地中送電2【電験3種 電力】架橋ポリエチレンは耐熱性UP!「熱可塑性を向上」は誤り 令和7年度上期 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 地中送電 令和7年度上期 A問題10 架橋すると熱に強くなる!CVケーブルの秘密

今回は令和7年度上期 電力科目 A問題10、地中送電線路の電力ケーブル(OF・CV・CVT)の誤り選択問題です。OFとCVの構造・特徴の対比に加えて、架橋ポリエチレンの材料特性まで踏み込まれます。

架橋ポリエチレン(XLPE)は、ポリエチレンの分子を架橋反応で立体網目状につないだ材料。これにより加熱しても変形しにくくなる=耐熱性(熱変形温度)が向上します。熱可塑性(加熱で軟らかくなる性質)は失われる方向——「熱可塑性を大幅に向上」は正反対の記述です。

出題のポイント:架橋で向上するのは耐熱性

ポリエチレンと架橋ポリエチレンの分子構造および耐熱性を比較する要点図
架橋によって分子鎖を固定すると、熱可塑性ではなく耐熱性が向上します。

ポリエチレンの分子鎖を架橋反応で結び、立体網目状にすると、加熱しても分子鎖が動きにくくなります。したがって向上するのは耐熱性であり、熱で軟らかくなる熱可塑性は失われる方向です。

目次

令和7年度上期 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 地中送電 令和7年度上期 A問題10 問題文
令和7年度上期 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【地中送電】 令和7年度上期 A問題10

 地中送電線路に使用される各種電力ケーブルに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) OFケーブルは、絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルである。OFケーブルには油通路が設けられており、絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。

(2) CVケーブルは、絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブルである。架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることで、熱可塑性を大幅に向上させた絶縁材料である。

(3) CVケーブルは、OFケーブルと比較して給油設備が不要であり、保守性に優れている。一方で、水トリーの発生による絶縁劣化があるため、CVケーブルには金属シースや遮水層を設ける場合がある。

(4) CVTケーブルは、単心CVケーブル3条をより合わせたトリプレックス形CVケーブルであり、3心共通シース形CVケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくできるとともに、ケーブルの接続作業性がよい。

(5) OFケーブルは、油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥、外傷などに起因する漏油を検知することで、油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることができる。

答え誤っている記述は (2)です。

解法の原理:架橋ポリエチレンの立体網目構造と耐熱性

PEとXLPEの分子構造、許容温度70度と90度、架橋反応の流れを説明する図
架橋ポリエチレンは立体網目構造により熱で軟らかくなりにくく、許容温度が約90℃になります。

「熱可塑性を大幅に向上させた」——向上させたのは耐熱性です

★ポリエチレン★架橋ポリエチレン
★分子構造★★鎖状(独立した分子が並ぶ)★★立体網目状(分子どうしがつながる)
★性質★★熱可塑性(熱で軟らかくなる)★★熱硬化性に近い(軟らかくならない)
★許容温度★★70 ℃★★90 ℃

熱可塑性とは、熱を加えると軟らかくなる性質のこと——絶縁材料としては困る性質です。

架橋は、その性質を失わせるために行います——分子どうしを橋で結ぶのです。

網目になれば、熱を加えても分子が動けません——だから軟らかくならない

その結果、許容温度が70 ℃ から90 ℃ に上がりました——向上したのは耐熱性です。

「熱可塑性を向上させた」では、逆のことを言っています

架橋という処理が生む効果

段階起きること
★ポリエチレンに架橋剤を加えて加熱する
★②★★分子鎖どうしが化学結合でつながる
★③★★立体網目状の構造ができる
★④★★熱を加えても分子が動けなくなる
★⑤★★許容温度が90 ℃ まで上がる

許容温度が20 ℃ 上がることの意味は大きい——そのぶん電流を流せるからです。

しかも油を使わないので、保守が格段に楽——給油設備も漏油の心配も要りません

だからCVケーブルが主流になりました——(3)がその理由を述べています

弱点は水分が入ると起きる水トリー劣化——だから遮水層を設けます

(3) 水トリー劣化と遮水層

段階起きること
★絶縁体に微小な水分と不純物が入る
★②★★電界によって水が樹枝状に伸びていく
★③★その部分の絶縁が弱くなる
★④★★やがて絶縁破壊に至る

木の枝のような形に広がるので「トリー」といいます——tree(木)から来た名前です。

水が入らなければ起きません——だから金属シースや遮水層で防ぎます

アルミ被やラミネートシースが使われます——水分を通さない層です。

固体絶縁ならではの弱点——OFケーブルにはこの問題がありません

⚠️ よくある間違い
(2)の前半「架橋反応により立体網目状分子構造とする」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「熱可塑性を向上させた」
向上したのは耐熱性で、熱可塑性は失われます——逆のことを言っています
(1)のOFケーブルを疑ってしまう——油通路と給油設備が必要で正しい
(3)の水トリーを疑ってしまう——遮水層で防ぎます
(4)のCVTを疑ってしまう——熱抵抗が小さく作業性もよいです。
専門用語の意味を確かめる——熱可塑性と耐熱性は別の言葉になります。

⏱️ 本番での進め方
①★架橋すると熱可塑性が失われ、耐熱性が上がる。
②★許容温度は70 ℃ から90 ℃ へ。
③★CVの弱点は水トリー劣化。遮水層で防ぐ。
④★OFには油通路と給油設備が必要。

💡 覚え方
「架橋は熱で軟らかくならなくするための処理」——熱可塑性をなくすのが目的です。向上したのは耐熱性——言葉を取り違えないことになります。

★この問題は平成30年度 A問題11とほぼ同じ内容です地中送電:電力ケーブル(H30))。誤りの箇所だけが違います

(1) OFケーブルの給油設備

油圧を保つための仕組みを見ましょう

部位役目
★油通路★★油が出入りする道
★給油槽(油タンク)★★油の増減を受け止める
★圧力計★★油圧を常時監視する
★油圧の役目★★大気圧以上に保ってボイドを作らせない

負荷が増えると導体が温まり、油が膨張します——その分が給油槽へ逃げるのです。

冷えれば収縮するので、今度は油が戻ります——その出入りを通路が担う

通路がなければ、収縮したときに空隙ができます——それがボイドです。

だから油通路と給油設備は、どちらも欠かせません——(1)は正確な記述になります。

(4) CVTが電流容量で有利な理由

熱抵抗の違いが、そのまま容量の差になります

★CV-3C(3心共通シース)★CVT(トリプレックス)
★形をそろえる方法★★すき間に介在物を詰める★★詰めずにより合わせる
★熱の通り道★★介在物が邪魔をする★★直接外気に触れる
★熱抵抗★★大きい★★小さい
★接続作業★★3心まとめてしか扱えない★★1心ずつ扱える

介在物は繊維や樹脂なので、熱を通しません——それが熱抵抗を増やすのです。

CVTは三つ葉状なので、表面積も大きくなります——だから熱がよく逃げる

接続作業も1心ずつできるので楽です——より合わせをほどけばよいから。

だからマンホールも小さくて済みます——工事費に直結するのです。

架橋の方法にも種類がある

どうやって分子どうしをつなぐのでしょうか

方式方法特徴
★★乾式架橋★★高温の気体中で架橋する★★水分が入らずボイドも少ない
★湿式架橋★高温の蒸気中で架橋する★★水分が残り水トリーの原因になる

かつては蒸気を使う湿式が主流でした——けれども水分が絶縁体に残ります

その水分が水トリー劣化を招きました——初期のCVケーブルの弱点です。

いまは乾式架橋が標準になっています——水を使わないので水分が入らない

製造方法の改良が、寿命を大きく延ばしました——だから近年のCVは信頼度が高いのです。

問題の解説:OF・CV・CVTの特徴を照合して誤り(2)を選ぶ

OF、CV、CVTケーブルの構造と特徴を5選択肢で照合し誤りが2番と示す図
選択肢(2)は立体網目状構造までは正しいものの、熱可塑性を向上させたという部分が誤りです。

いまはほとんどCVですが、理由を確かめましょう

項目★OFケーブル★CVケーブル
★給油設備★★必要★★不要
★漏油の心配★★ある★★ない
★許容温度★80 ℃ 程度★★90 ℃
★誘電体損★★大きい★★小さい
★弱点★油圧の管理が要る★★水トリー劣化

保守の手間が、最大の分かれ目です——油があると管理が増えるのです。

漏油は環境への影響もあります——土壌汚染につながるから。

CVは水トリーという弱点を抱えていましたが、遮水層と乾式架橋で克服しました

だから現在の新設はほぼCV——OFは既設の維持が中心になっています。

遮水層が守るもの

(3)で触れられている構造を見ましょう

材料役目
★金属シース★★アルミ被・鉛被★★水分を完全に遮る
★ラミネートシース★★金属箔と樹脂の複合★軽くて曲げやすい
★防食層★ポリエチレン★金属層を腐食から守る

水分が絶縁体に入らなければ、水トリーは起きません——原因を断つ対策です。

金属は水を通さないので、完全な遮水になります——けれども重く曲げにくい

ラミネートシースなら、軽さと遮水性を両立できます——近年よく使われます

金属層自体は腐食するので、その外に防食層を設けます——層が重なっていくのです。

まとめ

誤り(2) 架橋で向上するのは耐熱性(熱可塑性ではない)
OF油浸紙+加圧油・ボイド抑制・給油設備要(1)(5)
CV給油不要・水トリー→金属シース/遮水層(3)
CVT単心3条より合わせ・熱抵抗小・容量大(4)
XLPE連続使用温度90℃・立体網目構造
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・布設3方式の比較(地中送電1):【電力】令和7年度下期 A問題10
・がいしの絶縁の考え方(架空送電4):【電力】令和7年度上期 A問題8

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