電気材料25【電験3種 電力】硬銅線は架空送電線で現役!「導体に使われることはない」は誤り 平成18年度 A問題11 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 平成18年度 A問題11 硬銅線は今も架空送電線で現役!全否定は誤り

今回は平成18年度 電力科目 A問題11電線の導体に使用される金属の誤り選択問題です。軟銅線・導電材料の条件・鋼心アルミより線(ACSR)・アルミと銅の比較と、導体材料の知識が総登場します。

決め手は硬銅線の用途。硬銅線は曲げにくい反面引張強度が高く架空送電線などの導体として使われることがあります。「電線の導体として使われることはない」という全否定が誤りです。

目次

平成18年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 平成18年度 A問題11 問題文
平成18年度 電力科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11

電験3種 電力科目 【電気材料】 平成18年度 A問題11

 電線の導体に使用される金属に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1) 地中ケーブルの銅導体には、伸びや可とう性に優れる軟銅線が用いられる。

(2) 導電材料には、資源量が多いことや導電率が高いことなどが求められる。

(3) 鋼心アルミより線は、鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせたもので、軽量で大きな外径や高い引張強度を得ることができる。

(4) 電気抵抗と長さが同じ電線では、アルミニウム線の方が銅線より軽い。

(5) 硬銅線は軟銅線と比較して曲げにくく、電線の導体として使われることはない。

※平成18年度は公式PDF非公開のため、問題文は要旨で掲載しています。

答え誤っている記述は (5)です。

誤りは(5):硬銅線は架空送電線に使われる

「電線の導体として使われることはない」——現に使われています

用途使う銅理由
★地中ケーブル★★軟銅★★曲げて使うので可とう性が要る
★屋内配線★軟銅★配管の中で曲がる
★架空送電線★★硬銅★★自重と風雪に耐える必要がある
★整流子片★硬銅★ブラシとの摩擦に耐える

「曲げにくい」までは正しい記述です——誤りは「使われることはない」のほう。

架空送電線は、いちど張ればほとんど曲げません——だから曲げにくくてもかまわないのです。

むしろ切れないことが第一です——だから引張強さを取るのです。

「張るなら硬銅、曲げるなら軟銅」——用途で使い分けられているのです。

「〜ことはない」という全否定は疑ってよい——用途が違うだけのことが多いから。

(4) アルミが軽くなる計算

\( \dfrac{100}{61}\ \fallingdotseq\ 1.6 \)
導電率が61%なので断面積は1.6倍
\( 1.6\times\dfrac{2.7}{8.9}\ \fallingdotseq\ 0.49 \)
比重が銅の3分の1なので
★質量は約半分
項目★銅★アルミ
★導電率★100%★★約61%★断面積は1.6倍必要
★比重★8.9★★2.7★★約3分の1
★同じ抵抗での質量★1★★約0.5★★半分

太くする必要はありますが、比重の差が上回ります——だから軽くなるのです。

軽ければ、鉄塔を小さくできます——建設費が下がるのです。

太くなることは、コロナ対策としても好都合——電界が弱まるから。

だから架空送電線ではアルミが選ばれます——3つの利点が重なるのです。

(2) 資源量が求められる理由

金属導電率資源量電線への採用
★銀★★約106%(最高)★★希少★★使われない
★銅★100%★★豊富★★広く使われる
★アルミ★約61%★★地殻中で最も多い金属★★架空送電線

電線は何万キロも張られます——だから大量に手に入る必要があるのです。

銀は最も導電率が高いのに、使われません——希少で高価だから。

アルミは地殻中で最も多い金属元素です——だから価格も安定しているのです。

性能だけでなく、手に入るかどうかも条件になります——それが(2)の意味です。

⚠️ よくある間違い
(5)の「曲げにくい」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「使われることはない」
架空送電線はいちど張れば曲げません——だから硬銅でよいのです。
(1)の軟銅を疑ってしまう——ケーブルは曲げるので軟銅
(3)の鋼心アルミより線を疑ってしまう——軽量で外径が大きく強度も得られます
(4)のアルミを疑ってしまう——1.6×1/3で質量は約半分
「〜ことはない」という全否定を疑う——用途が違うだけのことが多いのです。

⏱️ 本番での進め方
①★硬銅線は架空送電線の導体として使われる。
②★張るなら硬銅、曲げるなら軟銅。
③★アルミは断面積1.6倍でも比重1/3で質量は半分。
④★導電材料には資源量の多さも求められる。

💡 覚え方
「張るなら硬銅、曲げるなら軟銅」——使う場所で決まります「使われることはない」という全否定は疑う——それがこの型への備えになります。

★この問題は令和5年度下期 A問題14として、19年後にまったく同一の形で再出題されました電気材料:電線の導体(R05下))。選択肢の並びも同じです

(3) 鋼心アルミより線の構造

2種類の金属で役割を分けています

部位材料担うもの
★中心★★亜鉛めっき鋼より線★★引張強度
★外層★★硬アルミより線★★電流

鋼が支え、アルミが流す——役割分担がはっきりしているのです。

鋼は導電率が10%ほどしかありません——けれども支えるのが役目なのでかまわない

表皮効果があるので、電流は外側を流れたがります——中心が鋼でも損失は増えません

しかも外径が大きくなるので、コロナ対策にもなります——問題文の「大きな外径」がそれです。

(1) 軟銅が地中ケーブルに向く理由

曲げる場面が何度もあるからです

場面曲げの度合い必要な性質
★ドラムに巻く★★何十回も巻く★★可とう性
★管路に通す★★曲がった管を通る★同上
★マンホール内★★小さく曲げて収める★同上

硬銅では、繰り返し曲げると折れるおそれがあります——加工硬化していてもろいから。

軟銅なら結晶が整っていて粘りがあります——何度曲げても大丈夫なのです。

しかも導電率が100%と高い——曲げやすさと性能の両方が得られる

地中では自重を支える必要がありません——だから引張強さを犠牲にできるのです。

導電材料に求められる性質

(2)の条件を、実際の金属で確かめましょう

条件理由満たす金属
★導電率が高い★抵抗損を減らす★銀・銅・アルミ
★★資源量が多い★★大量に使うので安定して手に入る必要がある★★銅・アルミ
★加工しやすい★線に引き伸ばせる★銅・アルミ
★耐食性★数十年屋外で使う★銅・アルミ(酸化被膜)

銀は最も導電率が高いのに、電線には使われません——希少で高価だからです。

何万キロも張るので、資源量が決定的に効きます——だから(2)が「資源量の多さ」を挙げるのです。

アルミは地殻中で最も多い金属元素——だから大量に使えるのです。

性能だけでなく、手に入るかどうかも材料選びの条件——実務ならではの観点になります。

架空送電線が銅からアルミへ変わった

かつては硬銅より線が使われていました

時代使われた電線理由
★初期★硬銅より線★導電率が高い
★★現在★★鋼心アルミより線(ACSR)★★軽く、安く、太くできる

銅は重いので、鉄塔を大きくする必要がありました——建設費がかさむのです。

アルミなら同じ抵抗で質量が半分——鉄塔を小さくできることになります。

しかも資源量が多く、価格も安定しています——大量に使う用途では重要

太くなることがコロナ対策にもなりました——3つの利点が重なったのです。

硬銅と軟銅の作り分け

同じ銅から、2つの性質を作り出します

★硬銅★軟銅
★作り方★★引き伸ばしたまま(加工硬化)★★300〜600 ℃ で焼きなます
★結晶★★乱れている★★整っている(再結晶)
★導電率★96〜98%★★100%
★引張強さ★★大きい★小さい

引き伸ばすと結晶が乱れ、硬くなります——それが加工硬化です。

加熱すれば原子が動いて並び直します——それが再結晶

1つの処理で、硬さと導電率が同時に変わります——だから2種類の銅ができるのです。

用途に応じて、どちらかを選びます——張るなら硬銅、曲げるなら軟銅

まとめ

誤り(5) 硬銅線は架空送電線で使われる
軟銅線伸び・可とう性→地中ケーブル(1)
導電材料の条件資源量・導電率(2)
ACSR鋼心の強度+アルミの導電(3)
アルミvs銅同抵抗・同長ならアルミが軽い(4)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・導電材料の銅(電気材料19):【電力】平成24年度 A問題14
・電線の導体材料(電気材料5):【電力】令和5年度下期 A問題14

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