電気材料3【電験3種 電力】軟銅線は焼きなましで導電率が高くなる!「低くなる」は誤り 令和6年度下期 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 令和6年度下期 A問題14 焼きなますと電気を通しやすい!軟銅線の性質

今回は令和6年度下期 電力科目 A問題14、送電線路・配電線路の導電材料としての銅の誤り選択問題です。銅の導電率・標準軟銅・硬銅線と軟銅線の使い分けが問われます。

決め手は軟銅線の性質。軟銅線は硬銅線を焼きなまし(軟化)して製造され、可とう性(曲げやすさ)が良くなると同時に、導電率は高くなります。「導電率は低くなる」は誤りです。

出題のポイント:導電材料としての銅

導電材料として利用される銅に関する正誤問題の要点図
焼きなますと可とう性と導電率は高くなり、引張強さは低くなります。

20℃の標準軟銅を導電率100%の基準とし、銀・軟銅・硬銅の順序、電気銅の純度、硬銅線を焼きなましたときの性質と用途を整理します。

目次

導電率の基準・純度・用途を整理する

銀と標準軟銅と硬銅の導電率および電気銅の精製工程の解説
導電率の基準、電気銅の高純度化、電線への利用を順に確認します。

「硬銅線を焼きなます…導電率は低くなる」——逆です

項目★硬銅★軟銅
★作り方★★引き伸ばしたまま(加工硬化)★★焼きなまして結晶を整える
★導電率★★96〜98%★★100%(高い)
★引張強さ★★大きい★★小さい
★可とう性★★曲げにくい★★曲げやすい
★用途★★架空送電線・整流子片★★ケーブル・屋内配線

硬銅は、引き伸ばしたままで結晶が乱れています——加工硬化という状態です。

乱れた結晶は、電子の流れを妨げます——だから導電率がやや低いのです。

焼きなませば、結晶が整って乱れが減ります——だから導電率が上がるのです。

その代わり柔らかくなり、引張強さは下がります——だから可とう性はよくなる

「可とう性はよくなり」までは正しい——誤りは導電率の向きだけです。

令和6年度下期 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和6年度下期 A問題14 問題文
令和6年度下期 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 令和6年度下期 A問題14

 送電線路及び配電線路で導電材料として利用される銅に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 銅は、20℃では銀に次いで最も導電率の高い金属である。

(2) 導体の導電率は、20℃での標準軟銅の導電率を100%として比較した百分率で表される。

(3) 電線やケーブルの導体材料に使用される銅は、一般に電気銅を精製したものが用いられる。

(4) 軟銅線は、硬銅線を焼きなますことで製造され、硬銅線と比較して可とう性はよくなり、導電率は低くなる。

(5) 一般にCVケーブルの銅導体には軟銅線が用いられ、架空送電線の銅導体には硬銅線が用いられる。

答え誤っている記述は (4)です。

焼きなましによる性質変化と選択肢照合

硬銅線と軟銅線の導電率と強さと可とう性と用途を比較し選択肢4を判定する解説
焼きなますと導電率は高くなるため、誤っている記述は選択肢(4)です。
金属導電率(標準軟銅を100%として)備考
★銀★★約106%★★最も高いが高価
★軟銅★★100%(基準)★★ケーブル・屋内配線
★硬銅★★96〜98%★★架空送電線・整流子片
★金★約70%★接点など特殊用途
★アルミニウム★★約61%★★軽いので架空送電線

最も導電率が高い金属は銀です——銅ではありません

けれども高価なので、電線には使えません——だから銅が実用上の第一位になります。

アルミは銅の約6割ですが、比重が3分の1です——だから同じ抵抗なら質量は約半分

だから架空送電線ではアルミが使われます——軽さが効いてくるのです。

(1)の「銀に次いで」が、まさにこの順位——正しい記述です。

(2) 標準軟銅という基準

項目内容
★定義★★20 ℃ での抵抗率 1/58 Ω・mm²/m
★導電率★★これを100%とする
★表し方★★他の材料はこれとの百分率で表す
★温度★★20 ℃ が基準(温度で変わるため)

導電率は、絶対値より比較のほうが実用的です——だから百分率で表します

基準を1つ決めておけば、材料どうしを比べられます——それが標準軟銅です。

温度で抵抗が変わるので、20 ℃ と決めています——条件をそろえないと比べられないから。

硬銅が96〜98%、アルミが約61%——この数字が使えるようになります

⚠️ よくある間違い
(4)の前半「可とう性はよくなり」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「導電率は低くなる」
焼きなませば結晶が整い導電率は上がります——軟銅が100%の基準だから。
(1)の「銀に次いで」を疑ってしまう——銀が最も高いので正しい。
(3)の電気銅を疑ってしまう——電解精錬で純度を高めたものです。
(5)の使い分けを疑ってしまう——ケーブルは軟銅、架空線は硬銅
「高くなる」「低くなる」の向きを確かめる——導電材料の問題では定番です。

⏱️ 本番での進め方
①★焼きなますと導電率は上がり、引張強さは下がる。
②★導電率は銀>軟銅>硬銅>金>アルミの順。
③★標準軟銅の導電率を100%とする(20 ℃)。
④★ケーブルは軟銅、架空送電線は硬銅。

💡 覚え方
「柔らかいほうがよく通す」——軟銅が100%で硬銅は96〜98%です。結晶の乱れが電子を妨げる——焼きなませば整って通しやすくなります

導電材料は繰り返し出題されています——令和3年度 A問題14電気材料:送電線の導体)、平成24年度 A問題14電気材料:導電材料の銅)にもあります。

(3) 電気銅という材料

電線に使う銅は、どう作られるのでしょうか

段階行うこと純度
★粗銅★鉱石を溶かして取り出す★99%程度
★★電気銅★★電解精錬で不純物を除く★★99.99%以上
★タフピッチ銅★電気銅を溶かして鋳造する★導電率が高い

電解精錬とは、電気分解で純度を上げる方法です——不純物が電極に付いてこないのを使います。

不純物が少ないほど、導電率が高くなります——結晶の乱れが減るから。

だから電線には、純度の高い電気銅が要ります——わずかな不純物でも効くのです。

導電率は不純物に敏感な性質——だから精製の工程が重要になります。

(5) 用途で使い分ける理由

同じ銅でも、求められる性質が違います

用途使う銅理由
★CVケーブル★★軟銅★★管に通し、曲げて使う
★屋内配線★軟銅★★配管の中で曲がる
★架空送電線★★硬銅★★自重と風雪に耐える必要がある
★整流子片★硬銅★ブラシとの摩擦に耐える

曲げる用途なら軟銅、張る用途なら硬銅——そう覚えると迷いません

架空送電線は、いちど張ればほとんど曲げません——だから曲げにくくてもよいのです。

むしろ切れないことが第一です——だから引張強さを取るのです。

導電率の数%の差より、機械的な条件が優先されます——使う場所が材料を決めるのです。

導電率が下がる3つの原因

いずれも「結晶の乱れ」に行き着きます

原因何が起きるか
★不純物★★別の原子が結晶を乱す★純度の低い銅・合金
★加工硬化★★引き伸ばして結晶が乱れる★★硬銅
★温度上昇★★原子の振動が電子を妨げる★高温で使う電線

電子は、規則正しい結晶の中を最もよく流れます——乱れがあると散乱されるのです。

不純物も、加工による乱れも、熱による振動も同じこと——すべて電子の邪魔をするのです。

だから電気銅は純度を高め、軟銅は焼きなまします——乱れを減らす工夫です。

1つの原理から、3つの現象が説明できます——覚えるのではなく辿れるのです。

アルミという選択肢

銅だけが導電材料ではありません

項目★銅★アルミ
★導電率★100%★★約61%
★比重★8.9★★2.7
★同じ抵抗での質量★1★★約0.5
★資源量★多い★★地殻中で最も多い金属
★主な用途★★ケーブル・屋内配線★★架空送電線

導電率は6割ですが、比重が3分の1です——同じ抵抗なら質量は約半分になります。

だから架空送電線ではアルミが選ばれます——軽ければ鉄塔も小さくできるから。

地中ケーブルでは、重さより太さが問題になります——だから銅が使われるのです。

用途によって、効いてくる性質が変わります——それが材料選びの面白さです。

導電率の基準が20 ℃ である理由

(2)に出てくる条件の意味を確かめましょう

温度銅の抵抗(20 ℃ を1とする)導電率
★0 ℃★0.92★★109%相当
★20 ℃★1.00★★100%(基準)
★60 ℃★1.16★86%相当

温度が変われば、導電率も大きく変わります——だから条件をそろえないと比べられないのです。

20 ℃ は、常温として扱いやすい値です——だから世界共通の基準になりました

実際の電線は、もっと高い温度で使われます——だから設計では換算します

「20 ℃ での」という但し書きには、そういう意味があります——読み飛ばさないことです。

まとめ

誤り(4) 軟銅線は導電率が高くなる
導電率銅は銀に次ぐ(1)
%IACS標準軟銅を100%(2)
材料電気銅を精製(3)
用途CV=軟銅線・架空=硬銅線(5)
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・導電材料の銅(電気材料19):【電力】平成24年度 A問題14
・送電線路の導体(電気材料9):【電力】令和3年度 A問題14

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