今回は平成18年度 電力科目 A問題7、送配電線路に使用するがいしの性能を表す要素として「特に関係のないもの」を選ぶ問題です。架空送電ユニットの締めくくりとして、がいしに求められる性能を整理しましょう。
がいしの性能4要素:①フラッシオーバ電圧(表面・気中の放電開始電圧=絶縁性能の代表値)②油中破壊電圧(絶縁油中で測る磁器自体の貫通破壊強度)③汚損特性(塩害への強さ)④機械的強度(電線の張力・風雪に耐える)。系統短絡電流は系統全体の特性で、がいし単体の性能とは無関係です。
特に関係のないのは(1):系統短絡電流
系統短絡電流は、系統の電源容量とインピーダンスで決まる量です——がいし1個の性能を表すものではありません。
| 項目 | 何の量か | 意味 |
| ★系統短絡電流 | ★★系統全体 | ★短絡したときに流れる電流の大きさ |
| ★フラッシオーバ電圧 | ★★がいし | ★表面を伝って放電する電圧 |
油中破壊電圧は、がいしの磁器体を絶縁油に浸して測る貫通破壊の強さ——れっきとした がいしの試験項目です。
短絡電流の大きさは系統の構成で決まります——だから「特に関係のない事項」です。
問われているのが「がいしの性能を表す要素」——そこを読み取れば選べます。
平成18年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成18年度 A問題7
送配電線路に使用するがいしの性能を表す要素として、特に関係のない事項は次のうちどれか。
(1)系統短絡電流 (2)フラッシオーバ電圧 (3)汚損特性 (4)油中破壊電圧 (5)機械的強度

がいしに求められる性能
| 性能 | 内容 | 試験 |
| ★フラッシオーバ電圧 | ★表面を伝って放電する電圧 | ★乾燥・注水の各状態で測る |
| ★汚損特性 | ★塩分や塵埃が付いたときの絶縁 | ★人工汚損試験 |
| ★機械的強度 | ★電線の重さと張力に耐える | ★引張荷重試験 |
| ★耐候性 | ★紫外線・温度変化に劣化しない | ★長期暴露試験 |
電気と機械の両方の性能が要ります——電線を支えながら絶縁するからです。
フラッシオーバ電圧は、乾燥時と注水時で測ります——雨のときのほうが低くなるから。
汚損特性は、塩害地域では特に重要——耐塩がいしの選定に使います。
機械的強度は、電線の張力に耐えられるかどうか——切れれば断線事故になります。
(1) 系統短絡電流との関係
これが答えです——がいし単体の性能ではなく、系統側の条件だからです。
| 直接の関係 | 間接の関係 | |
| ★系統短絡電流 | ★がいし自体の性能ではない | ★★アークホーンの設計に影響する |
短絡電流が大きいほど、アークのエネルギーも大きくなります——アークホーンの間隔や材質に影響するのです。
けれども「がいしの性能を表す要素」ではありません——系統側の条件です。
アークホーンの設計に間接的に効くことはあります——それでも「がいしの性能を表す要素」ではないので、(1)が答えです。
「特に関係のない」という問い方は、程度の比較——最も無関係なものを選びます。
⚠️ よくある間違い
(4)の油中破壊電圧を選んでしまう——「油=変圧器」と早合点した誤りです。がいしの磁器体を絶縁油に浸して貫通破壊の強さを測る、標準的な試験項目。
(2)のフラッシオーバ電圧を疑ってしまう——がいしの最も基本的な性能。
(3)の汚損特性を疑ってしまう——塩害対策に直結する重要な性能です。
(5)の機械的強度を疑ってしまう——電線を支えるので必須。
「がいし単体の性能か、系統側の条件か」——その線引きで即答できます。
⏱️ 本番での進め方
①★問われているのは「がいし単体の性能」かどうか。
②★系統短絡電流は系統側の条件——がいしの性能ではない。
③★がいしの性能はフラッシオーバ電圧・油中破壊電圧・汚損特性・機械的強度。
④電気と機械の両方の性能が求められる。
💡 覚え方
「がいしの性能は4つ——せん絡電圧・油中破壊電圧・汚損特性・機械的強度」。系統短絡電流だけが系統側の量——単体の性能か系統の条件かで切り分けます。
がいしの塩害と汚損特性は令和3年度 A問題10(架空送電:がいしの塩害)にあります。
がいしの種類と使い分け
用途によって形が違います。
| 種類 | 形 | 使う場所 |
| ★懸垂がいし | ★皿状のものを連結する | ★★送電線の吊り下げ |
| ★長幹がいし | ★1本の長い棒状 | ★★塩害地域 |
| ★ピンがいし | ★柱の上に立てる | ★配電線 |
| ★耐張がいし | ★張力を受ける形 | ★引留箇所 |
懸垂がいしは、個数を変えれば任意の電圧に対応できます——だから最も広く使われます。
長幹がいしは継ぎ目がないので、汚損に強い——雨で自然に洗われやすい形です。
耐張がいしは、電線の張力をすべて受け止めます——だから機械的強度がとりわけ重要になります。
用途が違えば求められる性能の重みも違う——けれども系統短絡電流は、どの用途でも がいしの性能ではありません。
(2) フラッシオーバ電圧の測り方
がいしの絶縁性能は、状態別に測ります。
| 試験 | 状態 | 特徴 |
| ★乾燥せん絡電圧 | ★乾いた状態 | ★★最も高い値 |
| ★注水せん絡電圧 | ★人工的に雨を降らせる | ★★2〜3割低くなる |
| ★汚損せん絡電圧 | ★塩分を付けて霧を当てる | ★★さらに低い |
| ★油中破壊電圧 | ★がいし本体を貫通させる | ★せん絡電圧より高く設計 |
雨に濡れると、表面に水の膜ができます——沿面距離が実質的に短くなるのです。
だから注水時のほうが低い値になります——設計はこちらを基準にします。
破壊電圧は、せん絡電圧より高くなるよう設計します——貫通するとがいしが割れて交換が必要だから。
表面で放電するなら、電気が消えれば元に戻ります——だから表面で先に放電させるのです。
(5) 機械的強度が問われる場面
がいしは電線の重さをすべて支えます。
| 荷重 | 内容 | 大きさの目安 |
| ★電線の自重 | ★径間の半分ずつを負担 | ★数百 kg〜 |
| ★風圧 | ★横向きに押される | ★台風時に最大 |
| ★着氷雪 | ★★電線の重さが数倍になる | ★豪雪地で厳しい |
| ★張力(耐張部) | ★★電線の張力そのもの | ★数トンに達する |
着氷雪では、電線の重さが何倍にもなります——氷が10 mm 付くだけで大きな荷重です。
だから設計は、最悪の気象条件を想定します——電気的な性能だけでは足りません。
懸垂がいしの標準は破壊荷重120 kN 級など——数字で管理されています。
電気と機械の両方を満たしてはじめて使える——だから(5)は「関係のある」性能です。
(1) 系統短絡電流とアークホーン
まったく無関係でもない、その関係を見ましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★雷でがいし装置がフラッシオーバする |
| ★② | ★アークホーン間に系統からアークが続く |
| ★③ | ★★流れる電流は系統の短絡電流で決まる |
| ★④ | ★アークのエネルギーでホーンが溶ける |
雷は一瞬で去りますが、そのあと系統の電流が流れ続けます——それを続流といいます。
短絡電流が大きい系統ほど、アークのエネルギーが大きい——だからホーンを頑丈にする必要があるのです。
けれども、それはがいしではなく金具の設計の話——「がいしの性能を表す要素」ではありません。
だから答えは(1)——がいしそのものを測って得られる値ではないのです。
(3) 汚損特性を数値で管理する
汚損の程度は、塩分の量で表します。
| 汚損区分 | 等価塩分付着密度 | 地域 |
| ★A(軽汚損) | ★0.03 mg/cm² | ★内陸部 |
| ★B | ★0.06 mg/cm² | ★海岸から数 km |
| ★C | ★0.12 mg/cm² | ★海岸に近い |
| ★D(重汚損) | ★★0.35 mg/cm² | ★★海岸線・工業地帯 |
1 cm² あたり何ミリグラムの塩分が付くか——それで区分します。
実際には海塩以外の汚れも付くので、食塩に換算して表します——だから「等価」。
この数値をもとに、がいしの個数や種類を決めます——設計の入口になる値です。
汚損特性という性能があるからこそ、こう管理できる——だから(3)はがいしの性能そのものになります。
まとめ
| 無関係 | (1) 系統短絡電流(系統側の特性) |
| 絶縁・外 | フラッシオーバ電圧(2) |
| 絶縁・中 | 油中破壊電圧(4)=磁器の貫通破壊強度 |
| 汚損 | 汚損特性(3)=塩害への強さ |
| 機械 | 機械的強度(5)=張力・風雪に耐える |
| 答え | (1) |
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