今回は令和5年度下期 電力科目 A問題14、電線の導体の誤り選択問題です。軟銅線・硬銅線・鋼心アルミより線(ACSR)・アルミニウムと、導体材料の使い分けが問われます。
決め手は硬銅線の用途。硬銅線は軟銅線より曲げにくい(硬い)一方、機械的強度が高いので架空送電線の導体として使われます。「電線の導体として使われることはない」は誤りです。
令和5年度下期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 令和5年度下期 A問題14
電線の導体に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 地中ケーブルの銅導体には、伸びや可とう性に優れる軟銅線が用いられる。
(2) 電線の導電材料としての金属には、資源量の多さや導電率の高さが求められる。
(3) 鋼心アルミより線は、鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせたもので、軽量で大きな外径や高い引張強度を得ることができる。
(4) 電気用アルミニウムの導電率は銅よりも低いが、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線の方が銅線より軽い。
(5) 硬銅線は軟銅線と比較して曲げにくく、電線の導体として使われることはない。
出題のポイント:導体材料を性質と用途で結ぶ

導体材料は、導電性だけでなく、軽さ、引張強度、伸び、可とう性を用途と結び付けて判断します。硬銅線は軟銅線より曲げにくい一方、機械的強度が高く、架空送電線の導体として使われます。
誤りは(5):硬銅線は架空送電線に使われる
「電線の導体として使われることはない」——現に使われています。
| 項目 | ★硬銅 | ★軟銅 |
| ★作り方 | ★★引き伸ばしたまま(加工硬化) | ★★焼きなまして結晶を整える |
| ★導電率 | ★★96〜98% | ★★100%(高い) |
| ★引張強さ | ★★大きい | ★★小さい |
| ★可とう性 | ★★曲げにくい | ★★曲げやすい |
| ★用途 | ★★架空送電線・整流子片 | ★★ケーブル・屋内配線 |
「曲げにくい」までは正しい——誤りは「使われることはない」のほうです。
架空送電線は、いちど張ればほとんど曲げません——だから曲げにくくてもかまわないのです。
むしろ自重と風雪に耐える強さが求められます——だから硬銅が向いている。
ケーブルは管に通したり曲げたりします——だからこちらは軟銅です。
使う場所によって、求められる性質が違う——どちらも現役の材料なのです。
選択肢(1)〜(4)が正しい理由

導電率が低いのに、なぜ軽くなるのでしょうか。
| 項目 | ★銅 | ★アルミ | 比 |
| ★導電率 | ★100% | ★★約61% | ★同じ抵抗なら断面積は1.6倍 |
| ★比重 | ★8.9 | ★★2.7 | ★★約3分の1 |
| ★同じ抵抗での質量 | ★1 | ★★約0.5 | ★★半分で済む |
★質量は約半分
太くする必要はありますが、比重が3分の1です——掛け合わせると半分になるのです。
だから架空送電線ではアルミが選ばれます——軽ければ鉄塔も小さくできるから。
太くなることは、コロナ対策としても好都合——電界が弱まるのです。
足りない強度は、中心の鋼より線が補います——それが(3)の鋼心アルミより線です。
選択肢(5)の誤りを見抜く

| 条件 | 理由 | 満たす金属 |
| ★導電率が高い | ★抵抗損を減らす | ★銀・銅・アルミ |
| ★★資源量が多い | ★★大量に使うので安定して手に入る必要がある | ★★銅・アルミ |
| ★加工しやすい | ★線に引き伸ばせる | ★銅・アルミ |
| ★耐食性 | ★数十年屋外で使う | ★銅・アルミ(酸化被膜) |
銀は最も導電率が高いのに、電線には使われません——希少で高価だからです。
何万キロも張るので、資源量が決定的に効きます——だから(2)が「資源量の多さ」を挙げるのです。
アルミは地殻中で最も多い金属元素——だから大量に使えるのです。
性能だけでなく、手に入るかどうかも材料選びの条件——実務ならではの観点になります。
⚠️ よくある間違い
(5)の「曲げにくい」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「使われることはない」。
架空送電線はいちど張れば曲げません——だから硬銅でよいのです。
(1)の軟銅を疑ってしまう——ケーブルは曲げるので軟銅。
(3)の鋼心アルミより線を疑ってしまう——軽量で外径が大きく強度も得られます。
(4)のアルミを疑ってしまう——太くしても比重が3分の1なので軽い。
「〜ことはない」という全否定を疑う——用途が違うだけで現役のことが多いのです。
⏱️ 本番での進め方
①★硬銅線は架空送電線の導体として使われる。
②★曲げない用途なら硬銅、曲げる用途なら軟銅。
③★アルミは断面積1.6倍でも比重3分の1で質量は約半分。
④★導電材料には資源量の多さも求められる。
💡 覚え方
「張るなら硬銅、曲げるなら軟銅」——使う場所で決まります。「使われることはない」という全否定は疑う——用途が違うだけのことが多いのです。
導電材料は繰り返し出題されています——令和6年度下期 A問題14(電気材料:導電材料の銅)にもあります。
(3) 鋼心アルミより線の構造
2種類の金属で役割を分けています。
| 部位 | 材料 | 担うもの |
| ★中心 | ★★亜鉛めっき鋼より線 | ★★引張強度 |
| ★外層 | ★★硬アルミより線 | ★★電流 |
鋼が支え、アルミが流す——役割分担がはっきりしているのです。
鋼は導電率が低いので、電流はほとんど流れません——それでかまわないのです。
表皮効果があるので、電流は外側を流れたがります——中心が鋼でも損失は増えません。
しかもアルミを外側に置くと外径が大きくなります——コロナ対策にもなるのです。
だから「軽量で大きな外径や高い引張強度」——問題文の(3)は正確な記述です。
アルミが架空送電線で選ばれた道すじ
かつては銅が使われていました。
| 時代 | 使われた電線 | 理由 |
| ★初期 | ★硬銅より線 | ★導電率が高い |
| ★★現在 | ★★鋼心アルミより線(ACSR) | ★★軽く、安く、太くできる |
銅は重いので、鉄塔を大きくする必要がありました——建設費がかさむのです。
アルミなら同じ抵抗で質量が半分——鉄塔を小さくできることになります。
しかも資源量が多く、価格も安定しています——大量に使う用途では重要。
太くなることがコロナ対策にもなりました——3つの利点が重なったのです。
だから架空送電線はほぼすべてACSR——銅は地中ケーブルで使われます。
(1) 軟銅が地中ケーブルに向く理由
曲げる場面が何度もあるからです。
| 場面 | 曲げの度合い | 必要な性質 |
| ★ドラムに巻く | ★★何十回も巻く | ★★可とう性 |
| ★管路に通す | ★★曲がった管を通る | ★同上 |
| ★マンホール内 | ★★小さく曲げて収める | ★同上 |
| ★接続部 | ★曲げて処理する | ★折れにくさ |
硬銅では、繰り返し曲げると折れるおそれがあります——加工硬化していてもろいから。
軟銅なら結晶が整っていて粘りがあります——何度曲げても大丈夫なのです。
しかも導電率が100%と高い——曲げやすさと性能の両方が得られる。
引張強さが要らない用途なら、軟銅が有利——地中では自重を支える必要がないから。
導電率と抵抗率の関係
2つの言い方があります。
| 用語 | 意味 | 大小の向き |
| ★導電率 | ★★電気の通しやすさ | ★★大きいほどよい |
| ★抵抗率 | ★★電気の通しにくさ | ★★小さいほどよい |
互いに逆数の関係にあります——だから向きが逆になります。
問題文が「導電率の高さ」と書けば、大きいほうがよい——「抵抗率」なら小さいほうがよい。
読み間違えると、答えが逆になります——どちらの言葉かを確かめることです。
標準軟銅の抵抗率は 1/58 Ω・mm²/m——これを導電率100%とします。
架空送電線の電線が太い理由
電流だけでは決まりません。
| 決める要素 | 内容 | 効いてくる場面 |
| ★許容電流 | ★温度が上限を超えない太さ | ★★短距離・大電流 |
| ★★コロナ対策 | ★★表面の電界を弱める太さ | ★★超高圧 |
| ★機械的強度 | ★自重と風雪に耐える太さ | ★長径間 |
| ★電圧降下 | ★受電端電圧を保てる太さ | ★中距離 |
超高圧では、電流より先にコロナが問題になります——だから電気的に不要でも太くするのです。
アルミなら太くしても軽いので、この要求に応えやすい——それも選ばれた理由です。
1つの条件だけで太さが決まるわけではありません——最も厳しい条件が支配するのです。
だから電線の選定は、いくつもの検討を重ねます。
まとめ
| 誤り | (5) 硬銅線は架空送電線に使われる |
| 地中ケーブル | 軟銅線(1) |
| 導電材料 | 資源量・導電率(2) |
| ACSR | 鋼心+アルミで軽量高強度(3) |
| アルミ | 同抵抗で銅より軽い(4) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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