架空送電38【電験3種 電力】架空地線が防げるのは直撃雷だけ!誘導雷は「軽減」まで 平成19年度 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成19年度 A問題8 架空地線が防げるのは直撃雷!誘導雷は軽減まで

今回は平成19年度 電力科目 A問題8架空地線に関する誤り選択問題です。遮へい角・誘導障害の軽減・OPGW・逆フラッシオーバと、架空地線の機能が総ざらいされます。

ポイントは「防止」と「軽減」の言葉の使い分け。架空地線が傘のように受け止められるのは直撃雷だけ。誘導雷は近傍への落雷による誘導で生じるため、架空地線があっても完全には防げず「軽減」できるにとどまります。「直撃雷及び誘導雷を防止できる」は言い過ぎです。

目次

誤りは(1):誘導雷は防げない

「直撃雷及び誘導雷を防止することができる」——後半が言い過ぎです

雷の種類架空地線の効果言い方
★直撃雷★★電線の上で受け止める★★防止できる
★誘導雷★電磁誘導・静電誘導で入ってくる★★軽減までしかできない

直撃雷は、架空地線が身代わりになって受けます——物理的に遮るのです。

誘導雷は、近くに落ちた雷が電磁的に入ってきます——遮るものがありません

架空地線があれば、静電結合が変わって多少は減ります——けれども防止はできないのです。

「防止」と「軽減」の書き分けが、この問題のねらい——強い言葉に注意します

平成19年度 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成19年度 A問題8 問題文
平成19年度 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成19年度 A問題8

 架空送電線路の架空地線に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1) 架空地線は、架空送電線への直撃雷及び誘導雷を防止することができる。

(2) 架空地線の遮へい角が小さいほど、直撃雷から架空送電線を遮へいする効果が大きい。

(3) 架空地線は、近くの弱電流電線に対し、誘導障害を軽減する働きもする。

(4) 架空地線には、通信線の機能を持つ光ファイバ複合架空地線も使用されている。

(5) 架空地線に直撃雷が侵入した場合、雷電流は鉄塔の接地抵抗を通じて大地に流れる。接地抵抗が大きいと、鉄塔の電位を上昇させ、逆フラッシオーバが起きることがある。

答え誤っている記述は (1)です。

架空地線が果たす3つの役目

役目内容本問の選択肢
★遮へい★直撃雷を身代わりに受ける★(1)(2)
★誘導障害の軽減★通信線への誘導を減らす★(3)
★通信路★光ファイバを内蔵する(OPGW)★(4)

1本の電線が、3つの役目を兼ねています——だから架空地線は必ず張られるのです。

誘導障害の軽減は、遮へい線と同じしくみ——誘導電流が逆向きの磁界を作ります

OPGW は、鉄塔を通信網としても使える——電力会社が自前の通信網を持てるのです。

(3)の「誘導障害を軽減」と(1)の「誘導雷を防止」は別の話——混同しないことです。

(5) 接地抵抗と逆フラッシオーバ

鉄塔の電位上昇
\( V=I_{雷}\times R_{塔脚} \)

接地抵抗が大きいほど電位が高くなる

接地抵抗雷電流30 kA のときの電位逆フラッシオーバ
★10 Ω★300 kV★起きにくい
★30 Ω★900 kV★★起きやすい

鉄塔の電位が電線より高くなると、逆向きに放電します——それが逆フラッシオーバです。

だから接地抵抗を小さくします——埋設地線を地中に伸ばすのが標準的な手です。

山地では岩盤で接地抵抗が高くなりがち——だから埋設地線を長くすることになります。

⚠️ よくある間違い
(1)の「直撃雷」の部分だけ見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「及び誘導雷」
(3)の「誘導障害を軽減」と混同する——通信線への障害は軽減できます誘導雷そのものは防げません
(2)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
(4)のOPGWを疑ってしまう——実在する製品です。
「防止」という強い言葉を見たら疑う——本問はそれだけで解けます

⏱️ 本番での進め方
①★直撃雷は防止できるが、誘導雷は軽減まで。
②★架空地線の役目は遮へい・誘導障害の軽減・通信路。
③★接地抵抗が大きいと鉄塔の電位が上がり逆フラッシオーバ。
④「防止」という強い言葉を疑う。

💡 覚え方
「直撃は防げる、誘導は減らせるだけ」——遮るものがあるかないかの差です。誘導雷は電磁的に入ってくるので、物理的に遮れません

雷害対策の全体像は平成26年度 A問題8架空送電:雷害対策)にあります。

OPGWという発想

(4)の光ファイバ複合架空地線を、もう少し見ましょう

項目内容
★構造★アルミパイプの中に光ファイバを収める
★外側★アルミ覆鋼線などのより線
★役目1★★従来どおり雷を受け止める
★役目2★★電力用通信線として使う

光ファイバは電気を通さないので、雷電流の影響を受けません——だから架空地線の中に入れられるのです。

すでに鉄塔が並んでいるので、新たな用地が要りません——通信網を安く作れることになります。

保護リレーの信号や、給電指令の通信に使われます——遅れが許されない用途です。

電力会社が自前の通信網を持つ理由がここにあります——停電時にも通信を確保したいから。

誘導雷が生じるしくみ

(1)で問われた誘導雷を、原理から見ましょう

段階起きること
★雷雲が近づき、電線に反対の電荷が集まる(束縛電荷)
★②★近くの大地や樹木に落雷する
★③★★雷雲の電荷が急に消え、束縛が解ける
★④★★解放された電荷が電線を波となって走る

電線に直接落ちなくても、電圧が生じます——それが誘導雷です。

雷雲が電荷を引き寄せている間は、何も起きません——つり合っているからです。

落雷でそのつり合いが崩れた瞬間に、波が走り出します——だから「防げない」のです。

大きさは数十〜数百 kV 程度——直撃雷より小さいので配電線で問題になります

だから配電線では避雷器を多く設置します——遮へいでは防げない相手だからです。

(2) 遮へい角が守る範囲

架空地線の真下ほど安全になります

遮へい角守れる範囲採用
★45°★広いが確実性は低い★配電線・低い電圧階級
★30°★一般的な水準★★多くの送電線
★0°以下★★ほぼ完全に守れる★★超高圧・重要線路

遮へい角は、架空地線から電線を見込む角度——鉛直線からの傾きです。

角度を小さくするには、架空地線を高く上げるか外へ張り出します——鉄塔が大きくなり費用が増えるのです。

それでも重要な線路では0°以下にします——遮へい失敗が許されないから。

架空地線を2条にすれば、中央の角度がさらに小さくなります——多条化にはその効果もあるのです。

架空地線に使う電線

何でもよいわけではありません

種類特徴使う場面
★亜鉛メッキ鋼より線★安価で強いが導電率が低い★従来からの標準
★アルミ覆鋼線★★導電率が高く誘導障害に効く★通信線が近い区間
★OPGW★★光ファイバを内蔵する★通信路を兼ねる幹線

雷を受けるだけなら、鋼線で十分です——強くて安いから。

けれども誘導障害の軽減には、導電率が要ります——誘導電流が多く流れるほど打ち消しが効くのです。

だからアルミで覆った鋼線が使われます——強度は鋼、導電率はアルミ

(3)の「誘導障害を軽減する働き」は、この電線でこそ活きます——材料の選択と効果がつながっているのです。

架空地線を張る位置

鉄塔のいちばん上に張られます

位置架かるもの理由
★最上部★★架空地線★★雷を先に受けるため
★腕金★電力線★架空地線の下に入る
★塔脚★接地★雷電流を大地へ逃がす

いちばん高いところにあるから、雷が先に当たります——それが遮へいの原理です。

架空地線は各鉄塔で接地されています——だから受けた電流を大地へ流せるのです。

電流は左右の鉄塔にも分かれて流れます——1基だけで受け持つわけではありません

だから隣の鉄塔の接地抵抗も効いてきます——線路全体で守っていることになります。

まとめ

誤り(1) 誘導雷は防止できない(軽減まで)
直撃雷遮へい角小さいほど遮へい効果大(2)
誘導障害弱電流電線への障害を軽減(3)
OPGW光ファイバ複合架空地線(4)
逆FO接地抵抗大→鉄塔電位上昇で発生(5)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・架空地線と遮へい角の空欄(架空送電10):【電力】令和5年度下期 A問題9
・遮へい線の二刀流(架空送電31):【電力】平成23年度 A問題6
・誘導雷は配電で最多(架空送電32):【電力】平成23年度 A問題7

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