電気材料6【電験3種 電力】アモルファス鉄心は非晶質構造!「結晶構造」は誤り 令和5年度上期 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 令和5年度上期 A問題14 アモルファスは結晶ではない!非晶質が正解

今回は令和5年度上期 電力科目 A問題14アモルファス鉄心材料を使用した柱上変圧器の誤り選択問題です。低鉄損で省エネな柱上変圧器に使われるアモルファス鉄心の特徴が問われます。

決め手はアモルファスの構造。アモルファス鉄心材料は原子配列に規則性がない非晶質(非結晶)構造です。「結晶構造である」は誤りです。

目次

誤りは(2):アモルファスは非結晶構造

「アモルファス鉄心材料は結晶構造である」——アモルファスとは非晶質という意味です

★けい素鋼帯★アモルファス
★原子の並び方★★規則正しい結晶構造★★不規則な非晶質構造
★作り方★圧延して結晶を整える★★溶けた金属を急冷して固める
★状態のたとえ★整列した兵隊★★ガラスのように乱れた並び

「アモルファス」は「形を持たない」という語源です——結晶の形がないという意味。

溶けた金属を毎秒100万度という速さで冷やします——原子が並ぶ暇なく固まるのです。

だから液体のような乱れた構造のまま固体になります——ガラスと同じ状態です。

この乱れた構造が、鉄損を小さくします——磁壁が動きやすいのです。

名前の意味を知っていれば、それだけで解けます

令和5年度上期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和5年度上期 A問題14 問題文
令和5年度上期 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 令和5年度上期 A問題14

 アモルファス鉄心材料を使用した柱上変圧器の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) けい素鋼帯を使用した同容量の変圧器に比べて、鉄損が大幅に少ない。

(2) アモルファス鉄心材料は結晶構造である。

(3) アモルファス鉄心材料は高硬度で、加工性があまり良くない。

(4) アモルファス鉄心材料は比較的高価である。

(5) けい素鋼帯を使用した同容量の変圧器に比べて、磁束密度が高くできないので、大形になる。

答え誤っている記述は (2)です。

アモルファス変圧器の長所と短所

項目けい素鋼帯と比べて評価
★鉄損★★3分の1程度に減る★★大きな長所
★飽和磁束密度★★低い(1.5T程度対2.0T)★★鉄心が大きくなる
★硬さ★★きわめて硬く加工しにくい★短所
★価格★★高い★短所
★板厚★★0.025 mm 程度と非常に薄い★渦電流損が小さい

鉄損が3分の1になるのは、きわめて大きな効果です——変圧器は常時通電されているから。

柱上変圧器は24時間つながったままです——鉄損は1年中発生し続けるのです。

だから鉄損の削減が、そのまま省エネになります——だから柱上変圧器で採用されたのです。

その代わり大きく高価になります——長所と短所を天秤にかけることになります。

(5) 大形になる理由

変圧器の誘導起電力
\( E=4.44\,f\,N\,B_m\,A \)

Bm:最大磁束密度 A:鉄心断面積

\( B_m\ \downarrow\ \Rightarrow\ A\ \uparrow \)
同じ電圧を得るには
★断面積を増やすしかない
材料飽和磁束密度必要な断面積
★けい素鋼帯★★約2.0 T★基準
★アモルファス★★約1.5 T★★1.3倍ほど必要

磁束密度を高くできないぶん、断面積で稼ぎます——だから鉄心が大きくなるのです。

鉄心が大きくなれば、変圧器全体も大きくなります——重量も増えることになります。

柱上に載せるので、大きさと重さは無視できません——そこが採用の制約になります。

それでも鉄損の削減効果が上回る場合に採用されます

⚠️ よくある間違い
(2)を「金属だから結晶構造だろう」と考える——アモルファスは非晶質という意味です。名前がそのまま答えを示しています
(1)の鉄損を疑ってしまう——3分の1程度に減ります
(3)の加工性を疑ってしまう——きわめて硬く加工しにくいのです。
(4)の価格を疑ってしまう——製法が特殊なので高価
(5)の大形化を疑ってしまう——飽和磁束密度が低いので断面積が要る
専門用語の意味を確かめる——アモルファス=非晶質です。

⏱️ 本番での進め方
①★アモルファスは非晶質(非結晶)構造。
②★鉄損はけい素鋼の3分の1程度。
③★飽和磁束密度が低いので大形になる。
④★硬くて加工しにくく、価格も高い。

💡 覚え方
「アモルファス=形を持たない」——語源がそのまま答えです。鉄損は小さいが、大きく硬く高い——3つの短所とセットで覚えます

変圧器の鉄損と磁心材料は平成20年度 A問題14電気材料:磁心材料)にあります。

柱上変圧器で鉄損が重い理由

なぜアモルファスが柱上変圧器で採用されたのでしょうか

損失いつ発生するか年間の発生時間
★★鉄損(無負荷損)★★電圧がかかっている限り常に★★8,760時間(1年中)
★銅損(負荷損)★★電流が流れているときだけ★負荷率に応じて変わる

柱上変圧器は、夜中でも電圧がかかっています——だから鉄損は1年中発生するのです。

一方で負荷率は平均すると2〜3割程度——銅損は負荷率の2乗で効くから小さくなります。

だから年間の損失では、鉄損の割合が大きくなります——そこを3分の1にできる意味は大きい

全国に何百万台とあるので、合計すると大きな節電——だから採用が進みました

アモルファスの作り方

(2)の非晶質構造が、どうやって作られるか見ましょう

段階起きること
★鉄・ケイ素・ホウ素などを溶かす
★②★★高速で回転する冷却ロールに吹きつける
★③★★毎秒100万度という速さで冷える
★④★★原子が並ぶ暇なく固まる(非晶質)
★⑤★★厚さ0.025 mm 程度の薄い帯ができる

急冷しなければ、原子は規則正しく並んでしまいます——それがふつうの金属です。

並ぶ暇を与えないので、液体のような構造で固まります——だからガラスに似ているのです。

この製法のため、板厚をきわめて薄くできます——渦電流損も小さくなるのです。

けれども薄いので、たくさん積む必要があります——それも大形化の一因になります。

(3) 硬さが加工性を悪くする

非晶質構造は、意外にも硬くなります

★けい素鋼帯★アモルファス
★硬さ★加工しやすい★★ガラスのように硬くもろい
★切断★せん断で切れる★★刃が傷む・割れやすい
★板厚★0.23〜0.35 mm★★0.025 mm と非常に薄い
★積層★枚数が少ない★★10倍以上の枚数が要る

結晶がないので、すべり面がありません——だから変形せずに割れるのです。

ガラスが硬くてもろいのと同じ理由——非晶質に共通する性質です。

しかも薄いので、扱いにも手間がかかります——枚数が10倍以上になるから。

だから製造コストが高くなります——(3)(4)がつながっているのです。

アモルファスが鉄損を減らすしくみ

非晶質構造が、なぜ鉄損を小さくするのでしょうか

要因けい素鋼帯アモルファス
★ヒステリシス損★結晶の境界が磁壁の動きを妨げる★★境界がないので磁壁が動きやすい
★渦電流損★板厚0.23〜0.35 mm★★板厚0.025 mm と薄く、抵抗率も高い
★合計(鉄損)★基準★★3分の1程度

磁化の向きが変わるとき、磁壁という境目が動きます——その動きが妨げられるほど損失が増えるのです。

結晶があると、その境界が引っかかりになります——非晶質にはそれがないのです。

だから保磁力が小さく、ヒステリシス損も小さくなります——軟磁性材料として優れている

板厚が10分の1なので、渦電流損も大きく減ります——2つの効果が重なるのです。

けい素鋼帯という比較の相手

問題文が繰り返し比べている材料です

項目内容
★組成★★鉄にけい素を3%前後加えたもの
★けい素の役目★★抵抗率を上げて渦電流損を減らす
★方向性★★圧延方向に磁化しやすくする(方向性けい素鋼板)
★飽和磁束密度★★約2.0 T と高い

けい素を加えると、抵抗率が上がります——だから渦電流が流れにくくなるのです。

加えすぎるともろくなるので、3%前後が限度——そこにつり合いがあるのです。

方向性けい素鋼板は、圧延方向の性能を高めたもの——変圧器の鉄心はその方向に磁束を通します

飽和磁束密度が高いので、鉄心を小さくできます——そこがアモルファスに勝る点です。

まとめ

誤り(2) アモルファスは非晶質構造
鉄損大幅に少ない(1)
磁束密度飽和が低く大形(5)
加工性高硬度で悪い(3)
価格比較的高価(4)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・変圧器の鉄心材料(電気材料12):【電力】平成30年度 A問題14
・変圧器の鉄心材料(電気材料15):【電力】平成27年度 A問題14

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