電気材料13【電験3種 電力】SF6のオゾン層破壊影響は無視できる!「影響が大きい」は誤り 平成29年度 A問題14 完全解説

電験3種 電力科目 電気材料 平成29年度 A問題14 SF6が壊すのはオゾン層ではない!温暖化が問題

今回は平成29年度 電力科目 A問題14電気絶縁材料の誤り選択問題です。SF6・絶縁油・架橋ポリエチレン(CVケーブル)・がいし・絶縁劣化と、絶縁材料が総登場します。

決め手はSF6ガスの環境影響。SF6はオゾン層破壊への影響は無視できる(小さい)一方、地球温暖化への影響が大きいガスです。「オゾン層破壊への影響が大きい」は誤りです。

目次

平成29年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 平成29年度 A問題14 問題文
平成29年度 電力科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14

電験3種 電力科目 【電気材料】 平成29年度 A問題14

 電気絶縁材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) ガス遮断器などに使用されているSF6ガスは、同じ圧力の空気と比較して絶縁耐力や消弧能力が高く、反応性が非常に小さく安定した不燃性のガスである。しかし、SF6ガスは、大気中に排出されると、オゾン層破壊への影響が大きいガスである。

(2) 変圧器の絶縁油には、主に鉱油系絶縁油が使用されており、変圧器内部を絶縁する役割のほかに、変圧器内部で発生する熱を対流などによって放散冷却する役割がある。

(3) CVケーブルの絶縁体に使用される架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの優れた絶縁特性に加えて、ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることによって、耐熱変形性を大幅に改善した絶縁材料である。

(4) がいしに使用される絶縁材料には、一般に、磁器、ガラス、ポリマの3種類がある。我が国では磁器がいしが主流であるが、最近では、軽量性や耐衝撃性などの観点から、ポリマがいしの利用が進んでいる。

(5) 絶縁材料における絶縁劣化では、熱的要因、電気的要因、機械的要因のほかに、化学薬品、放射線、紫外線、水分などが要因となり得る。

答え誤っている記述は (1)です。

誤りは(1):オゾン層への影響はない

「オゾン層破壊への影響が大きいガスである」——影響するのは温暖化のほうです

環境問題原因となる物質SF₆の関わり
★オゾン層の破壊★★塩素・臭素を含むガス(フロン類)★★塩素を含まないので影響なし
★地球温暖化★★赤外線を吸収するガス★★CO₂の約2万倍

オゾン層を壊すのは、塩素原子の働きです——1個の塩素が何万個ものオゾンを分解するのです。

SF6は硫黄とふっ素だけでできています——塩素がないので、この反応は起きません

けれども赤外線をよく吸収し、しかも分解されません——だから温室効果が大きいのです。

2つの環境問題を取り違えたのが誤り——前半のSF6の性質は正しいのです。

「大気中に排出されると」までは同じ——そのあとの問題名が入れ替わっています

(4) がいしに使う3つの材料

材料特徴現状
★磁器★★実績が長く耐候性に優れる。重い★★我が国の主流
★ガラス★★割れると一目で分かる★海外で多い
★ポリマ★★軽く耐衝撃性に優れる★★利用が進んでいる

磁器は100年以上使われてきた材料です——実績が何よりだから。

けれども重いので、輸送も設置も大変です——山地の鉄塔では特に

ポリマがいしは、その重さを大幅に減らせます——磁器の数分の1になります。

しかも割れにくいので、いたずらや飛来物にも強い——だから利用が広がっています

ガラスは割れると自壊するので、不良が一目で分かります——点検が楽という利点があります。

(3) 架橋という処理があらためて問われている

★ポリエチレン★架橋ポリエチレン
★分子構造★★鎖状★★立体網目状
★熱を加えると★★軟らかくなる★★変形しない
★許容温度★★70 ℃★★90 ℃

問題文の「耐熱変形性を大幅に改善した」が正確な表現です——熱で変形しにくくなったということ。

分子どうしが橋で結ばれるので、動けなくなります——だから軟らかくならないのです。

ポリエチレン本来の優れた絶縁特性はそのまま——誘電率も誘電正接も小さいのです。

だからCVケーブルが主流になりました——絶縁も耐熱も両立しているから。

⚠️ よくある間違い
(1)の前半「絶縁耐力や消弧能力が高く、安定した不燃性」を見て全体を正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「オゾン層破壊への影響が大きい」
正しくは地球温暖化への影響——2つの環境問題を取り違えています
(2)の絶縁油を疑ってしまう——絶縁と冷却の両方を担います
(3)の架橋ポリエチレンを疑ってしまう——耐熱変形性を改善したで正しい。
(4)のがいしを疑ってしまう——磁器・ガラス・ポリマの3種類です。
オゾン層は塩素、温暖化は赤外線吸収——原因が別なので混同しないこと

⏱️ 本番での進め方
①★SF6はオゾン層には影響しない(塩素を含まない)。
②★影響が大きいのは地球温暖化のほう。
③★がいしの材料は磁器・ガラス・ポリマの3種類。
④★架橋は耐熱変形性を改善する処理。

💡 覚え方
「オゾン層は塩素、温暖化は赤外線」——原因が別の問題です。SF6に塩素はない——だからオゾン層には影響しません

★SF6は5回出題されています——平成19年度比重)、平成26年度化学的安定性)、令和4年度上期アークの発生)、令和7年度上期におい)、そして本問です。

(2) 変圧器で絶縁油が担う2つの役目

1つの液体が2つの仕事をします

役目内容求められる性質
★絶縁★★巻線どうし、巻線と鉄心の間を絶縁する★絶縁破壊電圧が高い
★冷却★★対流で熱を放熱器へ運ぶ★★粘度小・比熱大・熱伝導率大

液体なので、複雑な形のすきまも埋められます——空隙が残らないのです。

しかも温度差だけで自然に循環します——ポンプがなくても熱が運ばれるのです。

気体では熱を運ぶ力が足りません——固体では流れられないのです。

だから液体が選ばれます——絶縁と冷却の両立は液体だけができること

(5) 絶縁劣化の要因を並べる

問題文が7つ挙げているのを整理しましょう

分類要因起きること
★熱的★温度・熱サイクル★★分子の結合が緩み、ひずみも生じる
★電気的★電界・部分放電★★絶縁体が侵食される
★機械的★振動・応力★亀裂が入る
★環境的★★化学薬品・放射線・紫外線・水分★★分子の結合が切れる・水トリー

大きく4つに分けられます——熱・電気・機械・環境

放射線は原子力発電所の機器で問題になります——特殊な環境です。

紫外線は屋外機器で効いてきます——だから耐候性のシースを使うのです。

使う場所によって、効く要因が変わります——だから要因を並べて覚える意味があるのです。

ポリマがいしが広がっている理由

(4)で触れられている材料です

項目★磁器がいし★ポリマがいし
★重さ★★重い★★数分の1
★耐衝撃性★★割れやすい★★割れにくい
★汚損特性★水がつながりやすい★★はっ水性があり塩害に強い
★実績★★100年以上★★数十年で長期の実績は少ない

軽さは、輸送も設置も楽にします——山地の鉄塔では特に効くのです。

割れにくいので、飛来物やいたずらにも強い——都市部でも有利です。

しかもシリコーンゴムははっ水性を持ちます——塩害地域で強いのです。

ただし長期の実績では磁器に及びません——だから主流は磁器のままなのです。

2つの環境問題を混同しない

本問の核心なので、あらためて整理します

★オゾン層の破壊★地球温暖化
★原因物質★★塩素・臭素を含むガス★★赤外線を吸収するガス
★代表例★★フロン(CFC・HCFC)★★CO₂・メタン・SF₆
★何が起きるか★★紫外線が地表に届く★★熱が宇宙へ逃げにくくなる
★規制★★モントリオール議定書★★京都議定書

規制する条約まで別になっています——それだけ違う問題だということ。

SF6は京都議定書の対象ガスです——温暖化のほうになります。

塩素を含まないので、モントリオール議定書の対象ではありません——そこが本問の判断どころ

2つを取り違える選択肢は、繰り返し出題されます——覚えておくと確実に得点できるのです。

架橋ポリエチレンが主流になった道すじ

(3)で触れられている材料の歩みです

絶縁体許容温度短所現状
★油浸紙(OF)★80 ℃ 程度★★給油設備が要る★★減っている
★ポリエチレン★70 ℃★★熱で変形する★使われない
★★架橋ポリエチレン★★90 ℃★水トリー劣化★★主流

ポリエチレンは絶縁特性が優れています——誘電率も誘電正接も小さいのです。

けれども熱に弱いという弱点がありました——70 ℃ で軟らかくなるから。

架橋という処理が、その弱点を消しました——絶縁特性はそのまま耐熱性だけ改善

だからCVケーブルが主流になりました——油も要らず保守が楽だからです。

まとめ

誤り(1) SF6のオゾン層破壊影響は無視できる
絶縁油鉱油系で絶縁+放散冷却(2)
CVケーブル架橋ポリエチレン(3)
がいし磁器・ガラス・ポリマ(4)
絶縁劣化熱電気機械+化学等(5)
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・SF6ガス(電気材料8):【電力】令和4年度上期 A問題14
・電気絶縁材料(電気材料11):【電力】令和元年度 A問題14

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次