今回は平成26年度 電力科目 A問題9、コロナ放電とその障害の誤り選択問題です。コロナの発生条件(表面電界)、コロナ損、腐食、誘導障害・受信障害と、コロナの害が一通り並び、その中に単導体と多導体を入れ替えた誤りが仕込まれています。
架空送電11・19・21で固めたとおり、多導体は実効的な直径を大きくして表面電界を緩和し、コロナ開始電圧を高くする=コロナを抑制する方式。「単導体の方が抑制できる」は真逆です。
誤りは(3):単導体のほうが起きやすい
「単導体方式は、多導体方式に比べてコロナ放電の発生を抑制できる」——逆です。
| ★単導体 | ★多導体 | |
| ★等価半径 | ★小さい | ★★大きい |
| ★表面の電界 | ★★強い | ★弱い |
| ★コロナ開始電圧 | ★低い | ★★高い |
| ★コロナの発生 | ★★しやすい | ★しにくい |
多導体は等価半径を大きくするための工夫です——コロナ対策そのものが目的の1つ。
だから多導体のほうが抑制できる——問題文は主語と述語が入れ替わっています。
超高圧送電線が多導体を使うのは、この理由——単導体では電界が強すぎるのです。
「単導体」と「多導体」を入れ替えれば正しい記述になる——そこが本問の作りです。
平成26年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成26年度 A問題9
架空送電線路におけるコロナ放電及びそれに関わる障害に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電線表面電界がある値を超えると、コロナ放電が発生する。
(2) コロナ放電が発生すると、電線や取り付け金具で腐食が生じることがある。
(3) 単導体方式は、多導体方式に比べてコロナ放電の発生を抑制できる。
(4) コロナ放電が発生すると、電気エネルギーの一部が音、光、熱などに変換され、コロナ損という電力損失が生じる。
(5) コロナ放電が発生すると、架空送電線近傍で誘導障害や受信障害が生じることがある。

(1)(4)(5) コロナの発生と影響
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | 電線表面電界がある値を超えると発生 | ★約30 kV/cm |
| (4) | 音・光・熱に変換されコロナ損が生じる | ★エネルギーの損失 |
| (5) | 誘導障害や受信障害が生じる | ★高周波ノイズによる |
放電のエネルギーは、音・光・熱・電波に変わります——そのすべてが損失であり障害です。
夜間に送電線が青白く光って見えることがあります——それがコロナの光になります。
ジージーという可聴雑音も同時に生じます——近隣への騒音として苦情になるのです。
高周波ノイズがラジオやテレビに雑音を入れます——それが受信障害です。
(2) 腐食が生じる理由
放電で空気が分解され、腐食性の物質ができます。
★強い酸化力
★水と反応して硝酸に
オゾンは強い酸化力を持ち、金属を侵します——ゴムや樹脂も劣化させます。
窒素酸化物は水分と反応して硝酸になります——それが金具を腐食させるのです。
だから長期的には設備の寿命を縮めます——電力損失だけの問題ではないことになります。
| 年度 | 形式 | 問われた中心 |
| ★平成26年度 A9 | ★誤りを選ぶ | ★単導体と多導体の比較 |
| ★平成30年度 A9 | ★空欄補充 | ★多導体の電気的効果 |
| ★令和元年度 A10 | ★空欄補充 | ★コロナ対策と気圧 |
コロナは3つの年度で問われています——架空送電の頻出テーマです。
⚠️ よくある間違い
(3)を「単導体のほうが太いから」と思って正しいと判断する——合計断面積が同じなら、多導体のほうが等価半径は大きいのです。
1本の太さではなく、配置全体の広がりで決まります——離して並べると太い電線のように振る舞う。
(2)の腐食を疑ってしまう——オゾンと硝酸によって実際に起きます。
(4)の「音、光、熱」を疑ってしまう——放電のエネルギーはこれらに変わります。
(5)の「誘導障害や受信障害」を疑ってしまう——高周波ノイズによる実際の障害です。
比較の記述を疑う——本問では(3)だけになります。
⏱️ 本番での進め方
①★多導体のほうがコロナを抑制できる。単導体ではない。
②★等価半径が大きいほど表面の電界が弱まる。
③★コロナ損・可聴雑音・電波障害・腐食が生じる。
④オゾンと硝酸が金具を腐食させる。
💡 覚え方
「多いほうが太く見える」——だから多導体のほうがコロナに強いのです。単導体と多導体を入れ替えた記述——それが本問の誤りになります。
多導体の電気的効果は平成30年度 A問題9(架空送電:多導体方式)、コロナ対策は令和元年度 A問題10(架空送電:コロナ損)にあります。
等価半径という考え方
(3)を判断する鍵は、多導体の等価半径にあります。
素導体を離すほど、等価半径は大きくなります。
★素導体の6倍以上
| 単導体 | ★2導体 | |
| ★合計断面積 | ★同じ | ★同じ |
| ★1本の半径 | ★1.4 cm | ★1 cm |
| ★等価半径 | ★1.4 cm | ★★6.3 cm |
同じ断面積でも、等価半径は4倍以上になります——離して配置しているからです。
だから表面の電界が大きく下がる——コロナが起きにくくなるのです。
「1本が細いから電界が強い」と考えると誤ります——配置全体の広がりで決まるのです。
要点をもう一度
誤りは(3)の主語と述語の入れ替えだけです。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 電界がある値を超えると発生 | 正 |
| (2) | 腐食が生じる | 正 |
| ★(3) | ★単導体のほうが抑制できる | ★誤(多導体が正しい) |
| (4) | 音・光・熱に変換されコロナ損 | 正 |
| (5) | 誘導障害や受信障害 | 正 |
「単導体」と「多導体」を入れ替えれば正しくなります——比較の記述を疑うのが定石です。
コロナが起きる電圧の目安
| 電圧階級 | コロナ | 採用する電線 |
| ★6.6 kV | ★起きない | ★細い単導体で足りる |
| ★66〜154 kV | ★条件次第 | ★太めの単導体 |
| ★187 kV 以上 | ★★対策が必須 | ★★多導体 |
低い電圧ではコロナは問題になりません——電界が弱いからです。
超高圧では多導体が必須——単導体では実現できないほど太くなるのです。
コロナ損の実際の大きさ
(4)のコロナ損を、数字で見ておきましょう。
| 条件 | コロナ損 | 抵抗損との比較 |
| ★晴天時 | ★0.1 kW/km 以下 | ★無視できる |
| ★雨天時 | ★数 kW/km | ★抵抗損の1割程度 |
| ★着雪時 | ★さらに増える | ★— |
晴れていればほとんど生じません——臨界電圧を下回っているからです。
雨天でも抵抗損に比べれば小さい——送電効率への影響は限られます。
それでも対策するのは、雑音と電波障害があるから——近隣への影響が問題になります。
可聴雑音は50 dB を超えることもある——住宅地では許容できません。
だから電力損失より、環境面の理由が大きい——それがコロナ対策の実情です。
コロナ放電が見える条件
(4)の「光」について、実際の様子を見ましょう。
| 条件 | 見え方 |
| ★昼間 | ★見えない |
| ★夜間・晴天 | ★ほとんど見えない |
| ★夜間・雨天 | ★★青白い光が電線の周りに見える |
放電の光は弱いので、暗くないと見えません。
青白いのは、窒素分子が励起されて出す光——オーロラと同じ原理です。
雨の日は水滴が突起になるので、放電が増えます——だから見えやすくなるのです。
光として出るエネルギーはごくわずか——大部分は熱と音になります。
それでもエネルギーが失われていることに変わりはない——それがコロナ損です。
まとめ
| 誤り | (3) コロナを抑制できるのは多導体方式 |
| 発生条件 | 表面電界>約30kV/cm(波高値)(1) |
| コロナ損 | 音・光・熱への変換損失(4) |
| その他の害 | 誘導障害・受信障害(5)・腐食(2) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・多導体の三拍子(架空送電21):【電力】平成30年度 A問題9
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