今回は平成26年度 電力科目 A問題14、六ふっ化硫黄(SF6)ガスの誤り選択問題です。消弧能力・温室効果・絶縁媒体・化学的安定性と、SF6の特徴が問われます。
決め手はSF6の化学的安定性。SF6は無色・無臭で化学的に安定(不活性)なガスです。「化学的な安定性に欠ける」は誤りです。
誤りは(2):SF6は化学的にきわめて安定
「化学的な安定性に欠ける」——逆です。
| 性質 | 内容 | 空気との比較 |
| ★絶縁破壊電圧 | ★★同じ圧力で高い | ★★約2〜3倍 |
| ★消弧能力 | ★★アークを消す力が強い | ★★約100倍 |
| ★化学的性質 | ★★きわめて安定・不活性 | ★無色・無臭・不燃性 |
| ★比重 | ★★重い | ★★約5倍 |
| ★温室効果 | ★★きわめて大きい | ★★二酸化炭素の約2万倍 |
SF6は、硫黄原子のまわりをふっ素原子6個が囲んだ形です——すきまなく覆われているのです。
だから他の物質と反応しにくい——不活性ガスに近い振る舞いをします。
金属を腐食させず、可燃性もありません——だから機器の中に封入できるのです。
安定しているからこそ、大気中で分解されずに残ります——それが温室効果の問題につながるのです。
「安定している」と「温暖化への影響が大きい」は裏表——(2)と(3)がつながっています。
平成26年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成26年度 A問題14
六ふっ化硫黄(SF6)ガスに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) アークの消弧能力は、空気よりも優れている。
(2) 無色、無臭であるが、化学的な安定性に欠ける。
(3) 地球温暖化に及ぼす影響は、同じ質量の二酸化炭素と比較してはるかに大きい。
(4) ガス遮断器やガス絶縁変圧器の絶縁媒体として利用される。
(5) 絶縁破壊電圧は、同じ圧力の空気と比較すると高い。

(1) 消弧能力が高い理由
| 段階 | 起きること |
| ① | ★遮断器の接点が開きアークが生じる |
| ★② | ★★SF6分子が自由電子を捕まえる(電気陰性度が高い) |
| ★③ | ★★負イオンになり動きが鈍くなる |
| ★④ | ★★アークを維持する電子が減って消える |
ふっ素は電子を引きつける力がとても強い元素です——だから自由電子を捕まえます。
電子が捕まれば、アークを支えるものがなくなります——だから消えやすいのです。
その能力は空気の約100倍——だからガス遮断器が主流になりました。
同じ理由で絶縁破壊電圧も高くなります——電子がなだれを起こしにくいから。
(3) 温室効果ガスとしてのSF6
| 項目 | 値 | 意味 |
| ★地球温暖化係数 | ★★約23,900(CO₂を1として) | ★★同じ質量で約2万倍の影響 |
| ★大気中の寿命 | ★★約3,200年 | ★★分解されずに残り続ける |
| ★規制 | ★★京都議定書の対象ガス | ★排出削減が求められる |
化学的に安定なので、大気中で分解されません——だから何千年も残るのです。
その間ずっと赤外線を吸収し続けます——それが温室効果です。
だから機器の点検時には、必ず回収します——大気に放出しないのが原則。
優れた性質と環境負荷が、同じ原因から来ています——それがSF6の難しさです。
⚠️ よくある間違い
(2)の「無色、無臭であるが」を見て後半も正しいと判断する——前半は正しいのです。誤りは「化学的な安定性に欠ける」。
SF6はきわめて安定なガスです——だから機器に封入できるのです。
(1)の消弧能力を疑ってしまう——空気の約100倍で正しい。
(3)の温暖化を疑ってしまう——CO₂の約2万倍です。
(5)の絶縁破壊電圧を疑ってしまう——空気の約2〜3倍。
「安定」と「温暖化」は裏表——片方を認めればもう片方も導けます。
⏱️ 本番での進め方
①★SF6は化学的にきわめて安定・不活性。
②★消弧能力は空気の約100倍、絶縁破壊電圧は約2〜3倍。
③★地球温暖化係数はCO₂の約2万倍、寿命は約3,200年。
④安定だからこそ大気中に残り続ける(裏表の関係)。
💡 覚え方
「安定だから使える、安定だから残る」——長所と短所が同じ原因です。ふっ素が電子を捕まえるので消弧も絶縁も強い——1つの性質から両方が出ます。
★SF6は2回出題されています——平成19年度 A問題14(電気材料:SF6ガス)がもう一方です。誤りの箇所が違います。
SF6の代替が難しい理由
温室効果が問題でも、なかなか置き換わりません。
| 求められる性質 | SF6 | 代替ガスの課題 |
| ★絶縁性能 | ★★空気の2〜3倍 | ★★同等のものが乏しい |
| ★消弧能力 | ★★空気の約100倍 | ★★遮断器では特に難しい |
| ★安定性 | ★★きわめて安定 | ★分解しやすいと機器を傷める |
| ★液化温度 | ★実用範囲 | ★★寒冷地で液化しては使えない |
すべてを満たすガスが、ほかに見つかっていません——だから使い続けられているのです。
近年はドライエアや混合ガスの採用が進んでいます——絶縁だけなら代替できる場面もあるから。
遮断器では消弧能力が要るので、まだ難しい——そこが最後の課題です。
だから回収と再利用が徹底されています——大気に出さないことが基本になります。
(5) 絶縁破壊電圧が高い理由
消弧能力と同じしくみから説明できます。
| 段階 | 空気中 | SF6中 |
| ★電子が加速される | ★★そのまま加速し続ける | ★★SF6分子に捕まる |
| ★電子なだれ | ★★起きやすい | ★★起きにくい |
| ★絶縁破壊 | ★★低い電圧で起きる | ★★高い電圧まで耐える |
絶縁破壊は、電子が加速して次々に分子を電離させて起きます——それが電子なだれです。
SF6は自由電子を捕まえるので、なだれが起きません——ふっ素の電気陰性度が高いから。
だから絶縁破壊電圧が高くなります——消弧能力と同じ原因です。
しかも圧力を上げるとさらに高くなります——だから機器では0.4〜0.6 MPa で封入されます。
GISが変電所を小さくした
SF6の絶縁性能が、設備の形を変えました。
| 方式 | 絶縁 | 必要な面積 | 設置場所 |
| ★従来の気中変電所 | ★★空気 | ★★広い | ★郊外の広い敷地 |
| ★★GIS変電所 | ★★SF6ガス | ★★数分の1〜10分の1 | ★★都市部・地下・ビル内 |
絶縁破壊電圧が高いので、機器の間隔を詰められます——それがそのまま面積の差になります。
金属容器に収めるので、雨や塩害の影響も受けません——保守も減るのです。
だから都市部の変電所は、ほとんどGISです——用地が確保できないから。
地下やビルの中にも置けるようになりました——SF6があってこその技術です。
SF6の回収と再利用
温室効果ガスなので、扱いに決まりがあります。
| 場面 | 行うこと |
| ★機器の点検時 | ★★回収装置でガスを抜き取る |
| ★保管 | ★★ボンベに圧縮して保管する |
| ★再生 | ★★不純物や水分を除いて再利用する |
| ★廃棄 | ★★分解処理して無害化する |
大気に放出すれば、3,200年も残り続けます——だから必ず回収するのです。
回収したガスは、精製すれば再び使えます——化学的に安定なので変質しにくいから。
アークにさらされた分は、分解生成物を除いてから使います——その処理が要るのです。
電気事業者には、排出量の報告が求められています——京都議定書の対象ガスだからです。
SF6の分解生成物
安定なガスも、アークにさらされると分解します。
| 状況 | 起きること | 注意点 |
| ★通常の状態 | ★★分解しない | ★無毒・無臭 |
| ★アークにさらされる | ★★一部が分解する | ★★生成物は有毒・腐食性 |
| ★冷えたあと | ★★多くは再結合して戻る | ★一部は残る |
アークの高温では、さすがに分解します——数千度になるから。
けれども冷えると多くが元に戻ります——それも安定性ゆえです。
戻らなかった分は、有毒で腐食性があります——だから吸着剤で取り除くのです。
機器を開ける作業では、保護具が要ります——ガス自体は無毒でも、生成物は違うのです。
まとめ
| 誤り | (2) SF6は化学的に安定 |
| 消弧能力 | 空気より優れる(1) |
| 温室効果 | CO2よりはるかに大きい(3) |
| 用途 | GCB・GISの絶縁媒体(4) |
| 絶縁耐力 | 空気より高い(5) |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・SF6ガス(電気材料2):【電力】令和7年度上期 A問題14
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