架空送電34【電験3種 電力】コロナ臨界電圧は気圧が低いほど低下!「高いほど」は誤り 平成20年度 A問題7 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成20年度 A問題7 山の上ほどコロナが起きやすい!気圧との関係

今回は平成20年度 電力科目 A問題7、送配電線路や変電機器等のコロナ障害の誤り選択問題です。コロナ臨界電圧という用語と、気圧・温度との関係が問われる、コロナ問題の中でも理屈寄りの一問です。

コロナ臨界電圧=コロナが発生し始める最小の電圧(表面の電位の傾きが波高値約30kV/cm)。空気の絶縁耐力は気圧が高いほど大きく・温度が高いほど小さくなるので、臨界電圧は気圧が低いほど・温度が高いほど低下します。「気圧が高くなるほど低下」は向きが逆です。

目次

平成20年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成20年度 A問題7 問題文
平成20年度 電力科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成20年度 A問題7

 送配電線路や変電機器等におけるコロナ障害に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1) 導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれ、標準気象条件では電位の傾きが波高値で約30〔kV/cm〕に相当する。

(2) コロナ臨界電圧は、気圧が高くなるほど低下し、絶対温度が高くなるほど低下する。

(3) コロナ発生時は電力損失、導体腐食、電線振動などが生じるおそれがある。

(4) コロナ電流に含まれる高周波成分により、可聴雑音や電波障害が生じる。

(5) 電線間隔と導体等価半径が大きいほどコロナ臨界電圧は高くなり、多導体化は有効な対策である。

答え誤っている記述は (2)です。

誤りは(2):気圧が高いほど臨界電圧は上がる

「気圧が高くなるほど低下し」——逆です

相対空気密度
\( \delta=\dfrac{0.386\,b}{273+t} \)

b:気圧[mmHg] t:温度[℃]

条件δ(相対空気密度)臨界電圧コロナ
★気圧が高い★大きい★★高くなる★起きにくい
★気圧が低い(高地)★小さい★★低くなる★起きやすい
★温度が低い★大きい★★高くなる★起きにくい
★温度が高い★小さい★★低くなる★起きやすい

δ は気圧に比例し、温度に反比例します——式を見れば分かります

臨界電圧は δ に比例します——だから気圧が高いほど臨界電圧も高いのです。

空気が濃いほど、電子が加速しにくくなります——分子にぶつかる回数が多いからです。

だからコロナが起きにくい——物理的にも納得できます

問題文の後半「絶対温度が高くなるほど低下する」は正しい——誤りは前半だけになります。

(1) 30 kV/cm という値

標準気象条件での空気の絶縁破壊電界です

表し方備考
★波高値★約30 kV/cm★★問題文の表記
★実効値★約21 kV/cm★30÷√2

絶縁破壊は瞬間の電界で決まります——だから波高値で表すのです。

実効値で表すと21 kV/cm になります——どちらの表記も出題されます

標準気象条件は気圧760 mmHg、温度20 ℃——そのとき δ=1です。

高地や高温では δ が小さくなり、臨界電圧が下がります——だからコロナが起きやすいことになります。

(3) コロナによる電線振動

意外に思えますが、コロナは振動も起こします

段階起きること
★雨滴が電線の下面にぶら下がる
★②★電界で水滴が引き伸ばされコロナが発生する
★③★水滴が飛ばされ、その反力が電線に働く
★④★電線が上下に振動する(コロナ振動)

水滴が飛ぶ反動で電線が揺れます——ロケットの噴射と同じ原理です。

雨の日にだけ起きる現象——水滴がなければ生じません

だから(3)の「電線振動」は正しい——電力損失・導体腐食と並ぶ障害になります。

導体腐食はオゾンと硝酸による——放電で空気が分解されて生じます

⚠️ よくある間違い
(2)の後半「絶対温度が高くなるほど低下する」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは前半の「気圧が高くなるほど低下し」
δ=0.386b/(273+t) を思い出せば分かります——気圧は分子、温度は分母
(1)の30 kV/cm を疑ってしまう——波高値での標準的な値です。
(3)の「電線振動」を疑ってしまう——コロナ振動として実在します
(5)の多導体化を疑ってしまう——等価半径が大きくなるので有効
1つの記述に2つの条件が並ぶときは、それぞれ確かめることです。

⏱️ 本番での進め方
①★δ=0.386b/(273+t)。気圧は分子、温度は分母。
②★気圧が高いほど、温度が低いほど臨界電圧は高い。
③★コロナ臨界電圧は波高値で約30 kV/cm。
④★コロナ振動は雨滴が飛ばされる反力で起きる。

💡 覚え方
「空気が濃いほど起きにくい」——気圧が高い、温度が低いほど δ が大きいです。式の分子と分母を思い出せば向きが分かります

コロナ対策と多導体は令和元年度 A問題10架空送電:コロナ損)、コロナの障害は平成26年度 A問題9架空送電:コロナ放電)にあります。

(5) 等価半径という考え方

多導体は、なぜ太い電線と同じ効果を持つのでしょうか

構成実際の直径等価半径電界
★単導体★30 mm★15 mm★★強い
★2導体★30 mm ×2(間隔400 mm)★約77 mm★★弱まる
★4導体★30 mm ×4★約130 mm★★さらに弱まる

離して配置すると、全体で1本の太い電線のように振る舞います——電界の分布が広がるのです。

2導体で等価半径が5倍ほどになります——実際の断面積は2倍なのに

だから材料を増やさずに電界を弱められます——これが多導体の本質です。

間隔はスペーサで保ちます——電磁力で吸引し合うので必要になります。

(5)の「電線間隔と導体等価半径が大きいほど」はこの2つを指しています——D と dです。

(4) 電波障害と可聴雑音

コロナ電流には高周波成分が含まれます

障害周波数帯影響起きやすい天候
★ラジオ雑音★中波・短波★★AM放送に雑音★雨天
★テレビ雑音★VHF帯★画面の乱れ★雨天
★可聴雑音★音(数百Hz〜)★★ジージーという音★★雨天

コロナはパルス状の放電なので、幅広い周波数を含みます——だから電波にも音にもなるのです。

雨の日に送電線の下でジージーと聞こえるのがそれ——水滴からの放電です。

近年はAM放送が減り、電波障害の影響は小さくなりました——それでも可聴雑音は住民の苦情になります

だから住宅地に近い区間では、太い電線を選ぶこともあります——電気的には不要でも

(3) コロナによる導体腐食

放電が金属を傷めるしくみを見ましょう

段階起きること
★コロナ放電で空気中の酸素と窒素が分解する
★②★オゾン(O₃)と窒素酸化物ができる
★③★水分と反応して硝酸になる
★④★★金具や電線を腐食させる

オゾンは強い酸化力を持ちます——金属を直接酸化させるのです。

窒素酸化物は水と反応して硝酸になります——これが金属を溶かすことになります。

だから長年コロナが続くと、電線が細くなります——やがて断線の危険もあります。

コロナは損失だけの問題ではありません——設備そのものを傷めるのです。

問題文の(3)が3つ並べているのは、そういう理由——電力損失・導体腐食・電線振動です。

コロナ損の大きさ

実際にどれくらいの電力が失われるのでしょうか

条件コロナ損の目安備考
★晴天時★ごくわずか★臨界電圧以下なら生じない
★雨天時★★晴天時の数十倍★水滴が突起になる
★年間平均★線路損失の数%程度★雨の日数による

晴れていれば、ほとんど損失は生じません——臨界電圧を超えなければゼロだから。

雨になると一気に増えます——水滴のせいで局所的に電界が集中するのです。

だからコロナ損は天候で大きく変わります——設計では雨天時を想定します

抵抗損と違い、電流ではなく電圧で決まる——そこが根本的な違いになります。

無負荷でも電圧がかかっていれば生じる——だから常時の損失になります

まとめ

誤り(2) 臨界電圧は気圧が低くなるほど低下(高くなるほど上昇)
臨界電圧コロナ発生の最小電圧・波高値約30kV/cm(1)
温度絶対温度が高いほど低下(正しい)
損失・腐食・振動(3)・雑音・電波障害(4)
対策間隔大・等価半径大=多導体化(5)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・コロナ損の空欄(架空送電11):【電力】令和5年度上期 A問題9
・コロナの害の誤り選択(架空送電28):【電力】平成26年度 A問題9

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