今回は平成18年度 電力科目 A問題11、電線の導体に使用される金属の誤り選択問題です。軟銅線・導電材料の条件・鋼心アルミより線(ACSR)・アルミと銅の比較と、導体材料の知識が総登場します。
決め手は硬銅線の用途。硬銅線は曲げにくい反面引張強度が高く、架空送電線などの導体として使われることがあります。「電線の導体として使われることはない」という全否定が誤りです。
平成18年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成18年度 A問題11
電線の導体に使用される金属に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 地中ケーブルの銅導体には、伸びや可とう性に優れる軟銅線が用いられる。
(2) 導電材料には、資源量が多いことや導電率が高いことなどが求められる。
(3) 鋼心アルミより線は、鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせたもので、軽量で大きな外径や高い引張強度を得ることができる。
(4) 電気抵抗と長さが同じ電線では、アルミニウム線の方が銅線より軽い。
(5) 硬銅線は軟銅線と比較して曲げにくく、電線の導体として使われることはない。
※平成18年度は公式PDF非公開のため、問題文は要旨で掲載しています。

誤りは(5):硬銅線は架空送電線に使われる
「電線の導体として使われることはない」——現に使われています。
| 用途 | 使う銅 | 理由 |
| ★地中ケーブル | ★★軟銅 | ★★曲げて使うので可とう性が要る |
| ★屋内配線 | ★軟銅 | ★配管の中で曲がる |
| ★架空送電線 | ★★硬銅 | ★★自重と風雪に耐える必要がある |
| ★整流子片 | ★硬銅 | ★ブラシとの摩擦に耐える |
「曲げにくい」までは正しい記述です——誤りは「使われることはない」のほう。
架空送電線は、いちど張ればほとんど曲げません——だから曲げにくくてもかまわないのです。
むしろ切れないことが第一です——だから引張強さを取るのです。
「張るなら硬銅、曲げるなら軟銅」——用途で使い分けられているのです。
「〜ことはない」という全否定は疑ってよい——用途が違うだけのことが多いから。
(4) アルミが軽くなる計算
★質量は約半分
| 項目 | ★銅 | ★アルミ | 比 |
| ★導電率 | ★100% | ★★約61% | ★断面積は1.6倍必要 |
| ★比重 | ★8.9 | ★★2.7 | ★★約3分の1 |
| ★同じ抵抗での質量 | ★1 | ★★約0.5 | ★★半分 |
太くする必要はありますが、比重の差が上回ります——だから軽くなるのです。
軽ければ、鉄塔を小さくできます——建設費が下がるのです。
太くなることは、コロナ対策としても好都合——電界が弱まるから。
だから架空送電線ではアルミが選ばれます——3つの利点が重なるのです。
(2) 資源量が求められる理由
| 金属 | 導電率 | 資源量 | 電線への採用 |
| ★銀 | ★★約106%(最高) | ★★希少 | ★★使われない |
| ★銅 | ★100% | ★★豊富 | ★★広く使われる |
| ★アルミ | ★約61% | ★★地殻中で最も多い金属 | ★★架空送電線 |
電線は何万キロも張られます——だから大量に手に入る必要があるのです。
銀は最も導電率が高いのに、使われません——希少で高価だから。
アルミは地殻中で最も多い金属元素です——だから価格も安定しているのです。
性能だけでなく、手に入るかどうかも条件になります——それが(2)の意味です。
⚠️ よくある間違い
(5)の「曲げにくい」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「使われることはない」。
架空送電線はいちど張れば曲げません——だから硬銅でよいのです。
(1)の軟銅を疑ってしまう——ケーブルは曲げるので軟銅。
(3)の鋼心アルミより線を疑ってしまう——軽量で外径が大きく強度も得られます。
(4)のアルミを疑ってしまう——1.6×1/3で質量は約半分。
「〜ことはない」という全否定を疑う——用途が違うだけのことが多いのです。
⏱️ 本番での進め方
①★硬銅線は架空送電線の導体として使われる。
②★張るなら硬銅、曲げるなら軟銅。
③★アルミは断面積1.6倍でも比重1/3で質量は半分。
④★導電材料には資源量の多さも求められる。
💡 覚え方
「張るなら硬銅、曲げるなら軟銅」——使う場所で決まります。「使われることはない」という全否定は疑う——それがこの型への備えになります。
★この問題は令和5年度下期 A問題14として、19年後にまったく同一の形で再出題されました(電気材料:電線の導体(R05下))。選択肢の並びも同じです。
(3) 鋼心アルミより線の構造
2種類の金属で役割を分けています。
| 部位 | 材料 | 担うもの |
| ★中心 | ★★亜鉛めっき鋼より線 | ★★引張強度 |
| ★外層 | ★★硬アルミより線 | ★★電流 |
鋼が支え、アルミが流す——役割分担がはっきりしているのです。
鋼は導電率が10%ほどしかありません——けれども支えるのが役目なのでかまわない。
表皮効果があるので、電流は外側を流れたがります——中心が鋼でも損失は増えません。
しかも外径が大きくなるので、コロナ対策にもなります——問題文の「大きな外径」がそれです。
(1) 軟銅が地中ケーブルに向く理由
曲げる場面が何度もあるからです。
| 場面 | 曲げの度合い | 必要な性質 |
| ★ドラムに巻く | ★★何十回も巻く | ★★可とう性 |
| ★管路に通す | ★★曲がった管を通る | ★同上 |
| ★マンホール内 | ★★小さく曲げて収める | ★同上 |
硬銅では、繰り返し曲げると折れるおそれがあります——加工硬化していてもろいから。
軟銅なら結晶が整っていて粘りがあります——何度曲げても大丈夫なのです。
しかも導電率が100%と高い——曲げやすさと性能の両方が得られる。
地中では自重を支える必要がありません——だから引張強さを犠牲にできるのです。
導電材料に求められる性質
(2)の条件を、実際の金属で確かめましょう。
| 条件 | 理由 | 満たす金属 |
| ★導電率が高い | ★抵抗損を減らす | ★銀・銅・アルミ |
| ★★資源量が多い | ★★大量に使うので安定して手に入る必要がある | ★★銅・アルミ |
| ★加工しやすい | ★線に引き伸ばせる | ★銅・アルミ |
| ★耐食性 | ★数十年屋外で使う | ★銅・アルミ(酸化被膜) |
銀は最も導電率が高いのに、電線には使われません——希少で高価だからです。
何万キロも張るので、資源量が決定的に効きます——だから(2)が「資源量の多さ」を挙げるのです。
アルミは地殻中で最も多い金属元素——だから大量に使えるのです。
性能だけでなく、手に入るかどうかも材料選びの条件——実務ならではの観点になります。
架空送電線が銅からアルミへ変わった
かつては硬銅より線が使われていました。
| 時代 | 使われた電線 | 理由 |
| ★初期 | ★硬銅より線 | ★導電率が高い |
| ★★現在 | ★★鋼心アルミより線(ACSR) | ★★軽く、安く、太くできる |
銅は重いので、鉄塔を大きくする必要がありました——建設費がかさむのです。
アルミなら同じ抵抗で質量が半分——鉄塔を小さくできることになります。
しかも資源量が多く、価格も安定しています——大量に使う用途では重要。
太くなることがコロナ対策にもなりました——3つの利点が重なったのです。
硬銅と軟銅の作り分け
同じ銅から、2つの性質を作り出します。
| ★硬銅 | ★軟銅 | |
| ★作り方 | ★★引き伸ばしたまま(加工硬化) | ★★300〜600 ℃ で焼きなます |
| ★結晶 | ★★乱れている | ★★整っている(再結晶) |
| ★導電率 | ★96〜98% | ★★100% |
| ★引張強さ | ★★大きい | ★小さい |
引き伸ばすと結晶が乱れ、硬くなります——それが加工硬化です。
加熱すれば原子が動いて並び直します——それが再結晶。
1つの処理で、硬さと導電率が同時に変わります——だから2種類の銅ができるのです。
用途に応じて、どちらかを選びます——張るなら硬銅、曲げるなら軟銅。
まとめ
| 誤り | (5) 硬銅線は架空送電線で使われる |
| 軟銅線 | 伸び・可とう性→地中ケーブル(1) |
| 導電材料の条件 | 資源量・導電率(2) |
| ACSR | 鋼心の強度+アルミの導電(3) |
| アルミvs銅 | 同抵抗・同長ならアルミが軽い(4) |
| 答え | (5) |
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