今回は平成24年度 電力科目 A問題7、送電線の送電容量に関する誤り選択問題です。送電容量を決める要因(電流容量・安定度)と、増やす方策(昇圧・太線化・直流送電)を整理したうえで、無関係な対策の紛れ込みを見抜きます。
送電容量を増やす正攻法は3つ:①送電電圧の格上げ(送電電力は電圧の2乗に比例)②太線化(電流容量を増やす・短距離向き)③直流送電(安定度制約なし・長距離大容量)。一方、中性点接地方式は地絡時の保護の話で、送電容量には関係しません。
平成24年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成24年度 A問題7
送電線の送電容量に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 送電線の送電容量は、送電線の電流容量や送電系統の安定度制約などで決定される。
(2) 長距離送電線の送電電力は、原理的に送電電圧の2乗に比例するため、送電電圧の格上げは、送電容量の増加に有効な方策である。
(3) 電線の太線化は、送電線の電流容量を増すことができるので、短距離送電線の送電容量の増加に有効な方策である。
(4) 直流送電は、交流送電のような安定度の制約がないため、理論上、送電線の電流容量の限界まで電力を送電することができるので、長距離・大容量送電に有効な方策である。
(5) 送電系統の中性点接地方式に抵抗接地方式を採用することは、地絡電流を効果的に抑制できるので、送電容量の増加に有効な方策である。

誤りは(5):接地方式は送電容量と無関係
「抵抗接地方式は送電容量の増加に有効」——目的が違います。
| 中性点接地方式の目的 | 内容 |
| ★異常電圧の抑制 | ★1線地絡時の健全相の電位上昇を抑える |
| ★地絡電流の抑制 | ★通信線への誘導障害や機器の損傷を減らす |
| ★保護リレーの動作 | ★地絡を確実に検出する |
| ★送電容量 | ★★関係しない |
接地方式は事故時の振る舞いを決めるものです——平常時に送れる電力とは関係ありません。
地絡電流を抑えても、負荷電流が増えるわけではない——そこが誤りの根拠です。
「地絡電流を効果的に抑制できる」の部分は正しい——結論だけが飛躍しているのです。
送電容量を決める2つの制約
(1)が述べる通り、距離によって主役が変わります。
| 距離 | 制約するもの | 理由 |
| ★短距離 | ★★電流容量(熱) | ★電線が温度上昇で耐えられなくなる |
| ★中距離 | ★電圧降下 | ★受電端電圧が下がりすぎる |
| ★長距離 | ★★安定度 | ★相差角が大きくなり脱調する |
短距離では、電線が熱でどこまで耐えられるかが限界——だから(3)の太線化が効きます。
長距離では、熱よりも先に安定度が限界になります——太くしても解決しないのです。
だから長距離では、電圧を上げるかリアクタンスを下げる——それが(2)と多導体化です。
(2) 電圧の2乗に比例する
★2乗に比例
| 電圧を上げると | 送電電力 | 例 |
| ★√2倍 | ★2倍 | ★— |
| ★2倍 | ★★4倍 | ★275→550 kV |
| ★1.8倍 | ★3.3倍 | ★275→500 kV |
電圧を上げる効果はきわめて大きい——だから送電電圧の格上げが有効なのです。
275 kV から500 kV にすれば、約3.3倍送れます——設備を増やさずに容量が増えることになります。
それが超高圧化が進んだ理由——電流を増やすより効率がよいのです。
(4)の直流送電も、安定度の制約がないので長距離に有効——電流容量の限界まで送れます。
⚠️ よくある間違い
(5)の「地絡電流を効果的に抑制できる」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「送電容量の増加に有効」という結論。
(2)の「2乗に比例」を疑ってしまう——P=V²sinδ/X なので正しいです。
(3)の太線化を疑ってしまう——短距離では電流容量が制約なので有効。
(4)の直流送電を疑ってしまう——安定度の制約がないので正しいです。
「〜に有効な方策である」という結論を確かめる——前提が正しくても結論が飛ぶことがあるのです。
⏱️ 本番での進め方
①★中性点接地方式は送電容量と無関係。
②★短距離は電流容量、長距離は安定度が制約。
③★送電電力は電圧の2乗に比例する。
④直流送電は安定度の制約がないので長距離に有効。
💡 覚え方
「短いなら太く、長いなら高く」——距離で対策が変わります。接地方式は事故時の話——平常時の送電容量とは無関係です。
中性点接地方式は平成22年度 A問題8(変電:中性点の接地方式)にあります。
安定度という制約を具体的に見る
長距離では、なぜ電流容量まで送れないのでしょうか。
| 相差角 δ | sin δ | 状態 |
| ★30° | ★0.50 | ★★通常の運転点 |
| ★60° | ★0.87 | ★余裕が少ない |
| ★90° | ★1.00 | ★★理論上の限界 |
| ★90°超 | ★減っていく | ★★脱調する |
δ が90°を超えると、送れる電力がかえって減ります——だから発電機が同期を失うのです。
実際は30〜40°程度で運用します——事故時の変動に備えた余裕です。
線路が長いほど X が大きく、同じ電力でも δ が大きくなります——だから長距離で安定度が効いてくるのです。
電線をいくら太くしても X はあまり減りません——だから(3)は「短距離送電線の」と限定しているのです。
送電容量を増やす方策の一覧
正しい方策を整理しておきましょう。
| 方策 | 効く制約 | 効果 |
| ★送電電圧の格上げ | ★★安定度・電圧降下 | ★★2乗で効く |
| ★電線の太線化 | ★★電流容量 | ★短距離で有効 |
| ★多導体化 | ★リアクタンス・電流容量 | ★両方に効く |
| ★直列コンデンサ | ★★安定度 | ★X を打ち消す |
| ★直流送電 | ★★安定度 | ★制約そのものがなくなる |
直列コンデンサは、線路のリアクタンスを打ち消します——X が小さくなれば同じ δ でより多く送れるのです。
多導体は電界を弱めるだけでなく、X も減らします——等価半径が大きくなるからです。
どの方策も、電流容量か安定度のどちらかに効いています——そこに当てはまらないものが誤りになります。
中性点接地方式は、そのどちらにも当てはまりません——だから(5)が答えです。
熱による電流容量の限界
(3)の太線化が効く理由を、熱から見ましょう。
| 項目 | 内容 |
| ★許容温度 | ★★硬銅より線で90 ℃、ACSRで90 ℃程度 |
| ★超えるとどうなるか | ★引張強さが落ち、たるみが増える |
| ★たるみが増えると | ★★地面や樹木との離隔が保てない |
電線が熱くなると、伸びてたるみます——金属の熱膨張です。
たるめば地面に近づき、離隔距離を割ります——だから温度に上限があるのです。
太くすれば R が小さくなり、同じ電流でも発熱が減ります——表面積も増えるので放熱も良くなる。
だから太線化は電流容量を直接増やします——短距離ではこれが最も効くのです。
送電電圧の格上げが持つ副次効果
(2)の格上げは、容量以外にも効きます。
| 項目 | 電圧を上げると | 理由 |
| ★送電電力 | ★★2乗で増える | ★P=V²sinδ/X |
| ★同じ電力での電流 | ★★反比例して減る | ★I=P/(√3 V cosθ) |
| ★線路損失 | ★★2乗に反比例して減る | ★3I²R |
| ★絶縁費用 | ★増える | ★がいしも鉄塔も大きくなる |
電圧を2倍にすれば、同じ電力を送る電流は半分になります——損失は4分の1です。
容量が4倍になり、損失が4分の1になる——きわめて大きな効果になります。
その代わり絶縁が高くつきます——だから電力量が多い幹線でだけ格上げするのです。
日本では500 kV が最高です——1,000 kV 設計の線路もありますが500 kV で運用中。
まとめ
| 誤り | (5) 抵抗接地は送電容量と無関係(地絡保護の話) |
| 決定要因 | 電流容量(熱)+安定度制約(1) |
| 長距離 | 昇圧(P∝V²)(2)・直流送電(4) |
| 短距離 | 太線化で電流容量増(3) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・直流送電の長所短所(架空送電3):【電力】令和7年度下期 A問題11
・損失は電圧の2乗に反比例(架空送電13):【電力】令和4年度上期 A問題6
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