む角度——鉛直線からの傾きです。

角度が小さいほど、電力線が架空地線の真下に来ます——雷が電力線に直撃しにくくなるのです。

0°以下にするには、架空地線を外側に張り出します——鉄塔の腕金が長くなり費用が増えます

それでも重要な線路では採用されます——遮へい失敗が許されないから。

だから(1)の「小さくする」は正しい——直感と一致します

(2) 送電用避雷装置とは

変電所の避雷器を、送電線に付けたものです

★避雷装置なし★避雷装置あり
★雷が来たとき★がいし連の電圧が上がり続ける★★制限電圧で頭打ちになる
★結果★★フラッシオーバする★★放電せずに済む
★停電★★する★★しない

酸化亜鉛素子が、一定電圧を超えると導通します——そこで電圧が頭打ちになるのです。

アークホーン間の電圧が制限されれば、放電しません——だから事故そのものを防げることになります。

アークホーンは「放電させて機器を守る」もの——避雷装置は「放電させない」ものです。

目的が一段進んでいます——停電を減らしたい線路に取り付けます

すべての鉄塔に付けると高価なので、雷の多い区間に選んで設置します

(5) 塔脚接地抵抗と鉄塔の電位

誤りとされた記述の、対策そのものは正しいものです

鉄塔の電位上昇
\( V=I_{雷}\times R_{塔脚} \)

接地抵抗が高いほど電位が上がる

雷電流接地抵抗10 Ω接地抵抗30 Ω
★30 kA★300 kV★★900 kV
★50 kA★500 kV★★1,500 kV

接地抵抗が3倍なら、電位も3倍になります——オームの法則そのものです。

その電位ががいしの耐電圧を超えれば、逆フラッシオーバ——だから接地抵抗を下げます

山地では岩盤で接地抵抗が高くなりがち——だから埋設地線を長く伸ばします

けれども、これが効くのは鉄塔に落雷したとき——電力線への直撃には無関係です。

問題文はそこを入れ替えました——対策は正しく、条件が誤りという型です。

雷害対策の全体像

本問の5つの選択肢を、対策の系統に位置づけましょう

ねらい対策本問の選択肢
★直撃させない★架空地線・遮へい角を小さく★(1)
★鉄塔の電位を上げない★塔脚接地抵抗の低減・埋設地線★(5)
★電位差を減らす★架空地線の多条化(結合率)★(3)
★放電させない★送電用避雷装置★(2)
★両回線を失わない★不平衡絶縁方式★(4)

5つの選択肢が、5つの異なるねらいに対応しています——よく組まれた問題です。

上から順に、雷が入ってくる経路をたどっています——落とさない→上げない→差を減らす→放電させない

それでも事故になったときの備えが不平衡絶縁——最後の砦になります。

この階層で覚えれば、どの対策も位置づけられます

まとめ

誤り(5) 逆FOは電力線でなく鉄塔・架空地線への雷撃で発生
遮へい角小さいほど直撃雷防止効果大(1)
多条化結合率増→アークホーン間電圧抑制(3)
不平衡絶縁二回線に絶縁格差→またがり事故防止(4)
再出題R07下問9(架空送電2)と同一内容・番号違い
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電2):【電力】令和7年度下期 A問題9
・架空地線と遮へい角(架空送電10):【電力】令和5年度下期 A問題9

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