架空送電15【電験3種 電力】塩害は漏れ電流から始まる!直列連結・漏れ距離長く・長幹がいし 令和3年度 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和3年度 A問題10 塩が付くと漏れ電流が流れる!長幹がいしで対抗

今回は令和3年度 電力科目 A問題10がいしの塩害とその対策の空欄補充問題です。塩害のメカニズム(漏れ電流)から、対策(はっ水塗布・直列連結・漏れ距離・長幹がいし)まで、令和6年度下期A問題8(架空送電6)の誤り選択と表裏一体の内容です。

ストーリーで覚えましょう:塩分が付着してぬれると漏れ電流が流れ、雑音・電波障害、やがてフラッシオーバへ。対策ははっ水性物質の塗布、懸垂がいしを直列に増結(過絶縁)、表面漏れ距離を長く、そして雨洗効果の高い長幹がいしの採用です。

目次

令和3年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和3年度 A問題10 問題文
令和3年度 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和3年度 A問題10

 次の文章は、がいしの塩害とその対策に関する記述である。

 風雨などによってがいし表面に塩分が付着すると、(ア)が発生することがあり、可聴雑音や電波障害、フラッシオーバの原因となる。これをがいしの塩害という。がいしの塩害対策は、塩害の少ない送電ルートの選定、がいしの絶縁強化、がいしの洗浄、がいし表面への(イ)性物質の塗布が挙げられる。

 懸垂がいしにおいて、絶縁強化を図るには、がいしを(ウ)に連結する個数を増やす方法や、がいしの表面漏れ距離を(エ)する方法が用いられる。

 また、懸垂がいしと異なり、棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状の(オ)がいしは、雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)漏れ電流はっ水直列長く長幹
(2)過電圧吸湿直列短くピン
(3)漏れ電流吸湿並列短く長幹
(4)過電圧はっ水並列長く長幹
(5)漏れ電流はっ水直列短くピン
答え正解は (1)——(ア)漏れ電流 (イ)はっ水 (ウ)直列 (エ)長く (オ)長幹 です。

出題のポイント:塩害の発生機構と4つの対策

がいし表面の塩分が湿って漏れ電流から局部放電とフラッシオーバへ至る塩害の発生機構図
塩分が湿ると表面に漏れ電流が流れ、局部放電を経てフラッシオーバへ進みます。

がいし表面に付着した塩分が霧や小雨で湿ると導電性の膜ができ、表面に漏れ電流が流れます。対策は、はっ水性物質で水膜を切る、懸垂がいしを直列に増結する、表面漏れ距離を長くする、雨洗効果の高い長幹がいしを使うことです。空欄は順に漏れ電流・はっ水・直列・長く・長幹となり、正解は(1)です。

(ア) 塩害は漏れ電流から始まる

はっ水性物質の塗布、懸垂がいしの直列増結、表面漏れ距離の延長、長幹がいしの4対策を示す図
水をはじき、直列個数と表面漏れ距離を増やし、雨洗効果の高い長幹がいしで漏れ電流を抑えます。

がいしの表面を電流が伝うところから、すべてが始まります

段階起きること
★風雨で運ばれた塩分ががいし表面に付着する
★②★霧や小雨で湿ると、塩分が溶けて導電性を持つ
★③★★表面を漏れ電流が流れる
★④★局所的に乾いた部分で小さな放電が起きる
★⑤★放電が広がってフラッシオーバに至る

乾いた塩分は電気を通しません——湿って初めて問題になるのです。

だから霧の日や小雨の日が最も危険——大雨なら塩分が洗い流されます

「過電圧」ではありません——電圧は変わらず、電流が流れることが問題です。

(イ)(ウ)(エ) 3つの対策

(イ) はっ水性物質を塗る

シリコーンコンパウンドなどを表面に塗ります

★はっ水性吸湿性
★水の付き方★★玉になってはじく★膜になって広がる
★漏れ電流★★流れにくい★流れやすい
★塩害対策★★有効★逆効果

水が玉になれば、表面がつながりません——だから電流が流れにくいのです。

「吸湿性」では水を吸ってしまいます——まったく逆の効果になります。

(ウ) がいしを直列に連結する

懸垂がいしは、上下につないで数を増やします

電気的には直列——1個あたりの分担電圧が下がります

「並列」につなぐことはありません——吊り下げる構造上、直列にしかならないのです。

(エ) 表面漏れ距離を長くする

電流が表面を伝う距離を稼ぎます

がいしの種類ひだの形表面漏れ距離
★普通がいし★浅いひだ★標準
★耐霧がいし★深いひだ★1.2倍程度
★耐塩がいし★★さらに深く複雑なひだ★★1.5倍以上

距離が長いほど、漏れ電流が流れにくくなります——抵抗が大きくなるからです。

「短く」では逆効果——すぐに端から端までつながってしまうのです。

(オ) 長幹がいしの利点

★懸垂がいし★長幹がいし
★形★笠を重ねて連結★★棒状の磁器1本
★雨洗効果★笠の裏が洗われにくい★★全体が洗い流される
★塩害★受けやすい★★強い
★機械的強度★高い★曲げに弱い

棒状なので、雨が全体を流れ落ちます——塩分が自然に洗われるのです。

懸垂がいしは笠の裏側に塩分が残ります——雨が当たらない場所があるから。

だから海岸沿いでは長幹がいしが使われます——問題文の「雨洗効果が高く」がそれです。

「ピンがいし」は配電用の小型がいし——棒状ではありません

⚠️ よくある間違い
(ア)を「過電圧」としてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。電圧は変わらず、漏れ電流が問題
(イ)を「吸湿」としてしまう——選択肢(2)(3)水を吸えば逆効果です。
(ウ)を「並列」としてしまう——選択肢(3)(4)吊り下げる構造なので直列
(エ)を「短く」としてしまう——選択肢(2)(3)(5)長いほど電流が流れにくいのです。
(オ)を「ピン」としてしまう——選択肢(2)(5)棒状は長幹がいし
(イ)と(エ)の2欄で(1)に確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①★塩害は漏れ電流から始まる。電圧の問題ではない。
②★はっ水性で水を玉にすればつながらない。
③★連結数を増やす(直列)/漏れ距離を長くする。
④★長幹がいしは棒状で雨洗効果が高い。

💡 覚え方
「塩は乾いていれば無害、濡れると通る」——だから霧や小雨が危険です。対策は水をはじくか、距離を稼ぐか——どちらも漏れ電流を止める工夫になります。

活線洗浄装置は平成18年度 A問題4変電:変電所に設置される機器)にあります。

塩害の地域差

どこでも同じ対策をとるわけではありません

地域汚損等級対策
★内陸部★軽★標準がいしで足りる
★海岸から数 km★中★連結数を増やす
★海岸に近い★重★★耐塩がいし・長幹がいし
★工業地帯★中〜重★粉じん・排煙も加わる

等価塩分付着密度という指標で汚損の程度を表します——mg/cm² で測るのです。

台風の後は、内陸まで塩分が運ばれることがあります——1977年には広範囲で塩害停電が起きました

だから台風が来る前に活線洗浄を行います——塩分が付く前に流しておくのです。

塩害が起きやすい気象条件

条件危険度理由
★霧・小雨★★最も危険★塩分が溶けるが洗い流されない
★大雨★安全★塩分が洗い流される
★乾燥★安全★塩分が導電性を持たない

「濡れるが流れない」状態が最も危ない——だから霧の日に事故が起きやすいのです。

要点をもう一度

5つの空欄が、塩害の原理と対策を並べています

空欄答え誤答の型
(ア)★漏れ電流★過電圧
(イ)★はっ水★吸湿
(ウ)★直列★並列
(エ)★長く★短く
(オ)★長幹★ピン

すべて「漏れ電流を止める」方向で統一されています——水をはじく、距離を稼ぐ、数を増やす

(ア)を「過電圧」とすると、以降の対策と噛み合いません——電圧を下げる対策は1つも挙がっていないからです。

がいしの洗浄という対策

方法内容使う場面
★活線洗浄★充電したまま純水を噴射する★台風接近前・定期
★停止洗浄★停電させて洗う★点検時

活線洗浄では純水に近い水を使います——導電率が高いと逆に閃絡するからです。

洗浄は一時的な対策——また塩分が付けば繰り返す必要があります

だから根本的には、がいしの選定で対応します——耐塩がいしや長幹がいしです。

がいしの材質

塩害対策には、材質を変える方法もあります

材質特徴塩害
★磁器★最も一般的・機械的に強い★表面に塩分が付く
★ガラス★破損が目視で分かる★磁器と同様
★ポリマー(シリコーンゴム)★★軽量・はっ水性がある★★強い

ポリマーがいしは、材質そのものがはっ水性を持ちます——塗布しなくても水をはじくのです。

しかも軽いので、鉄塔への負担が減ります——磁器の3分の1程度

近年は採用が広がっています——塩害地域では特に有効だからです。

ただし紫外線による劣化があり、寿命の見極めが課題——磁器なら数十年もつのに対して。

塩害による事故の実例

塩害は実際に大規模停電を起こしてきました

できごと
★1949年★台風による塩害で広域停電
★1977年★★台風9号で関東一円が塩害停電
★以後★耐塩がいしの採用と洗浄体制の整備

台風は海水を巻き上げて内陸まで運びます——普段は塩害と無縁の地域でも起きるのです。

しかも台風の後は湿度が高く、雨も止んでいることが多い——塩分が溶けて洗い流されない条件がそろいます。

だから台風の通過後に事故が集中する——接近前の洗浄が重要になる理由です。

1977年の経験から、対策が体系化されました——汚損等級の設定もその1つになります。

まとめ

塩害問題の空欄を漏れ電流、はっ水、直列、長く、長幹で埋め選択肢1を選ぶ照合表
空欄は漏れ電流・はっ水・直列・長く・長幹となり、正解は(1)です。
(ア)漏れ電流(塩分+湿気で発生)
(イ)はっ水性物質の塗布(シリコーン)
(ウ)(エ)直列に増結・漏れ距離を長く(過絶縁)
(オ)長幹がいし(雨洗効果が高い)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・塩害の誤り選択(架空送電6):【電力】令和6年度下期 A問題8
・がいしの設計思想(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8

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