今回は平成21年度 電力科目 A問題14、固体絶縁材料の劣化の誤り選択問題です。機械的ひずみ・ボイド放電・水トリー・化学物質による変質と、劣化のメカニズムが総登場します。
決め手は部分放電の発生場所。部分放電は絶縁体の外表面だけでなく、内部の微小空げき(ボイド)でも発生します。「外表面のみに発生する」の「のみ」が誤り——しかも選択肢(2)が内部のボイド放電を認めているので、(5)との矛盾からも見抜けます。
平成21年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【電気材料】 平成21年度 A問題14
固体絶縁材料の劣化に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 膨張、収縮による機械的な繰り返しひずみの発生が、劣化の原因となる場合がある。
(2) 固体絶縁物内部の微小空げきで高電圧印加時のボイド放電が発生すると、劣化の原因となる。
(3) 水分は、CVケーブルの水トリー劣化の主原因である。
(4) 硫黄などの化学物質は、固体絶縁材料の変質を引き起こす。
(5) 部分放電劣化は、絶縁体外表面のみに発生する。

誤りは(5):部分放電は内部でも起きる
「絶縁体外表面のみに発生する」——内部のボイドでも起きます。
| 場所 | 起きる条件 | 呼び方 |
| ★絶縁体の内部 | ★★ボイド(空隙)があると起きる | ★★ボイド放電・内部部分放電 |
| ★絶縁体の表面 | ★汚損や水分があると起きる | ★沿面部分放電 |
| ★電極のとがった部分 | ★電界が集中すると起きる | ★コロナ放電 |
(2)が「内部の微小空げきでボイド放電」と述べています——同じ問題文の中で矛盾しているのです。
内部の部分放電のほうが、むしろ発見しにくい——目で見えないから。
そして直しようがありません——あとからボイドを抜くことはできないのです。
だから内部の部分放電こそ深刻——「外表面のみ」は明らかな誤りです。
「〜のみ」という限定は疑ってよい——選択肢の書き方としての手がかりになります。
固体絶縁材料を劣化させる要因
| 要因 | 起きること | 本問の選択肢 |
| ★機械的ひずみ | ★★膨張と収縮の繰り返しで微小な亀裂ができる | ★(1) |
| ★部分放電 | ★★ボイド内で放電し絶縁体を侵食する | ★(2)(5) |
| ★水分 | ★★電界とともに水トリーを伸ばす | ★(3) |
| ★化学物質 | ★★硫黄などが材料を変質させる | ★(4) |
4つの要因が、それぞれ選択肢に対応しています——よく組まれた問題です。
機械的ひずみは、負荷の増減で毎日繰り返されます——温度が上下するたびに膨張と収縮。
硫黄は、絶縁油の添加剤や大気中の汚染から入ります——銅と反応して硫化銅を作るのです。
複数の要因が重なると、劣化が加速します——だから管理する項目も多いのです。
(3) 水トリー劣化のしくみ
| 段階 | 起きること |
| ① | ★絶縁体に微小な水分と不純物が入る |
| ★② | ★★交流電界によって水分子が振動する |
| ★③ | ★★微小な亀裂が生じ、そこへ水が入り込む |
| ★④ | ★★樹枝状に伸びていく(水トリー) |
| ★⑤ | ★★絶縁が弱まり、やがて破壊に至る |
木の枝のような形に広がるので「トリー」といいます——tree(木)から来た名前です。
水がなければ起きません——だから遮水層で防ぎます。
年単位でゆっくり進むので、診断で捉えられます——tanδ や直流漏れ電流で見るのです。
CVケーブル特有の劣化として、必ず問われます——固体絶縁ならではだからです。
⚠️ よくある間違い
(5)を「表面のほうが放電しやすそう」と考える——内部のボイドでも起きます。(2)が同じ問題文で述べています。
「〜のみ」という限定は疑ってよい——選択肢の書き方としての手がかりです。
(1)の機械的ひずみを疑ってしまう——膨張と収縮の繰り返しが亀裂を生みます。
(3)の水トリーを疑ってしまう——水分が主原因です。
(4)の化学物質を疑ってしまう——硫黄は代表的な劣化要因。
問題文の中で矛盾していないか確かめる——本問はそれだけで解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★部分放電は内部のボイドでも起きる。
②★内部の部分放電のほうが発見しにくく深刻。
③★「〜のみ」という限定は疑ってよい。
④★水トリーは水分と電界が重なって進む。
💡 覚え方
「内部でも表面でも起きる」——「のみ」と限定されたら疑います。同じ問題文の(2)が内部の放電を述べている——矛盾に気づけば即答できます。
部分放電の道すじは令和元年度 A問題14(電気材料:電気絶縁材料)にあります。
(4) 硫黄が絶縁を傷めるしくみ
化学物質による劣化の代表例です。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★絶縁油の添加剤や大気から硫黄分が入る |
| ★② | ★★銅と反応して硫化銅ができる |
| ★③ | ★★硫化銅は導電性があり絶縁紙に染み込む |
| ★④ | ★★絶縁性能が落ちて事故に至る |
硫化銅は黒っぽい導電性の物質です——絶縁物の中に電流の通り道を作ってしまうのです。
変圧器の内部で実際に問題になりました——腐食性硫黄と呼ばれます。
だから絶縁油の硫黄分は厳しく管理されます——試験項目にも入っているのです。
化学的な劣化は、物理的な劣化とは別の道すじ——だから(4)が独立した選択肢になっています。
(1) 機械的ひずみが亀裂を生む
温度の上下が、毎日繰り返されます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★負荷の増減で温度が上下する |
| ★② | ★★導体と絶縁体で熱膨張率が違う |
| ★③ | ★★境目にひずみが集中する |
| ★④ | ★★微小な亀裂やはく離が生じる |
| ★⑤ | ★そこがボイドとなり部分放電の起点になる |
金属と樹脂では、熱膨張率が数倍違います——だから境目に力がかかるのです。
1回の変化はわずかでも、年に何千回も繰り返します——金属疲労と同じ考え方です。
気体や液体なら流動するので、ひずみが残りません——固体だけの弱点になります。
そして(2)の部分放電へとつながります——要因どうしが連鎖しているのです。
固体絶縁材料の劣化を見つける
劣化は避けられないので、見つける手段が要ります。
| 方法 | 捉えるもの | 対応する要因 |
| ★絶縁抵抗測定 | ★全体的な絶縁の低下 | ★★水分・汚損 |
| ★誘電正接測定 | ★★tanδ の増加 | ★★吸湿・熱劣化 |
| ★直流漏れ電流法 | ★★電圧を上げたときの電流の変化 | ★★局部的な欠陥・水トリー |
| ★部分放電測定 | ★★微小な放電のパルス | ★★ボイド・異物 |
要因ごとに、捉えやすい方法が違います——だから組み合わせて使うのです。
水分なら絶縁抵抗、ボイドなら部分放電——狙いを定めて測ります。
本問の5つの要因は、いずれも診断で捉えられます——だから予防保全が成り立つのです。
壊れる前に見つけて、計画的に取り替える——それが劣化を知る目的です。
劣化の要因は重なって進む
単独ではゆっくりでも、重なると加速します。
| 組合せ | 起きること |
| ★熱+機械的ひずみ | ★★膨張収縮が繰り返され亀裂が広がる |
| ★水分+電界 | ★★水トリーが伸びて絶縁破壊に至る |
| ★ボイド+電界 | ★★部分放電が起き絶縁体を侵食する |
| ★硫黄+熱 | ★★硫化反応が加速する |
本問の5つの選択肢は、互いに独立ではありません——連鎖しているのです。
機械的ひずみがボイドを作り、そこで部分放電が起きます——(1)が(2)につながるのです。
だから1つ防げば、連鎖が止まります——水分の管理が特に重要になります。
要因を並べて覚えるだけでなく、つながりを見ること——それが理解につながります。
ボイドを作らせない工夫
(2)の原因を断つ方法です。
| 対象 | 工夫 | ねらい |
| ★変圧器 | ★★真空にしてから油を注ぐ | ★★空気を残さない |
| ★OFケーブル | ★★大気圧以上に加圧する | ★★収縮しても空隙ができない |
| ★CVケーブル | ★★乾式架橋で製造する | ★★水分も気泡も入れない |
| ★モールド機器 | ★真空中で樹脂を注入する | ★気泡を巻き込まない |
どれも「空気を入れない」ための工夫です——入ってからでは抜けないから。
真空にしてから注ぐのが基本的な方法——すきまに気体が残らないのです。
それでも使用中に新たなボイドができます——(1)の機械的ひずみによって。
だから作らせない工夫と、見つける手段の両方が要ります。
まとめ
| 誤り | (5) 部分放電は内部ボイドでも発生 |
| 機械的劣化 | 膨張・収縮の繰り返しひずみ(1) |
| ボイド放電 | 内部の微小空げきで発生(2) |
| 水トリー | 主原因は水分(3) |
| 化学的劣化 | 硫黄などで変質(4) |
| 答え | (5) |
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