今回は平成22年度 電力科目 A問題14、変圧器やOFケーブルに使われる絶縁油の空欄補充問題です。空気との比較(絶縁破壊電圧・誘電正接)と、鉱物油・重合炭化水素油の使い分けが問われます。
4つの空欄:絶縁破壊電圧は大気圧の空気より高く、誘電正接は空気(ほぼゼロ)より大きい。古くから鉱物油が一般的で、OFケーブルやコンデンサでより低損失・高信頼性が求められるときは重合炭化水素油が採用されます。
平成22年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成22年度 A問題14
絶縁油は変圧器やOFケーブルなどに使用されており、一般に絶縁破壊電圧は大気圧の空気と比べて(ア)、誘電正接は空気よりも(イ)。電力用機器の絶縁油として古くから(ウ)が一般的に用いられてきたが、OFケーブルやコンデンサでより優れた低損失性や信頼性が求められる仕様のときには(エ)が採用される場合もある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 低く 小さい 植物油 シリコーン油 (2) 高く 大きい 鉱物油 重合炭化水素油 (3) 高く 大きい 植物油 シリコーン油 (4) 低く 小さい 鉱物油 重合炭化水素油 (5) 高く 大きい 鉱物油 シリコーン油

答えは(2):高く・大きい・鉱物油・重合炭化水素油
| 空欄 | 入る語 | 決め手 |
| ★(ア) | ★★高く | ★液体は気体より絶縁破壊電圧が高い |
| ★(イ) | ★★大きい | ★空気の誘電正接はほぼゼロ |
| ★(ウ) | ★★鉱物油 | ★古くからの標準 |
| ★(エ) | ★★重合炭化水素油 | ★低損失性・信頼性が求められる場合 |
(イ)を「小さい」としないことが要点です——比べる相手が空気だから。
空気は分子がまばらで、誘電損がほとんど生じません——誘電正接はほぼゼロです。
液体である絶縁油は、それより大きくなります——だから「大きい」のです。
「小さいほうがよい」という価値判断とは別の話——空気と比べた事実を問われています。
空気と絶縁油を比べる
| 項目 | ★空気(大気圧) | ★絶縁油 |
| ★絶縁破壊電圧 | ★基準 | ★★数倍高い |
| ★比誘電率 | ★★約1 | ★★2〜3 |
| ★誘電正接 | ★★ほぼゼロ | ★★それより大きい |
| ★冷却 | ★★熱を運びにくい | ★★対流で熱を運べる |
| ★すきま | ★★形が複雑だと入り込めない | ★★液体なので細部まで満たす |
絶縁破壊電圧が高いことが、油を使う最大の理由です——同じ距離でより高い電圧に耐えられる。
しかも対流で熱を運べます——変圧器では冷却材も兼ねるのです。
その代わり誘電損は空気より大きくなります——分子が詰まっているから。
だから絶縁油の中では、なるべく小さいものを選びます——それが(エ)の話になります。
(エ) 重合炭化水素油という選択肢
| 種類 | 特徴 | 使う場面 |
| ★鉱物油 | ★★石油系で安価・入手しやすい | ★★変圧器の標準 |
| ★重合炭化水素油 | ★★誘電正接が小さく低損失 | ★★OFケーブル・コンデンサ |
| ★シリコーン油 | ★★難燃性に優れる | ★屋内変圧器など |
重合炭化水素油は、合成絶縁油の一種です——分子構造を設計して作るのです。
だから誘電正接を小さくできます——不純物も少ないのです。
OFケーブルやコンデンサは、常時電圧がかかっています——だから誘電損が効いてくるのです。
シリコーン油は難燃性が売りで、目的が違います——「低損失性」なら重合炭化水素油になります。
⚠️ よくある間違い
(イ)を「小さい」としてしまう——比べる相手は空気です。空気の誘電正接はほぼゼロなので油のほうが大きい。
「小さいほうがよい」という価値判断と混同しない——ここは事実を問われています。
(ウ)を「植物油」としてしまう——古くからの標準は鉱物油。
(エ)を「シリコーン油」としてしまう——そちらは難燃性が売りです。低損失性なら重合炭化水素油。
「何と比べているか」を確かめる——空欄補充では特に重要になります。
⏱️ 本番での進め方
①★絶縁油の絶縁破壊電圧は空気より高い。
②★誘電正接は空気よりは大きい(空気はほぼゼロ)。
③★古くからは鉱物油、低損失性なら重合炭化水素油。
④★シリコーン油は難燃性が売りで目的が違う。
💡 覚え方
「空気と比べれば油の誘電正接は大きい」——比較の相手を確かめることです。価値判断(小さいほうがよい)と事実は別——そこが引っかけの場所になります。
絶縁油は繰り返し出題されています——令和4年度下期 A問題14(絶縁油の性質)、令和2年度 A問題14(絶縁油)にもあります。
絶縁油が劣化していく道すじ
使い続けると、油そのものが変わります。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★熱と酸素により油が酸化する |
| ★② | ★★酸価が上がり、スラッジができる |
| ★③ | ★★誘電正接が大きくなり損失が増える |
| ★④ | ★★絶縁破壊電圧が下がる |
スラッジが溜まると、冷却の通り道もふさぎます——だから温度が上がるのです。
温度が上がれば酸化がさらに進みます——悪循環になることになります。
だから定期的に絶縁油の試験を行います——絶縁破壊電圧・酸価・水分を測るのです。
合成油は酸化に強いので、この劣化が遅い——それも「信頼性」の中身です。
OFケーブルとコンデンサで低損失が要る理由
問題文が2つの機器を挙げているのはなぜでしょうか。
| 機器 | 電圧のかかり方 | 誘電損の効き方 |
| ★変圧器 | ★常時かかる | ★油の量が多く発熱が分散する |
| ★OFケーブル | ★★常時かかる | ★★熱が逃げにくく許容電流を下げる |
| ★コンデンサ | ★★常時かかる | ★★狭い空間に集中して発熱する |
どちらも絶縁体が薄く、狭い空間に詰まっています——だから熱が逃げにくいのです。
誘電損は電圧の2乗に比例します——高電圧ほど効いてくるのです。
だからより低損失な油が求められます——それが(エ)の重合炭化水素油。
変圧器では油の量が多いので、まだ余裕があります——だから鉱物油で足りるのです。
(ア) 液体が気体より絶縁破壊電圧が高い理由
分子の詰まり方で決まります。
| 状態 | 分子の間隔 | 電子が加速できる距離 | 絶縁破壊電圧 |
| ★気体(大気圧) | ★★広い | ★★長い | ★★低い |
| ★液体(絶縁油) | ★★狭い | ★★短い | ★★数倍高い |
絶縁破壊は、電子が加速して分子を電離させて起きます——加速する距離が要るのです。
液体では分子が詰まっているので、すぐぶつかります——だから加速できないのです。
だから同じ距離でも、より高い電圧に耐えられます——それが(ア)の「高く」。
変圧器が油を使うのは、まずこの理由から——機器を小さくできるのです。
絶縁油の試験項目
状態を知るために測る項目です。
| 試験 | 分かること | 悪化すると |
| ★絶縁破壊電圧 | ★絶縁性能そのもの | ★★下がる |
| ★誘電正接 | ★★損失と汚染の程度 | ★★上がる |
| ★全酸価 | ★★酸化の進み具合 | ★★上がる |
| ★水分 | ★吸湿の程度 | ★★上がる |
絶縁破壊電圧は、水分が入ると急に下がります——最も敏感な指標です。
誘電正接は、汚染や劣化を総合的に表します——問題文の(イ)がこの量。
全酸価が上がると、スラッジができ始めます——冷却の通り道がふさがるのです。
数値が基準を外れたら、油の交換や再生を行います——機器そのものは使い続けられるのです。
絶縁油を使う機器
問題文が変圧器とOFケーブルを挙げています。
| 機器 | 絶縁油の役目 | 重要な性質 |
| ★変圧器 | ★★絶縁と冷却の両方 | ★★粘度・比熱・熱伝導率 |
| ★OFケーブル | ★★絶縁紙に含ませて絶縁 | ★★誘電正接・絶縁破壊電圧 |
| ★コンデンサ | ★★絶縁と静電容量の確保 | ★★誘電正接 |
変圧器では冷却も担うので、熱的な性質が効きます——油の量も多いのです。
OFケーブルとコンデンサでは、損失の小ささが重要——狭い空間に詰まっているから。
だから(エ)で「より優れた低損失性」と書かれています——用途が性質を求めるのです。
絶縁と冷却を1つの液体が担う——それが絶縁油の大きな価値です。
まとめ
| (ア) | 高く(絶縁破壊電圧) |
| (イ) | 大きい(誘電正接・空気≒0) |
| (ウ) | 鉱物油(古くから一般的) |
| (エ) | 重合炭化水素油(低損失・OFケーブル/コンデンサ) |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・絶縁油(電気材料7・類題):【電力】令和4年度下期 A問題14
・絶縁油(電気材料10):【電力】令和2年度 A問題14

コメント