今回は令和3年度 電力科目 A問題14、送電線路に用いられる導体の誤り選択問題です。導電率の温度特性・合金・軟銅と硬銅・鋼心アルミより線(ACSR)と、導体材料の性質が総登場します。
決め手は軟銅と硬銅の導電率。導電率は軟銅の方が硬銅より大きい(軟銅は焼きなましで加工ひずみが除かれ導電率が高い)。「軟銅よりも硬銅の方が大きい」は逆で誤りです。
誤りは(4):導電率が大きいのは軟銅
「導電率は、軟銅よりも硬銅の方が大きい」——逆です。
| 項目 | ★硬銅 | ★軟銅 |
| ★作り方 | ★★引き伸ばしたまま(加工硬化) | ★★焼きなまして結晶を整える |
| ★導電率 | ★★96〜98% | ★★100%(高い) |
| ★引張強さ | ★★大きい | ★★小さい |
| ★可とう性 | ★★曲げにくい | ★★曲げやすい |
| ★用途 | ★★架空送電線・整流子片 | ★★ケーブル・屋内配線 |
硬銅は、引き伸ばしたままで結晶が乱れています——その乱れが電子の流れを妨げるのです。
軟銅は焼きなましてあるので、結晶が整っています——だから電子が流れやすい。
標準軟銅を100%とするのも、軟銅が基準だから——硬銅はそれより低い96〜98%です。
前半の用途の説明は正しい——ケーブルは軟銅、架空線は硬銅。
誤りは最後の一文だけ——長い選択肢では最後まで読むことです。
令和3年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 令和3年度 A問題14
送電線路に用いられる導体に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 導体の導電率は、温度が高くなるほど小さくなる傾向があり、20℃での標準軟銅の導電率を100%として比較した百分率で表される。
(2) 導体の材料特性としては、導電率や引張強さが大きく、質量や線熱膨張率が小さいことが求められる。
(3) 導体の導電率は、不純物成分が少ないほど大きくなる。また、単金属と比較して、同じ金属元素を主成分とする合金の方が、一般に導電率は小さくなるが、引張強さは大きくなる。
(4) 地中送電ケーブルの銅導体には、伸びや可とう性に優れる軟銅より線が用いられ、架空送電線の銅導体には引張強さや耐食性の優れる硬銅より線が用いられている。一般に導電率は、軟銅よりも硬銅の方が大きい。
(5) 鋼心アルミより線は、中心に亜鉛めっき鋼より線を配置し、その周囲に硬アルミより線を配置した構造を有している。この構造は、必要な導体の電気抵抗に対して、アルミ導体を使用する方が、銅導体を使用するよりも断面積が大きくなるものの軽量にできる利点と、必要な引張強さを鋼心で補強して得ることができる利点を活用している。

(3) 合金にすると何が変わるか
| ★単金属(純度が高い) | ★合金 | |
| ★結晶の並び | ★★整っている | ★★別の原子が入って乱れる |
| ★導電率 | ★★大きい | ★★小さくなる |
| ★引張強さ | ★★小さい | ★★大きくなる |
別の原子が混じると、結晶の並びが乱れます——電子が散乱されて流れにくくなるのです。
けれども同じ理由で、変形しにくくなります——だから引張強さが増すのです。
導電率と強度は、たいてい逆の関係になります——両方は得られないのです。
硬銅と軟銅の関係も、同じ理屈——乱れがあるほど強くて通しにくい。
だから鋼心アルミより線のように、役割を分けます——それが(5)の工夫です。
(2) 導体に求められる性質
| 性質 | 望ましい方向 | 理由 |
| ★導電率 | ★★大きい | ★抵抗損が減る |
| ★引張強さ | ★★大きい | ★自重と風雪に耐える |
| ★質量 | ★★小さい | ★鉄塔を小さくできる |
| ★線熱膨張率 | ★★小さい | ★★温度でたるみが変わりにくい |
| ★耐食性 | ★大きい | ★数十年屋外で使う |
線熱膨張率が小さいほうがよいのは、たるみのため——夏に伸びて地面に近づくから。
電流が増えても温度が上がってたるみます——だから離隔距離を保てなくなるのです。
導電率と引張強さは、たいてい両立しません——だから工夫が要るのです。
鋼心アルミより線は、その答えの1つ——役割を材料で分けるのです。
⚠️ よくある間違い
(4)の前半「軟銅は伸びや可とう性に優れる」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは最後の一文。
導電率は軟銅のほうが大きい——標準軟銅が100%の基準だから。
(1)の温度を疑ってしまう——金属は温度が上がると抵抗が増え導電率は下がる。
(2)の線熱膨張率を疑ってしまう——小さいほうがたるみにくいです。
(3)の合金を疑ってしまう——導電率は下がるが引張強さは増します。
長い選択肢では最後の一文まで読む——そこに誤りが置かれます。
⏱️ 本番での進め方
①★導電率は軟銅>硬銅。標準軟銅が100%の基準。
②★合金にすると導電率は下がるが引張強さは増す。
③★導体には導電率大・引張強さ大・質量小・熱膨張率小が求められる。
④★導電率と強度は両立しないので役割を分ける(ACSR)。
💡 覚え方
「乱れがあるほど強くて通しにくい」——硬銅も合金も同じ理屈です。だから導電率と引張強さは両立しない——鋼心アルミより線はその答えになります。
鋼心アルミより線の構造は令和元年度 A問題9(架空送電:構成部品)にもあります。
(1) 温度で導電率が変わる
金属の導電率は、温度に敏感です。
| 温度 | 抵抗(20 ℃ を1とする) | 導電率 |
| ★0 ℃ | ★0.92 | ★★高い |
| ★20 ℃ | ★1.00 | ★基準 |
| ★90 ℃ | ★★1.28 | ★★低い |
温度が上がると、原子の振動が激しくなります——それが電子の流れを妨げるのです。
だから抵抗が増え、導電率は下がります——金属に共通する性質です。
90 ℃ では常温の約1.3倍の抵抗になります——無視できない差。
だから比較には20 ℃ という基準温度を決めています——条件をそろえないと比べられないから。
(5) 鋼心アルミより線の利点を確かめる
問題文が2つの利点を挙げています。
| 利点 | 内容 | なぜそうなるか |
| ★軽量にできる | ★★断面積は大きくなるが質量は約半分 | ★★アルミの比重が銅の3分の1 |
| ★引張強さを得られる | ★★中心の鋼が受け持つ | ★★アルミだけでは足りない |
★約半分
導電率が6割なので、断面積は1.6倍必要です——問題文の「断面積が大きくなる」がこれ。
けれども比重が3分の1なので、掛け合わせると半分——だから軽くなるのです。
足りない強度は、中心の鋼より線が補います——それが「鋼心で補強」の意味です。
2つの利点が、1つの構造から出てきます——だからACSRが標準になりました。
線熱膨張率が小さいほうがよい理由
(2)に挙げられている性質を、たるみから見ましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★夏の暑さや大電流で電線が温まる |
| ★② | ★★熱膨張で電線が伸びる |
| ★③ | ★★たるみが増えて地面に近づく |
| ★④ | ★★離隔距離を保てなくなる |
電線は両端で固定されているので、伸びるとたるみます——逃げ場がそこしかないのです。
たるみが増えれば、地面や樹木に近づきます——感電や地絡の危険があります。
だから線熱膨張率は小さいほうがよい——温度が変わっても長さが変わりにくいから。
設計では、最も暑く電流が多いときを想定します——そのときのたるみで鉄塔の高さが決まるのです。
導体の材料を比べる
(2)の条件を、実際の材料で確かめましょう。
| 材料 | 導電率 | 引張強さ | 比重 | 用途 |
| ★軟銅 | ★★100% | ★小さい | ★8.9 | ★ケーブル |
| ★硬銅 | ★96〜98% | ★★大きい | ★8.9 | ★架空線(旧) |
| ★硬アルミ | ★★約61% | ★中程度 | ★★2.7 | ★★ACSRの外層 |
| ★鋼 | ★★約10% | ★★きわめて大きい | ★7.8 | ★★ACSRの心線 |
導電率と引張強さは、材料を選ぶだけでは両立しません——だから組み合わせるのです。
鋼は導電率が1割しかありませんが、強度は抜群です——だから心線に使うのです。
アルミは軽くて導電率もそこそこ——だから外層で電流を担うことになります。
1つの材料ですべてを満たすのではなく、役割を分ける——それがACSRの発想です。
まとめ
| 誤り | (4) 導電率は軟銅>硬銅 |
| 温度特性 | 温度↑で導電率↓(1) |
| 合金 | 導電率↓・引張強さ↑(3) |
| 材料特性 | 導電率大・質量小(2) |
| ACSR | 鋼心+硬アルミで軽量高強度(5) |
| 答え | (4) |
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