今回は平成19年度 電力科目 A問題14、六ふっ化硫黄(SF6)ガスの誤り選択問題です。絶縁破壊電圧・化学的安定性・温室効果・比重・消弧能力と、SF6の性質が総登場します。
決め手はSF6の比重。SF6は硫黄1つとふっ素6つからなる重い分子で、比重は空気の約5倍もあります。「比重は空気と比べて小さい」は誤りです。
平成19年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成19年度 A問題14
六ふっ化硫黄(SF6)ガスに関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 絶縁破壊電圧は、同じ圧力の空気と比べて高い。
(2) 無色・無臭であり、化学的にも安定している。
(3) 温室効果ガスの一種である。
(4) 比重は、空気と比べて小さい。
(5) アークの消弧能力は、空気より優れている。
※平成19年度は公式PDF非公開のため、問題文は要旨で掲載しています。

誤りは(4):SF6は空気より約5倍重い
「比重は、空気と比べて小さい」——逆です。
| 気体 | 分子量 | 空気との比 |
| ★空気 | ★約29 | ★1(基準) |
| ★SF₆ | ★★146 | ★★約5倍 |
硫黄1個とふっ素6個からできています——だから分子量が大きいのです。
気体の比重は、分子量の比でほぼ決まります——146÷29 で約5倍になります。
だからSF6は空気より重く、低いところにたまります——これは安全上とても重要です。
ピットや地下室に滞留すると、酸欠の危険があります——それ自体は無毒でも、酸素を追い出すから。
だから作業前には換気し、酸素濃度を測ります。
SF6ガスの性質をまとめる
| 性質 | 内容 | 空気との比較 |
| ★絶縁破壊電圧 | ★★同じ圧力で高い | ★★約2〜3倍 |
| ★消弧能力 | ★★アークを消す力が強い | ★★約100倍 |
| ★化学的性質 | ★★きわめて安定・不活性 | ★無色・無臭・不燃性 |
| ★比重 | ★★重い | ★★約5倍 |
| ★温室効果 | ★★きわめて大きい | ★★二酸化炭素の約2万倍 |
(1)(2)(3)(5)は、この表のとおり——いずれも正しい記述です。
優れた性質が多いので、ガス絶縁機器に広く使われます——GISやガス遮断器。
その一方で、温室効果と重さという注意点があります——どちらも安定性と分子量から来るのです。
だから性質を1つずつ覚えるより、原因から辿るほうが確実。
SF6を使う機器
| 機器 | SF6の役目 | 利点 |
| ★ガス遮断器(GCB) | ★★アークを消す | ★★空気遮断器より小型で静か |
| ★ガス絶縁開閉装置(GIS) | ★★機器全体を絶縁する | ★★変電所の面積が数分の1になる |
| ★ガス絶縁変圧器 | ★★油の代わりに絶縁する | ★★不燃なので屋内に置ける |
GISは、変電所を劇的に小さくしました——都市部では欠かせない技術です。
絶縁破壊電圧が高いので、間隔を詰められます——だから小さくできるのです。
ガス絶縁変圧器は油を使わないので燃えません——ビルの地下にも置けることになります。
どれもSF6の性質を活かした機器——代わりになるガスがまだ乏しいのです。
⚠️ よくある間違い
(4)を「無色で軽そう」と考える——分子量146は空気の約5倍です。目に見えないだけで重いのです。
低いところにたまるので酸欠の危険があります——安全上の重要な注意点。
(1)の絶縁破壊電圧を疑ってしまう——空気の約2〜3倍で正しい。
(2)の化学的安定性を疑ってしまう——きわめて安定です。
(3)の温室効果を疑ってしまう——京都議定書の対象ガス。
「大きい」「小さい」の向きを確かめる——本問はそれだけで解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★SF6の分子量は146で空気の約5倍重い。
②★低いところにたまるので酸欠に注意。
③★絶縁破壊電圧は空気の約2〜3倍、消弧能力は約100倍。
④★GIS・ガス遮断器・ガス絶縁変圧器に使われる。
💡 覚え方
「重い・強い・安定・温暖化」——SF6はこの4つで覚えます。分子量146は空気の29の約5倍——数字を1つ知っていれば確かめられます。
★SF6は2回出題されています——平成26年度 A問題14(電気材料:SF6ガス)がもう一方です。そちらは化学的安定性が誤りでした。
SF6を扱うときの注意
比重が重いことが、安全上の要点になります。
| 場面 | 危険 | 対処 |
| ★ピットや地下室 | ★★底にたまって酸素を追い出す | ★★換気と酸素濃度の測定 |
| ★機器の開放時 | ★★分解生成物が有毒 | ★★保護具の着用 |
| ★点検・廃棄時 | ★★大気放出は温暖化につながる | ★★必ず回収する |
SF6そのものは無毒ですが、酸素を追い出します——だから酸欠の危険があるのです。
アークにさらされると分解生成物ができます——こちらは有毒なので注意が要ります。
だから遮断器を開ける作業には、決まった手順があります——換気と保護具が基本です。
回収も義務づけられています——京都議定書の対象ガスだからです。
(1) 絶縁破壊電圧が高い理由
ふっ素の性質から説明できます。
| 段階 | 空気中 | SF6中 |
| ★電子が加速される | ★★そのまま加速し続ける | ★★SF6分子に捕まる |
| ★電子なだれ | ★★起きやすい | ★★起きにくい |
| ★絶縁破壊 | ★★低い電圧で起きる | ★★高い電圧まで耐える |
絶縁破壊は、電子なだれによって起きます——電子が次々に分子を電離させるのです。
SF6は自由電子を捕まえて負イオンにします——ふっ素の電気陰性度が高いから。
負イオンは重いので、加速されにくい——だからなだれが続きません。
この1つの性質から、消弧能力も絶縁性能も出てきます——覚えるのは1つで足りるのです。
SF6の圧力と絶縁性能
封入する圧力にも意味があります。
| 圧力 | 絶縁破壊電圧 | 液化温度 | 採用 |
| ★0.1 MPa(大気圧) | ★空気の約2〜3倍 | ★★問題にならない | ★— |
| ★0.4〜0.6 MPa | ★★さらに高い | ★★−30 ℃ 前後 | ★★機器で一般的 |
| ★さらに高圧 | ★★もっと高い | ★★液化しやすくなる | ★寒冷地では使えない |
圧力を上げるほど、絶縁性能は高くなります——分子の密度が増えるから。
けれども上げすぎると、寒いときに液化します——液体になれば絶縁性能が保てません。
だから寒冷地では圧力を抑えるか、混合ガスを使います——窒素を混ぜて液化を防ぐのです。
そのつり合いで、封入圧力が決まります——設置場所によって変わることになります。
SF6が使われる機器
優れた性質が、どこで活きているか見ましょう。
| 機器 | SF6の役目 | 利点 |
| ★ガス遮断器(GCB) | ★★アークを消す | ★★空気遮断器より小型で静か |
| ★ガス絶縁開閉装置(GIS) | ★★機器全体を絶縁する | ★★変電所の面積が数分の1になる |
| ★ガス絶縁変圧器 | ★★油の代わりに絶縁する | ★★不燃なので屋内に置ける |
GISは、変電所を劇的に小さくしました——都市部では欠かせない技術です。
絶縁破壊電圧が高いので、間隔を詰められます——だから小さくできるのです。
ガス絶縁変圧器は油を使わないので燃えません——ビルの地下にも置けることになります。
どれもSF6の性質を活かした機器——代わりになるガスがまだ乏しいのです。
SF6を減らす取り組み
温室効果ガスなので、使用量の削減が進んでいます。
| 取り組み | 内容 |
| ★回収の徹底 | ★★点検・廃棄時に必ず回収する |
| ★機器の小型化 | ★★封入量そのものを減らす |
| ★漏えいの管理 | ★★圧力を監視して漏れを早く見つける |
| ★代替ガス | ★★ドライエアや混合ガスの採用 |
使用量を減らすには、まず漏らさないことです——圧力監視で早く気づけるのです。
機器を小型化すれば、封入量も減ります——技術の進歩がそのまま削減になる。
絶縁だけならドライエアで代替できる場面もあります——遮断器では消弧能力が要るので難しい。
優れた性質と環境負荷を、どう両立させるか——いまも続いている課題です。
まとめ
| 誤り | (4) 比重は空気の約5倍 |
| 絶縁破壊電圧 | 空気より高い(1) |
| 化学的性質 | 無色・無臭・安定(2) |
| 温室効果 | 温暖化係数が非常に大きい(3) |
| 消弧能力 | 空気より優れる(5) |
| 答え | (4) |
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