架空送電14【電験3種 電力】微風振動は軽い電線・長い径間・大きい張力で発生!令和4年度上期 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和4年度上期 A問題10 軽くて長くて張った電線が揺れる!微風振動の条件

今回は令和4年度上期 電力科目 A問題10、架空送電線の振動に関する空欄補充問題です。微風振動の発生しやすい条件(電線の重さ・径間・張力)まで踏み込んで問われる、振動問題の完成形です。

微風振動が発生しやすい条件は「軽い電線・長い径間・大きい張力」。軽いほど風で揺れやすく、径間が長いほど振動が育ちやすく、張力が大きいほど振動が減衰しにくいから、と理屈で覚えましょう。多導体で10m/s超の風ならサブスパン振動、氷雪+強風ならギャロッピングです。

目次

令和4年度上期 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和4年度上期 A問題10 問題文
令和4年度上期 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和4年度上期 A問題10

 次の文章は、架空送電線の振動に関する記述である。

 架空送電線が電線と直角方向に毎秒数メートル程度の風を受けると、電線の後方に渦を生じて電線が上下に振動することがある。これを微風振動といい、(ア)電線で、径間が(イ)ほど、また、張力が(ウ)ほど発生しやすい。

 多導体の架空送電線において、風速が数〜20m/sで発生し、10m/sを超えると激しくなる振動を(エ)振動という。

 また、その他の架空送電線の振動には、送電線に氷雪が付着した状態で強い風を受けたときに発生する(オ)や、送電線に付着した氷雪が落下したときにその反動で電線が跳ね上がる現象などがある。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)重い長い小さいサブスパンギャロッピング
(2)軽い長い大きいサブスパンギャロッピング
(3)重い短い小さいコロナギャロッピング
(4)軽い短い大きいサブスパンスリートジャンプ
(5)重い長い大きいコロナスリートジャンプ
答え正しい組合せは (2)です。

出題のポイント:5つの条件語で振動を判別

微風振動の3条件とサブスパン振動、ギャロッピングを順番に判別して選択肢2を確定する図
軽い電線・長い径間・大きい張力、多導体のサブスパン振動、氷雪と強風のギャロッピングを照合すると正解は(2)です。

微風振動は、電線と直角方向の毎秒数メートル程度の風で生じるカルマン渦による小振幅・高周波振動です。発生しやすい条件は軽い電線・長い径間・大きい張力です。多導体の数〜20 m/sの風ではサブスパン振動、氷雪付着と強風ではギャロッピング、氷雪落下の反動ではスリートジャンプと判別します。

答えは(2):軽い・長い・大きい・サブスパン・ギャロッピング

カルマン渦による微風振動の仕組み、発生条件、疲労損傷と対策を説明する図
カルマン渦の周期力が電線の固有振動と共振し、クランプ近傍の繰返し曲げ疲労につながります。
空欄入る語理由
★(ア)★★軽い★軽いほど風で揺れやすい
★(イ)★★長い★長いほど揺れが減衰しにくい
★(ウ)★★大きい★張力が大きいほど電線の自己減衰が小さくなりやすい
★(エ)★★サブスパン★多導体で数〜20 m/s
★(オ)★★ギャロッピング★氷雪+強風

(ア)(イ)(ウ)は、すべて「揺れやすい方向」——軽く、長く、強く張るほど振動するのです。

発生条件は弦の音程だけで決めず、風による周期力と電線の自己減衰を合わせて考えます

(エ)は多導体という条件から決まります——サブスパン振動は多導体でしか起きません

(オ)は「氷雪+強い風」から即決——スリートジャンプは落下の反動なので違うのです。

4つの振動を見分ける

名称原因風速起きる電線
★微風振動★背後にできる渦(カルマン渦)★★毎秒数 m の弱い風★単導体でも多導体でも
★サブスパン振動★風下側の電線が乱れた気流を受ける★★数〜20 m/s★★多導体だけ
★ギャロッピング★氷雪が付いて翼のような断面になる★強い風★着氷雪した電線
★スリートジャンプ★氷雪が落ちた反動★風は関係ない★着氷雪した電線

問題文には4つのうち3つが登場しています——微風振動・サブスパン振動・ギャロッピング

最後の「氷雪が落下したときの跳ね上がり」がスリートジャンプ——名前は問われていませんが同じ仲間です。

微風振動が起きるしくみ

電線の後ろに、交互に渦ができます——カルマン渦と呼ばれるものです。

渦が上下交互にできるので、電線が上下に押されます——それが振動の原因になります。

電線の固有振動数と渦の周期が合うと、共振します——だから特定の風速で激しくなるのです。

振幅は数センチと小さいのですが、何百万回も繰り返します——金属疲労で断線に至ることになります。

なぜ軽く・長く・強く張ると振動するのか

弦の固有振動数
\( f=\dfrac{1}{2\ell}\sqrt{\dfrac{T}{\rho}} \)

ℓ:径間 T:張力 ρ:線密度

\( T\ \uparrow\ \Rightarrow\ f\ \uparrow \)
強く張るほど固有振動数が高い
\( \rho\ \downarrow\ \Rightarrow\ f\ \uparrow \)
軽いほど固有振動数が高い
\( \ell\ \uparrow\ \Rightarrow\ f\ \downarrow \)
長いほど固有振動数が低い
★減衰しにくい

カルマン渦の放出周波数が電線の固有振動数の一つに近づくと、共振して微風振動が持続します

軽くて強く張った電線は、まさにその条件——だから(ア)軽い・(ウ)大きいになります。

径間が長いと、いったん揺れ始めたエネルギーが逃げにくい——だから(イ)長いです。

実設備では電線特性と張力を踏まえ、必要に応じてダンパなどの対策を行います

⚠️ よくある間違い
(ア)を「重い」と選んでしまう——重いものは揺れにくいのが直感通りです。
(ウ)を「小さい」と選んでしまう——張力が大きいほど電線の自己減衰が小さくなりやすいため、微風振動が発生しやすくなります。
(エ)を「コロナ」と選んでしまう——コロナ振動は雨滴によるもので多導体とは無関係
(オ)を「スリートジャンプ」と選んでしまう——問題文の最後にその説明が別に書いてあります
(オ)は「氷雪+強い風」、スリートジャンプは「落下の反動」——そこで区別できます

⏱️ 本番での進め方
①★微風振動は軽い・長い・張力大で起きやすい。
②★サブスパン振動は多導体だけ、数〜20 m/s。
③★ギャロッピングは氷雪+強風。
④★スリートジャンプは氷雪が落ちた反動。

💡 覚え方
「微風振動は軽い・長い・張力大」——空力励振と電線の自己減衰で判断します多導体なら「サブスパン」、氷雪+風なら「ギャロッピング」、落下の反動なら「スリートジャンプ」

振動対策の部品は令和4年度下期 A問題8架空送電:構成要素)にあります。

微風振動を抑える方法

断線を防ぐために、いくつかの手立てがあります

対策しくみ付ける場所
★ダンパ★★おもりが揺れてエネルギーを吸収する★クランプの近く
★アーマロッド★★電線に巻いて曲げ応力を分散する★クランプ部
★張力を下げる★固有振動数を下げて共振を避ける★設計段階

ストックブリッジダンパが代表的です——短い鋼より線の両端におもりを付けた形

電線が揺れると、おもりが遅れて揺れます——そのずれがエネルギーを食うのです。

クランプ付近が最も応力が集中する場所——だからそこに付けます

振幅は小さくても、1日に何十万回も繰り返します——金属疲労が積み重なるのです。

ギャロッピングが起きる条件

(オ)の現象を、もう少し詳しく見ましょう

条件内容理由
★着氷雪★★電線の片側だけに付く★断面が翼のような形になる
★風★★強い横風(10 m/s 以上)★揚力が生じる
★結果★★大きくゆっくり上下に揺れる★振幅は数 m に達する

氷が片側に付くと、飛行機の翼のような断面になります——そこに風が当たると揚力が生じるのです。

持ち上がると角度が変わり、今度は下がる——それが繰り返されて大きく揺れます

微風振動が数センチなのに対し、こちらは数メートル——桁が違います

だから相どうしが接触して短絡することがあります——相間スペーサで防ぎます

周期も長く、数秒に1回とゆっくり——目で見て分かる揺れです。

(エ) サブスパン振動の名前の由来

「サブスパン」とは何を指すのでしょうか

意味
★スパン(径間)★鉄塔と鉄塔の間
★★サブスパン★★スペーサとスペーサの間

多導体では、径間の中にスペーサが何個も入ります——それで区間が細かく分かれるのです。

その小区間が単位となって揺れます——だから「サブスパン」振動

風上の素線が作った乱れた気流が、風下の素線に当たります——それが揺れを生むのです。

だから単導体では起きません——後ろに別の素線がないからです。

対策はスペーサの間隔を不等にすること——すべて同じ長さだと共振するから。

スリートジャンプへの備え

問題文の最後に出てくる現象を見ましょう

項目内容
★きっかけ★★付着した氷雪が一気に落ちる
★起きること★★張力が解放されて電線が跳ね上がる
★危険★★上の相に接近・接触して短絡する
★対策★★オフセット(上下の相を水平にずらす)

氷雪の重みで垂れ下がっていた電線が、急に軽くなります——ばねが戻るように跳ね上がるのです。

風は関係ありません——だからギャロッピングとは別の現象です。

跳ね上がったときに上の相に触れれば、短絡します——だから真上に配置しないのです。

水平方向にずらしておけば、跳ね上がってもすれ違います——それがオフセットになります。

まとめ

架空送電線の振動4種と公式選択肢1から5を比較して正解2を示す図
空欄は軽い・長い・大きい・サブスパン・ギャロッピングとなるため、正しい組合せは(2)です。
(ア)(イ)(ウ)軽い電線・長い径間・大きい張力で微風振動
(エ)サブスパン振動(多導体・10m/s超で激化)
(オ)ギャロッピング(氷雪付着+強風)
落下の反動スリートジャンプ(本文末尾の現象)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・振動4種の誤り選択(架空送電7):【電力】令和6年度上期 A問題8
・微風振動とダンパ(架空送電1):【電力】令和7年度下期 A問題8

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