今回は平成29年度 電力科目 A問題9、架空送電の基本を問う空欄補充問題です。懸垂がいしの連結数、架空地線、逆フラッシオーバ対策、避雷器の酸化亜鉛素子——架空送電と変電の重要語句が横断的に登場します。
4つの空欄はどれも既出テーマ:がいしの連結数は送電電圧で決まる(66kVなら4〜6個、500kVなら30個前後)。架空地線は裸電線(接地するため——架空送電10)。逆フラッシオーバ対策は接地抵抗の低減。避雷器のZnO素子は非線形抵抗特性(変電2)です。
平成29年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成29年度 A問題9
次の文章は、架空送電に関する記述である。
鉄塔などの支持物に電線を固定する場合、電線と支持物は絶縁する必要がある。その絶縁体として代表的なものに懸垂がいしがあり、(ア)に応じて連結数が決定される。
送電線への雷の直撃を避けるために設置される(イ)を架空地線という。架空地線に直撃雷があった場合、鉄塔から電線への逆フラッシオーバを起こすことがある。これを防止するために、鉄塔の(ウ)を小さくする対策がとられている。
発電所や変電所などの架空電線の引込口や引出口には避雷器が設置される。避雷器に用いられる酸化亜鉛素子は(エ)抵抗特性を有し、雷サージなどの異常電圧から機器を保護する。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 送電電圧 裸電線 接地抵抗 非線形 (2) 送電電圧 裸電線 設置間隔 線形 (3) 許容電流 絶縁電線 設置間隔 線形 (4) 許容電流 絶縁電線 接地抵抗 非線形 (5) 送電電圧 絶縁電線 接地抵抗 非線形

(ア) がいしの連結数は電圧で決まる
懸垂がいしは、必要な絶縁に応じて数珠つなぎにします。
| 送電電圧 | 250 mm 懸垂がいしの連結数 |
| ★66 kV | ★4〜6個 |
| ★154 kV | ★9〜11個 |
| ★275 kV | ★16〜18個 |
| ★500 kV | ★30個前後 |
電圧に比例して増えていきます——1個あたりの耐電圧が決まっているからです。
だから(ア)は送電電圧——「許容電流」は電線の太さを決める要素になります。
塩害地域では、さらに増やすか耐塩用を使います——汚損で絶縁が下がるからです。
(イ)(ウ) 架空地線と逆フラッシオーバ
架空地線は、鉄塔の最上部に張った裸電線です。
| ★架空地線 | ★電力線 | |
| ★被覆 | ★裸電線 | ★裸電線(架空送電では) |
| ★電位 | ★大地電位(接地) | ★送電電圧 |
| ★役目 | ★雷を受け止めて大地へ流す | ★電力を送る |
絶縁する必要がないので裸電線——鉄塔に直接固定します。
「絶縁電線」では、大地へ流せません——接地することが目的だからです。
逆フラッシオーバが起きる仕組み
| 段階 | 起きること |
| ① | ★架空地線または鉄塔に落雷する |
| ★② | ★雷電流が鉄塔を通って大地へ流れる |
| ★③ | ★塔脚接地抵抗により鉄塔の電位が上がる |
| ★④ | ★鉄塔のほうが電線より高電位になる |
| ★⑤ | ★がいしを逆向きに閃絡する(逆フラッシオーバ) |
★鉄塔の電位
鉄塔の電位が電線より高くなれば、逆向きに放電します——ふつうとは逆の向きなので「逆」フラッシオーバ。
だから塔脚接地抵抗を下げることが対策——電位の上昇を抑えられるのです。
「設置間隔」を変えても、この現象は防げません——電位差の問題だからです。
埋設地線を放射状に敷いて、接地抵抗を下げます——山岳地では岩盤で抵抗が高くなりがちです。
(エ) 酸化亜鉛の非線形抵抗特性
| 加わる電圧 | 抵抗値 | 動作 |
| ★平常時 | ★きわめて高い | ★電流を流さない |
| ★サージ時 | ★きわめて低い | ★大地へ放電する |
電圧が上がると抵抗が下がります——オームの法則に従わないので「非線形」です。
「線形」ならオームの法則どおり——それでは避雷器になりません。
この性質があるから、自動的に開いて自動的に閉じる——スイッチのように働くのです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「許容電流」としてしまう——選択肢(3)(4)がそれです。がいしの数は電圧で決まります。
(イ)を「絶縁電線」としてしまう——選択肢(3)(4)(5)。接地するので裸電線。
(ウ)を「設置間隔」としてしまう——選択肢(2)(3)。逆フラッシオーバは電位差の問題です。
(エ)を「線形」としてしまう——選択肢(2)(3)。非線形でなければ避雷器として働きません。
(イ)と(エ)の2欄で(1)に確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★がいしの連結数は送電電圧で決まる。
②★架空地線は接地するので裸電線。
③★逆フラッシオーバ対策は塔脚接地抵抗の低減。
④★酸化亜鉛は非線形抵抗特性。
💡 覚え方
「接地するから裸、電位差が問題だから抵抗を下げる」——架空地線の要点はこの2つです。がいしは電圧、電線は電流——決める要素が違います。
遮へい角の詳細は令和5年度下期 A問題9(架空送電:架空地線)にあります。
懸垂がいしの構造
(ア)で問われたがいしを、もう少し見ましょう。
| 部分 | 材料 | 役割 |
| ★笠(かさ) | ★磁器またはガラス | ★絶縁と雨をよける |
| ★キャップ・ピン | ★鋳鉄・鍛鋼 | ★連結して機械的強度を持たせる |
| ★ひだ | ★— | ★沿面距離を稼ぐ |
ひだがあるのは、表面を伝う距離を長くするため——汚損しても閃絡しにくくなるのです。
塩害地域では、ひだの深い耐塩がいしを使います——沿面距離をさらに稼ぐため。
連結数を増やすのも同じ効果——けれども鉄塔が高くなり費用が増えます。
がいしに求められる性能
| 性能 | 内容 |
| ★絶縁性能 | ★乾燥・注水・汚損の各状態で耐えること |
| ★機械的強度 | ★電線の重さと張力に耐えること |
| ★耐候性 | ★紫外線・温度変化に劣化しないこと |
電気と機械の両方の性能が要ります——電線を支えながら絶縁するからです。
だから磁器という、硬くて絶縁性の高い材料が使われる——近年はポリマーがいしも増えました。
要点をもう一度
4つの空欄が、架空送電の主要な設備を並べています。
| 空欄 | 答え | 関わる設備 |
| (ア) | ★送電電圧 | ★懸垂がいし |
| (イ) | ★裸電線 | ★架空地線 |
| (ウ) | ★接地抵抗 | ★鉄塔(逆フラッシオーバ対策) |
| (エ) | ★非線形 | ★避雷器 |
1問で4つの設備を横断しています——架空送電の総合問題です。
(イ)と(エ)の2欄で(1)に確定できます。
雷から守る3つの設備
| 設備 | 役割 | 置く場所 |
| ★架空地線 | ★★直撃を防ぐ | ★鉄塔の最上部 |
| ★埋設地線 | ★★塔脚接地抵抗を下げる | ★鉄塔の脚もと |
| ★避雷器 | ★★侵入したサージを逃がす | ★引込口・引出口 |
入れない・電位を上げない・逃がす——3段構えになっています。
本問はこの3つをすべて含んでいる——雷対策の全体像を問う設計です。
鉄塔の種類と役割
架空送電の支持物には、いくつかの型があります。
| 種類 | 役割 | 特徴 |
| ★懸垂鉄塔 | ★直線区間で電線を吊る | ★最も数が多い |
| ★引留鉄塔 | ★電線の張力を受け止める | ★丈夫に作る |
| ★角度鉄塔 | ★線路が曲がる箇所 | ★横方向の力に耐える |
| ★分岐鉄塔 | ★線路が分かれる箇所 | ★— |
懸垂鉄塔では、がいしが垂直にぶら下がります——だから「懸垂がいし」です。
引留鉄塔では、がいしが水平になります——張力を直接受けるから。
同じがいしでも、取り付け方で呼び名が変わります——懸垂装置と耐張装置です。
数キロメートルごとに引留鉄塔を入れます——断線が広範囲に波及するのを防ぐためになります。
避雷器を引込口・引出口に置く理由
(エ)の避雷器の設置場所を確かめましょう。
| 場所 | 守るもの | 理由 |
| ★架空線の引込口 | ★変電所全体 | ★★入口でサージを抑える |
| ★変圧器の直近 | ★最も高価な機器 | ★離れると保護効果が落ちる |
| ★ケーブル接続部 | ★接続点 | ★インピーダンスの変化で反射が起きる |
架空送電線は雷を受けやすいので、そこから侵入します——だから入口で止めるのです。
サージは進行波として伝わります——避雷器から離れるほど守れないことになります。
目安は変圧器から10〜20 m 以内——それ以上離れると効果が落ちます。
架空地線で防ぎ、避雷器で逃がす——2段構えで守るのです。
まとめ
| (ア) | 送電電圧(がいし連結数を決める) |
| (イ) | 裸電線(接地して雷電流を流す) |
| (ウ) | 接地抵抗(小さくして逆FO防止) |
| (エ) | 非線形(ZnOの抵抗特性) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・架空地線と遮へい角(架空送電10):【電力】令和5年度下期 A問題9
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