架空送電4【電験3種 電力】がいしの絶縁破壊は内部で起こしてはダメ!表面フラッシオーバ設計 令和7年度上期 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和7年度上期 A問題8 がいしは表面で放電させる設計!内部破壊はNG

今回は令和7年度上期 電力科目 A問題8、架空送電線路の構成部品の誤り選択問題です。鋼心アルミより線(ACSR)・がいし・ねん架・ダンパ・架空地線(OPGW)と、架空送電の定番部品が勢ぞろいします。

決め手はがいしの設計思想。がいしが内部で絶縁破壊(貫通破壊)すると交換するまで絶縁が回復しないため、異常電圧時には表面の沿面(またはアークホーン間)でフラッシオーバさせて内部を守るのが正しい設計。「内部で起こるように設計」は正反対です。

出題のポイント:がいし内部の貫通破壊を防ぐ

がいしの表面せん絡と内部の貫通破壊を比較する要点図
異常電圧では表面せん絡を先に起こし、回復しない内部の貫通破壊を防ぎます。

がいし内部で貫通破壊が起きると傷や割れが残り、絶縁は回復しません。そのため貫通破壊電圧をせん絡電圧より高くし、異常電圧時には回復可能な表面側で先にせん絡させるように設計します。

目次

解法の原理:表面せん絡を先に起こして内部を守る

懸垂がいし連の表面せん絡経路と内部貫通破壊経路および設計条件を説明する図
貫通破壊電圧をせん絡電圧より高くし、がいし表面を先に放電させて内部を保護します。

「絶縁破壊は、がいし内部で起こるように設計されている」——逆です

★表面を伝う(せん絡)★内部を貫く(貫通破壊)
★通り道★磁器やガラスの表面と空気★磁器やガラスの中
★あとの状態★★元どおりに戻る★★割れて戻らない
★設計★★こちらを先に起こす★★起こさせない

空気は放電しても、電気が切れれば絶縁を取り戻します——自己回復性と呼ばれる性質です。

磁器の中を貫かれれば、その傷は残ります——取り替えるしかないのです。

だから貫通破壊電圧を、せん絡電圧より高く設計します——表面のほうが先に負けるようにする。

壊れる場所をこちらで決めておく——絶縁協調そのものの考え方です。

令和7年度上期 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和7年度上期 A問題8 問題文
令和7年度上期 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和7年度上期 A問題8

 架空送電線路の構成部品に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鋼心アルミより線は、アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度の不足を、鋼心を用いることで補ったものである。

(2) がいしは、電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用する。雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は、がいし内部で起こるように設計されている。

(3) 架空送電線におけるねん架とは、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる。

(4) 電線の微風振動やギャロッピングを抑制するために、電線にダンパを取り付け、振動エネルギーを吸収する方法がとられる。

(5) 送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線がある。架空地線には、光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある。

答え誤っている記述は (2)です。

がいしを試験する4つの電圧

試験状態値の大小
★乾燥せん絡電圧★乾いた状態で表面を放電させる★★最も高い
★注水せん絡電圧★人工的に雨を降らせる★★2〜3割低い
★汚損せん絡電圧★塩分を付けて霧を当てる★★さらに低い
★貫通破壊電圧★油の中に沈めて内部を貫かせる★★せん絡電圧より高くする

貫通破壊電圧は、油の中に沈めて測ります——空気中では先に表面が放電してしまうから。

表面の放電を止めておかないと、内部の強さが測れません——だから絶縁油に浸すのです。

この値がせん絡電圧より高ければ、設計どおり——表面が先に負けることになります。

雨に濡れると表面に水の膜ができ、沿面距離が実質的に縮みます——だから注水時のほうが低いのです。

(3) ジャンパ線で相を入れ替える

部位役目
★耐張がいし★電線の張力を受け止め、そこで区切る
★ジャンパ線★★区切られた電線どうしを渡してつなぐ
★ねん架鉄塔★★渡す先を変えて相の位置を入れ替える

電線をいったん切らなければ、位置は変えられません——だから耐張鉄塔で行います

切った電線どうしを、別の位置へ渡すのがジャンパ線——そこで相が入れ替わるのです。

3区間で1周し、各相が上・中・下を1回ずつ通ります——平均すれば条件が同じになる

だから作用インダクタンスも作用静電容量も平衡します——(3)の記述は正確です。

⚠️ よくある間違い
(2)の前半「電線と支持物との間を絶縁する」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「がいし内部で起こるように」
表面なら回復し、内部を貫かれれば交換——だから表面で先に放電させます
(1)の鋼心アルミより線を疑ってしまう——質量と強度の説明が正確
(3)のねん架を疑ってしまう——ジャンパ線を使うのは実際の方法です。
(5)の架空地線を疑ってしまう——OPGWは実在します
「内部」「表面」という語を見たら立ち止まる——絶縁協調の基本が問われています

⏱️ 本番での進め方
①★がいしの絶縁破壊は表面で起こすように設計する。
②★空気は自己回復性を持つが、磁器は割れたら戻らない。
③★貫通破壊電圧は油中で測る。
④★ねん架は耐張鉄塔でジャンパ線を使って行う。

💡 覚え方
「表面なら直る、中を貫かれたら交換」——だから表面で先に放電させます絶縁協調は、壊れる場所を選んでおく考え方です。

★この問題は令和元年度 A問題9と完全に同一です架空送電:構成部品(R01))。選択肢の並びだけが違い、6年を隔てての再出題です

(1) アルミを使う利点と工夫

なぜ銅ではなくアルミなのでしょうか

性質アルミ結果
★導電率★100%★約61%★同じ抵抗なら太くなる
★比重★8.9★★2.7★★軽い
★同じ抵抗での質量★1★★約0.5★★半分で済む
★引張強さ★十分★★足りない★★鋼心で補う

太くなっても、比重が3分の1なので全体では軽くなります——同じ抵抗で質量は約半分です。

軽ければ鉄塔を小さくでき、建設費が下がります——だから架空送電線はアルミ

太くなることは、コロナ対策としても好都合——電界が弱まるのです。

足りない強度は、中心の鋼より線が受け持ちます——役割分担がはっきりしていることになります。

(5) 架空地線が兼ねる役目

1本の電線が、いくつもの働きをします

役目内容効く相手
★遮へい★直撃雷を身代わりに受ける★★雷
★結合★電力線の電位も一緒に上げる★逆フラッシオーバ
★誘導障害の軽減★誘導電流が逆向きの磁界を作る★通信線
★通信路★★光ファイバを内蔵する★保護リレー・給電指令

光ファイバは電気を通さないので、雷電流の影響を受けません——だから架空地線の中に収められるのです。

鉄塔がすでに並んでいるので、新たな用地が要りません——通信網を安く作れることになります。

保護リレーの信号は、遅れが許されません——自前の回線があれば確実です。

停電時にも通信を保てる——それが電力会社が自前で持つ理由になります。

(4) ダンパが効く範囲

問題文は微風振動とギャロッピングを並べています

振動振幅周波数ダンパの効果
★微風振動★数 cm★★数〜数十 Hz★★よく効く
★ギャロッピング★★数 m★★0.1〜1 Hz★効きにくい

ダンパはおもりの慣性で、小さく速い揺れを吸収します——微風振動がまさにその相手です。

ギャロッピングはゆっくり大きく揺れます——エネルギーがけた違いで吸収しきれない

それでもまったく効かないわけではありません——だから「抑制するために」という書き方です。

本格的な対策は相間スペーサや難着雪リング——役割を分担していることになります。

(3) ねん架が必要になる配置

電線の並べ方によって、必要かどうかが変わります

配置3相の条件ねん架
★正三角形★★もともと対称★★不要に近い
★縦一列★★上下で大地との距離が違う★★必要
★水平一列★中央と両端で条件が違う★必要

正三角形なら、どの相も同じ条件です——ねん架しなくても平衡します

けれども鉄塔では、縦に並べることが多い——用地の幅を節約できるからです。

縦配置では、上と下で大地との距離が違います——だから静電容量もインダクタンスも違う

配置の都合が、ねん架という工夫を生んだ——そうつながっているのです。

問題の解説:架空送電線路の5つの構成部品を照合

ACSR、がいし、ねん架、ダンパ、架空地線の選択肢を照合し誤りが2番と示す図
選択肢(2)は前半の絶縁用途は正しいものの、内部で絶縁破壊させるという後半が誤りです。

(2)の裏返しとして、実際どう作られているか見ましょう

工夫ねらい
★笠を波打たせる★★沿面距離を稼いで表面の放電を起こしにくくする
★磁器を厚くする★★貫通破壊をさらに起こしにくくする
★アークホーンを付ける★★放電の場所をがいしから離す

表面で放電させるとはいえ、簡単に放電しては困ります——ふだんは絶縁していなければならないから。

だから沿面距離を長く取ります——笠のひだがその工夫です。

そのうえで、貫通はもっと起こりにくくします——順序をつけているのです。

さらにアークホーンで、放電をがいしから引き離します——三重の備えになります。

まとめ

誤り(2) 絶縁破壊はがいし内部でなく表面(外部)で起こす設計
ACSRアルミ=軽量な導体、鋼心=機械的強度(1)
ねん架ジャンパ線で配置入替→作用L・Cを平衡(3)
ダンパ振動エネルギー吸収(4)
架空地線雷撃保護・OPGWは光ファイバ内蔵(5)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・がいしとアークホーン・振動(架空送電1):【電力】令和7年度下期 A問題8
・雷害対策と逆フラッシオーバ(架空送電2):【電力】令和7年度下期 A問題9

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次