架空送電37【電験3種 電力】絶縁協調=避雷器前提の経済設計!雷の低減ではない 平成19年度 A問題7 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成19年度 A問題7 避雷器を前提に絶縁を決める!これが絶縁協調

今回は平成19年度 電力科目 A問題7、電力系統の過電圧と絶縁設計(絶縁協調)の誤り選択問題です。この問題は令和6年度上期A問題9(架空送電8)として選択肢の並びを変えて再出題されました(H19=(5)・R06上=(1)が誤り)。

絶縁協調の定義を再確認:雷(外部過電圧)そのものは制御できないので、避雷器の制限電圧を土台に各機器の絶縁強度を安全かつ経済的にそろえるのが絶縁協調。「外部過電圧そのものの大きさを低減する」という定義は誤りです。

目次

平成19年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成19年度 A問題7 問題文
平成19年度 電力科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成19年度 A問題7

 電力系統に現れる過電圧(異常電圧)はその発生原因により、外部過電圧と内部過電圧とに分類される。前者は、雷放電現象に起因するもので雷サージ電圧ともいわれる。後者は、電線路の開閉操作等に伴う開閉サージ電圧と地絡事故時等に発生する短時間交流過電圧とがある。

 各種過電圧に対する電力系統の絶縁設計の考え方に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1) 送電線路の絶縁及び発変電所に設置される電力設備等の絶縁は、いずれも原則として、内部過電圧に対しては十分に耐えるように設計される。

(2) 架空送電線路の絶縁は、外部過電圧に対しては、必ずしも十分に耐えるように設計されるとは限らない。

(3) 発変電所に設置される電力設備等の絶縁は、外部過電圧に対しては、避雷器によって保護されることを前提に設計される。その保護レベルは、避雷器の制限電圧に基づいて決まる。

(4) 避雷器は、過電圧の波高値がある値を超えた場合、特性要素に電流が流れることにより過電圧値を制限して電力設備の絶縁を保護し、かつ、続流を短時間のうちに遮断して原状に自復する機能を持った装置である。

(5) 絶縁協調とは、送電線路や発変電所に設置される電力設備等の絶縁について、安全性と経済性のとれた絶縁設計を行うために、外部過電圧そのものの大きさを低減することである。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):協調させるのは絶縁強度

「外部過電圧そのものの大きさを低減すること」——手を入れる対象が違います

★正しい絶縁協調★問題文の誤った説明
★何をするか★★機器ごとの絶縁強度に差をつけ、順序を決める★★過電圧そのものを小さくする
★対象★★設備側(絶縁の設計)★過電圧側(原因)
★ねらい★★安全性と経済性の両立★—

雷の大きさは、こちらで決められません——自然現象だからです。

できるのは、設備側の絶縁をどう配分するか——それが協調という言葉の意味になります。

すべての機器を最強にすれば安全ですが、費用が跳ね上がります——だから強弱をつけるのです。

弱いところを決めておけば、そこで先に放電します——被害を安いところに集めることになります。

絶縁強度に順序をつける

順位設備絶縁強度考え方
★1(最も弱い)★★避雷器★★最も低い★★真っ先に動作して逃がす
★2★送電線のがいし★中程度★★放電しても再閉路で復旧できる
★3(最も強い)★★変圧器などの機器★★最も高い★★壊れると復旧に時間と費用がかかる

避雷器がいちばん弱く作られています——だから真っ先に動作します

変圧器はいちばん強く作られています——壊れれば取り替えに数か月かかるから。

送電線のがいしは中間——放電しても空気が回復して再閉路できるのです。

この順序を守ることが、絶縁協調そのもの——過電圧を減らす話ではありません

(1)(2) 内部と外部で設計方針が違う

過電圧大きさ設計方針理由
★内部過電圧★数倍程度★★十分に耐えるよう設計する★★続く時間が長く避雷器で逃がせない
★外部過電圧(雷)★★数千 kV に達する★★耐えきれないことを前提にする★★耐えさせるには費用がかかりすぎる

内部過電圧は運転電圧の数倍で、しかも続きます——逃がし続けることができないのです。

だから機器そのものが耐えなければなりません——それが(1)の意味です。

雷はけた違いに大きいので、耐えさせるのは非現実的——だから架空送電線は「耐えるとは限らない」

放電させて、再閉路で復旧させる——それが(2)の設計思想になります。

⚠️ よくある間違い
(5)の「安全性と経済性のとれた絶縁設計」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「外部過電圧そのものの大きさを低減する」
雷の大きさは変えられません——変えられるのは設備側の絶縁です。
(1)の内部過電圧を疑ってしまう——十分に耐えるよう設計します
(2)の「必ずしも十分に耐えるとは限らない」を疑ってしまう——雷には耐えきれない前提です。
(4)の避雷器の説明を疑ってしまう——制限・続流遮断・自復の3つで正確
「そのものを低減する」という言い方に反応する——協調は配分の話です。

⏱️ 本番での進め方
①★絶縁協調は絶縁強度の配分であって、過電圧を減らすことではない。
②★避雷器が最も弱く、変圧器が最も強い。
③★内部過電圧には耐えるよう設計する。
④★外部過電圧(雷)には耐えきれない前提で設計する。

💡 覚え方
「雷は変えられない、絶縁は変えられる」——だから協調させるのは設備側です。避雷器→がいし→機器の順に強くする——安いところから壊すのが基本になります。

★この問題は令和6年度上期 A問題9として、選択肢の順序だけを変えて再出題されました架空送電:絶縁協調(R06上))。17年を隔てての再出題です

避雷器の制限電圧と保護レベル

(3)の「制限電圧に基づいて決まる」を具体的に見ましょう

用語意味大小関係
★動作開始電圧★避雷器が導通し始める電圧★運転電圧より高い
★★制限電圧★★放電中に端子間に残る電圧★★これが保護レベル
★機器の絶縁強度★機器が耐えられる電圧★★制限電圧より高くする

避雷器が動作しても、電圧がゼロになるわけではありません——ある値が残ります

その残る電圧が制限電圧——機器にはこの電圧がかかることになります。

だから機器の絶縁は、制限電圧より高くしておきます——その差が保護余裕です。

制限電圧が低い避雷器ほど、機器の絶縁を下げられます——設備が安くなるのです。

だから避雷器の性能が、変電所全体の費用を左右します

短時間交流過電圧という言葉

問題文の冒頭にある内部過電圧の一種です

きっかけ起きること倍率の目安
★1線地絡★★健全相の対地電圧が上がる★非接地なら√3倍
★負荷の遮断★★発電機が加速し電圧が上がる★1.3〜1.5倍
★軽負荷時の長距離送電★★進み電流で受電端電圧が上がる★1.1〜1.2倍

いずれも数ミリ秒から数秒続きます——雷の数マイクロ秒とは桁が違うのです。

続く時間が長いので、避雷器では処理できません——熱で焼けてしまうから。

だから機器の絶縁そのもので耐えます——それが(1)の設計方針です。

避雷器の定格電圧は、この過電圧に動作しない値に選びます——雷だけに反応させたいのです。

送電線で放電を許す考え方

(2)が述べる割り切りを、もう少し見ましょう

★送電線のがいし★変電所の機器
★放電したら★★空気が回復する★★絶縁物が壊れる
★復旧★★再閉路で数秒★★交換に数か月
★設計★★放電を許す★★避雷器で守る

がいしの表面で放電しても、設備は壊れません——空気とセラミックは自己回復するのです。

だからアークホーンで放電の場所を決めておきます——がいし本体を熱から守るため。

変圧器の内部は油と紙で、いちど壊れれば戻りません——だから絶対に放電させないのです。

この違いが、送電線と変電所で設計方針を分けます——(2)と(3)がその対比になります。

絶縁の強さを表す基準値

設計は、決められた基準値をもとに行われます

用語意味使い方
★雷インパルス耐電圧★★雷の波形に耐えられる電圧★機器の絶縁を表す代表値
★開閉インパルス耐電圧★開閉サージの波形に耐える電圧★超高圧で重視される
★商用周波耐電圧★★1分間の交流に耐える電圧★内部過電圧への備え

波形が違えば、耐えられる電圧も違います——だから3つの基準があるのです。

雷は急峻なので、同じ機器でも高い値まで耐えられます——時間が短いからです。

商用周波は続くので、いちばん低い値になります——だから内部過電圧が設計を縛るのです。

これらの値を組み合わせて絶縁協調が組まれます

まとめ

誤り(5) 絶縁協調は外部過電圧そのものの低減ではない
絶縁協調避雷器の制限電圧を前提に絶縁強度を協調
内部過電圧十分耐える設計(1)
外部過電圧線路=許容(2)/機器=避雷器で保護(3)(4)
再出題R06上問9(架空送電8)と同一内容・番号違い
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電8):【電力】令和6年度上期 A問題9
・避雷器と絶縁協調(変電29):【電力】平成27年度 A問題7

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