今回は平成20年度 電力科目 A問題6、変電所に設置される機器の役割を問う誤り選択問題です。周波数変換装置・断路器・遮断器・三巻線変圧器・零相変流器と、変電所の主要機器が総登場します。
ポイントは零相変流器(ZCT)の動作原理。三相の電線を一括して鉄心に通すと、平常時や三相平衡の事故では磁束が打ち消し合って二次電流はゼロ。1線地絡などで三相のバランスが崩れたときだけ零相電流が現れて検出できる——「不平衡センサー」だと理解すれば引っかかりません。
誤りは(5):零相変流器は平衡事故では動かない
「三相短絡事故や3線地絡事故が生じたときのみ」——むしろそのときは動きません。
| 事故の種類 | 3相の電流の和 | 零相変流器の出力 |
| ★正常時 | ★ゼロ | ★出ない |
| ★三相短絡 | ★ゼロ(平衡している) | ★★出ない |
| ★3線地絡(平衡) | ★ゼロ | ★★出ない |
| ★1線地絡 | ★ゼロでない | ★★出る |
| ★2線地絡 | ★ゼロでない | ★出る |
零相変流器は3相をまとめて1つの鉄心に通します——3相の電流の和だけを取り出すのです。
三相短絡は3相が平衡したまま大電流が流れます——和はゼロなので検出できません。
大地へ漏れて初めて、和がゼロでなくなる——だから地絡専用の機器です。
三相短絡を検出するのは過電流継電器の役目——通常の変流器と組みます。
平成20年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成20年度 A問題6
変電所に設置される機器に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 周波数変換装置は、周波数の異なる系統間において、系統又は電源の事故後の緊急応援電力の供給や電力の融通等を行うために使用する装置である。
(2) 線路開閉器(断路器)は、平常時の負荷電流や異常時の短絡電流及び地絡電流を通電でき、遮断器が開路した後、主として無負荷状態で開路して、回路の絶縁状態を保つ機器である。
(3) 遮断器は、負荷電流の開閉を行うだけではなく、短絡や地絡などの事故が生じたとき事故電流を迅速確実に遮断して、系統の正常化を図る機器である。
(4) 三巻線変圧器は、一般に一次側及び二次側をY結線、三次側をΔ結線とする。三次側に調相設備を接続すれば、送電線の力率調整を行うことができる。
(5) 零相変流器は、三相の電線を一括したものを一次側とし、三相短絡事故や3線地絡事故が生じたときのみ二次側に電流が生じる機器である。

(2) 断路器の「通電できる」という表現
問題文が正確に書き分けています。
| ★通電 | ★遮断 | |
| ★断路器 | ★短絡電流でもできる | ★★できない |
| ★遮断器 | ★できる | ★できる |
断路器は閉じたままなら大電流でも流せます——接点が接触しているだけだからです。
できないのは「開くこと」——消弧装置がないのでアークが消えないのです。
だから「通電でき」「無負荷状態で開路して」と書き分けられます——正確な記述になります。
(1)(3)(4) 残る3つの記述
| 記述 | 機器 | 要点 |
| (1) | 周波数変換装置 | ★50 Hz と60 Hz の間で融通する |
| (3) | 遮断器 | ★負荷電流も事故電流も遮断できる |
| (4) | 三巻線変圧器 | ★一次二次Y・三次Δ/三次に調相設備 |
(1)の周波数変換装置は、東西の連系に使われます——緊急時の応援にも重要です。
(4)はY-Y-Δのこと——三次Δに調相設備をつなげば力率調整ができます。
三次電圧は扱いやすい大きさなので、機器を接続しやすい——1つの巻線が複数の役目を果たします。
⚠️ よくある間違い
(5)の「三相の電線を一括したものを一次側」を見て正しいと判断する——構造の説明は正しいのです。
誤りは「三相短絡事故や3線地絡事故が生じたときのみ」——平衡した事故では和がゼロで検出できません。
正しくは「1線地絡など零相電流が生じたとき」——対象が正反対になっています。
(2)の「短絡電流及び地絡電流を通電でき」を疑ってしまう——通電はできます。遮断ができないだけ。
(4)の三巻線変圧器を疑ってしまう——Y-Y-Δの標準的な説明です。
「〜のみ」という限定表現は疑う価値がある——本問ではそこが誤りでした。
⏱️ 本番での進め方
①★零相変流器は3相の電流の和を取り出す。
②★三相短絡や3線地絡は平衡なので和がゼロ=検出できない。
③★検出できるのは1線地絡・2線地絡など不平衡な事故。
④断路器は通電できるが遮断はできない。
💡 覚え方
「零相変流器は不平衡だけを見る」——平衡した事故は素通りします。3相の和がゼロでなくなるのは、大地へ漏れたとき——だから地絡専用なのです。
計器用変成器の基本は令和3年度 A問題7(変電:計器用変成器)にあります。
零相電流はどこから来るのか
(5)の判断には、零相電流の正体を知る必要があります。
| 状態 | 3相の電流 | 和 |
| ★平衡負荷 | ★大きさが等しく120度ずつずれる | ★ゼロ |
| ★三相短絡 | ★大きいが平衡している | ★★ゼロ |
| ★1線地絡 | ★1相だけ大地へ漏れる | ★★ゼロでない |
行った電流は必ず戻ってきます——3本の中で完結していれば和はゼロです。
大地へ漏れると、その分だけ戻ってこない——それが零相電流になります。
だから零相変流器は「大地への漏れ」だけを見る機器——短絡は見えません。
三相短絡を検出するには、通常の変流器と過電流継電器を使います——役割が分かれているのです。
要点をもう一度
誤りは(5)の「〜のときのみ」という限定です。
| 記述 | 機器 | 正誤 |
| (1) | 周波数変換装置 | 正 |
| (2) | 断路器 | 正 |
| (3) | 遮断器 | 正 |
| (4) | 三巻線変圧器 | 正 |
| ★(5) | ★零相変流器 | ★誤(対象が正反対) |
構造の説明は正しく、動作する場面だけが逆——最後まで読む必要があります。
継電器と変成器の組合せ
| 検出したい事故 | 変成器 | 継電器 |
| ★短絡・過負荷 | ★変流器(CT) | ★過電流継電器(OCR) |
| ★地絡 | ★零相変流器(ZCT) | ★地絡継電器(GR) |
| ★地絡の方向 | ★ZCT+接地形計器用変圧器 | ★地絡方向継電器(DGR) |
事故の種類ごとに、専用の組合せがあります——1つで全部は見られないのです。
だからZCTが短絡を検出しないのは当然——役割分担が明確だからです。
周波数変換装置の役割
(1)が挙げる「緊急応援電力」を具体的に見ましょう。
| 場面 | 働き |
| ★平常時 | ★経済的な融通(安い電源のある側から送る) |
| ★事故時 | ★★健全な側から緊急に応援する |
| ★需給ひっ迫時 | ★余力のある側から補う |
東日本と西日本は周波数が違うので、直接つなげません——いったん直流にして作り直します。
2011年の震災では、この容量の少なさが問題になりました——当時は120万 kW 程度。
その後、増強が進められています——210万 kW を目標とする計画です。
問題文が「緊急応援電力の供給」と書いている——まさにその機能になります。
三巻線変圧器の三次巻線
(4)が挙げる三次側の使い方を整理します。
| 用途 | 内容 |
| ★安定巻線 | ★第3調波を環流させ波形を整える |
| ★調相設備の接続 | ★電力用コンデンサ・分路リアクトルをつなぐ |
| ★所内電源 | ★変電所内の照明・制御電源に使う |
| ★発電機の接続 | ★小規模電源を受け入れる |
問題文が「三次側に調相設備を接続すれば力率調整ができる」——2つ目の用途です。
三次電圧は22 kV 程度なので、機器を作りやすい——高電圧側につなぐより安価になります。
しかも変圧器を通して系統全体に効きます——低い電圧から高い電圧を調整できるのです。
1つの巻線が複数の役目を果たす——合理的な設計だと言えます。
零相変流器の感度
大きな負荷電流の中から、わずかな漏れを拾います。
| 項目 | 値の目安 |
| ★通っている負荷電流 | ★数十〜数百アンペア |
| ★検出できる零相電流 | ★0.2アンペア程度から |
| ★比 | ★★1000分の1以下 |
3相の電流が打ち消し合うので、差だけが残ります——だから微小な漏れも拾えるのです。
もし1相ずつ測って引き算したら、精度が足りません——大きな値どうしの差は誤差が大きいから。
鉄心の中で磁束を打ち消させるのが巧妙な点——計算ではなく物理的に差を取っています。
だから3本をまとめて1つの穴に通す——1本でも外れると誤動作します。
まとめ
| 誤り | (5) ZCTは三相短絡・3線地絡では二次電流が生じない |
| ZCTの動作 | 1線地絡などの不平衡=零相電流で二次電流発生 |
| 断路器 | 通電可・遮断不可。遮断器開路後に無負荷で開路 |
| 遮断器 | 負荷電流の開閉+事故電流の遮断 |
| 三巻線変圧器 | Y-Y-Δ。三次Δに調相設備→力率調整 |
| 答え | (5) |
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