今回は令和元年度 電力科目 A問題9、架空送電線路の構成部品の誤り選択問題です。この問題は令和7年度上期A問題8(架空送電4)として選択肢の並びを変えて再出題されています(R01は(3)・R07上は(2)が誤り)。
誤りはやはりがいしの設計思想。がいしが内部で絶縁破壊(貫通破壊)すると交換まで絶縁が回復しないため、実際は表面の沿面やアークホーン間でフラッシオーバさせて内部を守る——「内部で起こるように設計」は正反対です。
令和元年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和元年度 A問題9
架空送電線路の構成部品に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 鋼心アルミより線は、アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度の不足を、鋼心を用いることで補ったものである。
(2) 電線の微風振動やギャロッピングを抑制するために、電線にダンパを取り付け、振動エネルギーを吸収する方法がとられる。
(3) がいしは、電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用する。雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は、がいし内部で起こるように設計されている。
(4) 送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線がある。架空地線には、光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある。
(5) 架空送電線におけるねん架とは、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる。

誤りは(3):絶縁破壊は表面で起こす
「絶縁破壊は、がいし内部で起こるように設計されている」——逆です。
| どこで放電するか | 呼び方 | そのあと |
| ★表面を伝う | ★★フラッシオーバ(せん絡) | ★★電気を切れば元に戻る |
| ★内部を貫く | ★★貫通破壊 | ★★がいしが壊れて交換が必要 |
表面で放電すれば、空気が絶縁を回復します——再閉路すれば送電を続けられるのです。
内部を貫かれると、磁器やガラスが割れます——取り替えるまで直りません。
だから貫通破壊電圧を、せん絡電圧より高く設計します——先に表面で逃がすのです。
これは絶縁協調の考え方そのもの——壊れる場所をこちらで決めておくことになります。
(1) 鋼心アルミより線という工夫
| 硬銅より線 | ★鋼心アルミより線(ACSR) | |
| ★導体 | ★銅 | ★★アルミ |
| ★質量 | ★重い | ★★軽い(同じ抵抗で約半分) |
| ★強度 | ★十分 | ★★アルミだけでは足りない |
| ★補い方 | ★— | ★★中心に鋼より線を入れる |
アルミの導電率は銅の約6割です——だから同じ抵抗にするには太くします。
それでも比重が銅の約3分の1なので、全体では軽くなります——同じ抵抗で質量は約半分。
軽ければ、鉄塔を小さくできます——建設費が下がるのです。
太くなるのはコロナ対策としても好都合——一石二鳥になります。
(5) ねん架のねらい
電線の位置が違えば、電気的な量も違います。
| 位置 | 大地との距離 | 作用静電容量 | 作用インダクタンス |
| ★上段 | ★遠い | ★小さい | ★大きい |
| ★下段 | ★近い | ★大きい | ★小さい |
このままでは3相が不平衡になります——電圧も電流も相ごとに違ってしまうのです。
だから区間ごとに位置を入れ替えて、平均をそろえます——それがねん架です。
入れ替えにはジャンパ線を使います——耐張鉄塔で電線をいったん切って渡すのです。
だから(5)の記述は正しい——作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させる。
⚠️ よくある間違い
(3)の前半「電線と支持物との間を絶縁する」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「がいし内部で起こるように設計」。
絶縁破壊は表面(沿面)で起こすのが設計方針——内部を貫かれると交換が要るから。
(1)の鋼心アルミより線を疑ってしまう——質量と強度の説明として正確です。
(2)のダンパを疑ってしまう——振動エネルギーを吸収します。
(5)のねん架を疑ってしまう——ジャンパ線で入れ替えるのは実際の方法。
「内部」「表面」という語に反応する——絶縁協調の基本が問われています。
⏱️ 本番での進め方
①★がいしの絶縁破壊は表面で起こすように設計する。
②★内部を貫かれると交換が必要になる。
③★ACSRはアルミで軽くし、鋼心で強度を補う。
④★ねん架は作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させる。
💡 覚え方
「表面なら直る、中を貫かれたら終わり」——だから表面で先に放電させます。絶縁協調は、壊れる場所を選んでおく考え方です。
がいしの性能は平成18年度 A問題7(架空送電:がいしの性能)にあります。
がいしが割れると何が起きるか
(3)の設計方針が、なぜ大切なのか見ましょう。
| 状態 | 絶縁 | 復旧 | 発見 |
| ★表面で放電 | ★★空気が回復する | ★★再閉路で送電再開 | ★不要 |
| ★内部が貫通 | ★★回復しない | ★★交換するまで使えない | ★★点検で探す必要がある |
貫通したがいしは、外から見て分かりにくいことがあります——ひび割れが小さい場合もあるのです。
そのまま使い続けると、いずれ地絡します——だから不良がいしを探す点検があります。
紫外線カメラや、電圧分布の測定で見つけます——手間のかかる作業です。
表面で放電するように設計しておけば、その手間が減ります——だから絶縁協調が大切なのです。
ACSR の断面を見る
(1)の鋼心アルミより線が、どう組まれているか見ましょう。
| 層 | 材料 | 担うもの |
| ★中心 | ★★亜鉛メッキ鋼より線 | ★★引張強度 |
| ★外層 | ★★硬アルミ線 | ★★電流 |
役割をはっきり分けているのが、この電線の要点——鋼が支え、アルミが流すのです。
鋼は導電率が低いので、電流はほとんど流れません——それでかまわないのです。
表皮効果があるので、電流は外側を流れたがります——中心が鋼でも損失は増えません。
亜鉛メッキは、鋼のさびを防ぐため——数十年使うので腐食対策が要ります。
アルミと鋼で熱膨張率が違う点にも配慮されています——温度が上がると鋼が主に張力を受け持つのです。
(2) ダンパで抑えられる振動
ダンパは、どの振動に効くのでしょうか。
| 振動 | ダンパの効果 | 主な対策 |
| ★微風振動 | ★★よく効く | ★ダンパ・アーマロッド |
| ★ギャロッピング | ★限定的 | ★★相間スペーサ・難着雪リング |
| ★スリートジャンプ | ★効かない | ★★オフセット(電線の配置をずらす) |
ダンパは小さく速い振動を吸収する装置——微風振動がまさにそれです。
ギャロッピングは大きくゆっくりした揺れ——エネルギーが桁違いなので吸収しきれません。
それでも多少は効くので、問題文の(2)は誤りではありません——「抑制するために」と書かれているのです。
スリートジャンプには、電線の配置をずらす方法が使われます——跳ね上がっても上の相に届かないように。
ねん架を省略できる場合
(5)のねん架は、いつでも必要でしょうか。
| 条件 | ねん架 | 理由 |
| ★長い送電線 | ★★必要 | ★不平衡が積み重なる |
| ★短い線路 | ★★省略することがある | ★影響が小さい |
| ★正三角形配置 | ★★不要に近い | ★★もともと対称 |
3相を正三角形に並べれば、初めから対称です——ねん架しなくても平衡します。
けれども鉄塔の構造上、縦に並べることが多い——用地を節約できるからです。
縦配置なら上下で条件が違うので、ねん架が要ります——配置と対策がつながっているのです。
ねん架は3区間で1周し、各相が上・中・下を1回ずつ通ります——平均すれば同じになることになります。
がいしの絶縁を保つ設計
沿面距離という考え方があります。
| 距離 | 意味 | 関係する性能 |
| ★空間距離 | ★空気中を直線で結んだ長さ | ★アークホーン間の放電 |
| ★★沿面距離 | ★★がいしの表面をたどった長さ | ★★汚損時のフラッシオーバ |
| ★貫通経路 | ★磁器の中を最短で通る長さ | ★貫通破壊 |
笠が波打っているのは、沿面距離を稼ぐため——直線より長い経路を作るのです。
汚れると表面が導電性を持つので、沿面距離が効いてきます——だから塩害地域では長いがいしを使う。
貫通経路は最も短いのですが、磁器の絶縁が強い——だから貫通しにくいのです。
この3つの関係を設計で調整します——表面で先に放電させるために。
まとめ
| 誤り | (3) 絶縁破壊は内部でなく表面で起こす設計 |
| ACSR | アルミ=軽量・鋼心=強度(1) |
| ダンパ | 振動エネルギー吸収(2) |
| 架空地線 | 雷撃保護・OPGW=光ファイバ内蔵(4) |
| ねん架 | ジャンパ線で配置入替→L・C平衡(5) |
| 答え | (3) |
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