今回は令和7年度上期 電力科目 A問題14、六ふっ化硫黄(SF6)ガスの誤り選択問題です。ガス遮断器・ガス絶縁機器の絶縁・消弧媒体として重要なSF6の性質が問われます。
決め手はSF6の性質。SF6は無色・無臭・無毒・不燃性で化学的に安定したガスです。「特有の臭いがある」という記述は誤りで、SF6は無臭です。
出題のポイント:SF6は無色・無臭・無毒

純粋なSF6は無色・無臭・無毒で、化学的に安定した不燃性ガスです。電子を捕らえる性質により消弧能力と絶縁耐力が高く、ガス遮断器やガス絶縁変圧器に使われます。一方、強い温室効果を持つため、漏えい防止・回収・再利用が重要です。
令和7年度上期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 令和7年度上期 A問題14
六ふっ化硫黄(SF6)ガスに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) アーク放電の消弧能力は、空気よりも優れている。
(2) 比重は空気よりも大きく、化学的に安定した不燃性のガスであるが、特有の臭いがある。
(3) オゾン層への影響は無視できるが、地球温暖化への影響が大きいガスである。
(4) ガス遮断器やガス絶縁変圧器の絶縁媒体として利用される。
(5) 絶縁破壊電圧は、同じ圧力の空気と比較すると高い。
解法の原理:SF6の性質を因果で理解する

「特有の臭いがある」——無色・無臭です。
| 性質 | SF₆ | 問題文の記述 |
| ★色 | ★★無色 | ★— |
| ★におい | ★★無臭 | ★★「特有の臭いがある」=誤り |
| ★比重 | ★★空気の約5倍(大きい) | ★正しい |
| ★化学的性質 | ★★安定・不燃性 | ★正しい |
比重・化学的安定性・不燃性は、いずれも正しい記述です——誤りは「臭い」の1語だけ。
無臭であることは、実は危険な性質でもあります——漏れても気づけないから。
しかも空気より重いので、低いところにたまります——気づかないうちに酸欠になるおそれがある。
だから作業前には換気と酸素濃度の測定を行います——においで判断できないのです。
都市ガスにわざと臭いを付けているのとは対照的——SF6にはそれがありません。
問題の解説:5つの記述を根拠で判定する

| 環境問題 | 原因となるガス | SF₆の関わり |
| ★オゾン層の破壊 | ★★塩素を含むフロン類など | ★★無関係(塩素を含まない) |
| ★地球温暖化 | ★★赤外線を吸収するガス | ★★きわめて大きい(CO₂の約2万倍) |
オゾン層を壊すのは、主に塩素を含むガスです——フロンの塩素がオゾンを分解するのです。
SF6は硫黄とふっ素だけで、塩素を含みません——だからオゾン層への影響は無視できる。
けれども赤外線をよく吸収します——それが温室効果です。
2つの環境問題は、原因も仕組みも別——混同しないことが要点になります。
だから(3)は正しい記述——片方だけ影響が大きいのです。
SF6の性質を1つの原因から辿る
| 性質 | 原因 |
| ★絶縁破壊電圧が高い | ★★ふっ素が自由電子を捕まえ、電子なだれを止める |
| ★消弧能力が高い | ★★同じ理由でアークが維持できなくなる |
| ★化学的に安定 | ★★硫黄をふっ素6個がすきまなく覆う |
| ★温室効果が大きい | ★★安定なので分解されず3,200年残る |
| ★比重が大きい | ★★分子量146(空気は約29) |
5つの性質が、2つの原因からすべて説明できます——ふっ素の性質と分子の形です。
だから丸暗記しなくても、辿って思い出せます——試験では強い武器になります。
無色・無臭・不燃性も、安定であることの表れ——反応しないから燃えないのです。
⚠️ よくある間違い
(2)の「比重は空気よりも大きく」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「特有の臭いがある」だけ。
1つの選択肢に3つ4つ並ぶときは、すべて確かめる——1つだけ違うことがあります。
(1)の消弧能力を疑ってしまう——空気の約100倍で正しい。
(3)のオゾン層を疑ってしまう——塩素を含まないので影響は無視できる。
(5)の絶縁破壊電圧を疑ってしまう——空気の約2〜3倍です。
SF6は「無色・無臭・無毒・不燃・安定」——この5つを押さえます。
⏱️ 本番での進め方
①★SF6は無色・無臭。だから漏れても気づけない。
②★空気より重いので低いところにたまり酸欠の危険。
③★塩素を含まないのでオゾン層への影響はない。
④★温室効果はCO₂の約2万倍。京都議定書の対象。
💡 覚え方
「無色・無臭・無毒・不燃・安定」——SF6の5つの無い・安定です。オゾン層は塩素、温暖化は赤外線吸収——原因が別なので混同しないこと。
★SF6は3回出題されています——平成19年度 A問題14(電気材料:SF6ガス(比重))、平成26年度 A問題14(電気材料:SF6ガス(安定性))、そして本問です。誤りの箇所が毎回違います。
(4) SF6を使う機器
優れた性質が、どこで活きているか見ましょう。
| 機器 | SF6の役目 | 利点 |
| ★ガス遮断器(GCB) | ★★アークを消す | ★★空気遮断器より小型で静か |
| ★ガス絶縁開閉装置(GIS) | ★★機器全体を絶縁する | ★★変電所の面積が数分の1になる |
| ★ガス絶縁変圧器 | ★★油の代わりに絶縁する | ★★不燃なので屋内に置ける |
GISは変電所を劇的に小さくしました——都市部では欠かせない技術です。
絶縁破壊電圧が高いので、機器の間隔を詰められます——それがそのまま面積の差になります。
ガス絶縁変圧器は油を使わないので燃えません——ビルの地下にも置けるのです。
問題文が2つの機器を挙げているのは、絶縁と消弧の両方に使えるからです。
無臭であることの危険
(2)で問われた性質を、安全の面から見ましょう。
| ガス | におい | 漏れたときの気づき方 |
| ★都市ガス | ★★わざと臭いを付けている | ★★においで分かる |
| ★SF₆ | ★★無臭 | ★★圧力計の低下でしか分からない |
都市ガスには、意図的に臭いが付けられています——漏れに気づかせるためです。
SF6にはそれがありません——だから圧力を常時監視するのです。
しかも空気より重いので、足元にたまります——顔の高さでは気づけないのです。
ピットや地下の作業では、酸素濃度計を使います——においも色も手がかりにならないから。
(1) 消弧能力が高いしくみ
ふっ素が電子を捕まえることから説明できます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★遮断器の接点が開きアークが生じる |
| ★② | ★★SF6分子が自由電子を捕まえる |
| ★③ | ★★負イオンになり動きが鈍くなる |
| ★④ | ★★アークを維持する電子が減って消える |
ふっ素は電子を引きつける力がとても強い元素です——電気陰性度が最も高いのです。
だから飛び回る電子を次々に捕まえます——アークを支えるものがなくなるのです。
その能力は空気の約100倍——だからガス遮断器が主流になりました。
同じ理由で絶縁破壊電圧も高くなります——1つの性質から2つの長所が出るのです。
SF6を減らす取り組み
(3)の温暖化への影響に、どう対処しているのでしょうか。
| 取り組み | 内容 |
| ★回収の徹底 | ★★点検・廃棄時に必ず回収する |
| ★機器の小型化 | ★★封入量そのものを減らす |
| ★漏えいの管理 | ★★圧力を監視して漏れを早く見つける |
| ★代替ガス | ★★ドライエアや混合ガスの採用 |
使用量を減らすには、まず漏らさないことです——無臭なので圧力監視が頼りになります。
機器を小型化すれば、封入量も減ります——技術の進歩がそのまま削減になる。
絶縁だけならドライエアで代替できる場面もあります——遮断器では消弧能力が要るので難しい。
優れた性質と環境負荷を、どう両立させるか——いまも続いている課題です。
SF6を扱うときの手順
無臭で重いという性質が、作業の決まりを生みます。
| 場面 | 行うこと | 理由 |
| ★作業前 | ★★換気し、酸素濃度を測る | ★★においで気づけないから |
| ★機器を開ける | ★★保護具を着ける | ★★分解生成物が有毒だから |
| ★ガスを抜く | ★★回収装置を使う | ★★大気放出は温暖化につながるから |
| ★作業後 | ★★圧力を確認する | ★漏れの有無を見る |
ガスそのものは無毒ですが、酸素を追い出します——だから酸欠の危険があるのです。
アークにさらされた分は、分解生成物ができています——こちらは有毒で腐食性があるのです。
だから吸着剤で取り除いてから扱います——機器の中に吸着剤が入っているのです。
性質を知っていることが、そのまま安全につながります。
まとめ
| 誤り | (2) SF6は無臭(特有の臭いはない) |
| 消弧能力 | 空気より優れる(1) |
| 環境 | オゾン層影響なし・温暖化大(3) |
| 用途 | GCB・ガス絶縁機器の媒体(4) |
| 絶縁耐力 | 空気の約2〜3倍(5) |
| 答え | (2) |
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