今回は平成30年度 電力科目 A問題10、送配電系統の過電圧の特徴を問う誤り選択問題です。逆フラッシオーバ・誘導雷(外部過電圧)からフェランチ効果・開閉過電圧・1線地絡時の電圧上昇(内部過電圧)まで、過電圧の全ラインナップが登場します。
決め手は変電39で学んだ中性点接地のシーソー関係:接地インピーダンスが小さい(直接接地)ほど健全相の電圧上昇は小さいが、地絡電流は大きい。「電圧上昇倍率が低く、地絡電流も小さくできる」といういいとこ取りの記述は成立しません。
平成30年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成30年度 A問題10
送配電系統における過電圧の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 鉄塔又は架空地線が直撃雷を受けたとき、鉄塔の電位が上昇し、逆フラッシオーバが起きることがある。
(2) 直撃でなくても電線路の近くに落雷すれば、電磁誘導や静電誘導で雷サージが発生することがある。これを誘導雷と呼ぶ。
(3) フェランチ効果によって生じる過電圧は、受電端が開放又は軽負荷のとき、進み電流が線路に流れることによって起こる。この現象は、送電線のこう長が長いほど著しくなる。
(4) 開閉過電圧は、遮断器や断路器などの開閉操作によって生じる過電圧である。
(5) 送電線の1線地絡時、健全相に現れる過電圧の大きさは、地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合、非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く、地絡電流を小さくすることができる。

誤りは(5):直接接地は地絡電流が大きい
「電圧上昇倍率が低く、地絡電流を小さくすることができる」——後半が逆です。
| 接地方式 | 健全相の電圧上昇 | 地絡電流 |
| ★直接接地 | ★★低い(1.3倍程度) | ★★きわめて大きい |
| ★抵抗接地 | ★中程度 | ★中程度 |
| ★非接地 | ★★高い(√3倍) | ★★小さい |
中性点を大地に直結すれば、電位が固定されます——だから健全相の電圧は上がりません。
けれども地絡すると、抵抗なしで大電流が流れます——短絡と同じことになります。
電圧上昇と地絡電流は、両立しない関係にあります——片方を抑えれば、もう片方が大きくなるのです。
だから「両方とも良い」と書いた記述は誤り——そこを見抜くのが本問です。
送配電系統に現れる過電圧の分類
| 種類 | 原因 | 本問の選択肢 |
| ★雷過電圧(外部) | ★直撃雷・誘導雷 | ★(1)(2) |
| ★持続性過電圧(内部) | ★フェランチ効果・1線地絡 | ★(3)(5) |
| ★開閉過電圧(内部) | ★遮断器・断路器の操作 | ★(4) |
外から来るのが雷、中で生じるのがそれ以外——まずこの2つに分けます。
雷過電圧は数マイクロ秒と短く、値は非常に大きい——だから避雷器で逃がします。
内部過電圧は数倍程度ですが、続く時間が長い——だから機器の絶縁で耐えるのです。
本問は5つの選択肢で、この3分類を網羅しています——過電圧の総まとめのような問題です。
(3) 軽負荷で電圧が上がる理由
線路には対地静電容量があります。
| 負荷 | 流れる電流 | 受電端の電圧 |
| ★通常 | ★★遅れ電流(誘導性) | ★★送電端より低い |
| ★軽負荷・開放 | ★★進み電流(容量性) | ★★送電端より高い |
進み電流がリアクタンスを流れると、電圧が上がります——遅れ電流とは逆向きの効果です。
線路が長いほど静電容量が大きく、進み電流も大きい——だから「こう長が長いほど著しい」のです。
ケーブル系統では特に顕著——静電容量が架空線の数十倍だから。
対策は分路リアクトルで、進み電流を打ち消します。
⚠️ よくある間違い
(5)の前半「電圧上昇倍率が低く」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「地絡電流を小さくすることができる」。
直接接地は地絡電流が最も大きい方式——だから遮断器の定格も大きくなります。
(1)の逆フラッシオーバを疑ってしまう——鉄塔・架空地線への雷撃で起きるので正しい。
(2)の誘導雷を疑ってしまう——電磁誘導と静電誘導で生じます。
(3)の記述を疑ってしまう——進み電流と長いこう長で正しい。
「両方とも良い」と書いてあれば疑う——ふつうは両立しません。
⏱️ 本番での進め方
①★直接接地は電圧上昇が小さく、地絡電流が大きい。
②★非接地はその逆。両立しない関係。
③★過電圧は雷・持続性・開閉の3分類。
④★軽負荷では進み電流で受電端の電圧が上がる。
💡 覚え方
「立てれば立たず」——電圧上昇を抑えれば地絡電流が増えます。「両方とも良い」という記述は、まず疑ってよいのです。
中性点接地方式の比較は平成22年度 A問題8(変電:中性点の接地方式)にあります。
(4) 開閉過電圧が生じるしくみ
スイッチを切っただけで、なぜ電圧が上がるのでしょうか。
| 操作 | 起きること | 過電圧の大きさ |
| ★無負荷線路の遮断 | ★★進み電流を切ると再点弧しやすい | ★★3〜4倍 |
| ★無負荷変圧器の遮断 | ★★励磁電流を切ると di/dt が大きい | ★数倍 |
| ★線路の投入 | ★残留電荷と重なる | ★2〜3倍 |
電流を急に切ると、L di/dt で大きな電圧が生じます——変化が急なほど大きいのです。
無負荷の線路には、切ったあとも電荷が残ります——そこへ再投入すると重なることになります。
だから遮断器には、抵抗投入などの工夫があります——いきなりつながずに段階を踏むのです。
開閉過電圧は超高圧ほど問題になります——絶縁設計を左右するから。
(1)(2) 雷による2つの過電圧
雷は、当たり方で名前が変わります。
| ★直撃雷 | ★誘導雷 | |
| ★落ちる場所 | ★電線・鉄塔・架空地線 | ★★近くの大地や樹木 |
| ★大きさ | ★★数千 kV に達する | ★数十〜数百 kV |
| ★対策 | ★★架空地線で遮へいする | ★★避雷器で逃がす |
| ★問題になる系統 | ★送電線 | ★配電線 |
直撃雷は大きすぎるので、そもそも当てない工夫をします——それが架空地線です。
誘導雷は遮へいでは防げません——電磁的に入ってくるから。
けれども値が小さいので、避雷器で処理できます——だから配電線では避雷器が主役になります。
(1)は鉄塔への雷撃、(2)は近くへの落雷——この2つで雷過電圧を網羅しています。
接地方式ごとの地絡電流
(5)の後半を、数字で確かめましょう。
| 方式 | 地絡電流の目安 | 健全相の電圧 | 使う電圧階級 |
| ★直接接地 | ★★数千〜数万 A | ★1.3倍程度 | ★187 kV 以上 |
| ★抵抗接地 | ★100〜数百 A | ★1.7倍程度 | ★66〜154 kV |
| ★非接地 | ★★数 A | ★★√3倍 | ★6.6 kV |
直接接地の地絡電流は、非接地の千倍以上になります——抵抗なしで大地へ流れるから。
だから遮断器も大きなものが要ります——誘導障害も大きくなるのです。
その代わり健全相の電圧が上がらないので、絶縁を下げられます——超高圧では絶縁費用のほうが重いのです。
だから187 kV 以上では直接接地が選ばれます——電圧階級で使い分ける理由になります。
フェランチ効果への備え
(3)の現象に、どう対処するのでしょうか。
| 対策 | しくみ | 使う場所 |
| ★分路リアクトル | ★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す | ★変電所 |
| ★調相設備の切り離し | ★電力用コンデンサを外す | ★軽負荷時 |
| ★発電機の低励磁運転 | ★遅れ無効電力を吸収する | ★発電所 |
進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。
深夜など負荷が軽い時間帯に問題になります——昼間は負荷の遅れ電流で相殺されるから。
だから時間帯に応じて設備を入り切りします——電圧を一定に保つ運用です。
長距離の送電線やケーブル系統ほど、この備えが要ります——静電容量が大きいからです。
過電圧に備える機器
3種類の過電圧に、それぞれ備えがあります。
| 過電圧 | 主な備え | 考え方 |
| ★雷過電圧 | ★★避雷器・架空地線・アークホーン | ★逃がす・遮る |
| ★開閉過電圧 | ★★抵抗投入・避雷器 | ★段階を踏んで抑える |
| ★持続性過電圧 | ★★分路リアクトル・接地方式の選択 | ★原因そのものを減らす |
雷は短時間なので、逃がすのが基本——避雷器が一瞬だけ導通します。
持続性過電圧は続くので、逃がし続けられません——だから原因を断つのです。
避雷器を持続性過電圧にさらすと、熱で壊れます——だから定格電圧の選定が重要になります。
本問の5つの選択肢は、この備えの前提となる知識——現象を知らなければ対策も選べません。
まとめ
| 誤り | (5) 直接接地は地絡電流が大きい(小さくできるは逆) |
| シーソー | Zn小=電圧上昇小・地絡電流大 |
| 外部過電圧 | 直撃雷(逆FO)(1)・誘導雷(2) |
| 内部過電圧 | フェランチ(3)・開閉サージ(4) |
| フェランチ | 軽負荷・進み電流・こう長長いほど著しい |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・中性点接地方式のシーソー(変電39):【電力】平成22年度 A問題8
・過電圧と絶縁協調(架空送電8):【電力】令和6年度上期 A問題9

コメント