今回は令和7年度下期 電力科目 A問題14、磁性材料の誤り選択問題です。強磁性体・鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)・積層鉄心と、磁性材料の基本が総登場します。
決め手はヒステリシス損と渦電流損の発生メカニズムの区別。磁束の周りに起電力が生じて渦電流が流れるのが渦電流損、磁区の反転(磁化の履歴)によるのがヒステリシス損です。「磁束の周りに起電力が生じることでヒステリシス損」は取り違えで誤りです。
誤りは(3):それは渦電流損の説明
「磁束の周りに起電力が生じることでヒステリシス損が発生する」——それは渦電流損です。
| ★ヒステリシス損 | ★渦電流損 | |
| ★原因 | ★★磁化の向きを変えるのに要るエネルギー | ★★磁束の変化が誘導する起電力による電流 |
| ★決まるもの | ★★ヒステリシス曲線が囲む面積 | ★★板厚と抵抗率 |
| ★周波数との関係 | ★★比例(1乗) | ★★2乗に比例 |
| ★減らす方法 | ★★保磁力の小さい材料を使う | ★★薄い板を積む・抵抗率を上げる |
磁束の変化が起電力を生むのは、電磁誘導です——その起電力が渦電流を流すのです。
その渦電流が抵抗を流れて熱になる——それが渦電流損です。
ヒステリシス損は、まったく別の原因で生じます——磁区の向きを変えるのに要るエネルギー。
電磁誘導とは関係がありません——材料の内部で磁石の向きを変える仕事です。
だから(3)は2つの損失を取り違えています——(4)で正しいヒステリシス損の説明が出てくるのです。
令和7年度下期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 令和7年度下期 A問題14
磁性材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 鉄、ニッケル、コバルト及びこれらの合金は強磁性体である。
(2) 強磁性体に交番磁界を加えると、ヒステリシス損と渦電流損とを含む鉄損が生じて発熱する。
(3) 交番磁界に対して、強磁性体中の磁束の周りに起電力が生じることでヒステリシス損が発生する。
(4) ヒステリシス損は、交番磁界の大きさと強磁性体中の磁束密度の大きさとの関係を示す軌跡曲線の囲む面積と交番磁界の周波数に比例する。
(5) 渦電流損は、厚さが薄く、表面を電気絶縁処理した強磁性体を、磁束方向に対して平行に積層する構造とすることで低減することができる。
出題のポイント:磁束の周りの起電力は渦電流損

時間変化する磁束の周りに誘導起電力が生じ、鉄心内を循環電流が流れて発熱する現象は渦電流損です。ヒステリシス損は磁区反転に伴う損失であり、B-Hループ面積と周波数に比例します。
解法の原理:ヒステリシス損と渦電流損を区別する

| 段階 | 起きること |
| ① | ★磁性体の中には磁区という小さな磁石の集まりがある |
| ★② | ★外部磁界に応じて磁区の向きがそろう |
| ★③ | ★★向きを変えるとき、磁壁が動くのに抵抗がある |
| ★④ | ★★その抵抗を乗り越える仕事が熱になる |
| ★⑤ | ★1周分の仕事がヒステリシス曲線の面積 |
磁区の向きを変えるには、力が要ります——不純物や結晶の境界が引っかかるから。
その引っかかりが保磁力として表れます——だから保磁力が小さいほど損失も小さい。
電磁誘導とは無関係の、材料内部の現象です——そこが渦電流損との根本的な違い。
アモルファスは結晶の境界がないので、引っかかりが少ない——だからヒステリシス損が小さいのです。
(5) 積層の向きが効く理由
| 配置 | 渦電流の通り道 | 渦電流損 |
| ★★磁束が板面に平行(積層方向と直交) | ★★薄い板の中に閉じ込められる | ★★大きく減る(正しい配置) |
| ★★磁束が積層方向と同じ | ★★板を貫くので分断されない | ★★減らない |
問題文の「磁束方向に対して平行に積層する」が正しい配置——板面が磁束に沿うということです。
渦電流は磁束に垂直な面内で回ります——だから板の断面を横切ろうとするのです。
板が薄ければ、その輪が小さくなります——だから渦電流損が減るのです。
表面を絶縁するのは、板どうしに電流を流さないため——絶縁しなければ厚い1枚と同じになります。
薄くすること、絶縁すること、向きをそろえること——3つがそろって初めて効くのです。
⚠️ よくある間違い
(3)の「起電力が生じる」を見てヒステリシス損だと思ってしまう——起電力が絡むのは渦電流損です。電磁誘導の話だから。
ヒステリシス損は磁区の向きを変える仕事——材料内部の現象です。
(1)の強磁性体を疑ってしまう——鉄・ニッケル・コバルトが代表。
(4)のヒステリシス損を疑ってしまう——面積と周波数に比例で正しい。
(5)の積層を疑ってしまう——磁束に平行に積層するのが正しい。
2つの損失の説明が入れ替わる型——原因が電磁誘導かどうかで見分けます。
⏱️ 本番での進め方
①★起電力が絡むのは渦電流損。ヒステリシス損ではない。
②★ヒステリシス損は磁区の向きを変える仕事。
③★ヒステリシス損は周波数に比例、渦電流損は2乗に比例。
④★積層は磁束に平行に、表面を絶縁して行う。
💡 覚え方
「起電力なら渦電流」——電磁誘導が絡むかどうかで見分けます。ヒステリシス損は材料の内部で磁石の向きを変える仕事——まったく別の原因です。
★これで電気材料25問がすべて揃いました。鉄損の2種は平成27年度 A問題14(電気材料:鉄心材料)、平成30年度 A問題14(電気材料:鉄心材料)にもあります。
(1) 強磁性体とは何か
磁石になれる物質のことです。
| 分類 | 性質 | 例 |
| ★★強磁性体 | ★★磁界で強く磁化され、磁界を除いても残る | ★★鉄・ニッケル・コバルトとその合金 |
| ★常磁性体 | ★わずかに磁化される | ★アルミ・白金 |
| ★反磁性体 | ★磁界と逆向きにわずかに磁化される | ★銅・銀・水 |
強磁性体だけが、鉄心として使えます——磁束を強く通せるから。
常磁性体や反磁性体では、磁束がほとんど増えません——透磁率が空気とほぼ同じだから。
強磁性を示す元素は、実はごく限られています——鉄・ニッケル・コバルトの3つ。
だから鉄心材料は、この3つを基本にした合金になります——けい素鋼もアモルファスも鉄が主成分です。
(2) 鉄損は2つの合計
交番磁界を加えると、2種類の損失が生じます。
| 周波数 | ヒステリシス損 | 渦電流損 | 支配的なのは |
| ★50 Hz | ★基準 | ★基準 | ★ヒステリシス損がやや大きい |
| ★500 Hz | ★★10倍 | ★★100倍 | ★★渦電流損 |
周波数が上がると、渦電流損のほうが急に増えます——2乗で効くから。
だから高周波では渦電流損が支配的になります——抵抗率の高いフェライトが使われる理由です。
商用周波数では、両者が同じくらいの大きさ——だからどちらも対策するのです。
2つを合わせて鉄損と呼びます——問題文の(2)がそれを述べています。
(4) ヒステリシス曲線の面積が損失
グラフが直接エネルギーを表しています。
| 軸・要素 | 意味 |
| ★横軸 | ★★交番磁界の大きさ(磁界の強さ H) |
| ★縦軸 | ★★強磁性体中の磁束密度 B |
| ★★囲む面積 | ★★1周で失うエネルギー |
| ★周波数 | ★★1秒あたりに何周するか |
問題文の「軌跡曲線」がヒステリシス曲線のことです——H と B の関係を描いたもの。
1周まわると、面積の分だけエネルギーが熱になります——だから面積に比例。
1秒に50回まわれば50倍——だから周波数にも比例します。
保磁力が小さければ、曲線が細くなって面積も減ります——だから軟磁性材料を選ぶのです。
問題の解説:原因と現象から(3)を判定する

説明文のどこを見れば区別できるでしょうか。
| 説明に出てくる言葉 | どちらの損失か |
| ★起電力・誘導・電流が流れる | ★★渦電流損 |
| ★磁区・磁壁・磁化の向き | ★★ヒステリシス損 |
| ★曲線が囲む面積 | ★★ヒステリシス損 |
| ★板厚・抵抗率・積層 | ★★渦電流損 |
電磁誘導が絡めば渦電流損です——電流が流れて熱になるから。
磁化の話ならヒステリシス損——材料内部で磁石の向きを変える仕事です。
対策の話でも見分けられます——板厚や積層なら渦電流損。
言葉の手がかりを知っていれば、取り違えを防げます——本問はまさにその力を問うています。
まとめ
| 誤り | (3) 磁束の周りの起電力は渦電流損 |
| 強磁性体 | 鉄・ニッケル・コバルト(1) |
| 鉄損 | ヒステリシス損+渦電流損(2) |
| ヒステリシス損 | ループ面積×周波数(4) |
| 渦電流損 | 積層鉄心で低減(5) |
| 答え | (3) |
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