今回は平成23年度 電力科目 A問題14、電気絶縁材料の誤り選択問題です。直射日光・温度・水分・電界や熱・部分放電と、絶縁材料の劣化要因が総登場します。
決め手は水分と絶縁強度の関係。水分は絶縁材料の大敵で、水分が多いほど絶縁強度は低下します。「水分が少ないほど絶縁強度は低くなる」は向きが逆で誤りです。
平成23年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成23年度 A問題14
電気絶縁材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 直射日光により、絶縁物の劣化が生じる場合がある。
(2) 多くの絶縁材料は温度が高いほど、絶縁強度の低下や誘電損の増加が生じる。
(3) 絶縁材料中の水分が少ないほど、絶縁強度は低くなる傾向がある。
(4) 電界や熱が長時間加わることで、絶縁強度は低下する傾向がある。
(5) 部分放電は、絶縁物劣化の一要因である。

誤りは(3):水分が少ないほど絶縁強度は高い
「水分が少ないほど、絶縁強度は低くなる」——逆です。
| 水分 | 絶縁体の中で起きること | 絶縁強度 |
| ★多い | ★★イオンが動いて漏れ電流が流れる | ★★低くなる |
| ★少ない | ★★電流の通り道がない | ★★高い |
水そのものは、純粋なら電気を通しにくい物質です——けれども不純物が溶けます。
溶けた不純物がイオンになって動きます——それが漏れ電流になります。
だから絶縁材料にとって、水分は大敵です——少ないほどよいのです。
変圧器では乾燥処理をし、真空注油を行います——水分を徹底して除くため。
CVケーブルの水トリー劣化も、水分が原因——だから遮水層を設けます。
絶縁材料を劣化させる要因
| 要因 | 起きること | 本問の選択肢 |
| ★熱 | ★★分子が動きやすくなり絶縁強度が下がる | ★(2)(4) |
| ★電界 | ★★長時間かかると内部で劣化が進む | ★(4) |
| ★水分 | ★★イオンが動いて漏れ電流が流れる | ★(3) |
| ★紫外線 | ★★分子の結合を切る | ★(1) |
| ★部分放電 | ★★空隙で放電し絶縁体を侵食する | ★(5) |
5つの選択肢が、5つの劣化要因に対応しています——よく組まれた問題です。
熱・電界・水分・紫外線・放電——これが絶縁劣化の主な原因になります。
どれも「少ないほどよい」方向です——だから水分だけ逆に書けば誤りと分かります。
実際の劣化は、複数の要因が重なって進みます——熱と水分が同時に働くと特に速いのです。
(2) 温度が上がるとなぜ弱くなるのか
| 温度が上がると | 起きること |
| ★分子の運動 | ★★激しくなり結合が緩む |
| ★イオンの動き | ★★動きやすくなり漏れ電流が増える |
| ★誘電正接 | ★★大きくなり誘電損が増える |
| ★化学反応 | ★★酸化などが速く進む |
金属は温度が上がると抵抗が増えますが、絶縁体は逆——抵抗が下がります。
イオンや電子が動きやすくなるから——金属とは導電のしくみが違うのです。
しかも誘電損が増えて、さらに温度が上がります——悪循環になりうるのです。
だから絶縁材料には許容温度が定められています——そこを超えると寿命が急に縮むから。
⚠️ よくある間違い
(3)を「水分は絶縁を助けそう」と考える——水分は不純物を溶かしてイオンを作ります。絶縁材料の大敵です。
「少ないほど低くなる」の向きを確かめる——正しくは「少ないほど高い」。
(1)の直射日光を疑ってしまう——紫外線が分子の結合を切ります。
(2)の温度を疑ってしまう——絶縁体は温度が上がると弱くなります。
(5)の部分放電を疑ってしまう——絶縁体を侵食する主要な要因です。
すべて「劣化する方向」で書かれている——1つだけ逆向きが誤りになります。
⏱️ 本番での進め方
①★水分が少ないほど絶縁強度は高い。
②★劣化要因は熱・電界・水分・紫外線・部分放電。
③★絶縁体は温度が上がると抵抗が下がる(金属と逆)。
④劣化要因を並べた問題では、向きが逆のものを探す。
💡 覚え方
「水は絶縁の大敵」——不純物を溶かしてイオンを作ります。金属は温度で抵抗増、絶縁体は抵抗減——向きが逆なので注意します。
水トリー劣化は令和7年度上期 A問題10(地中送電:電力ケーブル)にあります。
(1) 紫外線が絶縁物を壊すしくみ
直射日光が劣化を招く理由です。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★紫外線は光としてエネルギーが大きい |
| ★② | ★★高分子の結合を切ってしまう |
| ★③ | ★★表面がひび割れ、もろくなる |
| ★④ | ★そこから水分や汚れが入り劣化が進む |
プラスチックが屋外で白くもろくなるのと同じです——身近に見られる現象。
だから屋外用のケーブルには耐候性のシースを使います——カーボンブラックを混ぜて紫外線を遮るのです。
屋外用の電線が黒いのは、そのため——色にも理由があるのです。
地中や屋内なら、この劣化は起きません——使う場所で要因が変わることになります。
(5) 部分放電が絶縁物を侵食する
小さな放電でも、長い時間には効いてきます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★絶縁体の中に微小な空隙(ボイド)がある |
| ★② | ★★空気は誘電率が小さいので電界が集中する |
| ★③ | ★★しかも絶縁耐力も低いので先に放電する |
| ★④ | ★★放電が絶縁体を少しずつ削っていく |
| ★⑤ | ★★空隙が広がり、やがて全体が破壊される |
1回の放電はごく小さなものです——けれども1秒に何十回も繰り返します。
年単位で積み重なれば、絶縁体を貫くまでになります——だから劣化の主要因です。
だから製造では空隙を作らせないようにします——真空注油や乾式架橋がその工夫。
部分放電の測定は、絶縁診断の有力な手段でもあります——兆しを早く捉えられるから。
絶縁材料の耐熱クラス
(2)(4)の熱による劣化は、規格で管理されています。
| 耐熱クラス | 許容最高温度 | 代表的な材料 |
| ★A種 | ★105 ℃ | ★木綿・紙・絹(油に浸したもの) |
| ★E種 | ★120 ℃ | ★ポリエステル系 |
| ★B種 | ★130 ℃ | ★マイカ・ガラス繊維 |
| ★F種 | ★155 ℃ | ★同上(耐熱性の接着剤を使用) |
| ★H種 | ★180 ℃ | ★シリコーン系 |
温度が上がると寿命が縮むので、上限が決められています——それが耐熱クラスです。
目安として、10 ℃ 上がると寿命が半分になるといわれます——アレニウスの法則と呼ばれる経験則。
だから温度管理が、機器の寿命を決めます——(2)(4)が指摘するとおりです。
許容温度の高い材料ほど高価になります——必要な場所に必要なものを使うのです。
複数の要因が重なると劣化が速い
実際の劣化は、単独では進みません。
| 組合せ | 起きること |
| ★熱+酸素 | ★★酸化が加速し、材料がもろくなる |
| ★水分+電界 | ★★水トリーが伸びて絶縁破壊に至る |
| ★熱+水分 | ★★加水分解が進み、絶縁紙が劣化する |
| ★空隙+電界 | ★★部分放電が起き、絶縁体を侵食する |
1つの要因だけなら、ゆっくりしか進みません——けれども重なると急に速くなるのです。
水分と電界がそろうと、水トリーが伸びます——CVケーブルの代表的な劣化です。
熱と水分がそろうと、絶縁紙が分解します——変圧器の寿命を決める要因。
だから水分の管理と温度の管理が、どちらも重要になります——1つ防げば連鎖が止まるのです。
絶縁劣化を早く見つける
劣化は避けられないので、見つける手段が要ります。
| 方法 | 捉えるもの | 対応する劣化要因 |
| ★絶縁抵抗測定 | ★全体的な絶縁の低下 | ★★水分・汚損 |
| ★誘電正接測定 | ★★tanδ の増加 | ★★吸湿・熱劣化 |
| ★部分放電測定 | ★★微小な放電のパルス | ★★空隙・異物 |
| ★油中ガス分析 | ★★油に溶けたガス | ★★内部の放電・過熱 |
要因ごとに、捉えやすい方法が違います——だから組み合わせて使うのです。
水分なら絶縁抵抗、空隙なら部分放電——狙いを定めて測ります。
変圧器なら、油中ガス分析が内部を教えてくれます——運転を止めずに測れるのが利点。
壊れる前に見つけて、計画的に取り替える——それが予防保全です。
まとめ
| 誤り | (3) 水分が多いほど絶縁強度低下 |
| 直射日光 | 紫外線で劣化(1) |
| 温度 | 高いほど絶縁強度低下・誘電損増加(2) |
| 電界・熱 | 長時間で絶縁強度低下(4) |
| 部分放電 | 劣化の一要因(5) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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