今回は平成26年度 電力科目 A問題8、架空送電線路の雷害対策の誤り選択問題です。この問題は令和7年度下期A問題9(架空送電2)として選択肢の並びを変えて再出題されました(H26は(5)・R07下は(3)が誤り)。
誤りの作りは毎回同じ:逆フラッシオーバの起点のすり替え。逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で鉄塔電位が上昇し、鉄塔側から電力線へ放電する現象。「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」は起点が逆です。
誤りは(5):逆フラッシオーバは鉄塔への雷撃で起きる
「電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバ」——雷が落ちる場所が違います。
| 雷撃の場所 | 起きる現象 | 電位の高い側 |
| ★鉄塔・架空地線 | ★★逆フラッシオーバ | ★★鉄塔側 |
| ★電力線(直撃雷) | ★★通常のフラッシオーバ | ★★電力線側 |
ふつうは電力線のほうが高電位です——そこから鉄塔へ放電するのが通常のフラッシオーバ。
鉄塔に落雷すると、鉄塔の電位が跳ね上がります——すると向きが逆になるのです。
だから「逆」フラッシオーバ——鉄塔から電力線へ放電することになります。
電力線に直撃した場合は、電力線が高電位のまま——逆にはなりません。
塔脚接地抵抗の低減が効くのは、鉄塔の電位上昇を抑えるから——電力線への直撃には効きません。
平成26年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成26年度 A問題8
架空送電線路の雷害対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 直撃雷から架空送電線を遮へいする効果を大きくするためには、架空地線の遮へい角を小さくする。
(2) 送電用避雷装置は雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できるので、雷による事故を抑制できる。
(3) 架空地線を多条化することで、架空地線と電力線間の結合率が増加し、鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので、逆フラッシオーバの発生が抑制できる。
(4) 二回線送電線路で、両回線の絶縁に格差を設け、二回線にまたがる事故を抑制する方法を不平衡絶縁方式という。
(5) 鉄塔塔脚の接地抵抗を低減させることで、電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバの発生を抑制できる。

(3) 架空地線の多条化と結合率
架空地線を増やすと、電力線との結合が強まります。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★鉄塔に落雷し、架空地線に電流が流れる |
| ★② | ★その電流が電力線に電圧を誘導する |
| ★③ | ★電力線の電位も一緒に上がる |
| ★④ | ★鉄塔と電力線の電位差が小さくなる |
| ★⑤ | ★逆フラッシオーバが起きにくくなる |
電力線を一緒に持ち上げれば、電位差が減ります——それが結合率が高いことの意味です。
架空地線が2条あれば、結合率が高くなります——誘導が強くなるからです。
だから多条化は逆フラッシオーバ対策になる——遮へい効果とは別の働きになります。
1本の架空地線が、遮へいと結合の2つの役目を果たしている——それが多条化の価値です。
(4) 不平衡絶縁方式
2回線のうち、片方の絶縁をわざと弱くします。
| ★平衡絶縁(両方同じ) | ★不平衡絶縁 | |
| ★逆フラッシオーバ | ★★両回線で同時に起きうる | ★★弱いほうだけで起きる |
| ★結果 | ★★2回線とも停止する恐れ | ★★1回線は健全に残る |
両方の絶縁が同じなら、同時にフラッシオーバする恐れがあります——2回線とも失えば供給が止まるのです。
片方を弱くしておけば、そちらが先に放電します——もう片方は健全に残ることになります。
絶縁協調と同じ発想——壊れる場所をこちらで決めておくのです。
2回線が同じ鉄塔に架かっているからこその工夫——両方失うのを避けるためになります。
⚠️ よくある間違い
(5)の「塔脚の接地抵抗を低減させる」を見て正しいと判断する——対策としては正しいのです。
誤りは「電力線への雷撃に伴う」という条件——逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きる。
(1)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
(3)の「結合率が増加」を疑ってしまう——電位差が減るので有効です。
(4)の不平衡絶縁方式を疑ってしまう——実在する方式になります。
対策は正しくても、前提の条件が違う——そこを見抜くのが本問です。
⏱️ 本番での進め方
①★逆フラッシオーバは鉄塔・架空地線への雷撃で起きる。
②★電力線への直撃なら通常のフラッシオーバ。
③★架空地線の多条化は結合率を高めて電位差を減らす。
④★不平衡絶縁は2回線同時事故を避ける工夫。
💡 覚え方
「鉄塔に落ちるから逆になる」——電力線に落ちれば逆にはなりません。塔脚接地抵抗が効くのは鉄塔の電位を抑えるから——直撃には効かないのです。
架空地線と遮へい角は令和5年度下期 A問題9(架空送電:架空地線)にあります。
(1) 遮へい角と遮へい失敗
架空地線が守れる範囲には角度があります。
| 遮へい角 | 遮へい失敗率 | 採用 |
| ★45° | ★大きい | ★低い電圧階級 |
| ★30° | ★中程度 | ★一般的 |
| ★0°以下 | ★★ほぼゼロ | ★★超高圧・重要線路 |
遮へい角とは、架空地線から電力線を見込む角度——鉛直線からの傾きです。
角度が小さいほど、電力線が架空地線の真下に来ます——雷が電力線に直撃しにくくなるのです。
0°以下にするには、架空地線を外側に張り出します——鉄塔の腕金が長くなり費用が増えます。
それでも重要な線路では採用されます——遮へい失敗が許されないから。
だから(1)の「小さくする」は正しい——直感と一致します。
(2) 送電用避雷装置とは
変電所の避雷器を、送電線に付けたものです。
| ★避雷装置なし | ★避雷装置あり | |
| ★雷が来たとき | ★がいし連の電圧が上がり続ける | ★★制限電圧で頭打ちになる |
| ★結果 | ★★フラッシオーバする | ★★放電せずに済む |
| ★停電 | ★★する | ★★しない |
酸化亜鉛素子が、一定電圧を超えると導通します——そこで電圧が頭打ちになるのです。
アークホーン間の電圧が制限されれば、放電しません——だから事故そのものを防げることになります。
アークホーンは「放電させて機器を守る」もの——避雷装置は「放電させない」ものです。
目的が一段進んでいます——停電を減らしたい線路に取り付けます。
すべての鉄塔に付けると高価なので、雷の多い区間に選んで設置します。
(5) 塔脚接地抵抗と鉄塔の電位
誤りとされた記述の、対策そのものは正しいものです。
| 雷電流 | 接地抵抗10 Ω | 接地抵抗30 Ω |
| ★30 kA | ★300 kV | ★★900 kV |
| ★50 kA | ★500 kV | ★★1,500 kV |
接地抵抗が3倍なら、電位も3倍になります——オームの法則そのものです。
その電位ががいしの耐電圧を超えれば、逆フラッシオーバ——だから接地抵抗を下げます。
山地では岩盤で接地抵抗が高くなりがち——だから埋設地線を長く伸ばします。
けれども、これが効くのは鉄塔に落雷したとき——電力線への直撃には無関係です。
問題文はそこを入れ替えました——対策は正しく、条件が誤りという型です。
雷害対策の全体像
本問の5つの選択肢を、対策の系統に位置づけましょう。
| ねらい | 対策 | 本問の選択肢 |
| ★直撃させない | ★架空地線・遮へい角を小さく | ★(1) |
| ★鉄塔の電位を上げない | ★塔脚接地抵抗の低減・埋設地線 | ★(5) |
| ★電位差を減らす | ★架空地線の多条化(結合率) | ★(3) |
| ★放電させない | ★送電用避雷装置 | ★(2) |
| ★両回線を失わない | ★不平衡絶縁方式 | ★(4) |
5つの選択肢が、5つの異なるねらいに対応しています——よく組まれた問題です。
上から順に、雷が入ってくる経路をたどっています——落とさない→上げない→差を減らす→放電させない。
それでも事故になったときの備えが不平衡絶縁——最後の砦になります。
この階層で覚えれば、どの対策も位置づけられます。
まとめ
| 誤り | (5) 逆FOは電力線でなく鉄塔・架空地線への雷撃で発生 |
| 遮へい角 | 小さいほど直撃雷防止効果大(1) |
| 多条化 | 結合率増→アークホーン間電圧抑制(3) |
| 不平衡絶縁 | 二回線に絶縁格差→またがり事故防止(4) |
| 再出題 | R07下問9(架空送電2)と同一内容・番号違い |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電2):【電力】令和7年度下期 A問題9
・架空地線と遮へい角(架空送電10):【電力】令和5年度下期 A問題9

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