今回は平成20年度 電力科目 A問題14、電気機器の鉄心として使用される磁心材料の空欄補充問題です。永久磁石材料との比較で、保磁力・磁束密度の変化・透磁率・ヒステリシス損の関係が問われます。
磁心材料は永久磁石材料と比べて保磁力が小さく、磁界の変化に対して磁束密度が大きく変化し、透磁率が大きい材料が適します。そして保磁力が小さいほどヒステリシスループの面積=ヒステリシス損は小さくなります。
答えは(2):小さく・大きい・大きい・小さい
| 空欄 | 入る語 | 理由 |
| ★(ア) | ★★小さく | ★磁心材料は保磁力が小さい(軟磁性) |
| ★(イ) | ★★大きい | ★外部磁界に敏感に応じる |
| ★(ウ) | ★★大きい | ★透磁率が大きいほど磁束を通しやすい |
| ★(エ) | ★★小さく | ★ループの面積が小さくなる |
4つとも「磁心材料に望ましい方向」です——1つ分かれば他も決まるのです。
磁心は磁束を通す役目なので、通しやすいほどよい——だから透磁率が大きい。
そして磁化の向きを変えやすいほどよい——だから保磁力が小さいのです。
平成20年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成20年度 A問題14
次の文章は、電気機器の鉄心として使用される磁心材料に関する記述である。
電気機器の鉄心として使用される磁心材料は、永久磁石材料と比較して保磁力が(ア)、外部磁界の変化に対する磁束密度の変化が(イ)材料である。また、磁心材料としては透磁率が(ウ)材料が適している。同じ飽和磁束密度を持つ磁心材料同士を比較した場合、保磁力が小さい材料ほどヒステリシス損は(エ)なる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 大きく 大きい 大きい 大きい (2) 小さく 大きい 大きい 小さい (3) 小さく 大きい 小さい 大きい (4) 大きく 小さい 小さい 小さい (5) 小さく 小さい 大きい 小さい ※平成20年度は公式PDF非公開のため、問題文は要旨で掲載しています。

磁心材料と永久磁石材料は正反対
| 項目 | ★磁心材料(軟磁性) | ★永久磁石材料(硬磁性) |
| ★保磁力 | ★★小さい | ★★大きい |
| ★磁束密度の変化 | ★★外部磁界に敏感に応じる | ★★変わりにくい |
| ★透磁率 | ★★大きい | ★小さい |
| ★ヒステリシスループ | ★★細い(面積が小さい) | ★★太い(面積が大きい) |
| ★用途 | ★★変圧器・電動機の鉄心 | ★★永久磁石 |
求められる性質が、まったく逆になっています——用途が違うからです。
永久磁石は、磁化した状態を保ち続けたい——だから保磁力が大きいほうがよい。
磁心は、外部磁界に応じて向きを変えたい——だから保磁力が小さいほうがよいのです。
変圧器の鉄心は、1秒に50〜60回も磁化の向きが変わります——そのたびに逆らわれては困るのです。
だから軟磁性材料(保磁力が小さい)が使われます。
(エ) ヒステリシス損とループの面積
| 保磁力 | ヒステリシスループ | 1周で失うエネルギー | ヒステリシス損 |
| ★小さい | ★★細い | ★★小さい | ★★小さい |
| ★大きい | ★★太い | ★★大きい | ★★大きい |
ヒステリシスループの面積が、1周で失うエネルギーです——それが熱になるのです。
保磁力が小さければ、ループは横に細くなります——面積が小さいことになります。
だから保磁力が小さい材料ほど、ヒステリシス損も小さい——(エ)は「小さく」です。
周波数にも比例するので、1秒あたりの周回数だけ増えます——だから式に f が入るのです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「大きく」としてしまう——永久磁石材料と比較しているので小さいです。問題文の「比較して」を読み落とさない。
(イ)を「小さい」としてしまう——磁心は外部磁界に敏感に応じます。
(ウ)を「小さい」としてしまう——磁束を通す役目なので透磁率は大きいほどよい。
(エ)を「大きく」としてしまう——ループの面積が小さくなるので損失も小さい。
4つとも「磁心に望ましい方向」——1つ決まれば他も決まります。
⏱️ 本番での進め方
①★磁心材料は保磁力が小さく透磁率が大きい(軟磁性)。
②★永久磁石材料はその正反対(硬磁性)。
③★ヒステリシスループの面積が1周の損失。
④★保磁力が小さいほどループが細くヒステリシス損も小さい。
💡 覚え方
「磁心は素直、磁石は頑固」——保磁力が小さいか大きいかです。4つの空欄はすべて同じ方向を向いている——1つ決まれば全部決まります。
アモルファス鉄心は令和5年度上期 A問題14(電気材料:アモルファス変圧器)にあります。
鉄損は2つに分かれる
ヒステリシス損だけではありません。
| 損失 | 原因 | 減らす方法 |
| ★ヒステリシス損 | ★★磁化の向きを変えるのに要るエネルギー | ★★保磁力の小さい材料を使う |
| ★渦電流損 | ★★鉄心内に生じる渦電流 | ★★薄い鋼板を積む・けい素を加える |
鋼板を薄くすれば、渦電流の通り道が細くなります——厚さの2乗で効くのです。
けい素を加えると、抵抗率が上がって渦電流が減ります——だから「けい素鋼板」なのです。
ヒステリシス損は材料の保磁力で決まります——だから軟磁性材料を選ぶのです。
2つを合わせて鉄損——対策の系統が別になります。
(ウ) 透磁率が大きいと何がよいのか
磁束を通しやすいことの意味を見ましょう。
| 透磁率 | 同じ電流での磁束 | 必要な励磁電流 |
| ★大きい | ★★多く通る | ★★少なくて済む |
| ★小さい | ★★少ない | ★★多く要る |
透磁率が大きければ、少ない電流で多くの磁束が作れます——だから励磁電流が小さくて済むのです。
励磁電流が小さければ、その分の損失も減ります——効率が上がることになります。
空気の透磁率を1とすると、けい素鋼は数千倍——だから鉄心を使うのです。
磁束の通り道を作るのが、鉄心の役目——通しやすいほどよいのは当然です。
ヒステリシスループを読む
グラフの形が、材料の性質を表しています。
| 軸・点 | 意味 |
| ★横軸 H | ★外部から加える磁界 |
| ★縦軸 B | ★材料中の磁束密度 |
| ★★保磁力 Hc | ★★磁束密度をゼロに戻すのに要る逆向きの磁界 |
| ★残留磁気 Br | ★磁界をゼロにしても残る磁束密度 |
| ★★ループの面積 | ★★1周で失うエネルギー(ヒステリシス損) |
保磁力は、横軸との交点までの距離です——小さいほどループが細くなるのです。
細いループは面積も小さく、損失も小さい——だから磁心材料に向くのです。
永久磁石は逆に、太いループが望ましい——磁化を保ちたいから。
1枚のグラフから、用途の違いまで読み取れます——形を覚えておくと便利です。
磁心材料の実際
どんな材料が使われているのでしょうか。
| 材料 | 特徴 | 用途 |
| ★けい素鋼板 | ★★安価で飽和磁束密度が高い(約2.0 T) | ★★変圧器・電動機の標準 |
| ★アモルファス | ★★鉄損が3分の1だが高価で大形 | ★柱上変圧器 |
| ★フェライト | ★★抵抗率が高く高周波でも損失が小さい | ★★高周波用トランス |
| ★パーマロイ | ★★透磁率がきわめて大きい | ★計器用変成器・磁気シールド |
どれも保磁力が小さい軟磁性材料です——用途に応じて選び分けるのです。
フェライトは酸化物なので、抵抗率がきわめて高い——だから高周波でも渦電流損が小さい。
パーマロイは透磁率が数万倍にもなります——わずかな磁界にも応じるのです。
問題文の「透磁率が大きい材料が適している」が、この選び方の基準になります。
(イ) 外部磁界への応じ方
磁心材料が敏感であるべき理由を見ましょう。
| 用途 | 求められること | 必要な性質 |
| ★変圧器の鉄心 | ★★1秒に50〜60回、磁束の向きが変わる | ★★素早く応じる(保磁力が小さい) |
| ★電動機の鉄心 | ★★回転磁界に追随する | ★★同上 |
| ★永久磁石 | ★★向きを変えたくない | ★★保磁力が大きい |
変圧器の鉄心は、絶えず磁化の向きが変わります——50 Hz なら1秒に50往復です。
そのたびに抵抗されては、エネルギーが失われます——それがヒステリシス損。
だから素直に応じる材料がよい——それが(イ)の「大きい」の意味です。
永久磁石は正反対で、頑固なほうがよい——用途が求める性質は逆になります。
まとめ
| (ア) | 小さく(保磁力) |
| (イ) | 大きい(磁束密度の変化) |
| (ウ) | 大きい(透磁率) |
| (エ) | 小さく(ヒステリシス損∝ループ面積) |
| 答え | (2) |
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