今回は平成24年度 電力科目 A問題14、導電材料としてよく利用される銅の誤り選択問題です。電気銅・軟銅と硬銅の使い分け・焼きなまし・抵抗率と、銅の基礎知識が総登場します。
決め手は金属の抵抗率ランキング。20℃において最も抵抗率の低い金属は銀で、銅は銀に次いで2番目です。「最も抵抗率の低い金属は銅」は誤り——銀は高価なため、実用の電線には銅が使われている、という関係で覚えましょう。
平成24年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成24年度 A問題14
導電材料としてよく利用される銅に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電線の導体材料の銅は、電気銅を精製したものが用いられる。
(2) CVケーブルの電線の銅導体には、軟銅が一般に用いられる。
(3) 軟銅は、硬銅を300〜600〔℃〕で焼きなますことにより得られる。
(4) 20〔℃〕において、最も抵抗率の低い金属は、銅である。
(5) 直流発電機の整流子片には、硬銅が一般に用いられる。

誤りは(4):最も抵抗率が低いのは銀
「最も抵抗率の低い金属は、銅である」——銀のほうが低いのです。
| 金属 | 導電率(標準軟銅を100%として) | 備考 |
| ★銀 | ★★約106% | ★★最も高いが高価 |
| ★軟銅 | ★★100%(基準) | ★★ケーブル・屋内配線 |
| ★硬銅 | ★★96〜98% | ★★架空送電線・整流子片 |
| ★金 | ★約70% | ★接点など特殊用途 |
| ★アルミニウム | ★★約61% | ★★軽いので架空送電線 |
抵抗率が低いことと、導電率が高いことは同じ意味です——互いに逆数だから。
だから導電率が最も高い銀が、抵抗率も最も低い——銅は2番目です。
銀は約106%、軟銅が100%——差は6%ほどですが、順位は変わりません。
それでも電線に銀を使わないのは、高価で希少だから——実用上の第一位は銅になります。
「実用上」と「物性上」を分けて覚えます——そこが引っかけの場所です。
(3) 焼きなましという処理
| 段階 | 起きること |
| ① | ★引き伸ばした銅は結晶が乱れている(加工硬化) |
| ★② | ★★300〜600 ℃ に加熱する |
| ★③ | ★★原子が動いて結晶が整う(再結晶) |
| ★④ | ★★柔らかくなり導電率も上がる |
金属を引き伸ばすと、結晶が引き延ばされて乱れます——硬くなるが電気は通しにくくなるのです。
加熱すると原子が動けるようになり、並び直します——それが再結晶です。
その結果、柔らかくなり導電率も回復します——2つが同時に変わるのです。
だから軟銅は「柔らかくて導電率が高い」——1つの処理から両方が出ることになります。
(5) 整流子片に硬銅を使う理由
| 求められること | 理由 | 硬銅が適する点 |
| ★機械的な強さ | ★★ブラシが常に押しつけられ摩擦する | ★★硬いのですり減りにくい |
| ★遠心力への耐性 | ★★高速で回転する | ★★引張強さが大きい |
| ★導電性 | ★電流を通す | ★96〜98%で十分 |
整流子はブラシとこすれ合う部品です——柔らかいとすぐ摩耗するのです。
しかも回転しているので、遠心力もかかります——飛び出さない強さが要るのです。
導電率は多少低くても、実用上は問題ありません——96〜98%あれば十分です。
だから硬銅が選ばれます——架空送電線と同じ理由になります。
⚠️ よくある間違い
(4)を「銅が一番よく電気を通す」と覚えている——物性上は銀が最も低い抵抗率です。銅は2番目。
実用上の第一位は銅(銀は高価で希少)——そこを分けて覚えます。
(1)の電気銅を疑ってしまう——電解精錬で純度を高めたもの。
(2)のCVケーブルを疑ってしまう——曲げるので軟銅です。
(3)の焼きなましを疑ってしまう——300〜600 ℃ で行います。
「最も」という語には順位の引っかけがある——1位と2位を入れ替えます。
⏱️ 本番での進め方
①★最も抵抗率が低い金属は銀。銅は2番目。
②★実用上の第一位は銅(銀は高価で希少)。
③★焼きなましは300〜600 ℃。柔らかくなり導電率も上がる。
④★整流子片は摩擦と遠心力に耐えるため硬銅。
💡 覚え方
「物性は銀、実用は銅」——1位と2位を入れ替える引っかけです。焼きなませば柔らかく、よく通す——1つの処理で2つが変わります。
導電材料は繰り返し出題されています——令和3年度 A問題14(電気材料:送電線の導体)、令和5年度下期 A問題14(電気材料:電線の導体)にもあります。
(2) CVケーブルに軟銅を使う理由
ケーブルは曲げて使う電線です。
| 場面 | 求められること | 軟銅が適する点 |
| ★ドラムに巻く | ★★小さく曲げられる | ★★可とう性がよい |
| ★管路に通す | ★★曲がった管でも通せる | ★同上 |
| ★マンホール内 | ★★小さく曲げて収める | ★同上 |
| ★端末処理 | ★曲げて接続する | ★折れにくい |
硬銅では、曲げたときに折れるおそれがあります——加工硬化していてもろいから。
軟銅なら何度曲げても大丈夫です——結晶が整っていて粘りがあるのです。
しかも導電率が100%と高い——曲げやすさと性能の両方が得られる。
引張強さが要らない用途なら、軟銅が有利——だからケーブルは軟銅なのです。
導電率が下がる3つの原因
いずれも「結晶の乱れ」に行き着きます。
| 原因 | 何が起きるか | 例 |
| ★不純物 | ★★別の原子が結晶を乱す | ★純度の低い銅 |
| ★加工硬化 | ★★引き伸ばして結晶が乱れる | ★★硬銅 |
| ★温度上昇 | ★★原子の振動が電子を妨げる | ★高温で使う電線 |
電子は、規則正しい結晶の中を最もよく流れます——乱れがあると散乱されるのです。
不純物も、加工による乱れも、熱による振動も同じこと——すべて電子の邪魔をするのです。
だから電気銅は純度を高め、軟銅は焼きなまします——乱れを減らす工夫です。
1つの原理から、3つの現象が説明できます——覚えるのではなく辿れるのです。
銀を電線に使わない理由
最も導電率が高いのに、なぜ使われないのでしょうか。
| 項目 | ★銀 | ★銅 |
| ★導電率 | ★★約106% | ★100% |
| ★価格 | ★★きわめて高価 | ★安価 |
| ★資源量 | ★★希少 | ★★豊富 |
| ★用途 | ★★接点・特殊な配線 | ★★電線全般 |
導電率の差はわずか6%です——それに見合う価格差ではないのです。
電線は何万キロも使うので、価格が決定的に効きます——数%の性能差より安さ。
だから銀は、少量で済む接点などに使われます——接触抵抗を小さくしたい場所です。
「物性上の第一位」と「実用上の第一位」は違う——そこが本問の要点になります。
整流子片が受ける過酷な条件
(5)で硬銅が使われる理由を、動作から見ましょう。
| 条件 | 内容 | 影響 |
| ★ブラシとの摩擦 | ★★常に押しつけられてこすれる | ★★摩耗する |
| ★遠心力 | ★★高速回転で外向きの力を受ける | ★★飛び出そうとする |
| ★火花 | ★整流のたびに小さな放電が起きる | ★表面が荒れる |
| ★温度 | ★摩擦と通電で熱くなる | ★軟化しやすくなる |
4つの条件が同時にかかる、過酷な部品です——だから硬さが要るのです。
軟銅では、すぐに摩耗して形が崩れます——整流がうまくいかなくなるのです。
硬銅なら、摩耗にも遠心力にも耐えられます——導電率の数%の差は問題にならない。
求められる性質の優先順位が、材料を決めます——架空送電線と同じ考え方です。
(1) 電気銅ができるまで
純度を高める工程が要ります。
| 段階 | 行うこと | 純度 |
| ★粗銅 | ★鉱石を溶かして取り出す | ★99%程度 |
| ★★電解精錬 | ★★粗銅を陽極にして電気分解する | ★★99.99%以上 |
| ★電気銅 | ★陰極に析出した高純度の銅 | ★これを電線に使う |
電気分解では、銅だけが陰極に移ります——不純物は溶けないか、底に沈むのです。
だから高い純度が得られます——99.99%以上になります。
わずかな不純物でも導電率が下がります——結晶を乱すからです。
だから電線用の銅は、必ず電解精錬を経ます——それが「電気銅」という呼び名の由来です。
まとめ
| 誤り | (4) 最も抵抗率が低いのは銀 |
| 電線の銅 | 電気銅を精製(1) |
| 軟銅 | 硬銅を300〜600℃で焼きなまし(3)・ケーブル導体(2) |
| 硬銅 | 整流子片に使用(5) |
| 答え | (4) |
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