今回は令和4年度上期 電力科目 A問題14、我が国の電力用設備に使用されるSF6ガスの誤り選択問題です。温室効果・絶縁破壊強度・消弧能力・GISと、SF6の特徴が総登場します。
決め手は遮断時のアーク放電。SF6ガス遮断器でも電流遮断の際にアーク放電は発生します。SF6の強みは、発生したアークを優れた消弧能力で速やかに消す点にあります。「アーク放電を発生させないため消弧能力に優れる」は誤りです。
誤りは(4):アークは発生する
「アーク放電を発生させないため、消弧能力に優れ」——因果が成り立ちません。
| ★問題文の記述 | ★実際 | |
| ★アークの発生 | ★★発生させない | ★★必ず発生する |
| ★SF6の役目 | ★— | ★★発生したアークを速く消す |
| ★呼び名 | ★— | ★★だから「消弧」媒体 |
電流が流れている接点を開けば、必ずアークが生じます——どんなガスでも避けられないのです。
電流には流れ続けようとする性質があります——だから空間を飛んででも流れるのです。
SF6の値打ちは、そのアークを速く消せること——「消弧」という言葉がそれを表しています。
発生させないなら「消す」必要がありません——言葉として矛盾しているのです。
他の4つは、いずれも正しい記述——誤りは因果の立て方だけになります。
令和4年度上期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 令和4年度上期 A問題14
我が国の電力用設備に使用されるSF6ガスに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) SF6ガスは、大気中に排出されると、オゾン層への影響は無視できるガスであるが、地球温暖化に及ぼす影響が大きいガスである。
(2) SF6ガスは、圧力を高めることで絶縁破壊強度を高めることができ、同じ圧力の空気と比較して絶縁破壊強度が高い。
(3) SF6ガスは、液体、固体の絶縁媒体と比較して誘電率及び誘電正接が小さいため、誘電損が小さい。
(4) SF6ガスは、遮断器による電流遮断の際に、電極間でアーク放電を発生させないため、消弧能力に優れ、ガス遮断器の消弧媒体として使用されている。
(5) SF6ガスは、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁変圧器の絶縁媒体として使用され、変電所の小型化の実現に貢献している。

SF6がアークを消すしくみ
| 段階 | 起きること |
| ① | ★接点が開き、間にアークが生じる |
| ★② | ★アークは自由電子によって維持される |
| ★③ | ★★SF6分子が自由電子を捕まえて負イオンになる |
| ★④ | ★★動ける電子が減り、アークが維持できなくなる |
| ★⑤ | ★★電流の零点でアークが消える |
アークは、電子が飛び回ることで維持されています——その電子を減らせば消えるのです。
ふっ素は電子を引きつける力が最も強い元素です——だから電子を捕まえられる。
捕まった電子は重い負イオンになり、動けません——アークを支えられなくなるのです。
その能力は空気の約100倍——だからガス遮断器が主流になりました。
(3) 誘電損が小さいという長所
| 絶縁媒体 | 比誘電率 | 誘電正接 | 誘電損 |
| ★SF₆(気体) | ★★約1.002 | ★★きわめて小さい | ★★ほぼゼロ |
| ★絶縁油(液体) | ★2〜3 | ★小さい | ★小さい |
| ★架橋ポリエチレン(固体) | ★2.3 | ★小さい | ★小さい |
気体は分子がまばらなので、誘電率が1に近い——真空とほとんど変わりません。
誘電率が小さければ、静電容量も小さくなります——だから誘電損もほぼ生じないのです。
これはガス絶縁機器の隠れた長所——油入機器より損失が小さいことになります。
だから(3)は正しい記述——液体・固体と比べて有利なのです。
⚠️ よくある間違い
(4)の「消弧能力に優れ」を見て正しいと判断する——結論は正しいのです。誤りは「アーク放電を発生させないため」という理由。
アークは必ず発生します——それを速く消すのがSF6の役目です。
(1)のオゾン層と温暖化を疑ってしまう——塩素を含まないのでオゾン層には影響しません。
(2)の圧力を疑ってしまう——高めると絶縁破壊強度も高まります。
(3)の誘電損を疑ってしまう——気体なので誘電率が1に近い。
結論が正しくても理由が違う型——「〜ため」の部分を確かめます。
⏱️ 本番での進め方
①★アークは必ず発生する。SF6はそれを速く消す。
②★「消弧」という言葉が、発生を前提としている。
③★ふっ素が電子を捕まえるので消弧能力が高い。
④★気体なので誘電率が1に近く、誘電損もほぼゼロ。
💡 覚え方
「消すのだから、まず発生する」——言葉の意味から矛盾に気づけます。結論が正しくても理由が違うことがある——「〜ため」を読むことです。
★SF6は4回出題されています——平成19年度(比重)、平成26年度(化学的安定性)、令和7年度上期(におい)、そして本問です。
(2) 圧力を高めると絶縁が強くなる
気体ならではの調整方法です。
| 圧力 | 分子の密度 | 電子の動き | 絶縁破壊強度 |
| ★低い | ★まばら | ★★長く加速できる | ★★低い |
| ★高い | ★★密 | ★★すぐぶつかる | ★★高い |
電子は、加速されて初めて分子を電離できます——それが電子なだれの始まりです。
分子が密なら、加速する前にぶつかってしまいます——だから電離できないのです。
だから圧力を上げれば絶縁が強くなります——固体や液体にはできない調整です。
機器では0.4〜0.6 MPa で封入されます——上げすぎると寒いときに液化するから。
(5) 変電所が小さくなった理由
絶縁性能が高いと、機器を詰められます。
| 方式 | 絶縁 | 必要な面積 | 設置場所 |
| ★気中変電所 | ★★空気 | ★★広い | ★郊外の広い敷地 |
| ★★GIS変電所 | ★★SF6ガス | ★★数分の1〜10分の1 | ★★都市部・地下・ビル内 |
空気で絶縁するには、機器を大きく離す必要があります——それが敷地の広さになるのです。
SF6なら2〜3倍の絶縁性能があります——しかも圧力を上げればさらに高くなる。
だから金属容器に詰め込めます——それがGISです。
雨や塩害の影響も受けないので、保守も減ります——都市部では欠かせない技術になりました。
(1) 2つの環境問題を区別する
原因も仕組みも別のものです。
| 環境問題 | 原因 | SF6の関わり |
| ★オゾン層の破壊 | ★★塩素がオゾンを分解する | ★★塩素を含まないので無関係 |
| ★地球温暖化 | ★★赤外線を吸収して熱を閉じ込める | ★★CO₂の約2万倍 |
オゾン層を壊すのは、主に塩素を含むフロン類です——塩素原子がオゾンを次々に分解するのです。
SF6は硫黄とふっ素だけでできています——塩素がないので、この反応は起きません。
けれども赤外線をよく吸収します——それが温室効果です。
だから「オゾン層は無視できるが温暖化は大きい」——(1)は正確な記述になります。
遮断器がアークを消すまで
接点を開いてから電流が切れるまでを追いましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★引外し指令で接点が動き始める |
| ★② | ★★接点が離れた瞬間にアークが生じる |
| ★③ | ★★SF6を吹き付けて冷やし、電子を捕まえる |
| ★④ | ★★交流の零点でアークが消える |
| ★⑤ | ★★絶縁が回復し、再点弧しない |
接点を開くだけでは電流は切れません——アークが橋渡しをしてしまうのです。
だから零点を待って、そこで確実に消します——交流だからできることです。
消えたあとに再び放電しないことも重要——絶縁が速く回復する必要があるのです。
SF6は消弧も絶縁回復も速い——だから遮断器に向いているのです。
SF6の性質を1つの原因から辿る
5つの選択肢の内容が、2つの原因に集約されます。
| 性質 | 原因 |
| ★絶縁破壊強度が高い | ★★ふっ素が自由電子を捕まえ、電子なだれを止める |
| ★消弧能力が高い | ★★同じ理由でアークが維持できなくなる |
| ★誘電損が小さい | ★★気体なので誘電率が1に近い |
| ★化学的に安定 | ★★硫黄をふっ素6個がすきまなく覆う |
| ★温室効果が大きい | ★★安定なので分解されず残り続ける |
「ふっ素の性質」と「分子の形」の2つで説明できます——だから丸暗記しなくてよいのです。
絶縁も消弧も、電子を捕まえることから来ています——1つの原因で2つの長所。
安定であることが、長所にも短所にもなります——使えるが、残り続けるのです。
原因から辿れば、試験でも思い出せます。
まとめ
| 誤り | (4) 遮断時にアークは発生する |
| 環境 | オゾン層影響なし・温暖化大(1) |
| 絶縁破壊強度 | 空気より高い(2) |
| 誘電損 | 誘電率・tanδ小で小さい(3) |
| 用途 | GIS・変電所小型化(5) |
| 答え | (4) |
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