架空送電7【電験3種 電力】ギャロッピングは多導体で発生しやすい!「しにくい」は誤り 令和6年度上期 A問題8 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度上期 A問題8 多導体ほど踊りやすい!ギャロッピングの性質

今回は令和6年度上期 電力科目 A問題8、架空送電線の振動の特徴と対策の誤り選択問題です。微風振動・ギャロッピング・サブスパン振動・スリートジャンプと、振動4種が一気に登場する総まとめ問題です。

狙われたのはギャロッピングと多導体の相性。着氷雪で断面が非対称になった電線に風が当たると揚力が生じて大振幅の振動になりますが、多導体は単導体より発生しやすい——「多導体では発生しにくい」は逆です。

出題のポイント:架空送電線の4つの振動

架空送電線の振動と対策から誤りを選ぶ問題の要点図
ギャロッピングは着氷雪と風で生じ、多導体で発生しやすい振動です。

ギャロッピングは着氷雪で非対称になった電線に風が当たり、揚力で大きく振動する現象です。多導体では発生しやすく、微風振動・サブスパン振動・スリートジャンプとの違いも整理します。

目次

令和6年度上期 電力科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和6年度上期 A問題8 問題文
令和6年度上期 電力科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和6年度上期 A問題8

 架空送電線の振動の特徴と対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 送電線の上下配列にオフセットを設けて、電線どうしが接触しないようにする方法がある。

(2) 電線に当たる一様な微風により、電線の背後に空気の渦が生じ、電線が上下に振動する現象を微風振動といい、これを抑制する方法としてダンパの取付けがある。

(3) 電線に付着した氷雪の断面が非対称になり、これに風が当たることで発生する揚力の影響で、電線が振動する現象をギャロッピングといい、多導体では発生しにくい。

(4) 多導体の送電線に風速10m/sを超える風が当たることで、多導体の素導体が不安定になり電線が振動する現象をサブスパン振動という。

(5) 電線に付着した氷雪が脱落し、その反動で電線がはね上がる現象をスリートジャンプという。

答え誤っている記述は (3)です。

ギャロッピングは多導体で起きやすい

着氷雪した単導体と多導体のギャロッピングの発生しやすさと振動方向を示す解説
多導体では着氷雪による空力的不安定が生じやすく、ギャロッピングが発生しやすくなります。

「ギャロッピングは多導体では発生しにくい」——逆です

★単導体★多導体
★着雪のしかた★1本に付く★★素線どうしの間にも積もる
★断面の形★ねじれて落ちやすい★★スペーサで固定されねじれない
★ギャロッピング★起きにくい★★起きやすい

単導体は、雪が積もると自分でねじれます——すると雪が落ちるのです。

多導体はスペーサで固定されているので、ねじれません——雪が積もり続けることになります。

しかも素線の間にも雪が入り、大きな翼の断面になります——揚力が生じやすいのです。

だから多導体のほうがギャロッピングしやすい——直感と逆なので狙われます

架空送電線の振動と対策を照合

架空送電線の5つの振動と対策を照合し選択肢3を誤りと判定する解説
多導体ではギャロッピングが発生しにくいとする選択肢(3)が誤りです。
名称きっかけ起きる電線
★微風振動★背後にできる渦★★毎秒数 m の弱い風★単導体でも多導体でも
★サブスパン振動★風上の素線が作る乱れた気流★★10 m/s を超えると激しい★★多導体だけ
★ギャロッピング★氷雪で断面が非対称になる★強い風★★多導体で起きやすい
★スリートジャンプ★氷雪が落ちた反動★★風は関係ない★着氷雪した電線

本問は4つすべてが登場する、振動の総まとめ——この表がそのまま答えになります

(1)のオフセットはスリートジャンプ対策——跳ね上がっても上の相に触れないよう水平にずらす

(2)のダンパは微風振動対策——おもりが揺れてエネルギーを吸収します

(4)のサブスパン振動は多導体だけ——問題文も「多導体の送電線に」と限定しています

ギャロッピングへの備え

対策しくみ
★相間スペーサ★★絶縁物で相どうしの接触を物理的に防ぐ
★難着雪リング★★電線に輪を付けて雪を分断し落としやすくする
★ねじれ防止ダンパ★電線をねじれさせて雪を落とす
★オフセット★上下の相を水平にずらして接触を避ける

難着雪リングは、電線に沿って雪が育つのを止めます——途中で切れれば落ちやすいのです。

相間スペーサは、揺れても接触しないようにします——揺れ自体は止められないから。

振幅が数メートルに達するので、確実な対策が要ります——相間距離を超えれば短絡です。

豪雪地帯では標準的に取り付けられます——毎年起きる現象だからです。

⚠️ よくある間違い
(3)の前半「氷雪の断面が非対称…揚力」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「多導体では発生しにくい」
多導体はスペーサで固定されねじれないので、雪が落ちにくい——だから起きやすい
(1)のオフセットを疑ってしまう——スリートジャンプ対策として正しい
(2)の微風振動を疑ってしまう——渦とダンパの説明が正確です。
(4)のサブスパン振動を疑ってしまう——多導体で10 m/s 超という条件が正しい
(5)のスリートジャンプを疑ってしまう——落下の反動で跳ね上がります

⏱️ 本番での進め方
①★ギャロッピングは多導体のほうが起きやすい。
②★多導体はスペーサで固定されねじれず、雪が落ちない。
③★サブスパン振動は多導体だけ、10 m/s 超で激しい。
④★対策は相間スペーサ・難着雪リング・オフセット。

💡 覚え方
「単導体はねじれて雪を落とす、多導体は落とせない」——スペーサで固定されているからです。直感と逆なので、ここは覚えておく——繰り返し狙われる点になります。

振動の空欄補充は令和4年度上期 A問題10架空送電:電線の振動)、名前の取り違えは令和2年度 A問題6架空送電:関連設備)にあります。

(1) オフセットという配置の工夫

電線の並べ方だけで、事故を防げます

配置跳ね上がったとき評価
★真上に並べる★★上の相に接触する恐れ★★危険
★水平にずらす(オフセット)★★すれ違って接触しない★★安全

スリートジャンプでは、電線が数メートル跳ね上がります——真上に相があれば触れてしまうのです。

水平方向にずらしておけば、上下にすれ違うだけ——接触しません

部品を足すのではなく、設計で解決する方法——費用がかからないのが利点です。

豪雪地帯の鉄塔は、腕金の長さが左右で違います——それがオフセットの実際の姿になります。

(2) ダンパが効く相手

微風振動には、なぜダンパが効くのでしょうか

振動振幅周波数ダンパの効果
★微風振動★数 cm★★数〜数十 Hz★★よく効く
★サブスパン振動★数十 cm★1〜3 Hz★スペーサで対応
★ギャロッピング★★数 m★★0.1〜1 Hz★★効きにくい

ダンパは小さく速い振動を吸収する装置です——おもりの慣性を使うから。

ゆっくり大きく揺れる相手には追随できません——エネルギーがけた違いだからです。

だからギャロッピングには別の対策が要ります——相間スペーサや難着雪リング

振幅と周波数で、対策が決まる——そう整理すると覚えやすいのです。

(4) サブスパン振動が多導体だけの理由

素線どうしの位置関係が原因です

段階起きること
★風上の素線に風が当たる
★②★★その背後に乱れた気流ができる
★③★★風下の素線がその気流を受ける
★④★スペーサ間の区間が揺れ始める

単導体では、後ろに別の素線がありません——だから起きようがないのです。

「サブスパン」とはスペーサとスペーサの間のこと——その区間が単位となって揺れます

10 m/s を超えると激しくなります——問題文の条件がそれです。

対策はスペーサの取付間隔を不等にすること——すべて同じだと共振するから。

(5) 電線が跳ね上がる高さ

スリートジャンプは、どれくらい跳ねるのでしょうか

条件跳ね上がり危険
★着雪が軽い★数十 cm★問題になりにくい
★★着雪が重い★★数 m に達する★★上の相に接触する

雪の重みで大きく垂れ下がった状態から戻ります——そのぶん勢いがつくのです。

ばねを押さえていた手を離すのと同じ——元の位置を通り越して跳ね上がります

径間が長いほど、たるみも大きく跳ね上がりも大きい——だから長径間では特に注意です。

一斉に落ちると、隣の径間にも影響します——連鎖的に揺れることになります。

難着雪リングという工夫

ギャロッピングの元を断つ方法です

段階起きること
★電線に輪(リング)を一定間隔で取り付ける
★②★★雪が電線に沿って長く育つのを止める
★③★★短く分断された雪は自重で落ちやすい
★④★★翼のような断面ができない

雪は電線に沿って筒のように成長します——長くつながるほど落ちにくいのです。

途中に輪があれば、そこで切れます——短ければ自分の重さで落ちることになります。

雪が付かなければ、断面が非対称になりません——揚力も生じないのです。

原因そのものを断つ対策——揺れてから抑えるより確実になります。

まとめ

誤り(3) ギャロッピングは多導体で発生しやすい
微風振動微風+カルマン渦→ダンパで吸収(2)
ギャロッピング着氷雪の非対称断面+揚力→大振幅
サブスパン振動多導体+風速10m/s超の後流(4)
スリートジャンプ氷雪脱落の反動(5)・オフセットで接触防止(1)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・振動の名前すり替え問題(架空送電1):【電力】令和7年度下期 A問題8
・がいし・ダンパなど構成部品(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8

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