今回は平成25年度 電力科目 A問題14、絶縁材料の特徴の誤り選択問題です。絶縁油・固体絶縁材料・SF6ガスと、気体・液体・固体それぞれの絶縁材料の性質が横断的に問われます。
決め手は圧力と絶縁耐力の関係。圧力によって絶縁耐力が大きく変化するのは気体絶縁材料です。液体はほとんど圧縮されないため、圧力の影響は小さい——「液体は気体と比べて圧力により絶縁耐力が大きく変化する」は主語が逆で誤りです。
誤りは(4):圧力で大きく変わるのは気体
「液体絶縁材料は気体絶縁材料と比べて、圧力により大きく変化する」——逆です。
| ★気体 | ★液体 | ★固体 | |
| ★圧縮できるか | ★★よく縮む | ★★ほとんど縮まない | ★★縮まない |
| ★圧力で密度が変わるか | ★★大きく変わる | ★ほぼ変わらない | ★変わらない |
| ★絶縁耐力への影響 | ★★大きい | ★★小さい | ★★ほぼない |
気体は圧力を上げると分子が密になります——だから電子が加速できなくなるのです。
液体はほとんど圧縮できません——圧力をかけても密度が変わらないのです。
だから絶縁耐力もほとんど変わりません——気体とは正反対です。
ガス機器が圧力を調整するのは、気体だからこそ——油入機器では圧力で性能を変えられないのです。
OFケーブルが加圧するのは、ボイドを作らせないため——絶縁耐力を上げるためではありません。
平成25年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成25年度 A問題14
絶縁材料の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 絶縁油は、温度や不純物などにより絶縁性能が影響を受ける。
(2) 固体絶縁材料は、温度変化による膨張や収縮による機械的ひずみが原因で劣化することがある。
(3) 六ふっ化硫黄(SF6)ガスは、空気と比べて絶縁耐力が高いが、一方で地球温暖化に及ぼす影響が大きいという問題点がある。
(4) 液体絶縁材料は気体絶縁材料と比べて、圧力により絶縁耐力が大きく変化する。
(5) 一般に固体絶縁材料には、液体や気体の絶縁材料と比較して、絶縁耐力が高いものが多い。

3つの状態の絶縁材料
| 項目 | ★気体 | ★液体 | ★固体 |
| ★絶縁耐力 | ★★低い | ★中程度 | ★★高い |
| ★放電したあと | ★★自己回復する | ★分解してガスが出る | ★★回復しない |
| ★圧力の影響 | ★★大きい | ★★小さい | ★★ほぼない |
| ★温度・不純物の影響 | ★中程度 | ★★大きい | ★中程度 |
| ★冷却 | ★対流で運べる | ★★対流でよく運べる | ★★運べない |
(5)の「固体は絶縁耐力が高い」も、この表のとおり——分子が詰まっているからです。
(1)の「絶縁油は温度や不純物に影響される」も正しい——液体はとりわけ敏感だから。
3つの状態で、効いてくる要因が違います——それが本問のねらいです。
圧力なら気体、温度・不純物なら液体——そう整理すると迷いません。
(2) 固体が機械的ひずみで劣化する
| 段階 | 起きること |
| ① | ★負荷の増減で温度が上下する |
| ★② | ★★材料が膨張と収縮を繰り返す |
| ★③ | ★★材料どうしの熱膨張率の差でひずみが生じる |
| ★④ | ★★微小な亀裂やボイドができる |
| ★⑤ | ★そこで部分放電が始まる |
導体と絶縁体では、熱膨張率が違います——だから境目にひずみが集中するのです。
1日に何度も繰り返されるので、積み重なります——金属疲労と同じ考え方です。
気体や液体なら、流動するのでひずみが残りません——固体だけの弱点になります。
だから(2)は固体絶縁材料の話として正確——状態による違いがここにも表れます。
⚠️ よくある間違い
(4)を「液体のほうが密だから」と考える——密だからこそ圧縮できません。圧力をかけても密度が変わらないのです。
圧力で絶縁耐力が変わるのは気体だけ——だからガス機器は圧力を管理します。
(1)の絶縁油を疑ってしまう——温度と不純物に敏感です。
(3)のSF6を疑ってしまう——絶縁耐力が高く温暖化への影響も大きい。
(5)の固体を疑ってしまう——絶縁耐力は最も高いです。
「AはBと比べて」の向きを確かめる——入れ替えるだけの引っかけになります。
⏱️ 本番での進め方
①★圧力で絶縁耐力が大きく変わるのは気体。
②★液体はほとんど圧縮できないので影響が小さい。
③★絶縁耐力は固体>液体>気体。
④★液体は温度と不純物にとりわけ敏感。
💡 覚え方
「縮むものだけが圧力で変わる」——気体だけが大きく圧縮できます。圧力なら気体、温度・不純物なら液体——効く要因が状態で違うのです。
気体絶縁材料の性質は令和元年度 A問題14(電気材料:電気絶縁材料)にあります。
(1) 絶縁油が温度と不純物に敏感な理由
液体ならではの弱さです。
| 要因 | 起きること | 絶縁性能 |
| ★温度が上がる | ★★粘度が下がり分子が動きやすくなる | ★★下がる |
| ★水分が混じる | ★★イオンが動いて漏れ電流が流れる | ★★大きく下がる |
| ★異物が混じる | ★★電界で並んで橋を作る | ★★大きく下がる |
水分はごくわずかでも効きます——数十ppmで絶縁破壊電圧が半分になることも。
異物は電界の中で並んで、橋のようにつながります——そこが放電の通り道になるのです。
液体は流動するので、異物が集まりやすい——固体にはない弱点です。
だから絶縁油はろ過し、乾燥させて使います——清浄さが性能を決めるのです。
(5) 固体の絶縁耐力が高い理由
分子の詰まり方が違います。
| 状態 | 分子の間隔 | 電子が加速できる距離 | 絶縁耐力 |
| ★気体 | ★★広い | ★★長い | ★★低い |
| ★液体 | ★狭い | ★短い | ★中程度 |
| ★固体 | ★★最も狭い | ★★きわめて短い | ★★最も高い |
絶縁破壊は、電子が加速して分子を電離させて起きます——加速する距離が要るのです。
分子が詰まっていれば、すぐぶつかって加速できません——だから破壊しにくいのです。
だから同じ厚さなら固体が最も強い——それが(5)の内容です。
ただし壊れたら回復しない——強さと引き換えの弱点になります。
(3) SF6の2つの顔
優れた性質と環境負荷が同居しています。
| 面 | 内容 | 原因 |
| ★長所 | ★★絶縁耐力が空気の2〜3倍、消弧能力は約100倍 | ★★ふっ素が自由電子を捕まえる |
| ★短所 | ★★温暖化係数がCO₂の約2万倍、寿命3,200年 | ★★化学的に安定で分解されない |
安定であることが、長所にも短所にもなっています——機器に封入できるが、大気でも残るのです。
だから回収が義務づけられています——京都議定書の対象ガスだから。
代替ガスの研究も進んでいます——けれども同等の性能を持つものが乏しい。
だから(3)は、その両面を正しく述べています。
状態ごとに効く要因が違う
本問の5つの選択肢を整理しましょう。
| 状態 | 効く要因 | 本問の選択肢 |
| ★気体 | ★★圧力 | ★(3)(4) |
| ★液体 | ★★温度・不純物 | ★(1) |
| ★固体 | ★★機械的ひずみ・熱サイクル | ★(2)(5) |
気体は圧縮できるので、圧力が効きます——ガス機器が圧力を管理する理由です。
液体は流動するので、不純物が集まります——だから清浄さが性能を決めるのです。
固体は動けないので、ひずみが残ります——だから熱サイクルが劣化を生むのです。
5つの選択肢が、3つの状態を網羅しています——絶縁材料の総まとめのような問題です。
絶縁材料を組み合わせて使う
1つの状態だけで済むことは、まずありません。
| 機器 | 使う絶縁材料 | 組合せの意味 |
| ★変圧器 | ★★絶縁油(液体)+絶縁紙(固体) | ★★油がすきまを満たし紙が形を保つ |
| ★OFケーブル | ★★絶縁油+絶縁紙 | ★同上 |
| ★GIS | ★★SF6(気体)+絶縁スペーサ(固体) | ★★ガスが絶縁し固体が支える |
| ★架空送電線 | ★★空気(気体)+がいし(固体) | ★★空気が絶縁しがいしが支える |
固体だけでは、すきまに空気が残ります——そこで部分放電が起きるのです。
気体や液体だけでは、電線を支えられません——形を保つものが要るのです。
だから組み合わせて使います——それぞれの長所を活かすのです。
3つの状態の性質を知ることが、機器の理解につながります。
まとめ
| 誤り | (4) 圧力で大きく変化するのは気体 |
| 気体 | 加圧で絶縁耐力UP(GIS加圧封入) |
| 液体 | 非圧縮性で圧力の影響小 |
| 絶縁耐力の順 | 固体>液体>気体(5) |
| SF6 | 絶縁耐力高いが温暖化問題(3) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・気体・固体絶縁材料(電気材料4):【電力】令和6年度上期 A問題14
・電気絶縁材料(電気材料20):【電力】平成23年度 A問題14

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