今回は令和2年度 電力科目 A問題6、架空送電線路に関連する設備の誤り選択問題です。この問題は令和7年度下期A問題8(架空送電1)として選択肢の並びを変えて再出題されました——同じ内容でも答えの番号が変わる典型例です(R02は(1)、R07下は(4))。
誤りの作り方は毎回同じ:「一様な微風→カルマン渦→上下振動」という微風振動の説明に、サブスパン振動という名前を貼る。サブスパン振動は多導体のスペーサ間で起こる別現象です。雷対策(アークホーン・架空地線・埋設地線)の記述は正しいものとして並びます。
令和2年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和2年度 A問題6
架空送電線路に関連する設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電線に一様な微風が吹くと、電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで、この振動による電線の断線防止が図られている。
(2) 超高圧の架空送電線では、スペーサを用いた多導体化により、コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。
(3) 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。
(4) 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており、遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
(5) 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると、鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。

誤りは(1):それは微風振動
「一様な微風が吹くと…上下に振動するサブスパン振動」——名前が違います。
| ★微風振動 | ★サブスパン振動 | |
| ★風速 | ★★毎秒数 m(弱い風) | ★★数〜20 m/s(強め) |
| ★電線 | ★★単導体でも起きる | ★★多導体だけ |
| ★原因 | ★★電線の背後にできる渦 | ★★風上の素線が作る乱れた気流 |
| ★振幅 | ★数 cm と小さい | ★数十 cm |
問題文が述べているのは、明らかに微風振動です——「微風」「背後に渦」「上下に振動」。
それに別の名前を付けたのが誤り——後半のダンパの説明は正しいのです。
サブスパン振動は、多導体でしか起きません——素線どうしの干渉が原因だから。
「サブスパン」とはスペーサとスペーサの間の区間——その区間が揺れるので、この名前です。
4つの振動を整理する
| 名称 | 原因 | 風速 | 起きる電線 |
| ★微風振動 | ★背後にできる渦(カルマン渦) | ★★毎秒数 m の弱い風 | ★単導体でも多導体でも |
| ★サブスパン振動 | ★風下側の電線が乱れた気流を受ける | ★★数〜20 m/s | ★★多導体だけ |
| ★ギャロッピング | ★氷雪が付いて翼のような断面になる | ★強い風 | ★着氷雪した電線 |
| ★スリートジャンプ | ★氷雪が落ちた反動 | ★風は関係ない | ★着氷雪した電線 |
風速と、単導体か多導体かで見分けられます——この2つが決め手です。
弱い風なら微風振動、強めの風で多導体ならサブスパン振動。
氷雪が絡めば、ギャロッピングかスリートジャンプ——風が要るのが前者、落下の反動が後者です。
本問の(2)は「スペーサはギャロッピングの防止にも効果的」——これは正しい記述になります。
(3) アークホーンが守るもの
がいし本体を、アークの熱から守ります。
| アークホーンなし | アークホーンあり | |
| ★放電する場所 | ★★がいしの表面 | ★★ホーンとホーンの間 |
| ★がいしへの影響 | ★★熱で割れることがある | ★★離れているので無事 |
| ★復旧 | ★交換が必要になりうる | ★★そのまま使える |
アークは数千度に達します——磁器でも急な加熱には耐えられません。
ホーンを少し離して付ければ、そこで放電します——がいしから距離が取れるのです。
ホーン自体は溶けても、交換が簡単で安い——身代わりとして働きます。
だから(3)の「アーク放電からがいしを保護する」は正しい。
⚠️ よくある間違い
(1)の後半「ダンパで断線防止」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは振動の名前。
微風→微風振動、多導体で強めの風→サブスパン振動——風速で見分けます。
(2)を疑ってしまう——スペーサは多導体化とギャロッピング防止の両方に効く。
(4)の遮へい角を疑ってしまう——小さいほど効果が大きいで正しい。
(5)の埋設地線を疑ってしまう——接地抵抗を下げて逆フラッシオーバを抑えます。
現象の説明は正しく、名前だけが違う型——名前を隠して読むことです。
⏱️ 本番での進め方
①★微風振動は弱い風、サブスパン振動は多導体で強めの風。
②★サブスパンとはスペーサ間の区間のこと。
③★アークホーンはがいしを熱から守る身代わり。
④現象の説明は正しく名前だけ違う型に注意。
💡 覚え方
「微風なら微風振動」——名前がそのまま条件を表しています。サブスパン振動は多導体だけ——スペーサ間の区間が揺れる現象です。
振動の空欄補充は令和4年度上期 A問題10(架空送電:電線の振動)にあります。
(5) 埋設地線という手段
鉄塔の接地抵抗を、どうやって下げるのでしょうか。
| 方法 | 内容 | 使う場面 |
| ★埋設地線(カウンターポイズ) | ★★裸線を地中に放射状・平行に埋める | ★★岩盤で接地が取りにくい山地 |
| ★接地棒 | ★棒を地中に打ち込む | ★土壌が深い平地 |
| ★接地網 | ★網状に埋設する | ★変電所 |
山地では岩盤が浅く、棒を打ち込めません——だから水平に長く伸ばします。
地表近くに数十メートル埋めることもあります——接触面積を稼ぐためです。
雷のような急峻な電流では、長すぎても効きません——先端まで電流が届く前に終わってしまうから。
だから長さには適切な範囲があります——むやみに伸ばせばよいわけではないのです。
(2) スペーサの二役
多導体には欠かせない部品です。
| 役目 | 守る相手 | しくみ |
| ★間隔の保持 | ★素線どうしの接近・衝突 | ★★電磁吸引力と強風に抗う |
| ★等価半径の確保 | ★コロナ放電 | ★★間隔が保たれてこそ電界が弱まる |
| ★振動の抑制 | ★サブスパン振動・ギャロッピング | ★★取付間隔を不等にして共振を避ける |
間隔が保たれなければ、多導体の意味がありません——くっついてしまえば1本の電線と同じ。
だからスペーサはコロナ対策の一部でもあります——問題文の(2)が両方を挙げる理由です。
取付間隔をわざと不ぞろいにします——すべて同じだと共振しやすいから。
ゴムなどの緩衝材を挟んだ制振型もあります——ギャロッピングにも効くことになります。
(4) 遮へい角の考え方
架空地線が守れる角度には意味があります。
| 遮へい角 | 遮へい失敗率の目安 | 採用 |
| ★45° | ★数% | ★低い電圧階級 |
| ★30° | ★1%前後 | ★★一般的 |
| ★0°以下 | ★★ほぼゼロ | ★★超高圧 |
角度が小さいほど、電線が架空地線の真下に入ります——雷が電線に届きにくくなるのです。
0°以下とは、架空地線が電線より外側にある状態——腕金を長く張り出します。
鉄塔が大きくなり、費用も増えます——それでも重要線路では採用されます。
遮へい失敗とは、架空地線をすり抜けて電線に直撃すること——確率は低くてもゼロではありません。
そのときのために送電用避雷装置がある——重ねて備えるのです。
アークホーンの間隔の決め方
(3)のホーンは、どれくらい離すのでしょうか。
| 間隔 | 起きること | 評価 |
| ★狭すぎる | ★★平常の電圧でも放電してしまう | ★★使えない |
| ★適切 | ★★がいし連より先に放電する | ★★これを狙う |
| ★広すぎる | ★★がいし表面で先に放電する | ★★守れない |
がいし連の長さより、少し短く設定します——そちらが先に放電するようにです。
狭すぎると、平常の運転電圧で放電してしまいます——常時停電になってしまうのです。
広すぎれば、がいしの表面で放電します——守る意味がなくなることになります。
そのつり合いで間隔が決まります——電圧階級ごとに標準値があるのです。
これも絶縁協調の一例——放電する場所をこちらで決めておく。
まとめ
| 誤り | (1) 微風振動の説明をサブスパン振動と呼んでいる |
| 微風振動 | 微風+カルマン渦→上下振動→ダンパ |
| サブスパン振動 | 多導体のスペーサ間・強風の後流 |
| 雷対策 | アークホーン・遮へい角小・埋設地線 |
| 再出題 | R07下問8(架空送電1)と同一内容・番号違い |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同一内容の再出題(架空送電1):【電力】令和7年度下期 A問題8
・振動の発生条件(架空送電14):【電力】令和4年度上期 A問題10

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