今回は平成19年度 電力科目 A問題8、架空地線に関する誤り選択問題です。遮へい角・誘導障害の軽減・OPGW・逆フラッシオーバと、架空地線の機能が総ざらいされます。
ポイントは「防止」と「軽減」の言葉の使い分け。架空地線が傘のように受け止められるのは直撃雷だけ。誘導雷は近傍への落雷による誘導で生じるため、架空地線があっても完全には防げず「軽減」できるにとどまります。「直撃雷及び誘導雷を防止できる」は言い過ぎです。
誤りは(1):誘導雷は防げない
「直撃雷及び誘導雷を防止することができる」——後半が言い過ぎです。
| 雷の種類 | 架空地線の効果 | 言い方 |
| ★直撃雷 | ★★電線の上で受け止める | ★★防止できる |
| ★誘導雷 | ★電磁誘導・静電誘導で入ってくる | ★★軽減までしかできない |
直撃雷は、架空地線が身代わりになって受けます——物理的に遮るのです。
誘導雷は、近くに落ちた雷が電磁的に入ってきます——遮るものがありません。
架空地線があれば、静電結合が変わって多少は減ります——けれども防止はできないのです。
「防止」と「軽減」の書き分けが、この問題のねらい——強い言葉に注意します。
平成19年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成19年度 A問題8
架空送電線路の架空地線に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 架空地線は、架空送電線への直撃雷及び誘導雷を防止することができる。
(2) 架空地線の遮へい角が小さいほど、直撃雷から架空送電線を遮へいする効果が大きい。
(3) 架空地線は、近くの弱電流電線に対し、誘導障害を軽減する働きもする。
(4) 架空地線には、通信線の機能を持つ光ファイバ複合架空地線も使用されている。
(5) 架空地線に直撃雷が侵入した場合、雷電流は鉄塔の接地抵抗を通じて大地に流れる。接地抵抗が大きいと、鉄塔の電位を上昇させ、逆フラッシオーバが起きることがある。

架空地線が果たす3つの役目
| 役目 | 内容 | 本問の選択肢 |
| ★遮へい | ★直撃雷を身代わりに受ける | ★(1)(2) |
| ★誘導障害の軽減 | ★通信線への誘導を減らす | ★(3) |
| ★通信路 | ★光ファイバを内蔵する(OPGW) | ★(4) |
1本の電線が、3つの役目を兼ねています——だから架空地線は必ず張られるのです。
誘導障害の軽減は、遮へい線と同じしくみ——誘導電流が逆向きの磁界を作ります。
OPGW は、鉄塔を通信網としても使える——電力会社が自前の通信網を持てるのです。
(3)の「誘導障害を軽減」と(1)の「誘導雷を防止」は別の話——混同しないことです。
(5) 接地抵抗と逆フラッシオーバ
| 接地抵抗 | 雷電流30 kA のときの電位 | 逆フラッシオーバ |
| ★10 Ω | ★300 kV | ★起きにくい |
| ★30 Ω | ★900 kV | ★★起きやすい |
鉄塔の電位が電線より高くなると、逆向きに放電します——それが逆フラッシオーバです。
だから接地抵抗を小さくします——埋設地線を地中に伸ばすのが標準的な手です。
山地では岩盤で接地抵抗が高くなりがち——だから埋設地線を長くすることになります。
⚠️ よくある間違い
(1)の「直撃雷」の部分だけ見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「及び誘導雷」。
(3)の「誘導障害を軽減」と混同する——通信線への障害は軽減できます。誘導雷そのものは防げません。
(2)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
(4)のOPGWを疑ってしまう——実在する製品です。
「防止」という強い言葉を見たら疑う——本問はそれだけで解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★直撃雷は防止できるが、誘導雷は軽減まで。
②★架空地線の役目は遮へい・誘導障害の軽減・通信路。
③★接地抵抗が大きいと鉄塔の電位が上がり逆フラッシオーバ。
④「防止」という強い言葉を疑う。
💡 覚え方
「直撃は防げる、誘導は減らせるだけ」——遮るものがあるかないかの差です。誘導雷は電磁的に入ってくるので、物理的に遮れません。
雷害対策の全体像は平成26年度 A問題8(架空送電:雷害対策)にあります。
OPGWという発想
(4)の光ファイバ複合架空地線を、もう少し見ましょう。
| 項目 | 内容 |
| ★構造 | ★アルミパイプの中に光ファイバを収める |
| ★外側 | ★アルミ覆鋼線などのより線 |
| ★役目1 | ★★従来どおり雷を受け止める |
| ★役目2 | ★★電力用通信線として使う |
光ファイバは電気を通さないので、雷電流の影響を受けません——だから架空地線の中に入れられるのです。
すでに鉄塔が並んでいるので、新たな用地が要りません——通信網を安く作れることになります。
保護リレーの信号や、給電指令の通信に使われます——遅れが許されない用途です。
電力会社が自前の通信網を持つ理由がここにあります——停電時にも通信を確保したいから。
誘導雷が生じるしくみ
(1)で問われた誘導雷を、原理から見ましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★雷雲が近づき、電線に反対の電荷が集まる(束縛電荷) |
| ★② | ★近くの大地や樹木に落雷する |
| ★③ | ★★雷雲の電荷が急に消え、束縛が解ける |
| ★④ | ★★解放された電荷が電線を波となって走る |
電線に直接落ちなくても、電圧が生じます——それが誘導雷です。
雷雲が電荷を引き寄せている間は、何も起きません——つり合っているからです。
落雷でそのつり合いが崩れた瞬間に、波が走り出します——だから「防げない」のです。
大きさは数十〜数百 kV 程度——直撃雷より小さいので配電線で問題になります。
だから配電線では避雷器を多く設置します——遮へいでは防げない相手だからです。
(2) 遮へい角が守る範囲
架空地線の真下ほど安全になります。
| 遮へい角 | 守れる範囲 | 採用 |
| ★45° | ★広いが確実性は低い | ★配電線・低い電圧階級 |
| ★30° | ★一般的な水準 | ★★多くの送電線 |
| ★0°以下 | ★★ほぼ完全に守れる | ★★超高圧・重要線路 |
遮へい角は、架空地線から電線を見込む角度——鉛直線からの傾きです。
角度を小さくするには、架空地線を高く上げるか外へ張り出します——鉄塔が大きくなり費用が増えるのです。
それでも重要な線路では0°以下にします——遮へい失敗が許されないから。
架空地線を2条にすれば、中央の角度がさらに小さくなります——多条化にはその効果もあるのです。
架空地線に使う電線
何でもよいわけではありません。
| 種類 | 特徴 | 使う場面 |
| ★亜鉛メッキ鋼より線 | ★安価で強いが導電率が低い | ★従来からの標準 |
| ★アルミ覆鋼線 | ★★導電率が高く誘導障害に効く | ★通信線が近い区間 |
| ★OPGW | ★★光ファイバを内蔵する | ★通信路を兼ねる幹線 |
雷を受けるだけなら、鋼線で十分です——強くて安いから。
けれども誘導障害の軽減には、導電率が要ります——誘導電流が多く流れるほど打ち消しが効くのです。
だからアルミで覆った鋼線が使われます——強度は鋼、導電率はアルミ。
(3)の「誘導障害を軽減する働き」は、この電線でこそ活きます——材料の選択と効果がつながっているのです。
架空地線を張る位置
鉄塔のいちばん上に張られます。
| 位置 | 架かるもの | 理由 |
| ★最上部 | ★★架空地線 | ★★雷を先に受けるため |
| ★腕金 | ★電力線 | ★架空地線の下に入る |
| ★塔脚 | ★接地 | ★雷電流を大地へ逃がす |
いちばん高いところにあるから、雷が先に当たります——それが遮へいの原理です。
架空地線は各鉄塔で接地されています——だから受けた電流を大地へ流せるのです。
電流は左右の鉄塔にも分かれて流れます——1基だけで受け持つわけではありません。
だから隣の鉄塔の接地抵抗も効いてきます——線路全体で守っていることになります。
まとめ
| 誤り | (1) 誘導雷は防止できない(軽減まで) |
| 直撃雷 | 遮へい角小さいほど遮へい効果大(2) |
| 誘導障害 | 弱電流電線への障害を軽減(3) |
| OPGW | 光ファイバ複合架空地線(4) |
| 逆FO | 接地抵抗大→鉄塔電位上昇で発生(5) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・架空地線と遮へい角の空欄(架空送電10):【電力】令和5年度下期 A問題9
・遮へい線の二刀流(架空送電31):【電力】平成23年度 A問題6
・誘導雷は配電で最多(架空送電32):【電力】平成23年度 A問題7

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