架空送電30【電験3種 電力】接地方式は送電容量と無関係!容量を増やす3つの正攻法 平成24年度 A問題7 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成24年度 A問題7 送電容量を増やす正攻法は?接地方式は無関係

今回は平成24年度 電力科目 A問題7、送電線の送電容量に関する誤り選択問題です。送電容量を決める要因(電流容量・安定度)と、増やす方策(昇圧・太線化・直流送電)を整理したうえで、無関係な対策の紛れ込みを見抜きます。

送電容量を増やす正攻法は3つ:①送電電圧の格上げ(送電電力は電圧の2乗に比例)②太線化(電流容量を増やす・短距離向き)③直流送電(安定度制約なし・長距離大容量)。一方、中性点接地方式は地絡時の保護の話で、送電容量には関係しません。

目次

平成24年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成24年度 A問題7 問題文
平成24年度 電力科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成24年度 A問題7

 送電線の送電容量に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 送電線の送電容量は、送電線の電流容量や送電系統の安定度制約などで決定される。

(2) 長距離送電線の送電電力は、原理的に送電電圧の2乗に比例するため、送電電圧の格上げは、送電容量の増加に有効な方策である。

(3) 電線の太線化は、送電線の電流容量を増すことができるので、短距離送電線の送電容量の増加に有効な方策である。

(4) 直流送電は、交流送電のような安定度の制約がないため、理論上、送電線の電流容量の限界まで電力を送電することができるので、長距離・大容量送電に有効な方策である。

(5) 送電系統の中性点接地方式に抵抗接地方式を採用することは、地絡電流を効果的に抑制できるので、送電容量の増加に有効な方策である。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):接地方式は送電容量と無関係

「抵抗接地方式は送電容量の増加に有効」——目的が違います

中性点接地方式の目的内容
★異常電圧の抑制★1線地絡時の健全相の電位上昇を抑える
★地絡電流の抑制★通信線への誘導障害や機器の損傷を減らす
★保護リレーの動作★地絡を確実に検出する
★送電容量★★関係しない

接地方式は事故時の振る舞いを決めるものです——平常時に送れる電力とは関係ありません

地絡電流を抑えても、負荷電流が増えるわけではない——そこが誤りの根拠です。

「地絡電流を効果的に抑制できる」の部分は正しい——結論だけが飛躍しているのです。

送電容量を決める2つの制約

(1)が述べる通り、距離によって主役が変わります

距離制約するもの理由
★短距離★★電流容量(熱)★電線が温度上昇で耐えられなくなる
★中距離★電圧降下★受電端電圧が下がりすぎる
★長距離★★安定度★相差角が大きくなり脱調する

短距離では、電線が熱でどこまで耐えられるかが限界——だから(3)の太線化が効きます

長距離では、熱よりも先に安定度が限界になります——太くしても解決しないのです。

送電電力
\( P=\dfrac{V_sV_r}{X}\sin\delta \)

電圧の2乗に比例し、リアクタンスに反比例する

だから長距離では、電圧を上げるかリアクタンスを下げる——それが(2)と多導体化です。

(2) 電圧の2乗に比例する

\( P=\dfrac{V_sV_r}{X}\sin\delta \)
送電電力の式
\( V_s\ \fallingdotseq\ V_r=V\ \Rightarrow\ P\propto V^2 \)
両端の電圧がほぼ等しければ
★2乗に比例
電圧を上げると送電電力
★√2倍★2倍★—
★2倍★★4倍★275→550 kV
★1.8倍★3.3倍★275→500 kV

電圧を上げる効果はきわめて大きい——だから送電電圧の格上げが有効なのです。

275 kV から500 kV にすれば、約3.3倍送れます——設備を増やさずに容量が増えることになります。

それが超高圧化が進んだ理由——電流を増やすより効率がよいのです。

(4)の直流送電も、安定度の制約がないので長距離に有効——電流容量の限界まで送れます

⚠️ よくある間違い
(5)の「地絡電流を効果的に抑制できる」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「送電容量の増加に有効」という結論
(2)の「2乗に比例」を疑ってしまう——P=V²sinδ/X なので正しいです。
(3)の太線化を疑ってしまう——短距離では電流容量が制約なので有効
(4)の直流送電を疑ってしまう——安定度の制約がないので正しいです。
「〜に有効な方策である」という結論を確かめる——前提が正しくても結論が飛ぶことがあるのです。

⏱️ 本番での進め方
①★中性点接地方式は送電容量と無関係。
②★短距離は電流容量、長距離は安定度が制約。
③★送電電力は電圧の2乗に比例する。
④直流送電は安定度の制約がないので長距離に有効。

💡 覚え方
「短いなら太く、長いなら高く」——距離で対策が変わります接地方式は事故時の話——平常時の送電容量とは無関係です。

中性点接地方式は平成22年度 A問題8変電:中性点の接地方式)にあります。

安定度という制約を具体的に見る

長距離では、なぜ電流容量まで送れないのでしょうか

相差角と送電電力
\( P=\dfrac{V_sV_r}{X}\sin\delta \)

δ が90°で最大。それを超えると脱調する

相差角 δsin δ状態
★30°★0.50★★通常の運転点
★60°★0.87★余裕が少ない
★90°★1.00★★理論上の限界
★90°超★減っていく★★脱調する

δ が90°を超えると、送れる電力がかえって減ります——だから発電機が同期を失うのです。

実際は30〜40°程度で運用します——事故時の変動に備えた余裕です。

線路が長いほど X が大きく、同じ電力でも δ が大きくなります——だから長距離で安定度が効いてくるのです。

電線をいくら太くしても X はあまり減りません——だから(3)は「短距離送電線の」と限定しているのです。

送電容量を増やす方策の一覧

正しい方策を整理しておきましょう

方策効く制約効果
★送電電圧の格上げ★★安定度・電圧降下★★2乗で効く
★電線の太線化★★電流容量★短距離で有効
★多導体化★リアクタンス・電流容量★両方に効く
★直列コンデンサ★★安定度★X を打ち消す
★直流送電★★安定度★制約そのものがなくなる

直列コンデンサは、線路のリアクタンスを打ち消します——X が小さくなれば同じ δ でより多く送れるのです。

多導体は電界を弱めるだけでなく、X も減らします——等価半径が大きくなるからです。

どの方策も、電流容量か安定度のどちらかに効いています——そこに当てはまらないものが誤りになります。

中性点接地方式は、そのどちらにも当てはまりません——だから(5)が答えです。

熱による電流容量の限界

(3)の太線化が効く理由を、熱から見ましょう

電線の発熱
\( P_{loss}=3I^2R \)

電流の2乗に比例して発熱する

項目内容
★許容温度★★硬銅より線で90 ℃、ACSRで90 ℃程度
★超えるとどうなるか★引張強さが落ち、たるみが増える
★たるみが増えると★★地面や樹木との離隔が保てない

電線が熱くなると、伸びてたるみます——金属の熱膨張です。

たるめば地面に近づき、離隔距離を割ります——だから温度に上限があるのです。

太くすれば R が小さくなり、同じ電流でも発熱が減ります——表面積も増えるので放熱も良くなる

だから太線化は電流容量を直接増やします——短距離ではこれが最も効くのです。

送電電圧の格上げが持つ副次効果

(2)の格上げは、容量以外にも効きます

項目電圧を上げると理由
★送電電力★★2乗で増える★P=V²sinδ/X
★同じ電力での電流★★反比例して減る★I=P/(√3 V cosθ)
★線路損失★★2乗に反比例して減る★3I²R
★絶縁費用★増える★がいしも鉄塔も大きくなる

電圧を2倍にすれば、同じ電力を送る電流は半分になります——損失は4分の1です。

容量が4倍になり、損失が4分の1になる——きわめて大きな効果になります。

その代わり絶縁が高くつきます——だから電力量が多い幹線でだけ格上げするのです。

日本では500 kV が最高です——1,000 kV 設計の線路もありますが500 kV で運用中

まとめ

誤り(5) 抵抗接地は送電容量と無関係(地絡保護の話)
決定要因電流容量(熱)+安定度制約(1)
長距離昇圧(P∝V²)(2)・直流送電(4)
短距離太線化で電流容量増(3)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・直流送電の長所短所(架空送電3):【電力】令和7年度下期 A問題11
・損失は電圧の2乗に反比例(架空送電13):【電力】令和4年度上期 A問題6
・中性点接地方式(変電39):【電力】平成22年度 A問題8

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