架空送電26【電験3種 電力】多導体はコロナ対策で塩害対策ではない!紛れ込みを見抜く 平成27年度 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成27年度 A問題9 多導体はコロナ対策!塩害対策と混ぜない

今回は平成27年度 電力科目 A問題9、がいしの塩害現象と対策の誤り選択問題です。令和6年度下期A問題8(架空送電6)では「絶縁電線」、今回は「多導体方式」——正しい対策の中に無関係な対策を紛れ込ませるのがこのテーマの定番の誤り方です。

多導体方式は電線側のコロナ対策(表面電界の緩和——架空送電21)であって、がいしの塩害とは別問題。塩害対策の正解リストは「洗浄・はっ水塗布・長幹/耐霧/耐塩がいし・過絶縁(汚損区分×電圧階級で連結個数)」です。

目次

平成27年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成27年度 A問題9 問題文
平成27年度 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成27年度 A問題9

 架空送電線路のがいしの塩害現象及びその対策に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) がいし表面に塩分等の導電性物質が付着した場合、漏れ電流の発生により、可聴雑音や電波障害が発生する場合がある。

(2) 台風や季節風などにより、がいし表面に塩分が急速に付着することで、がいしの絶縁が低下して漏れ電流の増加やフラッシオーバが生じ、送電線故障を引き起こすことがある。

(3) がいしの塩害対策として、がいしの洗浄、がいし表面へのはっ水性物質の塗布の採用や多導体方式の適用がある。

(4) がいしの塩害対策として、雨洗効果の高い長幹がいし、表面漏れ距離の長い耐霧がいしや耐塩がいしが用いられる。

(5) 架空送電線路の耐汚損設計において、がいしの連結個数を決定する場合には、送電線路が通過する地域の汚損区分と電圧階級を加味する必要がある。

答え誤っている記述は (3)です。

誤りは(3):多導体はコロナ対策

「多導体方式の適用」——塩害対策ではありません

対策狙う現象効く理由
★多導体方式★★コロナ★等価半径を大きくして電界を弱める
★がいしの洗浄★★塩害★付着した塩分を除く
★はっ水性物質★★塩害★水膜を作らせない

多導体は電線の話、塩害はがいしの話——対象が違います

電線を何本にしても、がいし表面の塩分は減りません——効果がないのです。

問題文の前半「洗浄、はっ水性物質の塗布」は正しい——そこに多導体を紛れ込ませた作りになっています。

正しい対策の列に、別の目的の対策を混ぜる——よく使われる引っかけです。

(4) がいしの種類と使い分け

がいし特徴塩害への効果
★普通懸垂がいし★標準的なひだ★標準
★耐霧がいし★ひだを深くした★漏れ距離1.2倍
★耐塩がいし★さらに深く複雑なひだ★★漏れ距離1.5倍以上
★長幹がいし★棒状で笠がない★★雨洗効果が高い

耐霧・耐塩がいしは、ひだを深くして漏れ距離を稼ぎます——電流が表面を伝う道のりを長くするのです。

長幹がいしは発想が違います——そもそも塩分が残らない形にするから。

棒状なので雨が全体を流れ落ちます——笠の裏側という死角がないのです。

だから海岸沿いでは長幹がいしが選ばれます——問題文の(4)は正しいことになります。

(5) 汚損区分と耐汚損設計

汚損区分等価塩分付着密度地域の例
★A(軽)★0.03 mg/cm² 以下★内陸部
★B(中)★0.06 mg/cm² 程度★海岸から数キロ
★C(重)★0.12 mg/cm² 程度★海岸に近い
★D(超重)★0.35 mg/cm² 以上★海岸線・工業地帯

地域ごとに汚損の程度を等級で表します——それが汚損区分です。

同じ電圧でも、汚損区分が重ければ連結個数を増やします——だから「電圧階級と汚損区分の両方を加味」するのです。

500 kV で汚損区分Dなら、40個近くになることもある——鉄塔がその分高くなります

だからルート選定の段階で、海岸を避けることも検討します——設備費に直結するからです。

⚠️ よくある間違い
(3)の「洗浄、はっ水性物質の塗布」を見て正しいと判断する——その2つは正しいのです。誤りは「多導体方式の適用」
多導体はコロナ対策——がいしの塩害には効きません
(1)の可聴雑音・電波障害を疑ってしまう——漏れ電流による部分放電で生じます
(2)の「急速に付着」を疑ってしまう——台風では短時間で大量に付きます
(4)の長幹・耐霧・耐塩がいしを疑ってしまう——いずれも実在する塩害対策です。
対策の列に別分野のものが混ざっていないか——それを確かめるのが解き方になります。

⏱️ 本番での進め方
①★多導体はコロナ対策。塩害対策ではない。
②★塩害対策は絶縁強化・洗浄・はっ水・ルート選定。
③★長幹がいしは雨洗効果、耐塩がいしは漏れ距離。
④★連結個数は電圧階級と汚損区分の両方で決める。

💡 覚え方
「多導体は電線、塩害はがいし」——対象が違うので効きません正しい対策の列に別分野を混ぜる——それが本問の引っかけです。

塩害対策の詳細は令和3年度 A問題10架空送電:がいしの塩害)、再閉路との関係は平成20年度 A問題10架空送電:がいしの塩害)にあります。

塩害と他の障害を区別する

対策が別分野のものかどうかを見分ける練習をしましょう

現象起きる場所主な対策
★コロナ★電線の表面★★多導体化・太い電線
★塩害★がいしの表面★★洗浄・はっ水・耐塩がいし
★雷害★がいし・電線・鉄塔★架空地線・避雷器・埋設地線
★振動★電線★ダンパ・アーマロッド・相間スペーサ

起きる場所が違えば、対策も違います——電線の対策はがいしに効きません

本問は「がいしの塩害」と明記されています——だから電線の話は無関係です。

多導体はコロナ対策として繰り返し出てきます——それを塩害の列に混ぜたのが引っかけ

「どこで起きるか」を意識すれば見抜けます——分野をまたぐ引っかけへの備えになります。

要点をもう一度

誤りは(3)の「多導体方式」だけです。

記述内容正誤
(1)漏れ電流で可聴雑音・電波障害
(2)台風で急速に付着しフラッシオーバ
★(3)★多導体方式の適用★誤(コロナ対策)
(4)長幹・耐霧・耐塩がいし
(5)汚損区分と電圧階級で連結個数を決める

(3)の前半「洗浄、はっ水性物質の塗布」は正しい——そこに別分野の対策を混ぜています

「どこで起きるか」を意識すれば見抜けます——多導体は電線、塩害はがいし

塩害対策を4つに分ける

分類具体策
★絶縁を強める★連結個数・耐塩がいし・長幹がいし
★塩分を除く★活線洗浄・停止洗浄
★塩分を寄せつけない★はっ水性物質・シリコーンゴム
★立地で避ける★海岸から離れたルート選定

4つとも、がいし表面の漏れ電流を止める方向です——多導体はこのどれにも当てはまりません

がいしの連結個数の決め方

(5)の耐汚損設計を、具体的に見ましょう

電圧汚損区分A(軽)汚損区分C(重)
★66 kV★4〜5個★6〜7個
★154 kV★9〜10個★13〜14個
★275 kV★16〜18個★22〜24個

汚損が重いと、3〜4割ほど個数が増えます——沿面距離を稼ぐためです。

個数が増えれば、がいし装置が長くなります——その分だけ鉄塔を高くする必要があるのです。

鉄塔が高くなれば、費用も用地も増えます——だから設計に直結するのです。

耐塩がいしを使えば、個数を増やさずに漏れ距離を稼げます——そちらを選ぶこともあることになります。

電圧階級と汚損区分の両方を見るのは、そういう理由——問題文の(5)は実務そのものです。

塩害が急速に進む条件

(2)の「急速に付着」を、気象条件から見ましょう

条件塩分の運ばれ方危険度
★台風★★海水が巻き上げられ内陸まで飛ぶ★★最も危険
★季節風★海岸沿いに継続的に運ばれる★冬季に注意
★通常時★徐々に付着し雨で流される★つり合っている

ふだんは付着と洗浄がつり合っています——雨が定期的に洗い流すから。

台風では、そのつり合いが一気に崩れます——大量の塩分が短時間で付くのです。

しかも通過後は雨が止み、湿度だけが高い——洗い流されないまま導電性を持つことになります。

だから台風の通過直後に事故が集中します——問題文の(2)が指摘する通りです。

日本海側では冬の季節風でも塩分が運ばれます——台風だけの問題ではないのです。

まとめ

誤り(3) 多導体方式はがいしの塩害対策ではない
塩害の連鎖付着→漏れ電流→雑音→フラッシオーバ(1)(2)
正しい対策洗浄・はっ水塗布・長幹/耐霧/耐塩がいし(4)
耐汚損設計汚損区分×電圧階級で連結個数(5)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・塩害の紛れ込み・絶縁電線版(架空送電6):【電力】令和6年度下期 A問題8
・塩害の空欄補充(架空送電15):【電力】令和3年度 A問題10
・多導体の本当の効能(架空送電21):【電力】平成30年度 A問題9

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次