今回は平成22年度 電力科目 A問題10、架空送電線の振動の種類と原因の空欄補充問題です。この問題の骨格は令和4年度上期A問題10(架空送電14)にほぼそのまま再出題されています。
ポイントは2つ:①微風振動の発生条件=軽い電線・長い径間・大きい張力(軽・長・張)。②氷雪系の2現象の区別——翼形に付着した氷雪に風→揚力→ギャロッピング、氷雪の落下の反動→スリートジャンプ。どちらも相間短絡対策としてオフセットや相間スペーサを使います。
(ア)(イ)(ウ) 微風振動が起きる条件
電線の後ろにできる渦が、振動を生みます。
| 条件 | 起きやすい | 理由 |
| ★電線の重さ | ★軽い | ★★同じ力でも振れやすい |
| ★径間 | ★長い | ★★固有振動数が低く共振しやすい |
| ★張力 | ★大きい | ★★支持点に応力が集中する |
| 風速 | 毎秒数メートル | 強すぎると渦が乱れる |
軽いほど、長いほど、張るほど起きやすい——3つとも覚えやすい向きです。
直感的には「張れば振動しない」と思いがち——けれども張力が大きいほど支持点の負担が増えます。
アルミ電線は銅より軽いので、微風振動が起きやすい——ACSRが主流になってから問題化しました。
風速が強すぎると、かえって起きません——渦が規則的にできなくなるからです。
平成22年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成22年度 A問題10
架空電線が電線と直角方向に毎秒数メートル程度の風を受けると、電線の後方に渦を生じて電線が上下に振動することがある。これを微風振動といい、これが長時間継続すると電線の支持点付近で断線する場合もある。微風振動は(ア)電線で、径間が(イ)ほど、また、張力が(ウ)ほど発生しやすい。対策としては、電線にダンパを取り付けて振動そのものを抑制したり、断線防止策として支持点近くをアーマロッドで補強したりする。電線に翼形に付着した氷雪に風が当たると、電線に揚力が働き複雑な振動が生じる。これを(エ)といい、この振動が激しくなると相間短絡事故の原因となる。主な防止策として、相間スペーサの取り付けがある。また、電線に付着した氷雪が落下したときに発生する振動は、(オ)と呼ばれ、相間短絡防止策としては、電線配置にオフセットを設けることなどがある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 軽い 長い 大きい ギャロッピング スリートジャンプ (2) 重い 短い 小さい スリートジャンプ ギャロッピング (3) 軽い 短い 小さい ギャロッピング スリートジャンプ (4) 軽い 長い 大きい スリートジャンプ ギャロッピング (5) 重い 長い 大きい ギャロッピング スリートジャンプ

(エ)(オ) 3つの振動を区別する
| 現象 | 原因 | 振幅 | 対策 |
| ★微風振動 | ★毎秒数メートルの風による渦 | ★小さい(数 cm) | ★ダンパ・アーマロッド |
| ★ギャロッピング | ★翼形に付いた氷雪+強風の揚力 | ★★大きい(数 m) | ★相間スペーサ・難着雪リング |
| ★スリートジャンプ | ★★氷雪が落下した反動 | ★大きい | ★★オフセット |
ギャロッピングは氷雪が「付いている」ときの振動——翼のような形になって揚力が働きます。
スリートジャンプは氷雪が「落ちた」瞬間の跳ね上がり——重りが取れて電線が跳ねるのです。
付いているか落ちたか——それが2つを分ける鍵になります。
「スリート」は英語で「みぞれ」——それが跳ぶので「ジャンプ」です。
対策が現象ごとに違う
| 対策 | 狙い | 対象 |
| ★ダンパ | ★振動のエネルギーを吸収する | ★微風振動 |
| ★アーマロッド | ★支持点付近を補強し断線を防ぐ | ★微風振動 |
| ★相間スペーサ | ★相どうしの接近を防ぐ | ★ギャロッピング |
| ★オフセット | ★上下の相を水平にずらす | ★スリートジャンプ |
微風振動は振動そのものを抑える——振幅が小さいので接触の心配はありません。
ギャロッピングとスリートジャンプは相間短絡が問題——だから相どうしを離す対策になります。
オフセットは、真上に配置せず水平にずらすこと——跳ね上がってもぶつかりません。
⚠️ よくある間違い
(ウ)を「小さい」としてしまう——選択肢(2)(3)がそれです。張力が大きいほど支持点に応力が集中します。
(ア)を「重い」としてしまう——選択肢(2)(5)。軽いほど振れやすい。
(イ)を「短い」としてしまう——選択肢(2)(3)。長いほど共振しやすいです。
(エ)(オ)を入れ替えてしまう——選択肢(2)(4)。付いているときがギャロッピング、落ちたときがスリートジャンプ。
(エ)の対策が相間スペーサと書かれている——それがギャロッピングの定番対策です。
⏱️ 本番での進め方
①★微風振動は軽い・長い・張力大で起きやすい。
②★ギャロッピングは氷雪が付いているとき。
③★スリートジャンプは氷雪が落ちたとき。
④★対策はダンパ/相間スペーサ/オフセットと使い分ける。
💡 覚え方
「付けば揚力、落ちれば跳ねる」——ギャロッピングとスリートジャンプの違いです。微風振動は軽い・長い・張るほど起きやすい——3つとも「大きいほう」が危険になります。
コロナ対策と多導体は令和元年度 A問題10(架空送電:コロナ損)にあります。
微風振動が断線につながる理由
(ア)〜(ウ)の条件がそろうと、支持点で疲労が進みます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★風で電線の後ろにカルマン渦ができる |
| ★② | ★渦が交互にはがれ、上下の力が働く |
| ★③ | ★電線の固有振動数と一致すると共振する |
| ★④ | ★支持点で曲げが繰り返される |
| ★⑤ | ★金属疲労により素線が切れる |
振幅は数センチと小さいのですが、何百万回も繰り返されます——だから疲労破断につながるのです。
支持点は動きが拘束されるので、そこに曲げが集中します——だから断線は支持点付近で起きるのです。
ダンパとアーマロッドの違い
| ★ダンパ | ★アーマロッド | |
| ★狙い | ★★振動そのものを抑える | ★★断線を防ぐ |
| ★働き | ★おもりが逆位相で動きエネルギーを吸収 | ★支持点付近を補強して曲げを分散 |
| ★取付位置 | ★支持点から少し離れた場所 | ★支持点そのもの |
ダンパは原因を減らし、アーマロッドは結果に備えます——両方を併用するのが一般的です。
問題文が「振動そのものを抑制」「断線防止策として補強」と書き分けている——正確な記述になります。
要点をもう一度
3つの振動現象を、原因で区別します。
| 現象 | 原因 | 対策 |
| ★微風振動 | ★弱い風による渦 | ★ダンパ・アーマロッド |
| ★ギャロッピング | ★氷雪が付いた状態+風 | ★相間スペーサ |
| ★スリートジャンプ | ★氷雪が落下した反動 | ★オフセット |
対策が現象ごとに違うので、対で覚えられます——問題文にも対策が書かれています。
(エ)は「相間スペーサ」、(オ)は「オフセット」が手がかり——そこから逆に現象名を決められるのです。
ギャロッピングが起きる条件
(エ)の現象は、条件がそろったときだけ起きます。
| 条件 | 内容 |
| ★氷雪の付着 | ★電線の片側に翼のような形で付く |
| ★風速 | ★毎秒10〜20メートル程度 |
| ★風向 | ★電線に対してほぼ直角 |
| ★径間 | ★長いほど起きやすい |
着雪が翼形になると、風が当たったときに揚力が生じます——飛行機の翼と同じ原理です。
持ち上がると角度が変わり、揚力が減って落ちる——それを繰り返して大きく振動します。
振幅は数メートルに達することもある——だから相間短絡につながるのです。
難着雪リングを付けて、翼形になるのを防ぐ対策もあります——雪が付いても落ちやすくするのです。
多導体では、素導体がねじれて着雪しにくくなる工夫もあります。
スリートジャンプとオフセット
(オ)の対策を、図で思い浮かべましょう。
| 配置 | 上下の相の位置 | 跳ね上がったとき |
| ★真上に配置 | ★垂直に並ぶ | ★★接触の恐れ |
| ★オフセット | ★水平方向にずらす | ★★すれ違うので接触しない |
下の電線から雪が落ちると、跳ね上がります——重りが取れて張力が余るからです。
真上に相があると、そこへぶつかる——相間短絡になります。
水平にずらしておけば、跳ね上がっても横を通り過ぎる——それがオフセットです。
鉄塔の腕金の長さを段ごとに変えて実現します——簡単で確実な対策になります。
着雪の多い地域では、標準的に採用されています。
微風振動の3条件を言い換える
| 条件 | 物理的な意味 |
| ★軽い電線 | ★慣性が小さく、同じ力で大きく振れる |
| ★長い径間 | ★固有振動数が低く、弱い風で共振する |
| ★大きい張力 | ★支持点で曲げ応力が集中する |
3つとも「振れやすい・壊れやすい」向き——まとめて覚えられます。
張力だけは直感に反するので注意——張れば振動が止まりそうに思えるからです。
まとめ
| (ア)(イ)(ウ) | 軽い・長い・大きい(軽・長・張) |
| (エ) | ギャロッピング(翼形氷雪+揚力) |
| (オ) | スリートジャンプ(氷雪落下の反動) |
| 対策 | ダンパ・アーマロッド/相間スペーサ/オフセット |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・再出題版・サブスパン付き(架空送電14):【電力】令和4年度上期 A問題10
・振動対策の空欄(架空送電25):【電力】平成27年度 A問題8

コメント