今回は平成21年度 電力科目 A問題6、電力系統における変電所の役割と機能を問う誤り選択問題です。変成・保護・潮流調整・無効電力調整・電圧調整という変電所の5大機能が一通り並び、その中に混ぜられた「逆パターン」を見抜けるかが問われます。
狙われるのはいつも調相設備の使い分け。重負荷時=遅れ無効電力で電圧が下がる→電力用コンデンサ投入(進み無効電力を供給)、軽負荷時=フェランチ効果で電圧が上がる→分路リアクトル投入(進み無効電力を吸収)。この対応を逆にした記述が誤りの定番です。
平成21年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成21年度 A問題6
電力系統における変電所の役割と機能に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) 構外から送られる電気を、変圧器やその他の電気機械器具等により変成し、変成した電気を構外に送る。
(2) 送電線路で短絡や地絡事故が発生したとき、保護継電器により事故を検出し、遮断器にて事故回線を系統から切り離し、事故の波及を防ぐ。
(3) 送変電設備の局部的な過負荷運転を避けるため、開閉装置により系統切換を行って電力潮流を調整する。
(4) 無効電力調整のため、重負荷時には分路リアクトルを投入し、軽負荷時には電力用コンデンサを投入して、電圧をほぼ一定に保持する。
(5) 負荷変化に伴う供給電圧の変化時に、負荷時タップ切換変圧器等により電圧を調整する。

誤りは(4):コンデンサとリアクトルが逆
「重負荷時には分路リアクトル、軽負荷時には電力用コンデンサ」——完全に入れ替わっています。
| ★重負荷時 | ★軽負荷時 | |
| ★電圧の傾向 | ★下がる | ★上がる |
| ★原因 | ★負荷の遅れ電流による電圧降下 | ★線路の静電容量による充電電流 |
| ★投入すべき設備 | ★★電力用コンデンサ | ★★分路リアクトル |
| ★効果 | ★進み無効電力を供給して電圧を上げる | ★遅れ無効電力を吸収して電圧を下げる |
電圧が下がるときに、さらに下げる設備を入れては逆効果——そこが誤りです。
判断の順序は「電圧がどちらへ動くか」が先——設備はそれに応じて決まります。
重負荷なら下がるからコンデンサ、軽負荷なら上がるからリアクトル——覚えるのはこの対応だけになります。
なぜ軽負荷で電圧が上がるのか
フェランチ効果と呼ばれる現象です。
| 負荷 | 支配的な電流 | Q の符号 | 受電端電圧 |
| ★重負荷 | ★負荷の遅れ電流 | ★正 | ★送電端より低い |
| ★軽負荷 | ★線路の充電電流(進み) | ★負 | ★★送電端より高い |
送電線は電線と大地の間がコンデンサになっています——そこへ進み電流が流れるのです。
進み電流が線路のリアクタンスを通ると、電圧が上がります——遅れ電流なら下がるのと逆です。
だから夜間や休日に電圧が上がりすぎることがある——そこで分路リアクトルを投入します。
ケーブル系統や長い送電線ほど静電容量が大きく、顕著——地中送電では特に問題になります。
(1)(2)(3)(5) 変電所の4つの役割
| 記述 | 役割 | 手段 |
| (1) | 電圧の変成 | ★変圧器 |
| (2) | 系統の保護 | ★保護継電器と遮断器 |
| (3) | 潮流の調整 | ★開閉装置による系統切換 |
| (5) | 電圧の調整 | ★負荷時タップ切換変圧器 |
(4)も本来は電圧調整の話——手段の対応だけが逆になっています。
(5) 負荷時タップ切換変圧器
運転を止めずにタップを切り換えられる変圧器です。
| 無電圧タップ切換 | ★負荷時タップ切換(LTC) | |
| ★操作 | ★停電させて切り換える | ★通電したまま切り換えられる |
| ★用途 | ★季節ごとの調整 | ★★負荷変化に追従する調整 |
切換の途中で電流が途切れないよう、抵抗を挟んで移します——アークを出さずに切り換える工夫です。
問題文の「負荷変化に伴う供給電圧の変化時に」——停電できないので負荷時タップ切換が要るのです。
⚠️ よくある間違い
(4)の「無効電力調整のため」を見て正しいと判断する——目的は正しいのです。誤りは設備の対応。
コンデンサとリアクトルを取り違える——電圧がどちらへ動くかを先に考えれば防げます。
(1)の「構外から送られる電気を変成」を疑ってしまう——変電所の定義そのものです。
(3)の「電力潮流を調整」を疑ってしまう——系統切換による潮流制御は実際の役割。
(5)の「負荷時タップ切換変圧器」を疑ってしまう——標準的に使われる機器です。
4つが正しく1つだけ対応が逆——組合せを確かめる問題になっています。
⏱️ 本番での進め方
①★重負荷→電圧が下がる→コンデンサ。
②★軽負荷→電圧が上がる→分路リアクトル。
③★軽負荷で上がるのはフェランチ効果。
④負荷時タップ切換は通電したまま調整できる。
💡 覚え方
「重いときコンデンサ、軽いときリアクトル」——本問はそれを逆にしただけです。電圧がどちらへ動くかを先に判断する——それだけで対応が決まります。
同じ論点を空欄補充で問う問題が平成18年度 A問題5(変電:調相設備)にあります。変電所の役割は令和元年度 A問題7(変電:変電所の役割と分類)へ。
変電所が担う電圧調整の手段
(4)と(5)は、どちらも電圧調整の話です。
| 手段 | 変えるもの | 特徴 |
| ★調相設備 | ★無効電力の流れ | ★系統全体の電圧に効く |
| ★負荷時タップ切換 | ★変圧比 | ★その変圧器の二次側だけに効く |
調相設備は、線路を流れる無効電力そのものを減らします——だから上流の電圧降下も改善されるのです。
タップ切換は、変圧比を変えて二次電圧を持ち上げるだけ——上流の状態は変わりません。
だから両方を組み合わせて使います——問題文が(4)(5)と並べている理由になります。
タップの刻み
| 項目 | 目安 |
| ★調整範囲 | ★±10 % 程度 |
| ★1段の刻み | ★1.25〜2.5 % |
| ★段数 | ★17段前後 |
細かく刻めば滑らかに調整できますが、機構が複雑になります——そのつり合いで決まります。
負荷の変化に合わせて自動で切り換わる——電圧を監視して制御装置が判断します。
要点をもう一度
誤りは(4)の設備の対応だけです。
| 記述 | 役割 | 正誤 |
| (1) | 電圧の変成 | 正 |
| (2) | 系統の保護 | 正 |
| (3) | 潮流の調整 | 正 |
| ★(4) | ★無効電力調整 | ★誤(設備が逆) |
| (5) | 電圧の調整 | 正 |
目的は正しく、手段の対応だけが入れ替わっています——そこを見抜くのが本問です。
平成18年度と同じ論点
| ★平成18年度 A5 | ★平成21年度 A6(本問) | |
| ★形式 | ★空欄補充 | ★誤りを選ぶ |
| ★問われ方 | ★正しい組合せを答える | ★逆にした記述を見抜く |
| ★答え | ★(1) | ★(4) |
同じ知識を、正と逆の両方から問うています——対応を確実にしておけば両方取れるのです。
変電所が電圧を保つ理由
問題文の(4)(5)がなぜ必要かを、需要家側から見ましょう。
| 機器 | 電圧が低いと | 電圧が高いと |
| ★誘導電動機 | ★トルク不足で始動できない | ★励磁電流が増え過熱する |
| ★白熱電球 | ★暗くなる | ★寿命が大きく縮む |
| ★電子機器 | ★誤動作・停止 | ★部品が劣化する |
電動機のトルクは電圧の2乗に比例します——1割下がるとトルクは約2割減るのです。
白熱電球の寿命は電圧の十数乗に反比例——5 % 上がるだけで寿命が半分になります。
だから高すぎても低すぎても困る——一定に保つことが求められるのです。
低圧では101±6 V、202±20 V という基準があります——電気事業法で定められた義務です。
系統切換による潮流調整
(3)の記述を、具体的な場面で見ましょう。
| 状況 | 操作 | 効果 |
| ★1回線が過負荷 | ★開閉器を操作して別ルートへ回す | ★負担を分散する |
| ★点検で1回線停止 | ★残る回線と隣の系統で分担する | ★供給を続けられる |
| ★事故で回線喪失 | ★健全な系統へ切り換える | ★停電を最小化する |
電力は最も流れやすい経路を通ります——だから偏りが生じるのです。
開閉器で経路を変えれば、その偏りを調整できます——これが潮流調整になります。
設備を増やさずに使い方で対応できる——変電所が担う重要な機能です。
中央給電指令所が全体を見て指示を出します——変電所はその実行部隊にあたります。
まとめ
| 誤り | (4) 重負荷にリアクトル・軽負荷にコンデンサは真逆 |
| 正しい対応 | 重負荷→電力用コンデンサ/軽負荷→分路リアクトル |
| 変成 | 構外から受電→変成→構外へ送電(1) |
| 保護 | 保護継電器で検出→遮断器で切り離し(2) |
| 電圧調整 | 負荷時タップ切換変圧器(5) |
| 答え | (4) |
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