電気材料23【電験3種 電力】磁心材料は保磁力が小さく透磁率が大きい!ヒステリシス損も小さく 平成20年度 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 平成20年度 A問題14 磁心は保磁力小・透磁率大!磁石とは正反対

今回は平成20年度 電力科目 A問題14、電気機器の鉄心として使用される磁心材料の空欄補充問題です。永久磁石材料との比較で、保磁力・磁束密度の変化・透磁率・ヒステリシス損の関係が問われます。

磁心材料は永久磁石材料と比べて保磁力が小さく、磁界の変化に対して磁束密度が大きく変化し、透磁率が大きい材料が適します。そして保磁力が小さいほどヒステリシスループの面積=ヒステリシス損は小さくなります。

目次

答えは(2):小さく・大きい・大きい・小さい

空欄入る語理由
★(ア)★★小さく★磁心材料は保磁力が小さい(軟磁性)
★(イ)★★大きい★外部磁界に敏感に応じる
★(ウ)★★大きい★透磁率が大きいほど磁束を通しやすい
★(エ)★★小さく★ループの面積が小さくなる

4つとも「磁心材料に望ましい方向」です——1つ分かれば他も決まるのです。

磁心は磁束を通す役目なので、通しやすいほどよい——だから透磁率が大きい

そして磁化の向きを変えやすいほどよい——だから保磁力が小さいのです。

平成20年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 平成20年度 A問題14 問題文
平成20年度 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 平成20年度 A問題14

 次の文章は、電気機器の鉄心として使用される磁心材料に関する記述である。

 電気機器の鉄心として使用される磁心材料は、永久磁石材料と比較して保磁力が(ア)、外部磁界の変化に対する磁束密度の変化が(イ)材料である。また、磁心材料としては透磁率が(ウ)材料が適している。同じ飽和磁束密度を持つ磁心材料同士を比較した場合、保磁力が小さい材料ほどヒステリシス損は(エ)なる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)大きく大きい大きい大きい
(2)小さく大きい大きい小さい
(3)小さく大きい小さい大きい
(4)大きく小さい小さい小さい
(5)小さく小さい大きい小さい

※平成20年度は公式PDF非公開のため、問題文は要旨で掲載しています。

答え正しい組合せは (2)です。

磁心材料と永久磁石材料は正反対

項目★磁心材料(軟磁性)★永久磁石材料(硬磁性)
★保磁力★★小さい★★大きい
★磁束密度の変化★★外部磁界に敏感に応じる★★変わりにくい
★透磁率★★大きい★小さい
★ヒステリシスループ★★細い(面積が小さい)★★太い(面積が大きい)
★用途★★変圧器・電動機の鉄心★★永久磁石

求められる性質が、まったく逆になっています——用途が違うからです。

永久磁石は、磁化した状態を保ち続けたい——だから保磁力が大きいほうがよい

磁心は、外部磁界に応じて向きを変えたい——だから保磁力が小さいほうがよいのです。

変圧器の鉄心は、1秒に50〜60回も磁化の向きが変わります——そのたびに逆らわれては困るのです。

だから軟磁性材料(保磁力が小さい)が使われます

(エ) ヒステリシス損とループの面積

ヒステリシス損
\( W_h=k_h\,f\,B_m^{1.6} \)

スタインメッツの実験式

保磁力ヒステリシスループ1周で失うエネルギーヒステリシス損
★小さい★★細い★★小さい★★小さい
★大きい★★太い★★大きい★★大きい

ヒステリシスループの面積が、1周で失うエネルギーです——それが熱になるのです。

保磁力が小さければ、ループは横に細くなります——面積が小さいことになります。

だから保磁力が小さい材料ほど、ヒステリシス損も小さい——(エ)は「小さく」です。

周波数にも比例するので、1秒あたりの周回数だけ増えます——だから式に f が入るのです。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「大きく」としてしまう——永久磁石材料と比較しているので小さいです。問題文の「比較して」を読み落とさない
(イ)を「小さい」としてしまう——磁心は外部磁界に敏感に応じます
(ウ)を「小さい」としてしまう——磁束を通す役目なので透磁率は大きいほどよい
(エ)を「大きく」としてしまう——ループの面積が小さくなるので損失も小さい
4つとも「磁心に望ましい方向」——1つ決まれば他も決まります

⏱️ 本番での進め方
①★磁心材料は保磁力が小さく透磁率が大きい(軟磁性)。
②★永久磁石材料はその正反対(硬磁性)。
③★ヒステリシスループの面積が1周の損失。
④★保磁力が小さいほどループが細くヒステリシス損も小さい。

💡 覚え方
「磁心は素直、磁石は頑固」——保磁力が小さいか大きいかです。4つの空欄はすべて同じ方向を向いている——1つ決まれば全部決まります

アモルファス鉄心は令和5年度上期 A問題14電気材料:アモルファス変圧器)にあります。

鉄損は2つに分かれる

ヒステリシス損だけではありません

損失原因減らす方法
★ヒステリシス損★★磁化の向きを変えるのに要るエネルギー★★保磁力の小さい材料を使う
★渦電流損★★鉄心内に生じる渦電流★★薄い鋼板を積む・けい素を加える
渦電流損
\( W_e=k_e\,(t\,f\,B_m)^2 \)

t:鋼板の厚さ。厚さの2乗に比例する

鋼板を薄くすれば、渦電流の通り道が細くなります——厚さの2乗で効くのです。

けい素を加えると、抵抗率が上がって渦電流が減ります——だから「けい素鋼板」なのです。

ヒステリシス損は材料の保磁力で決まります——だから軟磁性材料を選ぶのです。

2つを合わせて鉄損——対策の系統が別になります。

(ウ) 透磁率が大きいと何がよいのか

磁束を通しやすいことの意味を見ましょう

磁束密度
\( B=\mu H \)

同じ磁界 H でも透磁率 μ が大きいほど B が大きい

透磁率同じ電流での磁束必要な励磁電流
★大きい★★多く通る★★少なくて済む
★小さい★★少ない★★多く要る

透磁率が大きければ、少ない電流で多くの磁束が作れます——だから励磁電流が小さくて済むのです。

励磁電流が小さければ、その分の損失も減ります——効率が上がることになります。

空気の透磁率を1とすると、けい素鋼は数千倍——だから鉄心を使うのです。

磁束の通り道を作るのが、鉄心の役目——通しやすいほどよいのは当然です。

ヒステリシスループを読む

グラフの形が、材料の性質を表しています

軸・点意味
★横軸 H★外部から加える磁界
★縦軸 B★材料中の磁束密度
★★保磁力 Hc★★磁束密度をゼロに戻すのに要る逆向きの磁界
★残留磁気 Br★磁界をゼロにしても残る磁束密度
★★ループの面積★★1周で失うエネルギー(ヒステリシス損)

保磁力は、横軸との交点までの距離です——小さいほどループが細くなるのです。

細いループは面積も小さく、損失も小さい——だから磁心材料に向くのです。

永久磁石は逆に、太いループが望ましい——磁化を保ちたいから。

1枚のグラフから、用途の違いまで読み取れます——形を覚えておくと便利です。

磁心材料の実際

どんな材料が使われているのでしょうか

材料特徴用途
★けい素鋼板★★安価で飽和磁束密度が高い(約2.0 T)★★変圧器・電動機の標準
★アモルファス★★鉄損が3分の1だが高価で大形★柱上変圧器
★フェライト★★抵抗率が高く高周波でも損失が小さい★★高周波用トランス
★パーマロイ★★透磁率がきわめて大きい★計器用変成器・磁気シールド

どれも保磁力が小さい軟磁性材料です——用途に応じて選び分けるのです。

フェライトは酸化物なので、抵抗率がきわめて高い——だから高周波でも渦電流損が小さい

パーマロイは透磁率が数万倍にもなります——わずかな磁界にも応じるのです。

問題文の「透磁率が大きい材料が適している」が、この選び方の基準になります。

(イ) 外部磁界への応じ方

磁心材料が敏感であるべき理由を見ましょう

用途求められること必要な性質
★変圧器の鉄心★★1秒に50〜60回、磁束の向きが変わる★★素早く応じる(保磁力が小さい)
★電動機の鉄心★★回転磁界に追随する★★同上
★永久磁石★★向きを変えたくない★★保磁力が大きい

変圧器の鉄心は、絶えず磁化の向きが変わります——50 Hz なら1秒に50往復です。

そのたびに抵抗されては、エネルギーが失われます——それがヒステリシス損

だから素直に応じる材料がよい——それが(イ)の「大きい」の意味です。

永久磁石は正反対で、頑固なほうがよい——用途が求める性質は逆になります。

まとめ

(ア)小さく(保磁力)
(イ)大きい(磁束密度の変化)
(ウ)大きい(透磁率)
(エ)小さく(ヒステリシス損∝ループ面積)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・変圧器の鉄心材料(電気材料12):【電力】平成30年度 A問題14
・変圧器の鉄心材料(電気材料15):【電力】平成27年度 A問題14

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