架空送電17【電験3種 電力】線路定数は4つ!表皮効果は交流・D/r大でCは小・π形回路 令和2年度 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 令和2年度 A問題10 抵抗・インダクタンス・静電容量・漏れ!線路定数

今回は令和2年度 電力科目 A問題10、架空送電線路の線路定数に関する空欄補充問題です。R・L・C・漏れコンダクタンスの4定数、表皮効果、D/rと静電容量の関係、集中定数回路(π形・T形)まで、送電線モデルの基礎が一気に問われます。

キーポイントは3つ:①線路定数は抵抗・作用インダクタンス・作用静電容量・漏れコンダクタンスの4つ。②表皮効果は交流の現象(電流が表面に偏り実効抵抗が増える)。③作用静電容量は C=2πε/ln(D/r) なのでD/rが大きいほど小さくなる。等価回路は両端にアドミタンスを置くπ形が頻出です。

目次

令和2年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 令和2年度 A問題10 問題文
令和2年度 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【架空送電】 令和2年度 A問題10

 次の文章は、架空送電線路に関する記述である。

 架空送電線路の線路定数には、抵抗、作用インダクタンス、作用静電容量、(ア)コンダクタンスがある。線路定数のうち、抵抗値は、表皮効果により(イ)のほうが増加する。また、作用インダクタンスと作用静電容量は、線間距離Dと電線半径rの比D/rに影響される。D/rの値が大きくなれば、作用静電容量の値は(ウ)なる。

 作用静電容量を無視できない中距離送電線路では、作用静電容量によるアドミタンスを1か所又は2か所にまとめる(エ)定数回路が近似計算に用いられる。このとき、送電端側と受電端側の2か所にアドミタンスをまとめる回路を(オ)形回路という。

 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)漏れ交流小さく集中π
(2)漏れ交流大きく集中π
(3)伝達直流小さく集中T
(4)漏れ直流大きく分布T
(5)伝達直流小さく分布π
答え正しい組合せは (1)です。

答えは(1):漏れ・交流・小さく・集中・π

空欄入る語理由
★(ア)★★漏れ★がいし表面などを漏れる電流を表す
★(イ)★★交流★表皮効果は交流でだけ生じる
★(ウ)★★小さく★D/r が分母の対数に入る
★(エ)★★集中★1か所か2か所にまとめる
★(オ)★★π★両端に置くとπの字に見える

(ア)は「漏れコンダクタンス」——がいしの表面などを流れる漏れ電流です。

(イ)は「表皮効果」という語から即決——直流では生じません

(オ)は形からの命名——両端に下向きの枝があればπの字になります。

(イ) 表皮効果が起きるしくみ

交流では、電流が電線の外側に偏ります

段階起きること
★交流電流が電線内に磁束を作る
★②★磁束の変化が渦電流を誘導する
★③★★中心では元の電流を打ち消す向きになる
★④★★電流が外側に押しやられ、実効抵抗が増える

直流では磁束が変化しないので、渦電流が生じません——だから表皮効果は交流だけです。

周波数が高いほど、また電線が太いほど強く現れます——50/60 Hz でも数%の増加があります。

中心を使わないなら、空洞にしてもよい——それが中空電線の発想です。

ACSR の中心が鋼でも損失が増えないのも同じ理由——もともと中心には流れないのです。

(エ)(オ) 集中定数回路という近似

本当は線路全体に分布している量を、1点にまとめます

距離扱い方回路
★短距離(〜数十 km)★★C を無視する★R と L の直列だけ
★中距離(〜200 km)★★C を1〜2か所にまとめる★★T形またはπ形
★長距離(200 km 超)★★分布定数として扱う★双曲線関数を使う

T形とπ形の違い

★T形★π形
★C の置き方★★中央に1か所★★両端に2か所
★R・L の置き方★★半分ずつ両側に★★中央にまとめて
★形★Tの字(中央から下へ枝)★πの字(両端から下へ枝)

文字の形が、そのまま回路の形を表しています——だから覚えやすいのです。

π形のほうが実際に近いとされます——両端で分けたほうが分布に近いから。

問題文の「送電端側と受電端側の2か所」がπ形の定義

作用インダクタンスの式と D/r

(ウ)と対になる量も見ておきましょう

作用インダクタンス
\( L=0.05+0.4605\log_{10}\dfrac{D}{r}\ [\mathrm{mH/km}] \)

D/r が対数の中にあり、係数は正

\( D/r\ \uparrow\ \Rightarrow\ L\ \uparrow \)
離すほどインダクタンスは大きい
\( D/r\ \uparrow\ \Rightarrow\ C\ \downarrow \)
離すほど静電容量は小さい
★逆向き

L は分子に、C は分母に log(D/r) が入ります——だから動きが逆になるのです。

0.05 という項は、電線内部の磁束による分——内部インダクタンスと呼ばれます

だから L はゼロにはなりません——どんなに近づけても残るのです。

多導体は等価半径 r を大きくするので L が減ります——安定度が良くなる理由がここにある

漏れコンダクタンスを無視する理由

(ア)の量が、なぜ計算から外されるのでしょうか

状態漏れ電流扱い
★健全時★★きわめて小さい★★無視してよい
★汚損時★増えるが電流に比べれば小さい★通常は無視
★コロナ発生時★★損失として現れる★別に扱う

がいしの絶縁抵抗はきわめて大きい値です——漏れる電流はごくわずか

だから送電電流と比べれば、無視できる大きさです——計算が簡単になるのです。

コロナ損は G として表せますが、天候で大きく変わります——一定値として扱いにくいから。

だから線路定数としては数えても、計算では落とす——4つのうち3つで足りることになります。

線路定数という4つの量

定数記号表すもの大きさ
★抵抗★R★導体の抵抗★無視できない
★作用インダクタンス★L★電流が作る磁束★★最も影響が大きい
★作用静電容量★C★電線と大地・他相との間の容量★長距離で効いてくる
★漏れコンダクタンス★G★がいし表面などの漏れ★★ふつう無視する

4つのうち、G はほとんど無視されます——がいしの絶縁がよいので漏れが小さいから。

短距離では R と L だけ考えます——C の影響が小さいのです。

中距離になると C を無視できなくなります——だから集中定数回路で近似する

長距離では分布定数回路として扱います——まとめられなくなるのです。

(ウ) D/r と作用静電容量の関係

作用静電容量
\( C=\dfrac{0.02413}{\log_{10}(D/r)}\ [\mu\mathrm{F/km}] \)

D/r が分母の対数に入る

\( D/r\ \uparrow\ \Rightarrow\ \log_{10}(D/r)\ \uparrow \)
分母が大きくなる
\( \Rightarrow\ C\ \downarrow \)
だから
★小さくなる
条件D/r作用静電容量作用インダクタンス
★電線を離す★大きい★★小さい★★大きい
★電線を太くする★小さい★★大きい★★小さい

C と L は、いつも逆の動きをします——どちらも D/r の対数で決まるから。

離せば容量が減り、インダクタンスが増える——だから多導体化は L を減らすのです。

多導体は等価半径 r が大きくなるので D/r が小さくなります——C が増え、L が減ることになります。

L が減れば安定度が良くなります——多導体の利点がここにもあるのです。

⚠️ よくある間違い
(ウ)を「大きく」と選んでしまう——D/r は分母の対数に入るので逆です。離せば容量は減ります
(ア)を「伝達」と選んでしまう——そのような線路定数はありません
(イ)を「直流」と選んでしまう——表皮効果は交流でだけ生じます
(エ)を「分布」と選んでしまう——「1か所又は2か所にまとめる」とあるので集中
(オ)を「T」と選んでしまう——T形は中央に1か所まとめる形です。
2か所ならπ、1か所ならT——形で覚えます

⏱️ 本番での進め方
①★線路定数はR・L・C・G の4つ。G は無視されがち。
②★表皮効果は交流でだけ生じる。
③★D/r が大きくなると C は小さく、L は大きくなる。
④★2か所にまとめるのがπ形、1か所ならT形。

💡 覚え方
「πは両端、Tは真ん中」——文字の形がそのまま回路の形です。C と L は D/r に対して逆向きに動く——離せば C 減・L 増になります。

多導体と等価半径は平成20年度 A問題7架空送電:コロナ障害)にあります。

まとめ

(ア)漏れコンダクタンス(4定数の1つ)
(イ)交流(表皮効果で抵抗増加)
(ウ)小さく(C=2πε/ln(D/r))
(エ)集中定数回路(中距離の近似)
(オ)π形(両端にアドミタンス)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・コロナ損と電界(架空送電11):【電力】令和5年度上期 A問題9
・ねん架と線路定数の平衡(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8

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