今回は平成28年度 電力科目 A問題8、誘導障害の空欄補充問題です。令和7年度上期A問題9(架空送電5)と同じ2本柱(静電誘導・電磁誘導)に加えて、電磁誘導電圧の式 2πfMLIまで問われるのが特徴です。
整理はいつもどおり「電圧はC・電流はM」:電圧が原因→キャパシタンスを介して静電誘導障害、電流が原因→相互インダクタンスを介して電磁誘導障害。1線地絡時の電磁誘導電圧は V=ωMLI=2πfMLI(f:周波数、M:単位長さ当たり相互インダクタンス、L:並行区間長、I:地絡電流)です。
平成28年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成28年度 A問題8
次の文章は、誘導障害に関する記述である。
架空送電線路と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じる場合がある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。
① 架空送電線路の電圧によって、架空送電線路と通信線路間の(ア)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(イ)障害。
② 架空送電線路の電流によって、架空送電線路と通信線路間の(ウ)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(エ)障害。
架空送電線路が十分にねん架されていれば、通常は、架空送電線路の電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧はほぼ0Vとなるが、架空送電線路で地絡事故が発生すると、電圧及び電流は不平衡になり、通信線路に誘導電圧が生じ、誘導障害が生じる場合がある。例えば、一線地絡事故に伴う(エ)障害の場合、電源周波数をf、地絡電流の大きさをI、単位長さ当たりの架空送電線路と通信線路間の(ウ)をM、架空送電線路と通信線路との並行区間長をLとしたときに、通信線路に生じる誘導電圧の大きさは(オ)で与えられる。誘導障害対策に当たっては、この誘導電圧の大きさを考慮して検討の要否を考える必要がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) キャパシタンス 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 2πfMLI (2) キャパシタンス 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 πfMLI (3) キャパシタンス 電磁誘導 相互インダクタンス 静電誘導 πfMLI (4) 相互インダクタンス 電磁誘導 キャパシタンス 静電誘導 2πfMLI (5) 相互インダクタンス 静電誘導 キャパシタンス 電磁誘導 2πfMLI

(オ) 電磁誘導電圧の式
本問の中心は、この式を選べるかどうかです。
変圧器の誘起電圧と同じ形です——相互インダクタンスで結ばれた2つの回路だから。
★実効値で表す
★だから2πfMI
並行区間が長いほど、結合が強くなります——だから L を掛けるのです。
M は「単位長さ当たり」と定義されています——全長ぶんにするには L を掛ける必要があるから。
「πfMLI」では ω が半分になってしまいます——ω=2πf を忘れた形です。
(ア)〜(エ) 2つの誘導障害
| ★静電誘導障害 | ★電磁誘導障害 | |
| ★原因 | ★送電線の電圧 | ★送電線を流れる電流 |
| ★媒介するもの | ★キャパシタンス(静電容量) | ★相互インダクタンス |
| ★式 | ★Cm/(Cm+Cs)×V | ★2πfMLI |
| ★対策 | ★通信線の接地・遮へい | ★離隔・遮へい線・遮断時間短縮 |
問題文①は「電圧によって」と書いています——だから静電誘導、媒介はキャパシタンスです。
問題文②は「電流によって」と書いています——だから電磁誘導、媒介は相互インダクタンスになります。
電圧はコンデンサを介して、電流はコイルを介して伝わる——回路の基本と同じです。
「キャパシタンス」は静電容量の別名——どちらの言い方も出題されます。
誘導電圧の大きさを見積もる
実際の数値を入れてみましょう。
★人体に危険な水準
150 V を超えると、通信設備や取扱者に危険が及びます——だから許容値が定められています。
| 状況 | 誘導電圧の許容値 |
| ★常時(平常時) | ★15 V 程度 |
| ★事故時(短時間) | ★430〜650 V |
常時と事故時で基準が違います——事故時は一瞬なので緩いのです。
それでも数百ボルトに達すれば、機器が壊れます——だから遮断時間を短くする対策が有効になります。
⚠️ よくある間違い
(オ)を「πfMLI」としてしまう——選択肢(2)(3)がそれです。ω=2πf なので係数は2π。
(ア)と(ウ)を入れ替えてしまう——選択肢(4)(5)。電圧はキャパシタンス、電流は相互インダクタンスです。
(イ)と(エ)を入れ替えてしまう——選択肢(3)。電圧が原因なら静電誘導。
(オ)にLを入れ忘れた式を選ぶ——Mが「単位長さ当たり」なので必要です。
(ア)だけで(1)(2)(3)に絞れます——あとは(オ)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★電磁誘導電圧は2πfMLI。ω=2πf を忘れない。
②★電圧はキャパシタンス、電流は相互インダクタンス。
③★Mは単位長さ当たりなので並行区間長Lを掛ける。
④常時15 V、事故時430〜650 V が許容値の目安。
💡 覚え方
「2πfMLI」——ω・M・L・I を順に掛けるだけです。πだけの選択肢は ω を忘れた形——そこが最も多い誤りになります。
誘導障害の分類は平成18年度 A問題6(架空送電:誘導障害)にあります。
誘導障害を減らす4つの手立て
式 Em=2πfMLI のどの項を減らすかで対策が分かれます。
| 対策 | 減らす項 | 内容 |
| ★離隔距離を取る | ★M | ★相互インダクタンスが小さくなる |
| ★並行区間を短くする | ★L | ★交差させて並走を避ける |
| ★接地方式を選ぶ | ★I | ★抵抗接地なら地絡電流が小さい |
| ★遮断時間を短くする | ★継続時間 | ★影響を受ける時間を減らす |
式の各項が、そのまま対策に対応しています——だから式を覚える価値があるのです。
周波数 f は変えられません——系統で決まっているから。
だから M・L・I の3つを狙います——離す・短くする・小さくする。
遮へい線という手段
通信線に沿って接地された電線を張ります。
そこに誘導電流が流れ、逆向きの磁界を作ります——それが通信線への誘導を打ち消すのです。
架空地線も同じ働きをします——雷対策と誘導対策を兼ねていることになります。
遮へい係数は0.3〜0.7 程度——誘導電圧を3〜7割に減らせます。
要点をもう一度
5つの空欄が、誘導障害の原理と式を並べています。
| 空欄 | 答え | 決め手 |
| (ア) | ★キャパシタンス | ★問題文が「電圧によって」 |
| (イ) | ★静電誘導 | ★同上 |
| (ウ) | ★相互インダクタンス | ★問題文が「電流によって」 |
| (エ) | ★電磁誘導 | ★同上 |
| (オ) | ★2πfMLI | ★ω=2πf |
(ア)〜(エ)は問題文を読めば決まります——「電圧」「電流」がそのまま手がかり。
差がつくのは(オ)の係数——πかπか2πかです。
なぜ2πなのか
★だから2πf
微分から ω が現れ、それが2πf になります——電気の計算で何度も出てくる形です。
「πfMLI」は ω を f と取り違えた形——係数が半分になってしまいます。
静電誘導の式も押さえる
(イ)の静電誘導は、分圧の形で表されます。
| 条件 | 誘導電圧 | 理由 |
| ★送電線に近い | ★★大きい | ★Cm が大きくなる |
| ★通信線を接地する | ★★小さくなる | ★Cs が大きくなる |
| ★送電電圧が高い | ★大きい | ★V に比例 |
電磁誘導の式とは形が違います——静電は分圧、電磁は掛け算です。
だから対策も違う——静電誘導は接地が有効、電磁誘導は離隔。
通信線を接地すれば Cs が大きくなり、分圧比が下がります——電位が大地に固定されるのです。
電流が流れていなくても静電誘導は生じます——電圧がかかっているだけで起きるから。
まとめ
| (ア)(イ) | キャパシタンス→静電誘導(電圧が原因) |
| (ウ)(エ) | 相互インダクタンス→電磁誘導(電流が原因) |
| (オ) | V=2πfMLI(ω=2πf) |
| 発生条件 | 1線地絡の不平衡(ねん架十分なら平常時0V) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・誘導障害の基本形(架空送電5):【電力】令和7年度上期 A問題9
・中性点接地と地絡電流(変電39):【電力】平成22年度 A問題8

コメント