今回は令和5年度上期 電力科目 A問題9、送電線のコロナ損に関する空欄補充問題です。コロナ放電の発生条件と抑制策、気圧との関係というコロナの基本がひととおり問われます。
コロナ放電は電線表面の電界強度がある値(波高値で約30kV/cm=実効値約21kV/cm)を超えると発生します。対策はすべて「表面の電界を緩める」方向:実効的な直径を大きく(太線化・多導体化)、線間距離を大きく。また空気の絶縁耐力が下がる気圧が低い(雨天・高地)ほど起こりやすくなります。
令和5年度上期 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【架空送電】 令和5年度上期 A問題9
次の文章は、コロナ損に関する記述である。
送電線に高電圧が印加され、(ア)がある程度以上になると、電線からコロナ放電が発生する。コロナ放電が発生するとコロナ損と呼ばれる電力損失が生じる。コロナ放電の発生を抑えるには、電線の実効的な直径を(イ)するために(ウ)する、線間距離を(エ)する、などの対策がとられている。コロナ放電は、気圧が(オ)なるほど起こりやすくなる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 電流密度 大きく 単導体化 大きく 低く (2) 電線表面の電界強度 大きく 多導体化 大きく 低く (3) 電流密度 小さく 単導体化 小さく 高く (4) 電線表面の電界強度 小さく 単導体化 大きく 低く (5) 電線表面の電界強度 大きく 多導体化 小さく 高く
出題のポイント:表面電界を弱めてコロナを抑える

コロナ放電は、電線表面の電界強度が空気の絶縁限界を超えると発生します。電線の実効的な直径を大きくする多導体化と、線間距離を大きくする対策で表面電界を弱めます。一方、気圧が低いほど空気密度と絶縁耐力が低下し、コロナは起こりやすくなります。
令和元年度A10とまったく同じ問題
問題文も選択肢も一字一句同じです——4年を隔てた再出題になります。
コロナは架空送電の頻出テーマ——3つの年度で問われています。
| 年度 | 形式 | 問われた中心 |
| ★平成26年度 A9 | ★誤りを選ぶ | ★単導体と多導体の比較 |
| ★平成30年度 A9 | ★空欄補充 | ★多導体の電気的効果 |
| ★令和元年度 A10 | ★空欄補充 | ★コロナ対策と気圧 |
| ★令和5年度上期 A9 | ★空欄補充 | ★同上(再出題) |
問われる語は限られています——電界強度・多導体化・大きく・低く。
コロナを抑える3つの方向

4つの空欄が、同じ狙いを向いています。
| 空欄 | 答え | 電界への効果 |
| (イ) | ★大きく | ★★等価半径が大きいと電界が弱まる |
| (ウ) | ★多導体化 | ★★等価半径を大きくする手段 |
| (エ) | ★大きく | ★★線間が離れると電界が弱まる |
「太く、離す」——それがコロナ対策のすべてです。
(オ)の気圧だけは向きが逆に見えます——けれども「気圧が低い=空気が薄い=絶縁が弱い」と考えれば同じ。
d が大きいほど、D が大きいほど、δ が大きいほど臨界電圧が上がります——式が3つの空欄の答えを示しています。
δ は気圧に比例するので、気圧が低いと臨界電圧が下がる——だからコロナが起きやすくなるのです。
5空欄を選択肢(2)と照合する

| 対策 | 具体例 | 使う場面 |
| ★多導体化 | ★2〜8導体にする | ★超高圧の標準 |
| ★太い電線 | ★中空電線・拡径電線 | ★単導体で対応する場合 |
| ★金具の形状 | ★シールドリング・アークホーンの丸み | ★突起をなくす |
| ★施工の丁寧さ | ★電線に傷をつけない | ★傷が突起になる |
電線だけでなく、金具の形も重要です——とがった部分に電界が集中するから。
だから超高圧の金具は丸みを帯びた形をしています——シールドリングがその代表です。
施工中に電線を傷つけると、そこがコロナの発生源になります——だから丁寧な扱いが求められるのです。
中空電線は、内部を空洞にして直径だけ大きくしたもの——材料を増やさず等価半径を稼げます。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「電流密度」としてしまう——選択肢(1)(3)がそれです。コロナは電圧で決まる現象。
(ウ)を「単導体化」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)。逆効果になります。
(エ)を「小さく」としてしまう——選択肢(3)(5)。近づけると電界が強まるのです。
(オ)を「高く」としてしまう——選択肢(3)(5)。気圧が低いほど起きやすい。
(ウ)だけで(2)(5)に絞れます——あとは(エ)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★コロナは電線表面の電界強度で決まる。
②★対策は「太く、離す」。多導体化がその手段。
③★気圧が低いほど起きやすい(高地で注意)。
④★令和元年度A10と完全に同一問題。
💡 覚え方
「太く、離す」——4つの空欄がすべてその方向です。4年ぶりの再出題——過去問を解いておけば確実に取れます。
まったく同じ問題が令和元年度 A問題10(架空送電:コロナ損)にあります。多導体の電気的効果は平成30年度 A問題9(架空送電:多導体方式)へ。
コロナが起きる電圧の目安
どの電圧階級から問題になるのか見ましょう。
| 電圧階級 | コロナ | 採用する電線 |
| ★6.6 kV | ★起きない | ★細い電線で足りる |
| ★66〜154 kV | ★条件次第で起きる | ★太めの単導体 |
| ★187〜275 kV | ★★対策が必要 | ★2導体 |
| ★500 kV | ★★対策が必須 | ★4導体 |
低い電圧では電界が弱いので問題になりません——電線の太さは許容電流で決まります。
高い電圧では、電流としては細くてよくても太くする——コロナが決め手になるのです。
500 kV で単導体にすると、直径10 cm 以上が必要——重くて扱えません。
だから多導体にして、細い電線を離して配置する——等価半径だけを大きくする工夫です。
雨天時にコロナが増える理由
電線表面に水滴が付くと、そこが突起になります。
突起の先端では電界が数倍に集中します——だから局所的にコロナが始まるのです。
晴天時の数十倍のコロナ損が生じることもあります——雑音も大きくなります。
要点をもう一度
令和元年度A10とまったく同じ問題です。
| 空欄 | 答え | 意味 |
| (ア) | ★電線表面の電界強度 | ★コロナは電圧で決まる |
| (イ) | ★大きく | ★実効的な直径を大きくする |
| (ウ) | ★多導体化 | ★その手段 |
| (エ) | ★大きく | ★線間を離す |
| (オ) | ★低く | ★気圧が低いと空気が薄い |
(イ)(ウ)(エ)はすべて「電界を弱める」方向——太く、離すのがコロナ対策です。
4年ぶりの再出題——過去問を解いておけば確実になります。
コロナが引き起こす4つの障害
| 障害 | 内容 |
| ★コロナ損 | ★放電によるエネルギー損失 |
| ★可聴雑音 | ★★ジージーという音(50 dB超) |
| ★電波障害 | ★★ラジオ・テレビへの雑音 |
| ★金具の腐食 | ★オゾンと硝酸による |
電力損失より、雑音と電波障害のほうが問題になります——近隣からの苦情につながるから。
だから住宅地の近くでは特に対策が要る——コロナ対策の実務的な理由です。
多導体以外のコロナ対策
(ウ)の多導体化以外にも手立てがあります。
| 対策 | 内容 | 使う場面 |
| ★中空電線 | ★内部を空洞にして直径だけ大きくする | ★単導体で対応する場合 |
| ★拡径電線 | ★内層に軽い素材を使い外径を稼ぐ | ★同上 |
| ★シールドリング | ★金具の電界集中を防ぐ | ★がいし装置 |
| ★丁寧な施工 | ★電線に傷をつけない | ★すべての場面 |
中空電線は、材料を増やさずに直径を大きくできます——電流は表面を流れるので中心は不要だから。
表皮効果があるので、中を空洞にしても損失は増えません——むしろ軽くなるのです。
金具の形も重要で、とがった部分に電界が集中します——だから超高圧の金具は丸みを帯びています。
施工中の傷も突起になります——そこからコロナが始まることになります。
コロナ臨界電圧の式を読む
4つの空欄が、この式の中に含まれています。
| 記号 | 意味 | 大きいと |
| ★d | ★電線の直径 | ★★臨界電圧が上がる |
| ★D | ★線間距離 | ★★臨界電圧が上がる |
| ★δ | ★相対空気密度 | ★★臨界電圧が上がる |
| ★m₀ | ★電線の表面係数 | ★★臨界電圧が上がる |
すべて「大きいほどコロナが起きにくい」——だから対策はこれらを大きくする方向です。
δ は気圧に比例し温度に反比例します——だから気圧が低いと臨界電圧が下がるのです。
m₀ は電線が滑らかなら1に近く、汚れていると小さくなります——だから傷や汚れがコロナを招くことになります。
式を覚えなくても、各記号の向きだけ分かれば答えられます——「太く、離す、空気が濃い」ほど起きにくい。
まとめ
| (ア) | 電線表面の電界強度(約30kV/cm超で発生) |
| (イ)(ウ) | 実効直径を大きく→多導体化 |
| (エ) | 線間距離を大きく |
| (オ) | 気圧が低くなるほど起こりやすい |
| コロナの害 | コロナ損・可聴雑音・電波障害 |
| 答え | (2) |
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