今回は平成23年度 電力科目 A問題6、誘導障害の誤り選択問題です。静電誘導・電磁誘導の区別(架空送電5・24)を踏まえたうえで、対策がどちらの障害に効くのかという一歩踏み込んだ理解が問われます。
対策の効き先を整理:接地方式・故障電流の迅速遮断→電磁誘導対策(地絡電流を小さく・短時間に)。遮へい地線→両方に有効(接地導体は静電遮へいにも磁気的打ち消しにもなる)。通信線の同軸化・光ファイバ化→両方に有効。「遮へい線は静電誘導に効かない」という記述が本問の誤りです。
誤りは(4):遮へい線は静電誘導にも効く
「静電誘導障害に対してはその効果を期待することはできない」——両方に効きます。
| ★電磁誘導への効果 | ★静電誘導への効果 | |
| ★しくみ | ★誘導電流が逆向きの磁界を作る | ★★電気力線を遮り静電容量を減らす |
| ★効果 | ★★ある | ★★ある |
接地された導体は、電気力線を受け止めます——静電遮へいという基本的な性質です。
電力線と通信線の間に入れば、その間の静電容量が減ります——だから静電誘導も減るのです。
電磁誘導には、誘導電流が作る逆向きの磁界が効きます——働くしくみは違いますが、どちらにも効くのです。
だから「効果を期待できない」は誤り——1つの対策で2つの障害に効くことになります。
平成23年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成23年度 A問題6
架空送配電線路の誘導障害に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 誘導障害には、静電誘導障害と電磁誘導障害とがある。前者は電力線と通信線や作業者などとの間の静電容量を介しての結合に起因し、後者は主として電力線側の電流経路と通信線や他の構造物との間の相互インダクタンスを介しての結合に起因する。
(2) 平常時の三相3線式送配電線路では、ねん架が十分に行われ、かつ、各電力線と通信線路や作業者などとの距離がほぼ等しければ、誘導障害はほとんど問題にならない。しかし、電力線のねん架が十分でも、一線地絡故障を生じた場合には、通信線や作業者などに静電誘導電圧や電磁誘導電圧が生じて障害の原因となることがある。
(3) 電力系統の中性点接地抵抗を高くすること及び故障電流を迅速に遮断することは、ともに電磁誘導障害防止策として有効な方策である。
(4) 電力線と通信線の間に導電率の大きい地線を布設することは、電磁誘導障害対策として有効であるが、静電誘導障害に対してはその効果を期待することはできない。
(5) 通信線の同軸ケーブル化や光ファイバ化は、静電誘導障害に対しても電磁誘導障害に対しても有効な対策である。

(3) 接地抵抗を高くすると誘導が減る
電磁誘導電圧は地絡電流に比例します。
| 接地抵抗 | 地絡電流 | 誘導電圧 |
| ★低い(直接接地) | ★大きい | ★★大きい |
| ★高い(抵抗接地) | ★小さい | ★★小さい |
接地抵抗を高くすれば、地絡電流が小さくなります——だから誘導電圧も下がるのです。
遮断を速くすれば、影響を受ける時間が短くなります——どちらも有効な対策になります。
ただし接地抵抗を高くしすぎると、リレーが検出できません——そこにつり合いがあるのです。
(5) 光ファイバ化が根本解決になる理由
| 通信線 | 静電誘導 | 電磁誘導 | 理由 |
| ★裸の金属線 | ★受ける | ★受ける | ★導体だから |
| ★同軸ケーブル | ★★減る | ★★減る | ★外部導体が遮へいする |
| ★光ファイバ | ★★受けない | ★★受けない | ★★導体ではない |
光ファイバはガラスなので、電気を通しません——誘導のしようがないのです。
同軸ケーブルは外部導体が接地されて遮へいになります——完全ではありませんが大きく減ります。
だからどちらも「両方に有効」——問題文の(5)は正しいのです。
近年は通信線がほぼ光ファイバになりました——誘導障害は過去の問題になりつつあることになります。
⚠️ よくある間違い
(4)の前半「電磁誘導障害対策として有効」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは後半の「静電誘導には効果がない」。
接地導体は静電遮へいにもなります——電気力線を受け止めるから。
(1)の定義を疑ってしまう——静電容量と相互インダクタンスで正しい。
(2)のねん架の話を疑ってしまう——平常時はほぼ問題にならず、地絡で生じる。
(3)の接地抵抗を高くする話を疑ってしまう——地絡電流が減るので有効です。
「効果を期待できない」という否定形を疑う——本問ではそこが誤りでした。
⏱️ 本番での進め方
①★遮へい線は静電誘導にも電磁誘導にも効く。
②★接地抵抗を高くすると地絡電流が減り誘導も減る。
③★光ファイバは導体でないので誘導を受けない。
④「効果を期待できない」という否定形を疑う。
💡 覚え方
「接地した導体は両方を遮る」——磁界には逆向きの電流、電界には電気力線の受け止めです。働くしくみは違っても、どちらにも効く——それが遮へい線の価値になります。
誘導障害の式は平成28年度 A問題8(架空送電:誘導障害)にあります。
誘導障害はどこで問題になるか
そもそも、なぜ通信線が近くにあるのでしょうか。
| 場面 | 状況 | 危険度 |
| ★共架 | ★同じ柱に電力線と通信線を架ける | ★★最も近い |
| ★並行 | ★線路に沿って通信線が走る | ★★距離が長いと大きい |
| ★交差 | ★一点で交わるだけ | ★小さい |
電柱も通信柱も、同じ道路沿いに立ちます——用地が限られるので必然的に近づくのです。
だから並行区間が長くなりやすい——誘導電圧は並行長に比例します。
交差だけなら、並行長がほぼゼロなので問題になりません——だから設計では交差させて逃げるのです。
作業者への影響
問題文が「通信線や作業者など」と書くのはなぜでしょうか。
送電線の下で作業する人も、静電誘導で帯電します——大地から絶縁されていれば電位を持つのです。
触れた瞬間に放電し、驚いて転落する危険があります——感電そのものより二次災害が怖いのです。
だから作業車を接地します——電位を大地に固定するためです。
ねん架が効くのは平常時だけ
(2)の後半が、この問題の核心です。
| 状態 | 3相の電流 | ベクトル和 | 誘導 |
| ★平常時 | ★平衡している | ★★ゼロ | ★★ほぼ生じない |
| ★1線地絡 | ★1相だけ大きい | ★★ゼロでない | ★★大きく生じる |
| ★三相短絡 | ★大きいが平衡 | ★★ゼロ | ★生じない |
平衡していれば、電流が大きくても和はゼロです——だから三相短絡では誘導しません。
1線地絡だけが、和をゼロでなくします——地絡電流が大地を通って戻るから。
ねん架は、距離の不平衡をならすためのもの——電流そのものの不平衡には効きません。
だから「ねん架が十分でも、地絡すれば障害が生じる」——(2)の記述が正しい理由です。
静電誘導と電磁誘導の対比
(1)の定義を、表で整理しましょう。
| ★静電誘導 | ★電磁誘導 | |
| ★結合するもの | ★★静電容量 | ★★相互インダクタンス |
| ★原因 | ★電力線の電圧 | ★電力線の電流 |
| ★いつ起きるか | ★★常時(電圧は常にある) | ★★地絡時に大きい |
| ★式の形 | ★分圧 Cm/(Cm+Cs)×V | ★掛け算 2πfMLI |
電圧が原因か、電流が原因か——そこが分かれ目です。
電圧は常にかかっているので、静電誘導は常時起きます——だから遮断時間を短くしても効きません。
電流は平常時なら平衡していて和がゼロ——だから電磁誘導は地絡時に問題になるのです。
問題文の(1)は、この対比を正確に述べています——覚えるべき基本形です。
遮へい線の遮へい係数
(4)の地線が、どれだけ効くのか数字で見ましょう。
| 条件 | 遮へい係数 | 誘導電圧 |
| ★遮へい線なし | ★1.0 | ★そのまま |
| ★導電率の低い遮へい線 | ★0.6〜0.7 | ★6〜7割に減る |
| ★★導電率の高い遮へい線 | ★★0.3〜0.4 | ★★3〜4割に減る |
遮へい線に流れる誘導電流が、逆向きの磁界を作ります——それが打ち消しの正体です。
抵抗が小さいほど、多くの電流が流れます——だから導電率が大きいほど効くのです。
問題文が「導電率の大きい地線」と書くのはそのため——ただの地線では効果が薄いことになります。
アルミ覆鋼線や光ファイバ複合架空地線が使われます——導電率を稼ぐ工夫です。
まとめ
| 誤り | (4) 遮へい地線は静電誘導にも有効 |
| 遮へい線の原理 | 誘導電流で磁束打ち消し+静電遮へい |
| 電磁誘導対策 | 接地抵抗高く(I減)・迅速遮断(3) |
| 両方に有効 | 遮へい線・同軸化・光ファイバ化(5) |
| 答え | (4) |
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