今回は令和元年度 電力科目 A問題10、送電線のコロナ損の空欄補充問題です。この問題は令和5年度上期A問題9(架空送電11)として文面・選択肢・答えまで完全同一で再出題されました——コロナの基本を固めれば2問分の得点源です。
コロナ放電の発生を決めるのは電線表面の電界強度(波高値約30kV/cm)。対策は実効的な直径を大きく=多導体化、線間距離を大きく。そして気圧が低い(雨天・高地)ほど空気の絶縁耐力が下がり発生しやすくなります。
令和元年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和元年度 A問題10
次の文章は、コロナ損に関する記述である。
送電線に高電圧が印加され、(ア)がある程度以上になると、電線からコロナ放電が発生する。コロナ放電が発生するとコロナ損と呼ばれる電力損失が生じる。そこで、コロナ放電の発生を抑えるために、電線の実効的な直径を(イ)するために(ウ)する、線間距離を(エ)する、などの対策がとられている。コロナ放電は、気圧が(オ)なるほど起こりやすくなる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 電流密度 大きく 単導体化 大きく 低く (2) 電線表面の電界強度 大きく 多導体化 大きく 低く (3) 電流密度 小さく 単導体化 小さく 高く (4) 電線表面の電界強度 小さく 単導体化 大きく 低く (5) 電線表面の電界強度 大きく 多導体化 小さく 高く

(ア) コロナは電界強度で決まる
電線の表面の電界が、空気の絶縁を破る値を超えると放電します。
電流の大きさは関係ありません——電圧によって決まる現象です。
だから(ア)は「電線表面の電界強度」——「電流密度」では別の話になります。
電界は電線が細いほど強くなります——同じ電圧でも曲率が大きいと集中するから。
だから太い電線ほどコロナが起きにくい——それが(イ)につながります。
(イ)(ウ) 多導体で見かけの直径を大きくする
1相を複数本の電線で構成します。
| 方式 | 1相あたりの本数 | 使う電圧 |
| ★単導体 | ★1本 | ★154 kV 以下 |
| ★2導体 | ★2本 | ★187〜275 kV |
| ★4導体 | ★4本 | ★500 kV |
| ★6〜8導体 | ★6〜8本 | ★UHV 級 |
離して配置すると、電気的には1本の太い電線のように振る舞います——等価半径が大きくなるのです。
表面の電界が分散するので、コロナが起きにくくなります——それが多導体化の目的です。
「単導体化」では逆効果——細くなって電界が集中します。
多導体のその他の利点
| 効果 | 内容 |
| ★インダクタンスが減る | ★等価半径が大きくなるため |
| ★静電容量が増える | ★同じ理由 |
| ★送電容量が増える | ★リアクタンスが減るから |
| ★風圧荷重が増える | ★本数が増えるので不利 |
コロナ対策と送電容量の両方に効きます——だから超高圧では標準です。
本数が増えるぶん、鉄塔への荷重は増えます——そこが代償になります。
(エ)(オ) 線間距離と気圧
線間距離を大きくすれば、電界が弱まります。
近づけるほど電界が強くなる——だから「大きく」するのです。
気圧については、低いほど起きやすくなります。
気圧が低いと空気の分子が少なくなります——電子が加速しやすくなるのです。
だから高地ほどコロナが起きやすい——山岳地帯の送電線では注意が要ります。
雨や雪の日も起きやすくなります——水滴が電線表面に突起を作るからです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「電流密度」としてしまう——選択肢(1)(3)がそれです。コロナは電圧で決まる現象。
(イ)を「小さく」としてしまう——選択肢(3)(4)。細いほど電界が集中します。
(ウ)を「単導体化」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)。逆効果です。
(エ)を「小さく」としてしまう——選択肢(3)(5)。近づけると電界が強まります。
(オ)を「高く」としてしまう——選択肢(3)(5)。気圧が低いほど起きやすいのです。
(ウ)だけで(2)(5)に絞れます。
⏱️ 本番での進め方
①★コロナは電線表面の電界強度で決まる。
②★多導体化で等価半径を大きくする。
③★線間距離は大きくするほどよい。
④★気圧が低いほど起きやすい(高地で注意)。
💡 覚え方
「太く、離す」——それがコロナ対策のすべてです。太くする手段が多導体化——実際に太い電線を使うより経済的になります。
電線の振動と対策は平成22年度 A問題10(架空送電:電線の振動)にあります。
コロナが引き起こす4つの障害
電力損失だけが問題ではありません。
| 障害 | 内容 | 影響 |
| ★コロナ損 | ★放電によるエネルギー損失 | ★送電効率が下がる |
| ★可聴雑音 | ★ジージーという音 | ★近隣への騒音 |
| ★電波障害 | ★高周波ノイズが発生する | ★ラジオ・テレビに雑音 |
| ★オゾン・硝酸の生成 | ★放電で空気が分解する | ★金具の腐食 |
コロナ損は数 kW/km 程度で、送電容量から見れば小さい——けれども雑音と電波障害は苦情になります。
だから住宅地の近くでは特に対策が要る——多導体化や太い電線を使います。
雨の日に音が大きくなるのは、水滴が突起になるから——そこに電界が集中します。
コロナ臨界電圧の式
電線が太いほど、線間が離れるほど臨界電圧が上がります——問題文の(イ)(エ)がその通りです。
m₀は表面係数で、電線が汚れていると小さくなります——臨界電圧が下がる=起きやすくなるのです。
要点をもう一度
5つの空欄が、コロナの原理と対策を並べています。
| 空欄 | 答え | 誤答の型 |
| (ア) | ★電線表面の電界強度 | ★電流密度 |
| (イ) | ★大きく | ★小さく |
| (ウ) | ★多導体化 | ★単導体化 |
| (エ) | ★大きく | ★小さく |
| (オ) | ★低く | ★高く |
すべて「電界を弱める方向」で統一されています——太く、離すのが対策だからです。
(オ)だけが「気圧」なので向きが逆に見えますが——気圧が低い=空気が薄い=絶縁が弱いと考えれば同じ。
コロナ損の大きさ
| 条件 | コロナ損の目安 |
| ★晴天時 | ★ごくわずか |
| ★雨天時 | ★数 kW/km |
| ★着雪時 | ★さらに増える |
晴れていればほとんど生じません——臨界電圧を下回っているからです。
雨や雪で水滴が付くと、そこが突起になって電界が集中します——だから天候で大きく変わるのです。
送電容量から見れば小さい損失ですが、雑音は苦情になります——だから対策が必要になります。
多導体のスペーサ
(ウ)の多導体には、間隔を保つ部品が要ります。
| 部品 | 役割 |
| ★スペーサ | ★素導体の間隔を一定に保つ |
| ★スペーサダンパ | ★間隔保持+振動抑制を兼ねる |
素導体どうしには吸引力が働きます——同じ向きの電流が流れているからです。
短絡時には大電流が流れ、強く引き合います——スペーサがないと接触してしまうのです。
接触すれば等価半径が小さくなり、コロナ対策の意味がなくなります——だから間隔保持が欠かせないことになります。
数十メートルごとに取り付けます——サブスパン振動という別の振動も抑えられます。
多導体は利点が多いのですが、部品も増える——その分の費用と保守が代償です。
コロナ以外の電線の選び方
電線を太くする理由は、コロナだけではありません。
| 観点 | 太いほうがよい理由 |
| ★許容電流 | ★断面積が大きいほど多く流せる |
| ★抵抗損 | ★断面積に反比例して減る |
| ★コロナ | ★★表面の電界が弱まる |
| ★機械的強度 | ★風雪に耐えられる |
低い電圧では、許容電流と抵抗損で太さが決まります——コロナは問題になりません。
高い電圧になると、コロナが決め手になります——電流としては細くてよくても太くするのです。
だから超高圧では多導体を使う——実際に太い電線を作るより経済的だからです。
ACSR(鋼心アルミより線)は、中心が鋼で外側がアルミ——強度と導電性を両立させた構造になります。
まとめ
| (ア) | 電線表面の電界強度 |
| (イ)(ウ) | 実効直径を大きく→多導体化 |
| (エ) | 線間距離を大きく |
| (オ) | 気圧が低くなるほど発生しやすい |
| 再出題 | R05上問9(架空送電11)と完全同一 |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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