架空送電5【電験3種 電力】誘導障害は2種類!電圧なら静電誘導・電流なら電磁誘導 令和7年度上期 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和7年度上期 A問題9 電圧なら静電・電流なら電磁!2つの誘導障害

今回は令和7年度上期 電力科目 A問題9、送電線が通信線路に及ぼす誘導障害の空欄補充問題です。静電誘導と電磁誘導という2種類の障害の区別、ねん架の効果、1線地絡時の不平衡と、誘導障害の基本論点がすべて詰まっています。

覚え方はシンプル:「電圧」が原因なら静電誘導(静電容量を介す)、「電流」が原因なら電磁誘導(相互インダクタンスを介す)。ねん架が十分なら三相の誘導電圧はベクトルの和がゼロで平常時は現れず、1線地絡で不平衡になると障害が顔を出します。

出題のポイント:電圧は静電誘導、電流は電磁誘導

静電誘導と電磁誘導の原因および1線地絡時の不平衡を整理する要点図
電圧は静電誘導、電流は電磁誘導を生じ、1線地絡時の不平衡で誘導電圧が現れます。

送電線の電圧が静電容量を介して通信線に電圧を生じるのが静電誘導障害、送電線の電流が相互インダクタンスを介して生じるのが電磁誘導障害です。十分なねん架で平常時は三相のベクトル和が0Vとなりますが、1線地絡では不平衡となります。

目次

解法の原理:誘導障害を原因と結合で2種類に分ける

架空送電線と通信線間の静電容量および相互インダクタンスによる2種類の誘導障害を説明する図
電圧による静電誘導と、電流が相互インダクタンスを介して起こす電磁誘導を区別します。

問題文が一字一句同じで、選択肢の並びだけが違います

空欄答え平成18年度令和7年度上期
(ア)★静電誘導★(1)★(3)
(イ)★相互インダクタンス★同じ★同じ
(ウ)★電磁誘導★同じ★同じ
(エ)★ベクトルの和★同じ★同じ
(オ)★1線地絡★同じ★同じ

答えの中身は同じで、番号だけが(1)から(3)へ変わりました——19年を隔てた再出題です。

番号を覚えるのではなく、語を覚えることが大切——並びは必ず変わります

誘導障害は架空送電の頻出テーマ——3つの年度で問われています

令和7年度上期 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和7年度上期 A問題9 問題文
令和7年度上期 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和7年度上期 A問題9

 次の文章は、架空送電線路に関する記述である。

 架空送電線路が通信線路に接近していると、通信線路に電圧が誘導されて設備やその取扱者に危害を及ぼす等の障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。

 ① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる(ア)障害。

 ② 架空送電線路の電流が、架空送電線路と通信線路間の(イ)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(ウ)障害。

 三相架空送電線路が十分にねん架されていれば、平常時は、電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は(エ)となるので0Vとなる。三相架空送電線路に(オ)事故が生じると、電圧や電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が現れ、誘導障害が生じる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)磁気誘導誘導リアクタンスファラデー大きさの差三相短絡
(2)静電誘導自己インダクタンス電磁誘導大きさの和1線地絡
(3)静電誘導相互インダクタンス電磁誘導ベクトルの和1線地絡
(4)磁気誘導相互インダクタンス電荷誘導ベクトルの和三相短絡
(5)磁気誘導誘導リアクタンスファラデーベクトルの差2線地絡
答え正解は (3)——(ア)静電誘導 (イ)相互インダクタンス (ウ)電磁誘導 (エ)ベクトルの和 (オ)1線地絡 です。

存在しない用語を見分ける

選択肢には、もっともらしい造語が混ぜられています

用語実在するか備考
★静電誘導★する★電圧による誘導
★電磁誘導★する★電流による誘導
★磁気誘導★しない★誘導障害の用語ではない
★ファラデー障害★しない★人名を使った造語
★電荷誘導★しない★造語

誘導障害は「静電」と「電磁」の2種類だけ——それ以外は造語です。

「磁気誘導」は磁性体を磁化する現象を指すことがあります——けれども誘導障害の分類には使いません

人名がついた用語はもっともらしく見えます——けれども「ファラデー障害」という言葉はないのです。

(イ) 自己と相互の違い

★自己インダクタンス★相互インダクタンス
★対象★1つの回路★2つの回路の間
★意味★自分の電流が自分に作る磁束★一方の電流が他方に作る磁束
★誘導障害では★関係しない★★これが媒介する

誘導障害は、送電線と通信線という2つの回路の話です——だから相互インダクタンスになります。

自己インダクタンスは、送電線自身のリアクタンスを決める量——別の場面で使います

「誘導リアクタンス」は ωL のことで、量そのものではありません——媒介するものを問われているので不適です。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「磁気誘導」としてしまう——選択肢(1)(4)(5)がそれです。電圧による誘導は静電誘導
(イ)を「自己インダクタンス」としてしまう——選択肢(2)2つの回路を結ぶのは相互インダクタンスです。
(ウ)を「ファラデー」「電荷誘導」としてしまう——選択肢(1)(4)(5)存在しない用語
(エ)を「大きさの和」としてしまう——選択肢(2)位相を考えるからゼロになるのです。
(オ)を「三相短絡」としてしまう——選択肢(1)(4)平衡しているので誘導しません
(ア)だけで(2)(3)に絞れます

⏱️ 本番での進め方
①★誘導障害は静電誘導と電磁誘導の2種類だけ。
②★磁気誘導・ファラデー障害・電荷誘導は造語。
③★2つの回路を結ぶのは相互インダクタンス。
④★平成18年度A6と完全に同一問題。番号だけ違う。

💡 覚え方
「静電と電磁の2つだけ」——他は全部造語です。19年ぶりの再出題——語を覚えていれば並びが変わっても選べます

まったく同じ問題が平成18年度 A問題6架空送電:誘導障害)にあります。誘導電圧の式は平成28年度 A問題8架空送電:誘導障害)へ。

ねん架の実際

問題文の「十分にねん架されていれば」を確かめましょう

区間上段中段下段
★第1区間★a相★b相★c相
★第2区間★b相★c相★a相
★第3区間★c相★a相★b相

3区間で1周するように位置を入れ替えます——各相が上・中・下を1回ずつ通るのです。

電線の位置が違えば、対地静電容量も相互インダクタンスも違います——だから平均化する必要があるのです。

ねん架しなければ、3相が完全には打ち消し合いません——平常時でも誘導電圧が残ることになります。

ねん架は専用の鉄塔(ねん架鉄塔)で行います——そこで相の位置を入れ替えるのです。

近年は短い線路では省略することもあります——不平衡の影響が小さいからです。

問題の解説:ねん架と1線地絡から空欄を導く

三相ベクトル、ねん架、1線地絡から空欄アからオと選択肢3を導く図
平常時は三相のベクトル和が0Vですが、1線地絡では不平衡となるため誘導電圧が現れます。

平成18年度A6とまったく同じ問題です

空欄答え誤答の型
(ア)★静電誘導★磁気誘導(造語)
(イ)★相互インダクタンス★自己インダクタンス・誘導リアクタンス
(ウ)★電磁誘導★ファラデー・電荷誘導(造語)
(エ)★ベクトルの和★大きさの和・ベクトルの差
(オ)★1線地絡★三相短絡・2線地絡

造語が3つも混ぜられています——実在する用語を知っていれば切り捨てられるのです。

(ア)だけで(2)(3)に絞れます——あとは(イ)で確定です。

なぜ三相短絡では誘導しないのか

事故3相の電流ベクトル和誘導
★三相短絡★大きいが平衡★ゼロ★★しない
★1線地絡★1相だけ大地へ漏れる★ゼロでない★★する

大電流でも、平衡していれば打ち消し合います——電流の大きさではなく、和がゼロかどうかです。

だから最も電流の大きい三相短絡で誘導障害が起きない——直感に反する点になります。

誘導障害への対策

2種類の誘導に、それぞれ対策があります

対策静電誘導電磁誘導
★通信線の接地★★有効★効果は限定的
★離隔距離を取る★有効★★有効
★遮へい線★有効★★有効
★遮断時間の短縮★効果なし(常時の現象)★★有効

静電誘導は常時起きるので、遮断時間は関係ありません——電圧がかかり続けているからです。

電磁誘導は地絡時に大きくなるので、速く切れば影響が減ります——そこが違いになります。

離隔と遮へいは両方に効きます——だから基本対策です。

近年は通信線が光ファイバになり、根本的に解決しました——金属を通らないので誘導しないのです。

それでも制御ケーブルや配電線どうしでは残ります——考え方は今も使われることになります。

誘導障害の許容値

どこまでなら許されるのか、基準があります

状況許容値の目安根拠
★常時(平常運転)★15 V 程度★通信品質を保つため
★事故時(短時間)★430〜650 V★人体への危険を避けるため

常時は低く、事故時は高めに設定されています——事故は一瞬で終わるからです。

常時15 V というのは、雑音として気にならない水準——通信の品質が問われます

事故時は数百ボルトまで許されますが、人体には危険な値——だから遮断時間を短くするのです。

この基準を超えるようなら、離隔や遮へいで対策します——問題文が「検討の要否を考える」と書く理由です。

電力会社と通信事業者が協議して決めてきました——両者にまたがる問題だからです。

まとめ

(ア)静電誘導(電圧×静電容量C)
(イ)相互インダクタンス
(ウ)電磁誘導(電流×M、V=jωMI)
(エ)ベクトルの和(ねん架で0V)
(オ)1線地絡(不平衡→零相分で障害)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・ねん架の目的(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8
・ZCTと零相電流(変電43):【電力】平成20年度 A問題6

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