架空送電8【電験3種 電力】絶縁協調は雷を小さくすることではない!避雷器と絶縁のバランス設計 令和6年度上期 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度上期 A問題9 絶縁協調は雷を減らすことではない!バランス設計

今回は令和6年度上期 電力科目 A問題9、電力系統の過電圧(外部・内部)と絶縁設計(絶縁協調)の誤り選択問題です。雷サージ・開閉サージという過電圧の分類と、避雷器を軸にした絶縁設計の考え方が問われます。

絶縁協調とは「避雷器の制限電圧(保護レベル)を基準に、各機器の絶縁強度を経済的・合理的にそろえる」考え方。雷そのものの大きさは人間には制御できないので、「外部過電圧そのものの大きさを低減する」という定義は誤り——ここが本問の核心です。

出題のポイント:絶縁協調と避雷器

絶縁協調と避雷器の役割から誤りを選ぶ問題の要点図
絶縁協調は設備側の絶縁強度と避雷器の保護レベルを組み合わせます。

絶縁協調は、外部過電圧そのものを小さくすることではなく、設備の絶縁強度と避雷器の保護レベルを安全性・経済性の両面から合理的に組み合わせる考え方です。

目次

絶縁協調の考え方

雷サージを避雷器から大地へ逃がし機器の絶縁耐力と制限電圧の保護余裕を示す解説
避雷器の制限電圧を機器の絶縁耐力より低く設定し、保護余裕を確保します。

「外部過電圧そのものの大きさを低減すること」——手を入れる対象が違います

★正しい絶縁協調★問題文の誤った説明
★何をするか★★機器ごとの絶縁強度に差をつけ、順序を決める★★過電圧そのものを小さくする
★対象★★設備側(絶縁の設計)★過電圧側(原因)
★ねらい★★安全性と経済性の両立★—

協調とは、複数のものの釣り合いを取ること——ここでは機器ごとの絶縁強度です。

雷の大きさは人間には決められません——だから低減という言葉が合わないのです。

変えられるのは、どこをどれだけ強くするか——その配分が絶縁協調になります。

「安全性と経済性のとれた」という前半は正しい——後半の定義だけが誤りです。

令和6年度上期 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度上期 A問題9 問題文
令和6年度上期 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和6年度上期 A問題9

 電力系統に現れる過電圧(異常電圧)はその発生原因により、外部過電圧と内部過電圧とに分類される。前者は、雷放電現象に起因するもので雷サージ電圧ともいわれる。後者は、電線路の開閉操作等に伴う開閉サージ電圧と地絡事故時等に発生する短時間交流過電圧とがある。

 各種過電圧に対する電力系統の絶縁設計の考え方に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 絶縁協調とは、送電線路や発変電所に設置される電力設備等の絶縁について、安全性と経済性のとれた絶縁設計を行うために、外部過電圧そのものの大きさを低減することである。

(2) 避雷器は、過電圧の波高値がある値を超えた場合、特性要素に電流が流れることにより過電圧値を制限して電力設備の絶縁を保護し、かつ、続流を短時間のうちに遮断して原状に自復する機能を持った装置である。

(3) 架空送電線路の絶縁は、外部過電圧に対しては、必ずしも十分に耐えるように設計されるとは限らない。

(4) 送電線路の絶縁及び発変電所に設置される電力設備等の絶縁は、いずれも原則として、内部過電圧に対しては十分に耐えるように設計される。

(5) 発変電所に設置される電力設備等の絶縁は、外部過電圧に対しては、避雷器によって保護されることを前提に設計される。その保護レベルは、避雷器の制限電圧に基づいて決まる。

答え誤っている記述は (1)です。

5つの選択肢を照合

絶縁協調と過電圧に関する5つの選択肢を照合し選択肢1を誤りと判定する解説
外部過電圧そのものを低減するとする選択肢(1)が誤りです。
機能内容問題文の言葉
★制限★★一定電圧を超えると導通して電圧を頭打ちにする★「過電圧値を制限して」
★遮断★★雷が去ったあとの続流を切る★「続流を短時間のうちに遮断」
★自復★★元の絶縁状態に自分で戻る★「原状に自復する」

この3つがそろって初めて避雷器として使えます——1つでも欠ければ機能しません

続流とは、雷が去ったあとに系統から流れ続ける電流——放置すれば地絡と同じです。

酸化亜鉛形は、電圧が下がれば自然に電流が止まります——非直線性がきわめて強いから。

だから直列ギャップなしで使えます——現在の主流になっています。

(4)(5) 内部と外部で設計が分かれる

順位設備絶縁強度考え方
★1(最も弱い)★★避雷器★★最も低い★★真っ先に動作して逃がす
★2★送電線のがいし★中程度★★放電しても再閉路で復旧できる
★3(最も強い)★★変圧器などの機器★★最も高い★★壊れると復旧に時間と費用がかかる

変電所の機器は、避雷器に守られる前提で設計します——それが(5)の意味です。

だから機器の絶縁は、避雷器の制限電圧より高くします——その差が余裕になるのです。

内部過電圧は続くので、避雷器では守れません——だから(4)のとおり機器自身が耐えます

架空送電線には避雷器がないところも多い——だから(3)のとおり耐えるとは限らない

放電させて再閉路で戻す——送電線ならではの割り切りになります。

⚠️ よくある間違い
(1)の「安全性と経済性のとれた絶縁設計」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「外部過電圧そのものの大きさを低減する」
協調は設備側の絶縁強度の配分——雷の大きさは変えられません
(2)の避雷器を疑ってしまう——制限・続流遮断・自復の3つで正確
(3)を疑ってしまう——雷には耐えきれない前提で設計します
(4)を疑ってしまう——内部過電圧には十分に耐えるよう設計
(5)を疑ってしまう——制限電圧が保護レベルを決めます

⏱️ 本番での進め方
①★絶縁協調は絶縁強度の配分。過電圧を減らすことではない。
②★避雷器の3機能は制限・続流遮断・自復。
③★内部過電圧には耐えるよう設計する。
④★外部過電圧には耐えきれない前提で設計する。

💡 覚え方
「協調=配分、低減ではない」——雷は変えられず、絶縁は変えられます避雷器→がいし→機器の順に強くする——安いところから壊す考え方です。

★この問題は平成19年度 A問題7として出題されたものと完全に同一です架空送電:絶縁協調(H19))。選択肢の順序だけが違い、17年を隔てての再出題です過電圧の分類は平成30年度 A問題10架空送電:過電圧)にあります。

外部過電圧と内部過電圧の比べ方

問題文の冒頭にある分類を、数字で確かめましょう

★外部過電圧(雷)★内部過電圧
★大きさ★★数千 kV に達する★★運転電圧の数倍
★続く時間★★数マイクロ秒★★数ミリ秒〜数秒
★原因★自然現象★★系統の操作・事故
★対処★★避雷器で逃がす★★機器の絶縁で耐える

雷は大きいけれど一瞬——だから逃がせば済みます

内部過電圧は小さいけれど続きます——逃がし続ければ避雷器が焼けます

だから対処のしかたが正反対になります——この違いが設計方針を分けるのです。

避雷器の定格電圧は、内部過電圧に動作しないよう決めます——雷だけに反応させたいから。

避雷器が動作する電圧の決め方

(5)の保護レベルを、順を追って見ましょう

電圧意味大小
★系統の運転電圧★ふだんかかっている電圧★最も低い
★避雷器の定格電圧★★続流を確実に遮断できる上限★運転電圧より高い
★★制限電圧★★放電中に残る電圧=保護レベル★定格より高い
★機器の絶縁強度★機器が耐えられる電圧★★制限電圧より高くする

この順序が守られてこそ、避雷器が機能します——1つでも崩れると守れません

定格電圧が低すぎると、内部過電圧でも動作してしまいます——続流を切れずに焼けるのです。

高すぎると、雷のときに動作が遅れます——そのつり合いで決まることになります。

制限電圧と機器の絶縁強度の差が、保護余裕——ふつう20%以上とられます

酸化亜鉛形避雷器の特徴

(2)の特性要素に、現在は何が使われているのでしょうか

★炭化けい素形(旧)★酸化亜鉛形(現在)
★直列ギャップ★★必要★★不要にできる
★非直線性★中程度★★きわめて強い
★続流★★流れる★★ほとんど流れない
★大きさ★大きい★★小型

非直線性とは、電圧が少し上がると電流が急増する性質——スイッチのように働きます

酸化亜鉛はこの性質がきわめて強い——運転電圧ではほとんど電流が流れません

だからギャップなしで常時接続できます——構造が簡単になったのです。

続流もほぼ流れないので、遮断の心配が減ります——問題文の「短時間のうちに遮断」が容易に実現できる

避雷器を置く場所

(5)の「保護されることを前提に」を、配置から見ましょう

場所置く理由優先度
★★変圧器の近く★★最も高価で復旧に時間がかかる★★最優先
★線路の引込口★★侵入してくる雷サージを入口で止める★高い
★母線★複数の機器をまとめて守る★中程度

避雷器から離れるほど、保護の効果が薄れます——サージが進む間に電圧が上がるから。

だから守りたい機器のすぐそばに置きます——距離が短いほどよいのです。

変圧器は最も高価で、代わりがすぐに用意できません——だから最優先で守ります

接地線もできるだけ短くします——そこにも電圧が生じるからです。

まとめ

誤り(1) 絶縁協調は外部過電圧そのものの低減ではない
絶縁協調避雷器の制限電圧を前提に絶縁強度を経済的に協調
内部過電圧開閉サージ等→十分耐える設計(4)
外部過電圧線路=フラッシオーバ許容(3)/機器=避雷器で保護(5)
避雷器制限電圧・続流遮断・自復(2)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・避雷器と絶縁協調(変電29):【電力】平成27年度 A問題7
・雷害対策(架空送電2):【電力】令和7年度下期 A問題9

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