架空送電21【電験3種 電力】多導体は電位の傾き小→コロナ開始電圧高!Lも表皮効果も小さくなる 平成30年度 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成30年度 A問題9 多導体にするとコロナが起きにくい!その理由

今回は平成30年度 電力科目 A問題9、架空送電線の多導体方式に関する空欄補充問題です。コロナ対策としての多導体(架空送電11・19)に加え、表皮効果・インダクタンス・送電容量への効果まで踏み込む総まとめ問題です。

多導体の効能は3つセットで覚えます:①電線表面の電位の傾き(電界)が小さくなる→コロナ開始電圧が高くなる→コロナ損・雑音を抑制。②同じ合計断面積の単導体より表皮効果が小さい(電流が有効に流れる)。③インダクタンスが減少→送電容量が増加し系統安定度が向上。

目次

(イ)(ウ) 電位の傾きとコロナ開始電圧

2つの言葉は、裏返しの関係にあります

★電位の傾き(電界強度)★コロナ開始電圧
★意味★同じ電圧で電線表面にかかる電界★コロナが始まる電圧
★多導体にすると★★小さくなる★★高くなる
★意味するところ★電界が弱まる★より高い電圧まで耐える

電界が弱まれば、より高い電圧までコロナが起きません——だから開始電圧が「高く」なるのです。

「電位の傾きが大きくなる」なら、コロナが起きやすくなります——逆の効果になってしまいます。

2つは必ずセットで動きます——片方が決まればもう片方も決まるのです。

平成30年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成30年度 A問題9 問題文
平成30年度 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成30年度 A問題9

 次の文章は、架空送電線の多導体方式に関する記述である。

 送電線において、1相に複数の電線を(ア)を用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼び、主に超高圧以上の送電線に用いられる。多導体を用いることで、電線表面の電位の傾きが(イ)なるので、コロナ開始電圧が(ウ)なり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制することができる。

 多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、表皮効果が(エ)。また、送電線の(オ)が減少するため、送電容量が増加し系統安定度の向上につながる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)スペーサ大きく低く大きいインダクタンス
(2)スペーサ小さく高く小さい静電容量
(3)シールドリング大きく高く大きいインダクタンス
(4)スペーサ小さく高く小さいインダクタンス
(5)シールドリング小さく低く大きい静電容量
答え正解は (4)——(ア)スペーサ (イ)小さく (ウ)高く (エ)小さい (オ)インダクタンス です。

(エ) 表皮効果が小さくなる

交流では、電流が電線の表面に偏って流れます

表皮の深さ
\( \delta=\sqrt{\dfrac{2\rho}{\omega\mu}} \)

周波数が高いほど、導電率が高いほど浅くなる

単導体(太い1本)★多導体(細い複数本)
★1本あたりの断面★大きい★小さい
★中心まで電流が届くか★届きにくい★★届きやすい
★表皮効果★大きい★★小さい
★実効的な抵抗★増える★★増えにくい

合計断面積が同じでも、細く分けたほうが表皮効果は小さい——1本あたりが細いからです。

太い電線では、中心付近に電流がほとんど流れません——断面を活かしきれないのです。

だから多導体のほうが実効抵抗が小さくなります——損失の面でも有利になります。

(オ) インダクタンスが減る

作用インダクタンス
\( L=0.4605\log_{10}\dfrac{D}{r}+0.05\ [\mathrm{mH/km}] \)

r:電線の等価半径 D:等価線間距離

等価半径 r が大きくなれば、対数の中身が小さくなります——だからインダクタンスが減るのです。

多導体にすると結果
★等価半径★大きくなる★—
★インダクタンス★★減る★★送電容量が増える
★静電容量★増える★充電電流も増える
送電電力
\( P=\dfrac{V_sV_r}{X}\sin\delta \)

リアクタンス X が小さいほど多く送れる

インダクタンスが減ればリアクタンスも減ります——だから送れる電力が増えるのです。

同じ相差角でより多く送れる——それが「系統安定度の向上」につながります。

静電容量は増えますが、こちらは減るのではありません——問題文が「減少する」と書いているのでインダクタンスです。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「シールドリング」としてしまう——選択肢(3)(5)がそれです。シールドリングはがいし用の金具で、素導体の間隔を保つのはスペーサ
(イ)を「大きく」としてしまう——選択肢(1)(3)電界が弱まるので小さくです。
(ウ)を「低く」としてしまう——選択肢(1)(5)より高い電圧まで耐えられるので高く。
(エ)を「大きい」としてしまう——選択肢(1)(3)(5)細く分けるので表皮効果は小さい
(オ)を「静電容量」としてしまう——選択肢(2)(5)静電容量は増えます
(ア)と(オ)の2欄で(4)に確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①★電位の傾きが小さくなり、コロナ開始電圧が高くなる。
②★細く分けるので表皮効果は小さくなる。
③★等価半径が大きくなりインダクタンスが減る。
④★静電容量は増える。減るのはインダクタンス。

💡 覚え方
「太くなったように見えるから、Lが減りCが増える」——等価半径がすべての起点です。Lが減れば送電容量が増える——コロナ対策が安定度の向上にもつながります

コロナ対策としての多導体は令和元年度 A問題10架空送電:コロナ損)にあります。

多導体の長所と短所

利点が多い方式ですが、代償もあります

項目多導体では評価
★コロナ★起きにくい★★長所
★インダクタンス★減る★★長所(送電容量増)
★表皮効果★小さい★★長所(実効抵抗減)
★静電容量★増える★短所(充電電流増)
★風圧荷重★増える★★短所(鉄塔が大型化)
★着氷雪荷重★増える★短所

電気的には利点ばかりですが、機械的には不利になります——本数が増えるからです。

風を受ける面積が増え、雪も多く付きます——鉄塔を丈夫に作る必要があるのです。

スペーサやその取付金具も増えます——保守の手間も増えることになります。

それでも超高圧では使わざるを得ません——コロナと送電容量の要求が優先するからです。

要点をもう一度

5つの空欄が、多導体の効果を並べています

空欄答え理由
(ア)★スペーサ★素導体の間隔を保つ
(イ)★小さく★等価半径が大きくなる
(ウ)★高く★電界が弱いので高電圧まで耐える
(エ)★小さい★1本あたりが細い
(オ)★インダクタンス★等価半径が大きいと減る

すべて「等価半径が大きくなる」から導けます——1つの原因から4つの結果です。

(エ)だけは「1本あたりが細い」ことから来ます——別の理由なので注意しましょう。

2つの半径を区別する

★素導体の半径★等価半径
★多導体にすると★★小さくなる★★大きくなる
★影響する量★表皮効果★電界・インダクタンス

同じ「半径」でも、2つの意味があります——混同すると答えがねじれるのです。

表皮効果は1本ごとの太さで決まります——電界とインダクタンスは配置全体で決まるのです。

送電容量と安定度

(オ)のインダクタンス減少が、何をもたらすか見ましょう

送電電力
\( P=\dfrac{V_sV_r}{X}\sin\delta \)

δ:相差角 X:線路リアクタンス

単導体★多導体
★リアクタンス X★大きい★★小さい
★同じδで送れる電力★少ない★★多い
★同じ電力を送るδ★大きい★★小さい

相差角が小さいほど、系統は安定します——90度に近づくと脱調の恐れがあるからです。

Xが小さければ、同じ電力を小さいδで送れます——余裕が生まれるのです。

だから「送電容量が増加し系統安定度の向上につながる」——問題文の通りになります。

コロナ対策として始まった多導体が、送電容量にも効く——超高圧で標準になった理由です。

多導体の素導体配置

(ア)のスペーサが決める配置を見ましょう

導体数配置素導体間隔
★2導体★水平または垂直に2本★40〜50 cm
★4導体★正方形の頂点★40〜50 cm
★6導体★正六角形の頂点★40 cm 前後

間隔は40〜50 cm が標準——広げるほど等価半径は大きくなります

けれども広げすぎると、風圧荷重や短絡時の力が増えます——だから限度があるのです。

正多角形に配置するのは、電界を均一にするため——偏ると一部に集中してしまいます

スペーサはこの配置を保つ部品——数十メートルごとに取り付けます

まとめ

(ア)スペーサ(素導体の間隔保持)
(イ)(ウ)電位の傾き小さく→コロナ開始電圧高く
(エ)表皮効果が小さい
(オ)インダクタンス減少→送電容量増加
注意静電容量は増加(Lと逆方向)
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・コロナ損の空欄(架空送電11):【電力】令和5年度上期 A問題9
・線路定数とD/r(架空送電17):【電力】令和2年度 A問題10

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