電気材料11【電験3種 電力】気体絶縁材料の電気抵抗率は高い!「低い」は誤り 令和元年度 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 令和元年度 A問題14 気体絶縁材料が再出題!抵抗率は高い方が正解

今回は令和元年度 電力科目 A問題14電気絶縁材料の誤り選択問題です。令和6年度上期 A問題14(電気材料4)とまったく同じ問題で、ボイド(空隙)と部分放電のメカニズムが問われます。

決め手は気体絶縁材料の電気的性質。気体は電気抵抗率が高い(良い絶縁体)一方、誘電率は低い。誘電率が低いためボイド部に電界が集中するのは正しいですが、「電気抵抗率が低い」は誤りです。

目次

令和元年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和元年度 A問題14 問題文
令和元年度 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 令和元年度 A問題14

 電気絶縁材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に電気抵抗率及び誘電率が低いため、固体絶縁材料内部にボイド(空隙、空洞)が含まれると、ボイド部での電界強度が高められやすい。

(2) 気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に絶縁破壊強度が低いが、気圧を高めるか、真空状態とすることで絶縁破壊強度を高めることができる性質がある。

(3) 内部にボイドを含んだ固体絶縁材料では、固体絶縁材料の絶縁破壊が生じなくても、ボイド内の気体が絶縁破壊することで部分放電が発生する場合がある。

(4) 固体絶縁材料は、熱や電界、機械的応力などが長時間加えられることによって、固体絶縁材料内部に微小なボイドが形成されて、部分放電が発生する場合がある。

(5) 固体絶縁材料内部で部分放電が発生すると、短時間に固体絶縁材料の絶縁破壊が生じることはなくても、長時間にわたって部分放電が継続的又は断続的に発生することで、固体絶縁材料の絶縁破壊に至る場合がある。

答え誤っている記述は (1)です。

誤りは(1):気体の電気抵抗率は高い

「電気抵抗率及び誘電率が低いため」——抵抗率は高いのです

項目★気体★液体★固体
★電気抵抗率★★きわめて高い★高い★高い
★誘電率★★低い(空気は約1)★中程度(2〜4)★★高い(2〜6)
★絶縁破壊強度★★低い★中程度★★高い
★放電したあと★★自己回復する★分解してガスが出る★★回復しない

気体は分子がまばらで、自由電子がほとんどありません——だから電気を通さないのです。

抵抗率が高いことは、絶縁材料として当然の性質——空気も絶縁体として使われます

誘電率が低いというのは正しい記述です——空気の比誘電率は約1

だからボイドに電界が集中するのも正しい——誘電率が低いほど電界が強くかかるのです。

2つ並べたうち、片方だけが誤り——それぞれ確かめることになります。

なぜボイドに電界が集中するのか

誘電率が低いほど、そこに強い電界がかかります

直列に並んだ誘電体の電界
\( E_1\varepsilon_1=E_2\varepsilon_2 \)

電束密度が等しいので、誘電率が小さいほうに強い電界

部位比誘電率かかる電界
★固体絶縁物★約2.3★基準
★ボイド(空気)★★約1.0★★2.3倍

直列につながれたコンデンサと同じ関係です——容量が小さいほうに大きな電圧がかかる

だからボイドには2倍以上の電界がかかります——誘電率の比だけ強くなるのです。

しかも空気は絶縁破壊強度も低い——二重に不利なのです。

だから真っ先に放電する——それが部分放電になります。

(2) 気圧と真空、どちらでも強くなる

状態絶縁破壊強度理由
★常圧の空気★基準★—
★高圧の気体★★高くなる★★分子が密で電子が加速できない
★真空★★高くなる★★電離させる分子そのものがない

絶縁破壊は、電子が分子を電離させて起きます——それが電子なだれです。

圧力を上げれば、電子が加速する前にぶつかります——だから電離できないのです。

真空にすれば、そもそも電離させる分子がありません——だからやはり破壊しにくい

方向は正反対なのに、どちらでも強くなります——これがパッシェンの法則が示すことです。

⚠️ よくある間違い
(1)の「誘電率が低い」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「電気抵抗率が低い」
気体は自由電子がほとんどなく抵抗率は高い——絶縁材料として使われる理由です。
(2)の真空を疑ってしまう——電離させる分子がないので強くなります
(3)のボイド放電を疑ってしまう——気体が先に破壊します
(5)の長期の劣化を疑ってしまう——部分放電が積み重なって破壊に至ります
「AおよびBが低い」と2つ並ぶときは別々に確かめる——片方だけ違うことがあります

⏱️ 本番での進め方
①★気体は電気抵抗率が高く、誘電率が低い。
②★誘電率が低いのでボイドに電界が集中する。
③★高圧でも真空でも絶縁破壊強度は高くなる。
④★2つ並んだ性質は別々に確かめる。

💡 覚え方
「抵抗率は高い、誘電率は低い」——向きが逆なので混同しないことです。誘電率が低いからボイドに電界が集中する——これが部分放電の出発点になります。

★この問題は令和6年度上期 A問題14として、5年後にまったく同一の形で再出題されました電気材料:電気絶縁材料(R06上))。

(3) ボイド内の気体が先に破壊する

2つの理由が重なります

理由内容効き方
★誘電率が低い★★電界が2倍以上集中する★★かかる電圧が大きい
★絶縁破壊強度が低い★★空気は固体より弱い★★耐えられる電圧が小さい

強い電界がかかるのに、耐える力は弱い——二重に不利なのです。

だから固体本体が無事でも、ボイドだけが放電します——それが部分放電です。

「部分」とついているのは、全体ではないから——まだ絶縁は保たれているのです。

けれども放置すれば、やがて全体に及びます——それが(5)の内容になります。

(4) 使っているうちにボイドができる

最初はなくても、あとから生じます

原因起きること
★熱★★材料が膨張・収縮を繰り返して微小な隙間ができる
★電界★★分子の結合が切れて小さな空洞になる
★機械的応力★★曲げや振動で内部に亀裂が入る

製造時に完全でも、使ううちに劣化が進みます——それが避けられないのです。

温度の上下は毎日繰り返されます——負荷が変わるたびに膨張と収縮

その積み重ねが、微小なボイドを生みます——そこから部分放電が始まるのです。

だから定期的な診断が要ります——作らせない工夫だけでは足りないのです。

(5) 長い時間をかけて壊れる

部分放電の恐ろしさは、その持続性にあります

時間起きること
★1回の放電★★ごく微量の絶縁体が削られる
★1秒間★★数十回から数百回繰り返される
★1年★★数億回に達する
★数年〜数十年★★空隙が広がり絶縁破壊に至る

1回1回はごくわずかな侵食です——すぐには何も起きません

けれども交流なので、1周期に何度も繰り返します——年単位では数億回になります。

だから「短時間には破壊しなくても」と書かれている——時間をかけて進むのです。

だから定期的な診断で兆しを捉えます——進行が遅いからこそ間に合うのです。

気体絶縁材料の使いどころ

絶縁破壊強度が低くても、使われる理由があります

利点内容活かした機器
★自己回復性★★放電しても元に戻る★架空送電線(空気)
★誘電損がほぼない★★誘電率が1に近い★GIS・ガス絶縁変圧器
★圧力で調整できる★★高めれば強くなる★ガス遮断器
★冷却も担える★対流で熱を運ぶ★ガス絶縁変圧器

放電しても回復するのは、気体だけの性質です——固体は穴が残るから。

だから架空送電線は空気を絶縁に使えます——フラッシオーバしても再閉路で戻るのです。

圧力で強さを調整できるのも気体ならでは——固体や液体にはできない

弱点を補う使い方があるということ——材料は適材適所なのです。

固体絶縁材料の弱点

絶縁破壊強度が高いのに、なぜ問題が起きるのでしょうか

★気体★固体
★絶縁破壊強度★★低い★★高い
★放電したあと★★自己回復する★★穴が残り回復しない
★内部の欠陥★★生じない(流動する)★★ボイドが残る
★劣化★★しない★★時間とともに進む

固体は強い代わりに、いちど壊れると戻りません——そこが最大の弱点です。

しかも内部に欠陥が残ってしまいます——流動しないので抜けないのです。

その欠陥が部分放電の起点になります——本問が扱っている道すじ

だから固体絶縁では、製造の品質が寿命を決めます——あとから直せないのです。

まとめ

誤り(1) 気体の電気抵抗率は高い
誘電率気体は低い→ボイドに電界集中
気体の絶縁破壊高圧ガス・真空でup(2)
ボイド気体が先に破壊→部分放電(3)(4)
部分放電長時間継続で絶縁破壊(5)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・同一問題(電気材料4):【電力】令和6年度上期 A問題14
・電気絶縁材料(電気材料13):【電力】平成29年度 A問題14

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