電気材料4【電験3種 電力】気体絶縁材料の電気抵抗率は高い!「低い」は誤り 令和6年度上期 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 令和6年度上期 A問題14 気体は電気を通しにくい!抵抗率は高いのが正解

今回は令和6年度上期 電力科目 A問題14気体絶縁材料及び固体絶縁材料の一般的な性質の誤り選択問題です。ボイド(空隙)と部分放電のメカニズムが総登場します。

決め手は気体絶縁材料の電気的性質。気体は電気抵抗率が高い(良い絶縁体)一方、誘電率は低い。誘電率が低いためボイド部に電界が集中するのは正しいですが、「電気抵抗率が低い」は誤りです。

出題のポイント:気体絶縁材料と部分放電

気体絶縁材料の抵抗率と誘電率および部分放電から誤りを選ぶ要点図
気体は抵抗率が高く誘電率が低いため、選択肢(1)の抵抗率が低いという記述が誤りです。

気体絶縁材料は電気抵抗率が高く、誘電率は低い材料です。固体絶縁内部のボイドでは低い誘電率のため電界が集中し、気体の絶縁破壊から部分放電が始まることがあります。

目次

気体は抵抗率が高く、誘電率が低い

固体絶縁内のボイドに電界が集中して部分放電が生じる流れと気体の抵抗率・誘電率を示す解説
気体は高抵抗率・低誘電率で、ボイド内では電界集中から部分放電が生じます。

「電気抵抗率及び誘電率が低いため」——2つの向きが違います

性質気体の実際問題文判定
★電気抵抗率★★きわめて高い★★「低い」★★誤り
★誘電率★★低い(約1)★★「低い」★★正しい

気体が絶縁材料として使われるのは、抵抗率が高いから——空気もSF6も絶縁体です。

低かったら、そもそも絶縁材料になりません——言葉として成り立たないのです。

誘電率が低いというほうは正しい——分子がまばらだからです。

そしてその低い誘電率が、ボイドに電界を集中させます——だから後半の結論は正しいのです。

2つ並べたうち片方だけ違う——それぞれ確かめる必要がある型です。

令和6年度上期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和6年度上期 A問題14 問題文
令和6年度上期 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 令和6年度上期 A問題14

 電気絶縁材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に電気抵抗率及び誘電率が低いため、固体絶縁材料内部にボイド(空隙、空洞)が含まれると、ボイド部での電界強度が高められやすい。

(2) 気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に絶縁破壊強度が低いが、気圧を高めるか、真空状態とすることで絶縁破壊強度を高めることができる性質がある。

(3) 内部にボイドを含んだ固体絶縁材料では、固体絶縁材料の絶縁破壊が生じなくても、ボイド内の気体が絶縁破壊することで部分放電が発生する場合がある。

(4) 固体絶縁材料は、熱や電界、機械的応力などが長時間加えられることによって、固体絶縁材料内部に微小なボイドが形成されて、部分放電が発生する場合がある。

(5) 固体絶縁材料内部で部分放電が発生すると、短時間に固体絶縁材料の絶縁破壊が生じることはなくても、長時間にわたって部分放電が継続的又は断続的に発生することで、固体絶縁材料の絶縁破壊に至る場合がある。

答え誤っている記述は (1)です。

5つの選択肢を照合

気体と固体の絶縁材料に関する5つの選択肢を照合し選択肢1を誤りと判定する解説
気体の電気抵抗率を低いとする選択肢(1)が誤りです。
段階起きること本問の選択肢
★熱・電界・機械的応力で微小なボイドができる★(4)
★②★★誘電率が低いボイドに電界が集中する★(1)
★③★★ボイド内の気体が先に絶縁破壊する★(3)
★④★★放電が繰り返され絶縁体を侵食する★(5)
★⑤★★ついに全体が絶縁破壊に至る★(5)

5つの選択肢が、1本の道すじでつながっています——よく組まれた問題です。

ボイドができ、電界が集中し、放電し、侵食される——それが劣化の全体像になります。

1回の放電はごく小さいものです——けれども1秒に何十回も繰り返します

年単位で積み重なれば、絶縁体を貫くまでになります——だから(5)が「長時間にわたって」と書くのです。

ボイドを作らせない工夫

対象工夫ねらい
★変圧器★★真空注油で油を注ぐ★★空気を残さない
★OFケーブル★★大気圧以上に加圧する★★収縮しても空隙ができない
★CVケーブル★★乾式架橋で製造する★★水分も気泡も入れない
★モールド機器★真空中で樹脂を注入する★気泡を巻き込まない

どれも「空気を入れない」ための工夫です——原因を断つのがいちばん確実だから。

真空にしてから注ぐのが基本的な方法——あとから抜くのは難しいのです。

それでも使用中に新たなボイドができることがあります——だから部分放電の測定が要るのです。

作らせない工夫と、見つける手段の両方が必要——それが絶縁の管理になります。

⚠️ よくある間違い
(1)の後半「ボイド部での電界強度が高められやすい」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「電気抵抗率が低い」
気体は抵抗率が高いからこそ絶縁材料になります——言葉として矛盾しているのです。
(2)の高圧・真空を疑ってしまう——どちらでも強くなります
(3)(4)(5)を疑ってしまう——部分放電の道すじとして正確です。
「AおよびBが低い」は別々に確かめる——片方だけ違う型になります。

⏱️ 本番での進め方
①★気体は抵抗率が高く、誘電率が低い。向きが逆。
②★低い誘電率がボイドへの電界集中を生む。
③★部分放電はボイド形成→電界集中→放電→侵食の順に進む。
④★真空注油や乾式架橋でボイドを作らせない。

💡 覚え方
「絶縁材料なのだから抵抗率は高い」——言葉の意味から判断できます誘電率だけが低い——それがボイドに電界を集める原因です。

★この問題は令和元年度 A問題14とまったく同一です電気材料:電気絶縁材料(R01))。5年を隔てての再出題で、選択肢の並びも同じです。

(2) 高圧と真空、正反対でも同じ結果

絶縁破壊強度を高める2つの方向です

状態分子の数なぜ破壊しにくいか
★高圧の気体★★多い★★電子が加速する前にぶつかる
★常圧★中程度★★最も破壊しやすい
★真空★★ほとんどない★★電離させる相手がいない

分子が多すぎても少なすぎても、なだれが起きません——ちょうど中間が最も危険なのです。

だから常圧の空気がいちばん破壊しやすい——意外に思える結果です。

この関係をパッシェンの法則といいます——圧力と距離の積で決まるのです。

真空遮断器は、この真空側を使った機器——SF6とは逆の発想になります。

誘電率が電界の分かれ方を決める

(1)の後半にある電界集中を、式で確かめましょう

直列に並んだ誘電体
\( E_1\varepsilon_1=E_2\varepsilon_2 \)

電束密度が等しいので、誘電率が小さいほうに強い電界

部位比誘電率かかる電界
★架橋ポリエチレン★2.3★基準
★ボイド(空気)★★1.0★★2.3倍
★油浸紙★3.5★基準より弱い

直列につながれたコンデンサと同じ関係です——容量が小さいほうに大きな電圧がかかる

誘電率が小さいほど容量も小さくなります——だからボイドに電圧が集中するのです。

油浸紙のほうが誘電率が高いので、電界は弱まります——だから油で満たすとよいのです。

OFケーブルが油圧をかけるのも、この理屈——空気を残さないためです。

部分放電を見つける方法

進行が遅いからこそ、早く見つければ間に合います

方法捉えるもの特徴
★電気的検出法★★放電に伴う微小な電流パルス★★感度が高いが雑音に弱い
★超音波法★★放電が出す超音波★★位置も特定できる
★油中ガス分析★★分解で生じたガス★油入機器に使える
★紫外線カメラ★放電が出す紫外線★表面の放電に有効

放電は電流・音・光・ガスと、いくつもの形で表に出ます——だから捉える手段も多いのです。

電気的検出法が最も感度が高い方法です——ただし外来の雑音と区別する工夫が要ります

超音波なら、どこで起きているかまで分かります——音の到達時間の差から位置を出すのです。

運転したまま測れる方法が多い——だから予防保全に使えることになります。

気体絶縁材料の使いどころ

絶縁破壊強度が低くても、使われる理由があります

利点内容活かした機器
★自己回復性★★放電しても元に戻る★架空送電線(空気)
★誘電損がほぼない★★誘電率が1に近い★GIS・ガス絶縁変圧器
★圧力で調整できる★★高めれば強くなる★ガス遮断器
★冷却も担える★対流で熱を運ぶ★ガス絶縁変圧器

放電しても回復するのは、気体だけの性質です——固体は穴が残るから。

だから架空送電線は空気を絶縁に使えます——フラッシオーバしても再閉路で戻るのです。

圧力で強さを調整できるのも気体ならでは——固体や液体にはできない

弱点を補う使い方があるということ——材料は適材適所なのです。

固体絶縁材料の弱点

絶縁破壊強度が高いのに、なぜ問題が起きるのでしょうか

★気体★固体
★絶縁破壊強度★★低い★★高い
★放電したあと★★自己回復する★★穴が残り回復しない
★内部の欠陥★★生じない(流動する)★★ボイドが残る
★劣化★★しない★★時間とともに進む

固体は強い代わりに、いちど壊れると戻りません——そこが最大の弱点です。

しかも内部に欠陥が残ってしまいます——流動しないので抜けないのです。

その欠陥が部分放電の起点になります——本問が扱っている道すじ

だから固体絶縁では、製造の品質が寿命を決めます——あとから直せないのです。

まとめ

誤り(1) 気体の電気抵抗率は高い
誘電率気体は低い→ボイドに電界集中
気体の絶縁破壊高圧ガス・真空でup(2)
ボイド気体が先に破壊→部分放電(3)(4)
部分放電長時間継続で絶縁破壊(5)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・固体絶縁材料の劣化(電気材料22):【電力】平成21年度 A問題14
・電気絶縁材料(電気材料11):【電力】令和元年度 A問題14

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