架空送電22【電験3種 電力】直接接地は地絡電流が大きい!「小さくできる」は誤り 過電圧の特徴 平成30年度 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成30年度 A問題10 直接接地は地絡電流が大きい!小さくは誤り

今回は平成30年度 電力科目 A問題10、送配電系統の過電圧の特徴を問う誤り選択問題です。逆フラッシオーバ・誘導雷(外部過電圧)からフェランチ効果・開閉過電圧・1線地絡時の電圧上昇(内部過電圧)まで、過電圧の全ラインナップが登場します。

決め手は変電39で学んだ中性点接地のシーソー関係:接地インピーダンスが小さい(直接接地)ほど健全相の電圧上昇は小さいが、地絡電流は大きい。「電圧上昇倍率が低く、地絡電流も小さくできる」といういいとこ取りの記述は成立しません。

目次

平成30年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成30年度 A問題10 問題文
平成30年度 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成30年度 A問題10

 送配電系統における過電圧の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鉄塔又は架空地線が直撃雷を受けたとき、鉄塔の電位が上昇し、逆フラッシオーバが起きることがある。

(2) 直撃でなくても電線路の近くに落雷すれば、電磁誘導や静電誘導で雷サージが発生することがある。これを誘導雷と呼ぶ。

(3) フェランチ効果によって生じる過電圧は、受電端が開放又は軽負荷のとき、進み電流が線路に流れることによって起こる。この現象は、送電線のこう長が長いほど著しくなる。

(4) 開閉過電圧は、遮断器や断路器などの開閉操作によって生じる過電圧である。

(5) 送電線の1線地絡時、健全相に現れる過電圧の大きさは、地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合、非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く、地絡電流を小さくすることができる。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):直接接地は地絡電流が大きい

「電圧上昇倍率が低く、地絡電流を小さくすることができる」——後半が逆です

接地方式健全相の電圧上昇地絡電流
★直接接地★★低い(1.3倍程度)★★きわめて大きい
★抵抗接地★中程度★中程度
★非接地★★高い(√3倍)★★小さい

中性点を大地に直結すれば、電位が固定されます——だから健全相の電圧は上がりません

けれども地絡すると、抵抗なしで大電流が流れます——短絡と同じことになります。

電圧上昇と地絡電流は、両立しない関係にあります——片方を抑えれば、もう片方が大きくなるのです。

だから「両方とも良い」と書いた記述は誤り——そこを見抜くのが本問です。

送配電系統に現れる過電圧の分類

種類原因本問の選択肢
★雷過電圧(外部)★直撃雷・誘導雷★(1)(2)
★持続性過電圧(内部)★フェランチ効果・1線地絡★(3)(5)
★開閉過電圧(内部)★遮断器・断路器の操作★(4)

外から来るのが雷、中で生じるのがそれ以外——まずこの2つに分けます

雷過電圧は数マイクロ秒と短く、値は非常に大きい——だから避雷器で逃がします

内部過電圧は数倍程度ですが、続く時間が長い——だから機器の絶縁で耐えるのです。

本問は5つの選択肢で、この3分類を網羅しています——過電圧の総まとめのような問題です。

(3) 軽負荷で電圧が上がる理由

線路には対地静電容量があります

負荷流れる電流受電端の電圧
★通常★★遅れ電流(誘導性)★★送電端より低い
★軽負荷・開放★★進み電流(容量性)★★送電端より高い

進み電流がリアクタンスを流れると、電圧が上がります——遅れ電流とは逆向きの効果です。

線路が長いほど静電容量が大きく、進み電流も大きい——だから「こう長が長いほど著しい」のです。

ケーブル系統では特に顕著——静電容量が架空線の数十倍だから。

対策は分路リアクトルで、進み電流を打ち消します

⚠️ よくある間違い
(5)の前半「電圧上昇倍率が低く」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「地絡電流を小さくすることができる」
直接接地は地絡電流が最も大きい方式——だから遮断器の定格も大きくなります
(1)の逆フラッシオーバを疑ってしまう——鉄塔・架空地線への雷撃で起きるので正しい
(2)の誘導雷を疑ってしまう——電磁誘導と静電誘導で生じます
(3)の記述を疑ってしまう——進み電流と長いこう長で正しい
「両方とも良い」と書いてあれば疑う——ふつうは両立しません

⏱️ 本番での進め方
①★直接接地は電圧上昇が小さく、地絡電流が大きい。
②★非接地はその逆。両立しない関係。
③★過電圧は雷・持続性・開閉の3分類。
④★軽負荷では進み電流で受電端の電圧が上がる。

💡 覚え方
「立てれば立たず」——電圧上昇を抑えれば地絡電流が増えます「両方とも良い」という記述は、まず疑ってよいのです。

中性点接地方式の比較は平成22年度 A問題8変電:中性点の接地方式)にあります。

(4) 開閉過電圧が生じるしくみ

スイッチを切っただけで、なぜ電圧が上がるのでしょうか

インダクタンスの誘導起電力
\( e=-L\dfrac{di}{dt} \)

電流を急に切ると大きな電圧が生じる

操作起きること過電圧の大きさ
★無負荷線路の遮断★★進み電流を切ると再点弧しやすい★★3〜4倍
★無負荷変圧器の遮断★★励磁電流を切ると di/dt が大きい★数倍
★線路の投入★残留電荷と重なる★2〜3倍

電流を急に切ると、L di/dt で大きな電圧が生じます——変化が急なほど大きいのです。

無負荷の線路には、切ったあとも電荷が残ります——そこへ再投入すると重なることになります。

だから遮断器には、抵抗投入などの工夫があります——いきなりつながずに段階を踏むのです。

開閉過電圧は超高圧ほど問題になります——絶縁設計を左右するから。

(1)(2) 雷による2つの過電圧

雷は、当たり方で名前が変わります

★直撃雷★誘導雷
★落ちる場所★電線・鉄塔・架空地線★★近くの大地や樹木
★大きさ★★数千 kV に達する★数十〜数百 kV
★対策★★架空地線で遮へいする★★避雷器で逃がす
★問題になる系統★送電線★配電線

直撃雷は大きすぎるので、そもそも当てない工夫をします——それが架空地線です。

誘導雷は遮へいでは防げません——電磁的に入ってくるから。

けれども値が小さいので、避雷器で処理できます——だから配電線では避雷器が主役になります。

(1)は鉄塔への雷撃、(2)は近くへの落雷——この2つで雷過電圧を網羅しています

接地方式ごとの地絡電流

(5)の後半を、数字で確かめましょう

方式地絡電流の目安健全相の電圧使う電圧階級
★直接接地★★数千〜数万 A★1.3倍程度★187 kV 以上
★抵抗接地★100〜数百 A★1.7倍程度★66〜154 kV
★非接地★★数 A★★√3倍★6.6 kV

直接接地の地絡電流は、非接地の千倍以上になります——抵抗なしで大地へ流れるから。

だから遮断器も大きなものが要ります——誘導障害も大きくなるのです。

その代わり健全相の電圧が上がらないので、絶縁を下げられます——超高圧では絶縁費用のほうが重いのです。

だから187 kV 以上では直接接地が選ばれます——電圧階級で使い分ける理由になります。

フェランチ効果への備え

(3)の現象に、どう対処するのでしょうか

対策しくみ使う場所
★分路リアクトル★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す★変電所
★調相設備の切り離し★電力用コンデンサを外す★軽負荷時
★発電機の低励磁運転★遅れ無効電力を吸収する★発電所

進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。

深夜など負荷が軽い時間帯に問題になります——昼間は負荷の遅れ電流で相殺されるから。

だから時間帯に応じて設備を入り切りします——電圧を一定に保つ運用です。

長距離の送電線やケーブル系統ほど、この備えが要ります——静電容量が大きいからです。

過電圧に備える機器

3種類の過電圧に、それぞれ備えがあります

過電圧主な備え考え方
★雷過電圧★★避雷器・架空地線・アークホーン★逃がす・遮る
★開閉過電圧★★抵抗投入・避雷器★段階を踏んで抑える
★持続性過電圧★★分路リアクトル・接地方式の選択★原因そのものを減らす

雷は短時間なので、逃がすのが基本——避雷器が一瞬だけ導通します

持続性過電圧は続くので、逃がし続けられません——だから原因を断つのです。

避雷器を持続性過電圧にさらすと、熱で壊れます——だから定格電圧の選定が重要になります。

本問の5つの選択肢は、この備えの前提となる知識——現象を知らなければ対策も選べません

まとめ

誤り(5) 直接接地は地絡電流が大きい(小さくできるは逆)
シーソーZn小=電圧上昇小・地絡電流大
外部過電圧直撃雷(逆FO)(1)・誘導雷(2)
内部過電圧フェランチ(3)・開閉サージ(4)
フェランチ軽負荷・進み電流・こう長長いほど著しい
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・中性点接地方式のシーソー(変電39):【電力】平成22年度 A問題8
・過電圧と絶縁協調(架空送電8):【電力】令和6年度上期 A問題9

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