架空送電29【電験3種 電力】棒状絶縁物=長幹がいし!懸垂がいしの説明とすり替え 平成25年度 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成25年度 A問題8 棒状のがいしは長幹がいし!懸垂とすり替える罠

今回は平成25年度 電力科目 A問題8、架空送電線路の構成要素の誤り選択問題です。ACSR・アーマロッド・ダンパ・スペーサに加え、今回の主役はがいしの形の違い——懸垂がいしと長幹がいしの説明のすり替えです。

がいしの形を整理:懸垂がいし=笠状(皿形)の磁器の上下に金具を付け、複数個を鎖状に連結して使う最も一般的ながいし。長幹がいし=棒状の磁器の両端に連結用金具を付けた形(雨洗効果が高い——架空送電15)。「棒状の絶縁物の両側に連結用金具」と書いてあったら、それは長幹がいしです。

目次

平成25年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成25年度 A問題8 問題文
平成25年度 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成25年度 A問題8

 架空送電線路の構成要素に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鋼心アルミより線(ACSR):中心に亜鉛メッキ鋼より線を配置し、その周囲に硬アルミ線を同心円状により合わせた電線。

(2) アーマロッド:クランプ部における電線の振動疲労防止対策及び溶断防止対策として用いられる装置。

(3) ダンパ:微風振動に起因する電線の疲労、損傷を防止する目的で設置される装置。

(4) スペーサ:多導体方式において、負荷電流による電磁吸引力や強風などによる電線相互の接近・衝突を防止するために用いられる装置。

(5) 懸垂がいし:電圧階級に応じて複数個を連結して使用するもので、棒状の絶縁物の両側に連結用金具を接着した装置。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):棒状なのは長幹がいし

「懸垂がいし:棒状の絶縁物の両側に連結用金具を接着した装置」——それは長幹がいしの説明です。

種類連結特徴
★懸垂がいし★★円盤(皿)状★★電圧に応じて個数を変える★最も広く使われる
★長幹がいし★★棒状の絶縁物の両端に金具★1本で完結(継ぎ足しも可)★★塩害地域に強い

懸垂がいしは、円盤(皿)状のものを鎖のようにつなぎます——だから「連結して使用する」の部分は正しい

誤りは「棒状の絶縁物」という形の説明——そこだけが入れ替わっています

長幹がいしは1本の長い棒で、継ぎ目がありません——だから汚れがたまりにくいのです。

2つのがいしを混ぜた出題——形を思い浮かべられれば見抜けます

懸垂がいしの構造

部分材料役目
★笠(かさ)★磁器またはガラス★★絶縁と沿面距離の確保
★キャップ★鋳鉄★上のがいしとつなぐ
★ピン★鋼★下のがいしとつなぐ
★セメント★セメント★磁器と金具を接着する

笠が波打っているのは、沿面距離を稼ぐため——直線距離より長い経路を作るのです。

キャップとピンで、上下のがいしがつながります——だから何個でも連結できることになります。

標準は直径250 mm、1個あたりの高さ146 mm——これを電圧に応じて並べます

66 kV で4〜5個、275 kV で16〜18個ほど——電圧に比例して増えます

(4) スペーサが必要な理由

多導体では、電線どうしが引き合います

平行電流間に働く力
\( F=\dfrac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d}\,[\mathrm{N/m}] \)

同じ向きの電流は引き合う

多導体の各素線には、同じ向きの電流が流れます——だから引き合うのです。

電流が大きいほど、また間隔が狭いほど強く引き合います——短絡時にはとりわけ大きい

スペーサがなければ、素線どうしがぶつかります——傷がつけばそこからコロナが始まるのです。

強風でも同じことが起きます——だから(4)は電磁力と強風の両方を挙げている

スペーサはサブスパン振動の抑制にも効きます——取付間隔を不等にして共振を避けます

⚠️ よくある間違い
(5)の「電圧階級に応じて複数個を連結」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「棒状の絶縁物」という形
棒状は長幹がいし、円盤状が懸垂がいし——形で区別します
(1)のACSRを疑ってしまう——亜鉛メッキ鋼より線の周りに硬アルミ線で正確
(2)のアーマロッドを疑ってしまう——振動疲労と溶断の両方を防ぎます
(3)のダンパを疑ってしまう——微風振動に対する装置です。
1つの選択肢の中で、名前と説明が入れ替わる型——名前を隠して読むと見抜けます

⏱️ 本番での進め方
①★懸垂がいしは円盤状、長幹がいしは棒状。
②★名前と説明が入れ替わる型の出題。
③★スペーサは電磁吸引力と強風から素線を守る。
④アーマロッドは振動疲労と溶断の両方を防ぐ。

💡 覚え方
「懸垂は皿、長幹は棒」——形で覚えます名前を隠して説明だけ読み、どの部品か当てられるか確かめる——それがこの型への備えです。

がいしの種類と使い分けは平成18年度 A問題7架空送電:がいしの性能)にあります。

(2) アーマロッドの2つの役目

問題文が2つの目的を並べているのはなぜでしょうか

目的守る相手しくみ
★振動疲労防止★クランプ付近の電線★★断面を太くして曲げを分散する
★溶断防止★アークが当たる電線★★ロッドが身代わりに溶ける

クランプは電線を強く握るので、そこが振動の節になります——曲げの応力が集中するのです。

ロッドを巻けば、実質的に太くなって曲がりにくくなります——これが振動疲労の防止

雷でアークが電線に当たると、局部的に溶けます——細い素線なら切れてしまうのです。

ロッドがあれば、そちらが先に溶けます——これが溶断の防止になります。

1つの部品が2つの働きを持つ——だから問題文が両方を挙げているのです。

(3) ダンパが働くしくみ

おもりが揺れることで、振動が収まります

段階起きること
★電線が微風振動で上下に揺れる
★②★ダンパのおもりも揺れるが、位相がずれる
★③★★ずれた分だけ鋼より線がねじれ、摩擦が生じる
★④★★振動エネルギーが熱に変わって消える

おもりを支える鋼より線が、ばねと減衰の両方を担います——素線どうしがこすれて熱になるのです。

ストックブリッジダンパが代表的な形——短い鋼より線の両端におもりを付けたもの

左右のおもりの重さを変えると、効く周波数が広がります——風速が変われば振動数も変わるから。

取り付ける位置も、振動の腹に来るよう計算されます——節に付けても効きません

(1) ACSR という名前の読み方

英語の頭文字が、そのまま構造を表しています

文字元の語意味
★A★Aluminum★アルミ
★C★Conductor★導体
★S★Steel★鋼
★R★Reinforced★★補強された

「鋼で補強されたアルミ導体」という意味——日本語の「鋼心アルミより線」と同じです。

アルミが電流を、鋼が張力を担います——役割分担がはっきりしているのです。

硬アルミ線を使うのは、強度を少しでも稼ぐため——軟アルミでは柔らかすぎます

亜鉛メッキは鋼のさび止め——数十年屋外に架かるからです。

問題文の(1)は、この構造を正確に述べています

多導体で電線どうしが引き合う力

(4)の電磁吸引力を、数字で見てみましょう

条件電流働く力
★平常時★1,000 A ずつ★わずか
★★短絡時★★30,000 A ずつ★★平常時の900倍

力は電流の積に比例するので、2乗で効きます——30倍の電流なら900倍の力です。

だから短絡した瞬間に、素線どうしが激しくぶつかります——それを防ぐのがスペーサ

ぶつかれば傷がつき、そこからコロナが始まります——あとあとまで影響が残るのです。

だからスペーサは短絡時の力に耐えるよう設計されます——平常時だけを考えては足りません

多導体を採用する理由

(4)のスペーサが要るのは、多導体だからです

ねらい効果
★コロナの抑制★★等価半径が大きくなり電界が弱まる
★送電容量の増加★★リアクタンスが減り、許容電流も増える
★安定度の向上★X が小さくなるので相差角に余裕ができる

1本を太くするより、細い電線を離すほうが効率的——材料が少なくて済むのです。

リアクタンスが減るのは、電流の通り道が広がるから——磁束が打ち消し合うのです。

だから送電容量も安定度も同時に良くなります——超高圧では標準的な方法

その代わりスペーサが必要になり、風圧も増えます——鉄塔の設計に影響することになります。

まとめ

誤り(5) 棒状+両端金具は長幹がいしの説明
懸垂がいし笠状磁器を鎖状に連結(個数で絶縁調整)
長幹がいし棒状・両端に金具・雨洗効果大
ACSR中心=亜鉛メッキ鋼・周囲=硬アルミ(1)
スペーサ電磁吸引力・強風による衝突防止(4)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・長幹がいしと塩害(架空送電15):【電力】令和3年度 A問題10
・付属品の役割対応(架空送電9):【電力】令和5年度下期 A問題8

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